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    かけはし2016.年2月1日号

車壁と直射放水の過剰鎮圧

市民を暴徒へと追いやる

11・14集会参加の市民に向けた不当警備



 11月14日、ソウル鍾路区庁近くのルメイエル・ビル前。68歳のハラボジ(おじいさん)が叩きつけられた。ペク・ナムギ・カトリック農民会・前全国副会長は他の集会参加者たちと共に車壁用の警察車両を引きずり出すために、車両に絡めたロープをしっかりと握った。警察の水大砲(強力な放水車)から水流が降り注がれた。ペクさんの頭を直撃した。警察の9号散水車だった。
 警察の主張によれば、水大砲とペクさんの距離は20m。水流の強さは「2800rpm」の直射砲が発射された。水大砲製造会社の職員だったKさんは「ハンギョレ21」に電話で「水大砲を50m以遠から撃ってもドラム缶の1つぐらいは吹き飛ばす水準だ。その距離から3000rpm近い水圧で人々に水流を直射すれば、水大砲は殺傷用の武器になる」と語った。警察が定めた基準2000rpm(20m以内)をもはるかに超える水準だ。「胸部より下の部位を狙わなければならない」とする警察の指針も、まるで形なしだった。
 チョ・ヨンソン民主社会のための弁護士の会(民弁)所属弁護士は「1987年にイ・ハニョル烈士が直撃催涙弾を受けて亡くなった記憶が思い浮かぶ、ギョッとする場面だった。警告放送も聞かれなかったし、予備的噴射の発表もなかった。散水車の運営指針で見れば、安全を考慮して胸以下の部位に散布しなければならないのに、ペクさんは頭を直撃された」と語った。
 
民衆総決起「合法
不法」の論難
 (教科書国定化反対、コメ輸入反対、青年失業問題など掲げた)この日の集会は、民主労総をはじめ全国農民会総連盟、全国貧民連帯など53の団体で構成された「民衆総決起闘争本部」(闘争本部)が主導した。デモ鎮圧の過程でペクさんが致命的な負傷を被ったけれども、警察は「民衆総決起」を不法な暴力デモと規定し連日、強硬対応の方針を出していた。ペクさんが受けた被害も、「不法デモの過程でもたらされた偶発的事故」だとの立場を固守している。
 不法集会の論難は、警察の側が闘争本部が出した集会・行進の申告に対して「禁止」を通告することから始まった。闘争本部が出した行進申告書を見ると、11月14日に光化門〜清雲洞事務所(青瓦台近隣・歩道利用)まで3万人が行進するなど、世宗路周辺の4カ所についての行進申告を出した。けれども警察はこの地域が「深刻な交通の不便を与えかねない主要道路」だという点を禁止の理由として出した。
 警察は集会当日、闘争本部側がこの地域で不法行進を試みていたし、それ以降も警察と対峙してデモを繰り広げる様相へと性格が変質したと主張した。ク・ウンス・ソウル地方警察庁長は事件発生翌日の11月15日「民衆総決起は不法暴力集会と判断し、責任者を司法処理するだろう。警察の散水車使用は規定に違反していないとの報告を受けた」と語った。警察の外部からもファン・ギョアン国務総理(首相)が、「今回の不法集団行動と暴力行為の責任者に対して『不法必罰』の原則にもとづき断固として対処することを望む」(11月17日)と注文するかと思えば、キム・スナム警察総長候補者は11月19日の人事聴聞会で「今回のデモに関与した者と経緯、背後関係について徹底した捜査がなされるようにしていく」と語るなど、強硬対応の方針を明らかにしている。
 法曹界では、警察が明確な根拠もなしに基本権である集会の自由を阻む「暴力」を、何よりもまず市民らに対して振るったのだとの見解が出てきている。クォン・ヨングク民弁所属弁護士は「いつからか、青瓦台に向かうすべての道は警察が封じ込め、絶対的な集会・デモ禁止の区域に換えられて運営されている。憲法や法律を完全に無視するもの」だと主張した。
 先に原因を作った政府の責任が大きいとの意見もある。ハン・サンヒ建国大法学専門学院教授は「警察が今回の集会を事前に不法だと規定し、申告もキチンと受けずに集会の自由を遮断した。先に国民の基本権を制限する暴力を行使したのだから、集会参加者たちの行動は正当防衛にあたる」と語った。ハン教授は今回の民衆総決起集会に対する過剰鎮圧などに抗議して11月18日、警察庁の人権委員職を自主的に辞任した。彼は「未申告集会を行った場合『集会の主権者』側が処罰されることはあり得るが、憲法が定めた権利である『集会』自体を不法だと見ることはできない」とし、「警察が憲法の原則を守っておらず、マニュアルにもない過剰鎮圧まで行ったもの」だと付け加えた。

