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    かけはし2016.年3月14日号

欧州はクルドへの攻撃を放置


中東

在仏クルド民主会議共同議長に聞く

クルドをめぐる議論の混乱の背後にエルドアン・トルコ大統領の野心

人々に極度の苦難を生み出してきたシリアの内戦は今、極めて不安定ながらも辛うじて休戦に入った。その中でメディアでは、クルドの人々の位置取りがさまざまに取り沙汰されている。このクルドの人々の闘いを知る一助として、以下に、CKDF(在仏クルド民主会議)の共同議長、カミーユ・ランクリケに対する、トルコとシリアにおけるクルド人民の現状についてのインタビューを紹介する。(「かけはし」編集部)

政治的地歩確立
トルコでは前進


――在仏クルド民主会議とはどのような組織なのか紹介してくれませんか?

 それは、フランス全土にある二六のセンター(ストラスブール、マルセーユ、トゥルーズ……)で構成されている連合組織である。ブリュッセルに本部があるKCDE(ヨーロッパ・クルド民主会議連合)に所属する同じタイプの組織がドイツ、ベルギー、オーストリア……という形で全ヨーロッパに存在している。このヨーロッパ連合の組織は、主として、シリア出身者だけでなく、イラン、イラク、トルコ出身のクルド人を結集している。これらのセンターは、文化的、社会的、政治的活動を展開している。

――現状を教えて下さい。

 昨年三月以降、トルコのエルドアン大統領は、オジャラン(クルド労働者党指導者)やその他さまざまな交渉相手との和平や対話のプロセスをつぶしてしてしまった。六月七日の選挙では、HDP(国民民主主義党)が、クルド系政党としてははじめて一〇%の最低設定ラインを超えて一四%の得票率を得た。国民議会でも八〇議席を獲得したのである。
すべてのクルド人はこれによってクルド問題が政治的に解決されると期待した。HDPは、クルド系の人々を基盤にしているが、アルメニア系の人々やアッシュリア系の人々やホモセクシュアル団体などそれ以外のマイノリティの人々もこの党を構成している。HDPは、トルコの古典的政党の中で位置を占めることができないでいるさまざまな左翼の運動、とりわけCHP(共和党)の問題提起に応えようとするものである。
エルドアン大統領は、HDPの選挙でのこの成功を受入れず、HDPの事務所に対する襲撃が増大した。
七月二〇日、シリアとの国境に近いスルチでテロ攻撃があり、クルド人民兵部隊がイスラム国から奪還してシリア内にあるコバニの町(シリアの地名としてはアインアルアラブ)の復興活動に参加するためにスルチに来ていた社会主義派の若者を含む三三人が殺害された。七月二四日、トルコ国家は、いわゆるイスラム国への「攻撃」に参加するとの決定を行った。それから一週間後、トルコは、イラク北部のクルド人ゲリラに対して一〇〇回もの攻撃を行ったが、シリアや砂漠地帯のイスラム国の地域に対する攻撃はわずか三回にとどまった。

――けれども、HDPは、ごく短期間でしたが、暫定政府に入閣していますよね?

 HDPは、与党のAKP(公正発展党)との連立政権を望んでいなかったが、実際には暫定政府への入閣を受け入れた。議員のうちの二人が閣僚になったが、一カ月後には辞任した。HDPの四〇〇以上の地区事務所が攻撃を受け、多くの逮捕が行われた。七人の市長や議員が逮捕、尋問、職務停止の弾圧を受け、今なお拘留されている。
一〇月一〇日には、アンカラで、市民団体や進歩的勢力や労働組合が組織した和平を求める集会が襲撃され、一二〇人以上が死亡した。
アンカラのこの襲撃を受けて、HDPはもはや集会を開かないという決定を行った。これは、明確に一一月の選挙戦を考慮して、決められたものであり、人々の生命を危険にさらさないための措置であった。HDPは、トルコのマスコミでは完全に消えてしまった。国営テレビは、各政党に対して選挙のための政見放送に同一時間を割り当てなければならないとみなされているのに、HDPに割り当てられたのは一八分間だけだった。それに対して、与党のAKPには五八時間が割り当てられた……。一一月一日の総選挙では、HDPは全国で約一一%の得票率を得た。われわれは、不正選挙や内戦状態や脅しなどを考えると、この選挙戦は成功だったと評価している。

トルコ政府はク
ルド弾圧を選択


――トルコのクルディスタン地域の情勢はどうなのでしょう?

