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    かけはし2016.年2月1日号

明仁天皇の「平和主義」とは何か?


12.23

「敗戦70年」に何を問うべきか?


「亀裂」の意味を検証する

戦後国家に内在する矛盾と相互依存



天皇・皇后の
フィリピン訪問
 一二月二三日の天皇誕生日。反天皇制運動連絡会は東京・原宿の千駄ヶ谷区民会館で「敗戦70年の象徴天皇制を考える 安倍政権とアキヒト天皇制」をテーマに集会を行った。いつも通り、原宿駅竹下口近くの歩道や、会場前には「日の丸」を掲げた天皇主義右翼の一団が口汚くののしり、警備の警察官や私服刑事が集会参加者を確認していく光景が繰り広げられている。
 首都圏の反天皇制運動は「敗戦七〇年と天皇制」というテーマで、安倍政権の「戦争法」強行の動きとからみあわせながら、象徴天皇制をめぐるさまざまな動き(安部七〇年談話など)への批判の行動を積み重ねてきたが、この日の集会は、この一年間をあらためて総括するものとして準備された。集会には九〇人が集まった。
 司会の反天連の仲間が、安倍政権と対比して現天皇の「平和主義」を印象づけようとする報道・言論のあり方に注意を喚起する発言を行った後、最初に日本近現代史研究者の伊藤晃さんが「明仁天皇の『平和主義』と安倍政権の『積極的平和主義』」と題して報告した。
 伊藤さんは冒頭、一月に行われる天皇のフィリピン訪問に関して、現在の南シナ海をめぐる中国とフィリピン、ベトナム、そして米国と日本などの角逐についてふれ、安倍政権が中国と対抗しつつ日米共同で南シナ海を「内海化」しようとする動きの中での天皇のフィリピン「慰霊」訪問の意味について提起した。それは、「慰霊」にとどまらない政治的意味を持つ。かつて日本人にとって「戦場」だったフィリピンとその周辺海域が「平和の海」になったという歴史認識にもとづき、それを脅かそうとする中国の動きを牽制するものとなっていく。
 伊藤さんはさらに、安倍の「戦争国家」路線=「積極的平和主義」が、憲法九条と日米安保の両立の中でつちかわれてきた戦後象徴天皇制の下での「国民的一体化」に亀裂を起こさせることへの「不安感」として、天皇・皇后が時折見せる「平和主義」的発言の意味を分析した。
 安倍はとりあえず「戦後国民・天皇の平和主義」と和解しなければならず、「七〇年談話」で「アメリカニズムとの協調による平和と民主主義」を高く評価し、この枠組みが脅かされていることに対応するための「積極的平和主義」が必要になっているとする論理を組み立てている、と伊藤さんは分析した。そして安倍が作り出そうとする「新段階のナショナリズム」、天皇が象徴する「国民意識」に対して、それを批判する感覚を養うことが天皇のフィリピン訪問に対しても問われることになる、と語った。

明治民法と
天皇制の関係
次に子ども教育宝仙大学元教員の池田祥子さん(教育学)が「戦後の象徴天皇制と結婚・家族制度の崩壊――人権・民主主義の絶えざる問い返しの中で」と題して報告。
池田さんは、最高裁大法廷での「夫婦同姓」が違憲ではないという判決(一二月一六日)を軸に問題提起した。
「民主党政権時代に提起された『民法改正案』については期待する向きもあったが、その後国会では誰も問題にしていない。メディアのアンケート調査でも問題の核心は明らかにされなかった。『姓を変えるのは不便』という個人的理由によるものが多かった。しかしそれが明治民法の継承であって、男系的イエ制度に基づいているという批判がない。この制度は明治半ばに創作された男系継承原理による天皇制と一体のものだ」。
「天皇制を前提に日本の家族制度ができている。大法廷の最高裁判事の一五人中一〇人が違憲ではないと判断したが、それは家族制度がつくられた歴史を捨象するものだ。憲法の男女平等規定と民法のイエ規定は矛盾している。明治民法の規定では結婚は男のイエに入ることを前提にしている。戦後の民法も明治憲法・民法からつないだもので、世襲・男系という明治になって創作された天皇制とイエ制度に基づくものだが、いまだにその議論はタブーだ」。
一方、同最高裁大法廷は「離婚した女性は六カ月間再婚できない」とした民法七三三条の規定については「一〇〇日を超えて再婚を禁止するのは違憲」という判決を下した。これについて明治民法は「長子・男子相続」という観点から「父」を確定することを規定したものであり、それは「貞節」や「姦通罪」という家父長制理念にのっとったものであることを明確にすべきである、と池田さんは訴えた。