憲裁が禁じた「車壁」またぞろ登場
この日、光化門から青瓦台に向かう路地という路地を阻んだ『車壁(警察車両によるバリケード)の設置』は、もう1つの論難のタネだ。カン・シンミョン警察庁長は11月12日、記者懇談会で「集会参加者たちが、定められた範囲を超えて道路を占拠し、光化門広場の側に行進すれば車壁を設置する」と公言した。同じ日、ク・ウンス・ソウル警察庁長も「デモ参加率が高く光化門、清渓川側に移動する場合、車壁を設置せざるをえない」と語った。集会が行われる2日前のことだ。
実際に「民衆総決起」人権侵害監視団が写真とともに提出した資料を見ると、警察は11月14日午後2時から清渓広場の一部に車壁を設置した。集会が、まだ本格化する前だ。1時間後には青瓦台方向に進む道路を遮断する車壁が並び立った。あらかじめ交通の障害が憂慮されるとの名分によって市民の行進を不法だと規定しておき、世宗路のどまん中に車壁を立て、道路を遮断した格好となった。午後5時にさしかかるとともに、一部の集会参加者が、車壁を引きずり出すために警察車両にロープを結びつけた。それ以降、警察が水大砲で対応し始めた。
警察の車壁設置について2011年、憲法裁判所が「不法・暴力集会やデモになる可能性があるとしたとしても、これを防止するための措置は個別的・具体的状況に従った必要最小限の範囲においてなされなければならない」とし、違憲の決定を下した経過がある。当時の憲裁は車壁の設置が、急迫にして明白、かつ重大な危険がある場合にのみ車壁の設置が可能となるように制限した。
パク・チュミン民弁所属弁護士は「集会の参加者たちを犯罪者だと予断して車壁を設置したことが、衝突の原因を提供したわけだ」と語った。彼は「不法なデモなのか、合法デモなのか」という論難は、警察側が自らの論理を貫徹しようとする「フレーム」であるにすぎない。国際的事例を見ても、政府は集会の不法性の有無に関係なく、すべての集会が平和的に進行するように保障する義務がある。今回の集会は政府が事前に不法だと規定して対処するとともに、物理的衝突が始まったのだ。車壁に抵抗している市民たちを暴徒のように追いやったのだ。

人を標的とす
る直射放水
この日の午後5時頃、集会参加者たちが青瓦台方面に進出を試みた。直ちに警察が水大砲(散水車)を放つことによって、とんでもないことが起きた。警察は散水車を「特殊用車両として群衆の解散を目的に高圧の水流を噴射する装備」と規定している。水を噴き出す方法は全部で4つだ。少量を飛び散らす「警告散水」、夕立の形態の水流が左右に行き来するように発射する「分散散水」、放射線形態の水流を空中に向かって発射する「曲線放水」、一直線でデモ隊に到達させる「直射散水」などだ。
問題は直射散水だ。2011年11月にも韓米自由貿易協定(FTA)反対集会で、パク・ヒジンさんが警察が撃った水大砲の直射散水に遭い、鼓膜が破れた。当時、イ・ガンシル牧師
(前韓国進歩連帯共同代表)も脳震盪の負傷を被った。これらの人々が国家を相手として損害賠償を提起し勝訴したのに続き、水大砲の直射使用に関連する違憲訴訟を憲法裁判所に出した。
昨年6月、憲法裁判所は「水大砲の発射行為は他人の法益や公共の安寧秩序に対して直接的かつ明白な危険をもたらす集会やデモに対して、具体的な解散の事由を告知し、最小限の範囲内でなされなければならない」としつつ、「近距離からの水大砲直射散水という基本権の侵害が繰り返される可能性があるとは考えがたい」として、これを却下した。憲法裁判所が水大砲の直射散水に事実上「免罪符」を与えてからわずか1年余にして被害強度の一層高くなった状態で、ペクさんの事件が再発したのだ。保険医療団体連合の診療支援チームによれば、今回の民衆総決起集会の際、ペクさんのほかにも20歳の学生が水大砲を受けて過呼吸・恐慌の症状を示したのをはじめ、水大砲の直射・乱射・散布などによって皮膚や目を痛めた人が多かった。