 ディヤルバクル県弁護士会会長が白昼、殺害されたばかりだ。彼は、PKK(クルド労働者党)がテロ組織でないとあえて断言したために殺された。いくつかの町では夜間外出禁止令が出されている。若者たちは、警察官が地区に、すなわち、町全体に入ってくるのを阻止するために、バリケードを築き、塹壕を掘っている。われわれが目撃している事態というのは、これらすべての地区がトルコ軍によって包囲されているということだが、これは全面的な攻撃ではないと私は思っている。一般市民の抵抗が非常に強く、何千人もの人々が日常的にデモを行っている。エルドアンは、オスマン・トルコ帝国のかつての皇帝をまねたトルコの「強い人物」になるという大統領制度改革をもくろんでいる。HDPがこの計画を破綻させることを彼は許せないのだ。しかも、トルコ軍は、シズレの町に介入した時、オスマン・トルコの賛歌を流しさえしたのだった。

――(クルド労働者党の)オジャランとの間で開始した和平交渉をエルドアンはなぜ中止してしまったのでしょう?

 終身大統領制にしようとするエルドアンの計画にHDPが反対するので、彼の豹変が始まったのだ。HDPは、支持率を高め、独自の党として登場し、一〇%の最低ラインを超えるようになり、彼のナンバーワンの敵になったからだ。「クルド人の反対を打ち砕いてみせる」とエルドアンは言っている。

シリアでは民主
勢力との協調も


――ここまでは基本的にトルコ国内の情勢を取り上げて来たのですが、シリアの情勢はどうなっているのでしょう?

 シリアのクルド人民はイスラム国に反対する自らの闘いを続けている。コバニが昨年一月に解放されたが、イスラム国からの脅威は今なおいたる所に存在している。イスラム国と闘うための、シリア内のアラブ人、アルメニア系、アッシリア・カルデア系の人々の民主勢力との協調がなされている。クルド人が多数派であるか、あるいはアラブ人が多数派である地域では、ASL(自由シリア軍)の一部は、コバニでクルド側の陣営に加わったが、別の勢力はクルド人に反対し、アル=ヌスラ戦線(アルカイダ系の組織)の陣営についた(クルド勢力は無神論者、共産主義者であり、不信心者だからというわけである)。トルコとサウジアラビアによって支援されているシリア国民評議会が存在するが、この組織はクルド人からはひどく嫌われている。現在、シリア民主勢力戦線という新しい結集の構想が練られているところだ。

僅かな勢力の
みが連帯活動

――フランス政府の態度はどうなのでしょう? クルドのロジャヴァ計画(クルド人自治政府に向けた計画)の交渉はなされているのでしょうか?

――それは、武器の提供と同様に、クルド民主統一党との間で討論しなければならない問題だ。逆に、フランスのヴァルス首相は、ファイルS(国家の安全を脅かす危険性がある人物一覧のファイル)の中にはクルド労働者党の党員も含まれていると語る始末である。他方、テレビではクルド地域の多くの地区や町が銃撃や爆撃によって破壊されていることが報じられているのに、クルド市民に対するこのような攻撃に反対しようとする反応がヨーロッパ諸国ではまったく見られない。同時に、安全のために自分たちの家や町を逃れ、避難しなければならない多くの人々もいる。トルコでは、これほどの人々の移住は、一九九〇年代をも含めて、かつてなかった規模になっている。

――われわれはフランスでどのような連帯を行うことができるのでしょう?

 とりわけ、フランスのトゥルーズではコバニの復興のための資金カンパが自治体単位でも個人でも行われているが、フランス政府からは政治的であれ、物質的であれ、何の援助も来ていない。フランス共産党とこの党が首長となっている自治体、MRAP(人種差別主義と反ユダヤ主義に反対し、民族間の友愛を支持する運動)、NPA(反資本主義新党)、アナーキスト、クルド連帯全国共闘会議、などがとりわけ政治的面でクルドの大義を支援してくれている。
▼『ランティ・カピタリスト』(反資本主義新党=NPA機関紙三一八号、二〇一六年一月七日)

―欧州には一つの階級戦争がある―

EUへの市民的不服従へ

5月28日に全欧州行動を

プランB欧州

 この二月二一日、マドリードで「プランB欧州」という会合が開かれ以下に紹介する宣言が発表された。もう一つの欧州をめざす市民的不服従と民主的反乱を全欧州の民衆に呼びかけるものだ。この会合の意義については、スペインのミゲル・ウルバン・クレスポによる簡潔な報告を追って紹介したい。(「かけはし」編集部)

