もどる

    かけはし2016.年4月4日号

トロイカの底なしの緊縮貫徹圧力を前に


ギリシャ

9月20日から2月4日へ

危機引き起こした者たちに
今度こそ勘定書渡すために

アントニス・ダヴァネロス


 昨年夏のシリザのEUに対する屈服以後、一時的に勢いを失ったかに見えたギリシャの反緊縮の社会的抵抗が再び自立的な活力を取り戻そうとしている。その結果としてシリザ・ANEL連立のチプラス政権も重大な危機に直面し、シリザの左に立つ急進左翼の役割があらためて問われようとしている。以下に、PUとしてシリザから分裂し急進左翼の再建に挑戦している指導的活動家の評価と現情勢への挑戦を紹介する。(「かけはし」編集部)

チプラスによる安定の淡い夢

 二〇一五年九月二〇日の選挙の中でチプラスの参謀は――一人の「指導者」を痛切に必要としていた国内の支配階級と債権者団の惜しみのない支援に基づいて――、彼らの夢が本当に訪れていると理解した。つまり、議会からの民衆連合(PU)排除、ANEL(政府内のシリザに対する少数派連立相手として行動する政党の独立ギリシャ人)の選挙での生き残り、TVパーソナリティであるヴァシリス・レヴェンティスと彼の中道主義連合のようなさまざまな「利用価値のある間抜け」の議会参入、第三次メモランダム反対の社会的怒りの断片化、そして二〇一五年七月二日の国民投票における六二%にのぼる「ノー」投票がつくり出した社会/政治的動力のほぼ縮小、といったことだ。そして最後のものは、九月二〇日の高率の棄権に移し替えられた。
当時多くのアナリストは、チプラスは「覇者」(一種の支配力ある元首)になった、そしてシリザは長期の未来をもつ政党に転換した、と考えた。情勢全体には不安定性を構成するいくつかの要素があると強調したのは、われわれのような僅か――まずそして何よりも、また名誉なことだが、PU指導部を含んで――しかいなかった。
そのいくつかの要素とは以下のようなものだ。
1.九月二〇日のその選挙は一つの鍵をなす要素によって可能になった、ある種の横領だった。そしてその要素とは、第三次メモランダムに付随する具体的な諸方策が選挙時点ではまだ明確にされていなかった、したがってその影響は、投票所に出かけた人びとが評価できるものではなかった、ということだ。
2.シリザ―ANEL政府によって遂行されるはずの同時並行的経済管理の綱領に向けた選挙運動期間中にチプラスが行った約束――メモランダムの影響に対抗するための――は、特に生活諸条件における恐るべき崩壊を原因として、その約束に対する諸々の幻想と並んで、民衆の方向感覚喪失を増幅した。
3.新民主主義(ND)に対する民衆的嫌悪は、マヒモス・マンシオン(首相の公的座席)に有利に作用した。

不安定性の深い闇が今や降下中


しかしながら、こうした全体関係が次の数カ月にわたって変化しようとしていた、ということは明確だった。またわれわれは、チプラスと現財務相であるエウクリデ・ツァカロトスによってブリュッセルで署名された七月一三日の合意が求める実体的諸方策が効果をもち始めればすぐにも、社会的不満の新しい波を予期することができた。これらのうちでもっとも重要なことは、巨額にのぼる年金の削減だ。
われわれはこれに基づいて、われわれは政治的不安定性で特徴づけられると思われる一時期に入りつつある、と確信した。われわれはこの潜在的エネルギーに焦点を合わせ、それが現れるまで長くはないと思われた大規模な社会的かつ政治的な闘争という展望に向けて、一つの路線に基づくわれわれの政治的介入を計画することに着手した。この展望は、シリザ左派が対抗する政治的代表の多数とは正反対の方向に向くものだった。その後五ヵ月も経たない二月に、この評価は一定程度まで、そしてわれわれの予測を超える速度で確証された。
チプラスと彼の幕僚は、彼ら自身が統御不可能な危機、紛れもない崩壊という深刻な危険を前にしていることを、今見出している。レヴェンティスの中道主義連合、ト・ポタミ(ギリシャ語で「川へ」を意味する、一種の中道政党)、さらにおそらくはPASOKを含む、シリザ政府を支持する議会ブロックの「拡大」に関する公然たる論争が今ある。この論争は、ある種の挙国一致政府方式へ保守政党のNDを統合する潜在的可能性、あるいは新たな選挙(一二ヵ月で四回目の!)に向かう潜在的可能性にさえも達し、そのすべてが不安定性の深さをすっかり明らかにしている。