なぜ改憲が
悲願なのか
三人目の提起は反天連の天野恵一さん。天野さんは、戦争犯罪における「悪」の象徴が、天皇ではなくヒトラーとされてきたことの意味合いから問題提起。
安倍政権の「積極的平和主義」が突然現れてきたわけではない。「七〇年談話」を仕組んだ安倍政権のブレーンである北岡伸一と安倍の思想はバッティングしたものであるが、共存もしている。歴史的に見れば安倍と明仁天皇は初めから「和解」していると言ってよい、と天野さんは語る。
日本は「無条件降伏」したが、敗戦後の日本は残った日本の支配者と「占領軍が一緒に作った国」であり、帝国憲法から日本国憲法への憲法原理の転換を「八月革命説」(ポツダム宣言の受諾によって、天皇主権の「大日本帝国憲法」の天皇主権原理は破棄され、国民主権原理に置きかえられたとする丸山真男、宮沢俊義の仮説。憲法学上はそれが通説となっている)で合理化したのが戦後日本のあり方だったことを天野さんはあらためて強調した。そこに「象徴天皇制」の導入という特殊でグロテスクな戦後国家のあり方が表現されているのであり、憲法三原則(国民主権、基本的人権、平和主義)とは実は「象徴天皇制」を含めた「憲法四原則」であると、天野さんは指摘した。
その意味で、天野さんの提起は「日本国憲法」の下での戦後国家から、安倍政権の「戦争国家」が生み出されてきた根拠をあらためてえぐり出すものであった。同時にそれは、自民党にとってなぜ改憲が結党以来の悲願であるのかをえぐりだす作業でもある。
この三人の提起にもとづいて、今井一氏など一部の人びとから出されている「新九条論」(九条を改訂し個別的自衛権を認めた上で、集団的自衛権の行使は明示的に禁止する)などへの質問と批判が行われた。
(K) 

12.9

戦争法違憲訴訟スタート集会

海外で戦争する国家にNO!

私たち一人ひとりが主権行使

 【大阪】「戦争法」違憲訴訟に向けた、集団的自衛権違憲訴訟の会主催の集会が一二月九日、エルおおさかで開かれ、一〇〇人を超える市民が参加した。
司会の服部良一さん(集団的自衛権違憲訴訟の会共同代表)が、開会あいさつで戦争法違憲訴訟に向けた全国的な動きを説明し、一六年三月二九日に「戦争法」が施行された後に予想される事態について述べ、「政府は、来年参議院選挙後まで駆けつけ警護などはしないといっているが、戦闘地域で武器を使用するのだから、何がおきるかわからない。全国の動きに合わせ五月中には訴訟を提起したいと考えている」と述べた。
続いて半田 滋さん(東京新聞論説兼編集委員)が「日本は戦争するのか−集団的自衛権と自衛隊」と題して講演をした。(講演要旨別掲)