 グローバルな経済危機の始まり以来、新たな運動が世界中で巻き起こってきた。
それは、真の民主主義と実のある参加を求める運動、民衆の自らのための決定権を求め、政策決定の中で反映され尊重される彼らの権限が確保されることを求め、多数に背を向け特権的少数に利益となっている一つのシステムと衝突する本来的任務を要求する運動だ。それは、民主主義の本質的な一部分として、欧州構想の心臓部に、諸々の人権、市民的、社会的、経済的、文化的、そして民主的な諸権利を置く運動だ。
二〇一一年以来、欧州の諸々の街頭、広場、職場は、諸権利を求める民主的諸闘争、社会的かつ政治的光景を揺るがし、そして形作ってきた諸闘争のゆりかごとなってきた。
欧州の諸運動は、今日EUの骨組みとなっている諸機構と諸政策からなる合成体と衝突してきた。これらの諸機構に深くはらまれた反民主的本性は、それらの当初からの、また現在の目的を反映している。その目的とは、企業と金融の部門の利益、また今日の寡頭支配層を構成するさまざまなエリートたちの利益に奉仕することだ。
それらは、欧州市民の視野の外で、闇の中で不透明さの中で活動している。
それらは、ロビイストの諸軍隊を展開している諸企業と金融諸企業にこびへつらっている。それらは、欧州民衆の利益という名の下に、しかしそれに敵対する諸条約を交渉中だ。
われわれは、それらがわれわれの暮らしに苦しみを与える諸決定にどのようにして達しているか、それに光を当てる透明性を求める。
われわれは、あらゆる点でほとんど非現実的かつ不合理な主張、欧州はその公的債務と私的債務を返済できるという主張に異議を突き付ける。
われわれは、債務を監査し、正統性を欠き不法な債務の返済を拒否する民衆の主権をはっきり主張する。
欧州のエスタブリッシュメントたち、ブリュッセルとフランクフルト(ブリュッセルにはEUの中枢機関、フランクフルトには欧州中央銀行がある:訳者)の諸機関は、僅かの者たちのために数兆ユーロを費消する一方で、多数に対しては、緊縮を説教している。欧州には単なる「緊縮」ではなく、社会と諸国家の残りから自分たち自身へ所得と富を再配分しようと決意した支配的エリートどもによる、共有財並びにわれわれの諸権利の盗み取りを原因とする、一つの階級戦争があるのだ。
彼らのモデルは、巨大な失業と不安定性を内容とするモデルであり、それが、貧困を生み出し、不平等を高め、労働者たちを互いに敵対するように押しやり、女性に対する暴力を永続させ、環境を荒廃させ、社会組織を破壊している。それは、社会的福祉国家と社会的公正に敵対するモデルだ。
われわれはもはや、どのような民主的統制からも外れている、そうした単一通貨と引き換えにするこれ以上の犠牲はいかなるものも受け入れない。民衆に敵対する武器としてユーロあるいは流動性を利用することからわが民衆を守るために、政府にあるときは、われわれに力を与えことになる、そうした一つのプランを固めることは、われわれの義務であるとともに責任でもある。われわれは、主権をもつ民衆と鮮明な民主的な権限付与に敵対した昨年夏のクーデターの繰り返しを容認しないだろう。
われわれは、金融システムに対する民主的な統制、並びにその機能における透明性を要求する。
われわれはECB(欧州中央銀行)、欧州委員会、またIMFの不法かつ非民主的な諸々の行為に抵抗しなければならない。いわゆるユーログループは、われわれの運命を決め、未来の諸世代のいのちを支配する場ではない。
いわゆる境界のない欧州はここまで、あらゆるところで、バルカン半島から大西洋岸まで、壁と電流を通したフェンスを建て続けてきている。われわれは要求する、難民を入れさせろ! 人々が彼らのいのちのために逃げているとき、欧州は、断固として排外主義とレイシズムを拒絶し、単に腕を広げるだけでよいのだ。難民問題は人道の問題であり、われわれはそれについて、軍事化の誤りを明らかにする。すなわちわれわれは、NATOの関与にノーと言う。
欧州は、腐敗と不法な借り入れに結びついていることが判明した、その軍備と防衛支出を抜本的に削減しなければならない。そして、医療、教育、社会保障、司法、文化に関する公的支出を高めなければならない。
民衆の生活諸条件の悪化はまた、自然の破壊および世界中での資源獲得戦争にも結びついている。われわれは、全員にとっての社会的公正を欲するのであれば、生態系の危機とエネルギー危機を扱いそこなってはならない。
欧州の現在の状態を考慮しわれわれは、EU諸機構の毒をはらんだ諸政策、諸協定、あるいはすべての非民主的指令に対する市民的不服従を、さらに支配的エリートたちによるそれらの勝手な解釈替えに対する市民的不服従を呼びかける。われわれは、新たな憲法制定運動と拘束力のある国民投票を通した自己決定を必要としている。われわれは同様に、政府内にあるときには、人びとに対する最低限の民主的義務として、非民主的な指令に対する不服従を確固として確認する。
マドリードでの会合は、欧州における民主主義を求めて闘うための諸提案とさまざまな運動の結集において、前進に向けた一歩となった。われわれは、さまざまな戦術を含んだ諸結論が広範に読まれ、広められ、討論され、磨きをかけられるよう求める。そしてさらなる会合がいくつも欧州中で組織されるよう求める。欧州の人民は、専制に対しいかに反乱するかを知っている。われわれは歴史を通じて、民主主義を獲得し、平等を確立し、われわれの暮らしと諸権利と尊厳を守るために、これまでそれを行ってきたのだ。
マドリード会合は、五月二八日に欧州行動デーを組織するよう提案する。(二〇一六年二月二一日、マドリード)  
 

 


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