社会保障削減計画遂行は可能か

 ゾエ・コンスタントポウロウ(シリザ第一次政権下でのギリシャ議会前議長)がわれわれに思い起こさせたように、チプラス自身が、ギオリオス・カトロウグカロス(労働・社会保険・社会連帯相)によって押し進められている社会保障削減のような諸方策を防衛したのだ。そしてこうした方策は、挙国一致政府あるいは独裁の下でを除けば、強制されるようなことはあり得ないと思われる。
シリザのような政党は、そこに新自由主義的な転換があるとしても、民主的、社会的諸権利へのそうした反動的諸制限の遂行に関し沈黙を期待などできない。特に、具体的に社会保障が話題となればそれはあり得ない。これらの諸方策は、シリザ内部にとどまっている者たちの間での対立を、地方自治体、地方、また国家レベルの被選出公職者間の対立を含んで、鋭いものにする可能性があるだけだ。
政府危機の根源に横たわっているものは、社会保障防衛を求める大衆運動の突然の高揚だ。タソス・ギアニツィス(二〇〇九年から二〇一一年までのギリシャ石油トップ、またその後の、二〇一一年一一月一一日から二〇一二年五月一八日までのルカス・パパデモスのいわゆる専門家政府内務相)による緊縮の波及に関する報告に対する先頃の称賛者は、前者の急角度の転落もコスタス・シミティスの同じような転落も忘れるべきではないだろう。後者は、今にいたるまで「近代化」の全能のチャンピオンであり続けた後、退職(ピレウス港に対するギリシャ側副代表ポストからの退職を含んで〈公的に運営されてきたピレウス港施設管理業務は中国企業に売却され私有化されることになっている:訳者〉)したのだ。
今年二月三日の決起に対しては、諸々のデモに対する自由主義的な専門家たち(弁護士、研究者、科学者、医師、その他)、そして公的部門、港湾、空港、銀行、司法、また学校の労働者、こうした層の広範な参加――同様に、一月初めの闘争に合流した農場主たちが組織する大衆的な道路封鎖――が予想されている。これは政府にとって、特別に危険な諸環境の組となっている。すなわちそれは、社会保障防衛の運動が勝つ可能性をはらみ、カトロウグカロス計画が敗北を喫する可能性をはらむ、という蓋然性の範囲内にあるのだ。

爆発力秘めて社会的決起再興

 このシステムの弁解者は、これらの決起の重要性を過小評価する「分析」を展開しつつある。「社会的原子化作用」という概念――すなわち、諸々の社会運動とその政治的影響あるいはそうした作用の間の切断を想定する――が、今回は左翼諸潮流が普及する形で、その輝かしい日々を取り戻しつつある。
それらがわれわれに告げることには、下請けの労働者あるいは個人契約の労働者、公務従業員、そして農場主たちは、影響力を発揮するグループとはならず、したがって、統御不可能な諸々の求心力が及ぼす一種の原子化的断片化の犠牲になるだろう。
もちろんわれわれは、裕福な弁護士、専門家、農場主がいる、ということは常にわきまえてきた。われわれはまた、二〇一五年七月五日に「イエス」投票を呼びかけ、今は第三次メモランダムの諸条件を受け入れている政治指導者や労組指導者がいる、ということも知っている。しかしこのグループにあってさえ、彼ら自身の組織の下部大衆内部にある怒りを減じる目的で、カトロウグカロスとのある種の合意に達する可能性を追い求めるためだけであっても、諸々のデモに参加するよう強いられていると感じているのだ。
これらの諸対立は、多くのさまざまなやり方で権力によってかごに閉じ込められてきた先のような妥協的指導部の影響力を切り落とさなければならない左翼、そうした急進左翼にとっては、新たな任務を生み出す元になっている。PUは、この方向に動こうと努力中だ。しかしこの運動は、いわゆる個人契約の労働者と農場主たちの諸決起には政治的に決定的な重要性がある、というわれわれの評価を少しも変えない。大衆の本物の運動にはどのようなものであれ、化学的な純粋さのようなものはまったくないのだ。
システムの弁解者が押し進めている第二の論拠は、労働者、特に組織された労働者が参加しないという想定と関係している。これらの線は、二月四日のゼネスト直前に書かれようとしている。そしてわれわれは、理論家のふりをしているこうした干からびた死体に労働者が与えようとしている応答の規模を、まだ知ってはいない。しかし、このストライキに導こうとしている政治的空気は鮮明だ。すなわち、労働者、農場主、自由主義的専門家、公務従業員の街頭における合流は、政府にとっては悪夢となるあらゆる兆候を宿すレベルまで、圧力を引き上げるだろう。
明らかなことだが、たとえそのエネルギーレベルがもっと小さいことがあったとしても、これ以前のラウンドにおける労働者階級の抵抗がもっていた重要性を過小評価する権利をもつ者など一人もいない。それが起きたとき、他部門労組と並んで公務員労組ADEDYが引き受けた初期の努力は、道を切り開き、彼らが固めたその道は幅広い壮観な並木道へと変えられた。われわれは、われわれの注意すべてを下部民衆の運動がもつ力に集めなければならない。