民事の差し止め
訴訟と国賠訴訟
次に冠木克彦弁護士(集団的自衛権違憲訴訟の会共同代表)が、訴訟に向けた説明をした。
「昨年七月の閣議決定から始まり、どのようなことがおきたのか、単に裁判用の趣意書ではなく、事実をきちんと書きたい。『戦争法』は、専守防衛の一線を越え、海外で武力行使へ転換した。立憲主義を破壊し、ソフトクーデターによって憲法と異なる別の戦争国家がつくられたことを意味する。国民の憲法制定権は侵害された。これを取り戻すことは、当然の権利である」。
「安倍は今年四月、米国での歓迎会でダイアナ・ロスの恋歌を引用し、『あなたが私を必要とするなら、いつでもあなたの下にかけつけます』とスピーチした。屈辱的だ。侵害される権利として、派遣される自衛隊員の場合は明確だが、一般国民としても、憲法前文にあるように、平和の内に生存する権利、戦争に荷担しない権利があると思う。今までは、国民の中にそれほどの危機感はなかった。しかし海外武力行使となると話が違ってくる。上官の命令で武力行使をし相手が死んだらどうなるのか。軍法をつくらなければ対応できない。そのようにして次第に戦争国家へと変貌していく。訴訟の形としては、民事の差し止め訴訟と国賠訴訟をやりたい。主権の行使としての裁判だ。腰を落ち着けてやっていきたい」。

よびかけ人か
らのアピール
西谷文和さん(フリー・ジャーナリスト)
西谷さんはイラクから帰国したばかりで、なまのイラク情報をビデオで報告した。
「フランスのテロの直後にイラクに行った。ロシアがカスピ海からミサイルを撃つので帰りの飛行機が飛ばなくなった。アレッポで空爆の取材をした。最近のミサイルはものすごく強烈なので、イスラム国の兵士が四,五人団地に住んでいたとすると、団地まるごと破壊する。空爆は一回一億円だ」。
「クルド人のペシュメルガ部隊を取材した。武器はどこから入っているかと聞くと、米英仏からも入っているが、主に独とイタリアから入っている。独とイタリアは空爆をしていないので、代わりに武器をクルドにわたしている。クルド人部隊が守っているのはキルクーク油田で、民家は守っていない。ISが攻撃するのも油田だ。石油と武器販売が戦争の裏にある。NATOも地上軍を投入する準備をしているので、地上軍はクルド人が行く。ISはイラク・シリア人。同じアラブ人同士の戦争だ。仕掛け爆弾を取り除く金属探知機は独製。ニュージーランド、オーストラリア、イタリア、独などの軍人や退役軍人(軍事会社)が教えている。後は、一五日のABC番組キャストを観てほしい」。

 泥憲和さん(少年自衛官を経てホーク地対空ミサイル部隊の元隊員)
「自衛隊員の中で安保法制はどのように受け止められているか聞かれるが、自衛隊から指示が出ているらしくて、同期生が電話に出てくれない。見るところ、一般隊員はあまり気にしていない。いくらイヤでも命令されればやらなければいけないと思っている。それに、断っても別の誰かにまわされるのだからと思っている。でも、幹部は違う。高級幹部の会議資料が共産党に漏れたことからみて、内部には反発もあるのだろう。低強度戦争(テロとの戦い)の目的は、米国の国益のためと米軍の教科書には書いてある。どこまでやれば勝利なのかの基準がないとある。ある国の反乱支援のため米軍はテロリストを育成している」。
「PKOの駆けつけ警護では、任務遂行のために武器使用が許される。住民保護や文民保護が目的だ。ところが事情は複雑だ。PKO部隊は、入る国の政府の承認の下に活動する。しかし、政府軍や反政府軍が戦争する。その実態は部族紛争だ。政府軍、反政府軍の両方から住民を守るという中立性はPKO部隊にはない。PKOに関わってきた諸国はPKOから手を引きつつある。そんな中で、日本がPKOの駆け付け警護をやろうとしている。なのに、今安倍政権を支持する。それは、国民の中に生存の恐怖があるのではないか。この恐怖感情をどうにかしないことには、世の中変わらない。実態を丁寧に知らせていって、理解を広げていこう」。   (T・T)