警察は照準は
ないと言うが
さらに大きな問題は、警察が水大砲を直射散水する過程で「照準射撃」をしているものと思われる点だ。警察は公式的に「照準射撃はない」との立場だ。ク・ウンス・ソウル警察庁長は11月16日の記者懇談会で「(水大砲は)不法行動をしている一団の群れを解散させるために群れに向けて射っているのだ。ペクさんの事故は、たまたま散水しているうちに負傷者が生じたものであり、『ペクさんに向けて何度もねらい撃ちをしたのか』と聞かれれば、何とももどかしい。水大砲はピストルのように狙って撃つものではない」と語った。
けれどもペクさんの事故当時の動画を見ると、水大砲がペクさんの頭部を叩いて以降、20秒余り集中的に撃たれるのが見てとれる。インターネットの動画コミュニティー・ユーチューブなどで「国民総決起、水大砲被害の事例」を見ると、もう1人の集会参加者も警察の散水車から10mほどにすぎない距離から水大砲を受け、失神した。車壁の近くだとは言うものの、別の群れはいなかった。この被害者が歩道側に護送されると、後を水流が追いかけてきてもいる。
KBSの取材陣と思われる市民が、水大砲から20mの距離で直射散水を阻んでいる場面が写真に撮られたりもした。警察の車壁の近くでデモ途中に腕を負傷した大学生チェ某さんも、警察から「水大砲の照準射撃」を受けたようだと語った。彼は「ハンギョレ21」の取材に対し、「車壁の近くで腕を負傷した後、救急車が来たので乗りに行こうとしている間に、水大砲が私の方に向かって発射された。救急車まで歩いていく間、ずっと水大砲の射撃を受け、救急車の中にまで水が撃ちこまれた。ドアを閉めた後にも、ひとしきり車両の外部に水流が激しくぶつあたる音を聞いた。午後6時を過ぎたばかりの時間なので、対象を区分けして見るのが難しい時間でもなかった」と語った。

特別な訓練を受
ける放水操作員
水大砲の直射散水に伴う被害についてク・ウンス・ソウル警察庁長は「(水大砲の操作要員が)散水車内から15×11pのカメラ画面を通じて現場に散水する。故意でペクさんに散水したと考えることはできない」と語った。ペクさんの事件をはじめ、水大砲の操作要員が被害者を直接、見ることはできなかったし、照準射撃もなかったという趣旨だ。ク庁長は、さらに「現場指揮者である機動団長や装備係長が車壁の上下を行き来している最中で、散水中断の指示ができなかった」とも語った。
けれども水大砲製造会社サービス・チームの職員だったKさんは、警察の「照準射撃能力」を次のように説明した。「10年余り水大砲の車両を修理したので、私はよく分かる。ソウル・新堂洞のソウル地方警察庁機動本部でも何度も装備を試演するのを見た。散水車からおよそ45m離れた所に空のドラム缶を置き、何度も照準を合わせた後、ドラム缶を倒すのを見たことがある」。
警察が被害者のペクさんに気が付かなかったという主張についても、彼は「車両の外部に、遠くにいる人物や事物を引き寄せることができるようにズーム機能を備えたカメラが3台も付いている。内部のモニターも一般の閉回路TV(CCTV)よりもはるかにいいレベルだ。夜間の状況に備えて車両の外部にサーチライト機能もあるのに、20m先に人がいるかは分からなかったというのは信じがたい」と語った。
警察の「散水車使用時の注意事項」には「直射をする際には安全を考慮し、胸部以下の部位を狙って使用する」となっている。これまた「照準射撃」が可能なことを前提として指針を作ったものと解くことができる。その上、警察の水大砲操作要員は警察の中でも特別な訓練と待遇を受けている専門要員だ。散水車1台あたりに組長、組員、運転など常設要員3人と補助要員が配置される。

