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    かけはし2016.年5月2日号

G7伊勢志摩サミット反対


7月選挙と改憲準備のための政治ショー

「異議あり」の声を響かせよう

人権無視の「対テロ警備」をやめろ

地政学的カオスの中のG7

 五月二六―二七日、三重県志摩市賢島でG7サミット(主要国首脳会合)が開催される。
「主要国」を自称する諸国の首脳が年に一回集合し、互いに握手を交わして記念撮影をする行事がG8あるいはG7サミットと呼ばれてきたが、言うまでもなく、このような会合にいかなる正当な法的な位置付けもないし、権限もない。それでも敢えて言えば、世界の政治・経済に大きな影響力を持つ諸国の間で、重要な課題について意見を交換し、必要な調整を行うというのがG8あるいはG7の建前だった。
一九七五年にフランスのジスカールデスタン大統領の発案によって第一回先進国首脳会議(G6)が開催された当時、世界経済は米国ドルの基軸通貨としての役割が終焉し、七三年第四次中東戦争をきっかけとする石油危機が戦後のヨーロッパや日本における経済成長の終焉を告げ知らせていた。その中でG6、のちにG7は「先進国」間の経済政策の面での調整の役割を与えられた。当時のソ連の影響力拡大を封じ込め、資本主義世界経済を維持するために、西側「先進国」が協調し、結束したのである。
一九八〇年代前半におけるレーガン、サッチャーの下での新自由主義的グローバリゼーションの展開の中で、G7は戦後の米ソの対立と協調を基礎とする世界の統治体制(国連やその諸機関によって象徴され、「第三世界」諸国の台頭によって特徴づけられる)を清算し、金融資本や多国籍企業が主導する新しいルールと仕組みを確立していく司令塔・広告塔としての役割を与えられる。G7はIMF、世界銀行、世界経済フォーラム(ダボス会議)をはじめとするさまざまな国際機関や地域的な機関、民間団体、シンクタンク、メディアを率いて、米国の覇権の衰退を補完しながら新しい国際的なイニシアチブを形成してきた。
一九九〇年代にソ連が崩壊し、東欧諸国が次々と西側ブロックへ移行した。冷戦に勝利したG7は、ロシアを加えてG8となり、経済だけでなく、政治、社会政策においても西側主要国(およびロシア)の協調と結束を誇示する主要な舞台となった。G8の下で新自由主義的グローバリゼーションは世界を席巻した。
一方、九〇年代後半から〇〇年代にかけて、新自由主義的グローバリゼーションに反対する世界の社会運動、市民運動が、G7・G8の開催地での対抗アクションに結集し、運動の可視化と国際的連携をはかってきた。日本でも〇八年の洞爺湖サミットに対して広範な対抗アクションが展開された。
しかし、〇八―〇九年のリーマン・ショックを境にG7・G8は次第に役割を失ってきた。
本紙において、ピエール・ルッセ同志の論文等で提起されてきた「地政学的カオス」の中で、経済においては中国やBRICSの台頭、軍事においては中東における「テロとの戦争」の行き詰まり、政治においては各国における極右の台頭と民主主義の機能不全、さらには気候変動、難民問題がそれぞれ、G8あるいはG7によるコントロールや調整が可能なレベルを超えてしまっている。
そもそも中東問題についてロシアやイラン抜きで何か意味がある決定や協議はありえないし、世界経済をめぐって中国やBRICS抜きで議論すること自体が空虚である。
しかも、今回の伊勢志摩サミットにおいては、G7参加国のうち米国のオバマ政権、英国のキャメロン政権、フランスのオランド政権はいずれも国内での政策遂行能力という点で、事実上機能マヒ状態である。
「地政学的カオス」の中で、一元的に世界の統治のルールと機構を方向付けるイニシアチブはどこにも存在しない。G20、G2(米中首脳会談)、あるいはEU、ASEANなどの国際的あるいは地域的機構が部分的にその役割を与えられている。その中ではG7には中国、ロシアと対抗する西側の結束のシンボルとしての役割しか残されていない。