半田滋さんの講演から

安倍改憲戦略の行方

東アジアの軍拡止めよう

日本は戦争
するのか?
安倍は、なぜ改憲をしたいのか。祖父の考えを踏襲し、日本の対米自立を果たすため?。
しかし、実際にやっていることは米国に日本を差し出すことではないのか。安倍はなぜ集団的自衛権を行使したいのか。
@『この国を守る』ため。米軍基地の水光熱費、米軍基地を維持するための雑役の人件費、基地の騒音損害賠償費で、年間六四〇〇億円が日本の税金から支出されている。この部分は、安保条約には入っていない。
A『尖閣防衛という外務省の思惑』。二〇一二年の尖閣諸島国有化以来、中国の防空識別圈が設定されたりし、緊張が増してきた。中国との対立が激化したとき、間違いなく米国が助けてくれるには、安保条約五条(武力攻撃等共通の敵に対処)だけでは不安なのだ。
B『米国のアーミテージレポートの影響』。彼は集団的自衛権の水先案内人だ。ホルムズ海峡に自衛隊は出るべきだとせき立てた。彼は、一民間人で、猟官運動をしているに過ぎない。
第二次安倍内閣の時は、円安を誘導し、日銀総裁、内閣法制局長官、NHK会長など内閣ができる人事はすべてやった。北岡伸一はご褒美にJICA(国際協力機構)の理事長になった。必要なことは何でも閣議決定した。
選挙が近づくと経済政策を掲げ、終わると安保にもどる。この繰り返しだ。

閣議優先・国会
軽視という手口
独裁に等しい閣議優先で国会を軽視し、防衛計画大綱・中期防衛力整備計画・集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、国会審議では、あり得ない事例を見せて国民をトリックにかける手口。日米ガイドラインを先行し、安保法制は後回し。閣僚だけで決めて既成事実を積み重ねていく。
一五年四月の安倍訪米では、マイナス評価を払拭するため、手土産としてガイドライン改定とTPP支援を持って行った。TPPで主要五品目は惨敗だ。その上に、米は余っているといいながら七七万トンの米を無関税で輸入する。先進国で、日本ぐらい食糧自給率が低い(四〇%を切る)国はない。米国は一〇〇%超、西欧は八〇%、イギリスだって七〇%だ。

ホルムズ海峡
防衛という嘘
安倍は「二〇一六年夏の参議院選で三分の二議席を確保し、一七年の憲法改正国民投票では、財政規律・環境権と合わせ緊急事態条項を加憲する。一八年は第二回目の国民投票で憲法九条を改正する」スケジュールを描いている。元々、前回の総選挙の公約二五〇項目の中で、安保法制は二四〇番目だった。
憲法無視の安保法制だが、ホルムズ海峡の機雷除去がはいつの間にかいわれなくなった。日本は二〇〇日以上のエネルギー備蓄があるし、消費エネルギーとしては石油よりもLNGガスの方が多く、石油は全体の一三・七%をしめるに過ぎない。しかもイランと米国は核問題で協定が成立した。ホルムズ海峡情勢は、日本の存立危機事態にはなり得ない。

自衛官の家族
が抱く不安感
自衛隊は今後どうなるか。短期的には、自衛隊の海外での駆けつけ警護。中期的には、米軍が空爆をする時の後方支援。米国が地上軍を派遣するとき一緒にいく。イラクでの米軍は砂漠の溶け込むベージュ色の服装で、星条旗はつけていない。しかし、自衛隊の服は緑色の迷彩服で、日の丸も付いていた。自衛隊はわざと砂漠で目立つようにしていた訳だ。
長期的には、自衛隊を海外に出し、国内の防衛が手薄になるとの理由で軍拡をする。それに呼応し中国もベトナムもフィリピン・インドも軍拡をする。アジアは、安倍のいうような平和な日本ではなく、ますます平和ではなくなり、不安定な東アジアになっていく。
参議院選そして衆議院選で逆転しなければいけないが、とにかく愚直に運動するしかない。北海道で自衛隊向け電話相談をしたら、自衛隊員の母や妻からのものが多く、「夫や息子に自衛隊を辞めさせたいが、どうしたらいいのか」だった。とにかく、自衛隊員とも一緒に闘おう。(講演要旨、文責編集部)

 


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