挙国一致政府か新たな選挙か


こうした諸条件の下で政府は、それ以外の問題に直面しようとしている。債権者団――長期化した国際的危機に由来する彼ら自身の問題を抱えている――はいかなる「救援策」の提供も拒んでいる。EUから派遣されている管理者たちは、ただ緊縮計画が適用されるということだけを求めている。つまり彼らはギリシャ政府に、EUへもっと多くの政治的支持を差し出すことまでも求めているのだ。
しかしながら今回は、新政府の戦術すべて(新選挙の呼びかけのような)をEUが鷹揚に傍観する、というようなことはありそうに見えない。なぜならばこれらは彼らに、一方でギリシャ国境を越えて不安定要素を増大させるかもしれない中、メモランダム適用の逆転というリスクをもたらすからだ。
チプラスは、ある種の「国民的合意」を追求中であるということを認めている。首相として彼のポストを維持した上で政府構成を広げるというシナリオは、すべてが彼らの役割を果たすことに同意する可能性をもつ、レヴェンティス、ト・ポタミ、PASOK以外の連携者を見つけ出すということを意味している。しかしこれは、拡張された、意味のある政治的基盤というイメージを作り出すことはほとんどないと思われる。
そして、NDの参加を含む実体ある挙国一致政府に向けた潜在力は同時に、この全期間チプラス自身が果たしてきた象徴的役割をなしで済ますという問題をも提起するのだ。その場合、シリザ自身の内部に、この種の可能性に同意するかもしれない、そして自身をチプラスに対する部分的オルタナティブとして差し出す、そうした何らかの勢力はいるのだろうか?
この袋小路は再度われわれを新たな選挙に向けた潜在的可能性に引き戻す。チプラスは過去において、自身の党の左派を「責任逃れ」を図っているとして責め立てた。これは、シリザ内部の論争と衝突に関係したことだった。つまり始めは、二〇一五年七月一三日合意に関する支持投票を拒否した何人かの左派シリザ議員に関係して、次いで二番目には、九月議会選の日付と専門的事項に関することだった。
今や、彼が彼自身の不名誉な崩壊から逃れるために選挙を必要としているらしい、ということが明かるみに出ている。しかし今回、この戦術は簡単ではないだろう。つまり彼は、債権者団内部の全員一致を当てにはできず、国家機構からの協力も望めず、ギリシャのエリートたちからの支援に頼ることもできないのだ。それ以上に、新選挙におけるシリザの勝利も保証からはほど遠い。
諸条件は急速に変化中だ。急進左翼はこれを背景に、諸闘争の今回のラウンドが勝ちを収め、反改良に敗北を強制する可能性をつくり出すよう、その全勢力をもって介入し参加しなければならない。第三次メモランダムをひっくり返し、七月一三日のブリュッセル合意を無効にする希望は、この点にある。これは、危機の勘定書を危機を最初に引き起こした者たちである富裕層と支配者たちに渡すことを可能にするために、すべての社会的権利、幅広い意味における労働者の諸権利、同様にその同盟者(農場主たちから中産階級諸層まで)のそれらを防衛することを必要としている。

▼筆者は、元シリザ指導部の一員であると共に、DEA指導部メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年三月号)



もどる

Back