「テロとの戦争」とG7


安倍政権は昨年六月のドイツ・エルマウでのG7サミット直後から、日本が議長国となる一六年G7サミットの開催地を伊勢・志摩と発表し、サミットの成功に向けて歓迎ムードを煽り立てる一方で、一年近くにわたってサミット警備に名を借りた治安体制を大々的に演出してきた。
安倍政権にとってG7サミットの開催は、@「安倍外交の成果」をアピールし、米国のパートナーとしての日本の国際的地位を演出する、A「国際的なテロとの戦争」や中国との対抗において、日本の積極的関与を印象付ける、B国を挙げての歓迎を演出し、伊勢神宮を日本のシンボルとして打ち出すことによって日本国内のナショナリズム的感情を満足させ、また集団的自衛権や「積極的平和主義」への安倍政権の決意を印象付けるという意味で非常に大きな意味を持っている。
ここで「印象付ける」、「演出する」など、やや曖昧な表現を多用しているのは、そのような安倍政権による印象操作と、先に述べたようなG7サミットの現実が全く乖離しているからである。
もちろん、G7においては昨年のフランス、今年のベルギーにおけるテロ事件に便乗して、「テロとの戦争」におけるG7の結束と連携強化が謳われるだろう。オバマ政権は中国の軍拡や北朝鮮の核の脅威をめぐって安倍政権に最大のリップサービスを惜しまないだろう。
しかし、現実には「テロとの戦争」は完全に行き詰っており、空爆によって一時的にISやアルカイダ系の武装勢力を制圧しても、そのたびに新たな形で戦争が拡大し、今やアフリカ北部からパキスタンの一部地域にまで波及している。
米国はロシア、イラン、トルコと連携することによって戦争の拡大を抑止しようとしているが、そのことがこの地域における米国の影響力の決定的な後退をもたらし、最も重要な同盟国であるイスラエルの孤立につながるというジレンマに直面している。
ヨーロッパ諸国は難民問題と国内におけるテロという形で、「テロとの戦争」の直接的結果に直面させられている。英国ではブレア政権の下でのイラク戦争が誤りだったとして検証が進められている。フランスではオランド政権が〇一年九・一一後の米国を想起させるような度外れた好戦的姿勢を示し、中東・北アフリカへの武力介入を拡大してきたが、当初の政権支持率の上昇はごく一時的なナショナリズムの高揚の反映に過ぎなかった。
軍事力によってテロをなくすなどということが非理性的・非現実的であり、それがいかに甚大な犠牲をもたらしてきたかが日々明らかになっている。安倍政権が集団的自衛権を振りかざしてこの地域の平和に貢献する余地などどこにもないのである。
中国の軍拡や北朝鮮の核の問題についても、安倍政権の前のめりの好戦的姿勢や極右的な言動が他のG7諸国に支持されているわけではない。

タックスヘイブンとG7

 伊勢志摩サミットにおける主要な課題の一つとされているのが世界経済、とりわけ各国の金融政策の調整である。
リーマンショック後の世界経済の危機を救った中国経済が失速し、世界経済を力強く牽引する国あるいは産業が存在しない中で、各国はそれぞれ利己的な経済政策を競い合ってきた。この中で唯一の例外がアベノミクスとして称賛されてきた日本経済である。アベノミクスが称賛されてきたのは、株価の上昇を演出することで米国を中心とする外国投資家に巨額の利益をもたらしているからにほかならない。
現在の世界経済の大きな焦点になっているのは中国の一帯一路構想と中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。ここでは米国と日本が完全に立ち遅れており、しかも中国との対抗を意識したTPPも批准のめどが立っていないのが現実である。
さらに、「パナマ文書」の暴露によって、タックスヘイブン問題がサミットの主要議題に浮上してきた。タックスヘイブンの規制についてはG8で繰り返し宣言されてきたし、一三年のG8サミット(英国が議長国、北アイルランド・ロックアーンで開催)では重要議題の一つとなった。EU諸国は米国の多国籍企業が大規模な税逃れしていることを非難し、金融取引の透明化を要求している。また、パナマ文書をめぐって英国キャメロン首相が窮地に立たされている。
多くの論評の中でタックスヘイブン問題はマネーロンダリングの問題として矮小化され、「テロとの戦争」の脈絡の中で語られているが、「パナマ文書」が大きな衝撃をもたらしている背景には、財政危機を理由にした緊縮財政の一方で富裕層や大企業の税回避が放置されていることへの人々のまさに正当な憤激の高まりがある。