不特定個人を
狙い撃つ戦略
特に操作要員は「専門的知識を要する者」で、散水車教育を履修者や特殊装備関連資格証の所持者または専門知識の保育者を優先発令するようになっている。3カ月に1回以上、散水車の集中教育・訓練を受け、操作要員と運用指揮官は2カ月に1回以上、散水車運用の合同訓練をするようになっている。警察の散水車教育・訓練指針は、これらの要員が「散水車の操作要領と実射(実際の射撃)練習を繰り返し訓練し、実際の状況に備えなければならない」と書いている。警察は11月20日、イム・スギョン新政治民主連合議員が「ペク・ナムキさんの事件に関連する散水車の搭乗者、運用者、指揮部と交わした通信内訳の一切」についての資料を要求したのに対して、「無線通信の内訳を録音していない」と答弁した。
警察の水大砲が群衆と離れていた状態の個人をターゲットにした点も論難のタネだ。当初、水大砲は個人ではなく「デモ隊」に向けて撃つようになっている。散水車運営指針は直射散水について「水流が一直線の形態でデモ隊に到達するように散水する方法」だと規定している。
けれども実際の集会現場では不特定の諸個人を相手として攻撃的な散水が行われているケースが、しばしばだ。今回の集会の過程で現れた水大砲の直射散水の被害事例を見ても、警察の車壁の前に出て1人で離れていた集会参加者たちが主に負傷した。相対的に反撃の危険が少ない不特定の個人を狙った、いわゆる「ソフト・ターゲット」戦略ではないのかという指摘が出てくる。
オ・チャンイク人権連帯事務局長は「水大砲の運営目的がデモ『群衆』の解散であるのに、個人に撃っていること自体が規程違反だ。特に抵抗能力が弱い個人に、武器に近い道具によって攻撃的な鎮圧をしている。デモ隊全体に恐怖心を刺激しようとしているのではないのかが疑われるところだ。警察が主張している水大砲の運営目的に反するばかりか、この過程で水大砲の運営指針も守られていない」と語った。

市民たちを萎縮
させることが狙い
警察が今回の集会で不法行為者とみなした市民たちに民事訴訟をかけるためにタスクフォース・チーム(特殊任務を帯びた機動部隊)を編成したのも似たような脈絡だ。カン・シンミョン警察庁長は民衆総決起集会5日後の11月19日、「11月14日の不法集会・デモに対する司法処理と併行して民事上の責任を問うために、警察庁レベルで弁護士資格を有する人間で構成された民事訴訟準備チーム(TF)を構成する」と語った。当時、同集会のせいで113人の警察官が傷害を受け、警察車両50台が破損するなど警察の被害が甚大で、デモの主導者や暴力行為者、関係団体を相手として民事上の損害賠償を請求していくというのだ。ノ・ギュホ国際改革法務担当官(総警)をチーム長として、警査の中に弁護士資格を有する15人でチームを立ちあげた。厳格な規則や懲罰を予告し、威嚇的雰囲気を作り出した後、相手が意思の表現や特定活動への参加を自己検閲するようにさせる一種の「萎縮効果」を狙ったものと見られる。
パク・ジュミン民弁弁護士は「国内で、警察が集会参加者たちを相手に民事訴訟のテスクフォース・チームを編成したのは初めてだと思う。米国で『戦略的封鎖訴訟』と呼ばれているものだ。実際に訴訟の効用よりは市民たちの意思表現を萎縮させようとするものだ。また12月5日、市民社会団体が大規模集会を予定しているだけに、これを事前に萎縮させるとの意図も込められたようだ」と語った。(「ハンギョレ21」第1088号、15年11月30日付、ホン・ソッチェ記者)



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