気候変動、難民問題とG7


気候変動問題はG7、G8で毎回重要な議題として取り上げられている。あたかもG7、G8がCOP交渉を主導し、意欲的な温室効果ガス排出削減の取り組みを進めているかのような文言が宣言に盛り込まれている。しかし、現実にはCOP交渉において公正かつ義務を伴う温暖化対策を求めるG77諸国や環境団体・NGOからの圧力を受けないG7・G8は、温暖化対策に消極的な米国やカナダが受け入れられるレベルへCOPの合意内容を後退させる役割を果たしてきた。実際、G7・G8は京都議定書を反故にして、自主的削減目標をベースとする新たな枠組みへと脱線させることに成功した。また、G7・G8は温暖化対策に名を借りて原発の輸出を促進し、その一方で天然ガスやシェールガスなど化石燃料の開発を促進してきた。
G7・G8の重要な議題として取り上げられるようになった難民問題においては、EUの難民受け入れの問題が主要な関心となっているが、現実には中東の戦火を逃れた難民の大部分はレバノン、ヨルダン、トルコ、パキスタン等の周辺国で受け入れられているのであり、戦闘拡大に伴って難民の数は加速度的に増加している。G7・G8はアフガン、イランへの戦争から始まる「テロとの戦争」に起因する難民や、アフリカからの環境難民を無条件・無制限に受け入れ、安全で人間的な生活条件を保証する責任を逃れるべきでない。
このように、G7サミットには、世界が直面しているさまざまな現実に対応するいかなるイニシアチブも期待することはできないし、期待するべきではない。

テロ対策に名を借りた民主主義
的権利の抑圧を許さず
フランスの闘いに続こう!

われわれはG7に反対するだけでなく、安倍政権が五月伊勢志摩サミットの成功を七月参議院選挙あるいは衆参同時選挙での勝利と改憲準備のテコとして全面的に活用していることについて十分に警戒する必要がある。挙国一致的な歓迎や、サミット警備への地域社会の動員、厳戒態勢の常態化はまさに戦争準備ともなり、「緊急事態条項」を突破口とする改憲の試みの準備ともなる。
七月の選挙を乗り切るまで内閣支持率を維持すること、この一点に向けてすべてが周到に演出されている。
首脳会合に先立って四月一〇―一一日に広島でG7外相会合が開催された。広島での開催と各国閣僚の原爆資料館訪問というパフォーマンスがメインであり、核兵器廃絶につながるような議論は全くなされていない。このパフォーマンスの仕上げがオバマ大統領への広島訪問の要請である。
このほか各地で開催される閣僚会合も、地元財界や観光業界の意向を反映したパフォーマンスであり、それぞれの分野における政策を議論するために開かれるわけではない。首脳会合が終わった後の九月に予定されている交通相会合(軽井沢)と保健相会合(神戸)の二つの会合は従来なかったものであり、サミットに便乗してリニアや新幹線の売り込み(交通相会合)、先端医療・医療特区構想の推進(保健相会合)のテコにするという意図が見え見えである。
蛇足であるが、従来はG8・G7開催に合わせて労働相会合が開催され、国際的な労働組合との協議の場が設定されていたが、今回は労働相会合は開催されない。これも安倍政権が主宰するサミットの特徴の一つである。
われわれは安倍政権による七月選挙と改憲準備のための政治ショーに対して異議を唱え、伊勢志摩サミット反対の広範な大衆的な行動を組織する必要がある。
フランスでは昨年一一―一二月、テロを口実とした厳戒態勢と非常事態宣言下でCOP21に対する大衆的な、創意に満ちたアクションが展開された。その後の労働法制改悪反対の闘いとそれに連動した広場占拠の闘いは、オランド政権の非常事態宣言を実質的に突破して闘い抜かれている。
このような闘いによってのみ、「テロとの戦争」を口実とした国内における民主主義的権利の抑圧をはねかえすことができる。
戦争法廃止・参議院選挙勝利のための闘いの一環として、全国で六月G7サミット反対の行動を組織しよう!(小林秀史)


G7閣僚会議日程

?教育大臣会合/5月14日〜15日/岡山県倉敷市
?科学技術大臣会合/5月15日〜17日/茨城県つくば市
?5月15日〜16日/環境大臣会合/富山県富山市
?財務大臣・中央銀行総裁会合/5月20日〜21日/宮城県仙台市
?保健大臣会合/9月11日〜12日/兵庫県神戸市
?交通大臣会合/9月24日〜25日/長野県軽井沢町

 


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