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    かけはし2016.年5月23日号

国導ける社会的ブロック建設を


スペイン

連立交渉に対する報道向け声明

3月9日  アンティカピタリスタス

 昨年一二月のポデモスが躍進を果たしたスペイン総選挙では過半数政党が生まれず、連立政権の模索がさまざまに続いてきた。この中で以下の立場表明が、PSOEの二回目の連立工作失敗を受けて公表された。PSOEの反緊縮への転換に期待することは不毛であるとした上で、再選挙も視野に入れつつ(最終的に六月二六日投票日と確定)民衆的決起の組織化にあらためて力を注ぐ必要を訴えている。なお現(暫定)政権党であるPP側では、一人の閣僚がパナマ文書を契機に辞任を迫られ、その深い腐敗体質があらためて表面化している。その後再選挙確定を受けてポデモス内でも対応が探られ、アンティカピタリスタスはIUとの共同選挙戦を主張した。その共同についてはこのほどIUとの間で合意に達し、ポデモス内全員投票に付されようとしている。別掲として、この全員投票に向けたアンティカピタリスタスの声明も紹介する。(「かけはし」編集部)

PSOEは変革
勢力たりえない

 アンティカピタリスタスは、ペドロ・サンチェスによる二度目の首班信任投票の失敗(注一)を受けて、新たな社会的かつ政治的な駆動力構築に取りかかることが必要だ、と確信する。これらの二回の投票は、算術的に予想可能に見える唯一の多数は以下のものである、ということを明確に示した。つまりそれは、支配的エリートからなる諸勢力間の、緊縮支持の連立政権か、またはカタルーニャとバスクの民族主義諸政党の中立から助けを受ける、ポデモスとの幅広い連立という、新たなタイプの政府という方向に向けたPSOE(社会労働党)によるある種の転向、そのどちらかということだ。
しかしながら、PSOEとシウダダノス間で結論を見た退行的合意の後では、またそれに加え、議会諸勢力間の現行関係の枠内では、PSOEから「変革に向けた強力な政府」を期待し続けることは政治的に不毛である、とわれわれは考える。他の諸勢力との交渉に向けた基本文書としてシウダダノスとの協定を使用することに関するPSOE指導部の執着は、事実上、民衆多数と労働者のための諸権利獲得の政府、並びに変革の政府の創出を無効化している。
それゆえアンティカピタリスタスは、そうした政府、「大連立」の政府に対するオルタナティブ、それは、現時点でありそうもないと認めることが必要だ、と考える。
PSOEはこの数週間の中で自らを鮮明に確定した。つまりそれは、現情勢が求めている、社会的かつ政治的な諸構造の原理的な変革という歩みに対しては、信頼に耐える同盟者ではあり得ない。PSOEは、トロイカ(IMF、ECB、EU委員会)と新自由主義が継続する経済諸政策に、さらに使い尽くされた政治体制の復古に忠実なのだ。
15M(注二)が幕を開けた変革の歩みは、諸々の困難と退潮を伴っているとはいえ、いわば生きている歩みだ。それは闘争なしに前進はできず、「希望の切り下げ」という論理には決してしたがわないだろう。われわれは、「より大きな悪」になる以外ないと思われる、そうした「より小さな悪」という論理に満足するために進んできたわけではない。そしてその論理こそ、変革のブロックの、「ノー、ウィ・キャン・ノット」(スペイン語のポデモスが「ウィ・キャン」に当たることを前提に:訳者)という管理者的論理への同化なのだ。

正確さと鮮明さ
もつ議論が必要

 PSOE側に「変革の政府」という理念への信用を今なお与えることは、諸々の期待をつくり出し、間違った希望を生み出しかねないものとなるだろう。こうして、今や国民党(PP)へと拡張される可能性のあるPSOE・シウダダノス協定の下では、二つの結論しかない。つまり大連立かそれとも新たな選挙、ということだ。
われわれは双方の場合に対し、一つの対応を組織し、二つの可能性に向き合う最良の条件にあるよう準備ができていなければならない。そして特に、この偽の体制変革を打ち破りたいと思うのであれば、あるいは「大連立」形成を狙いとした現在の作戦から浮上する可能性のある新政府に立ち向かう能力をもちたいと思うのであれば、本物の変革を求める議論には、正確性と鮮明さがもっとはるかに必要になるだろう。
これらの新たなあり得る選挙は、一つの目標を軸に鮮明に組織されなければならないだろう。つまり、体制を変革するための、またこの道の中で政治論争の中心に憲法制定運動という展望および経済の民主化(労働改革の取り消し、金融や電力会社といった戦略部門の社会化、諸企業における労働者管理諸形態の導入、ベイシックインカム)を置くための、そうした諸構想に向けた、社会的な諸領域における、また選挙の分野における強さの蓄積だ。また、さまざまな民族間の新連邦協定への先導であり、権力が一層下から行使される新たな制度的枠組みに向かう前進だ。
「変革のブロック」諸勢力が前にしている挑戦は巨大だ。われわれは、あり得る「大連立」に対する対抗力学を強化しなければならない。同時に、15Mによって切り開かれた政治的サイクルが終わりを迎えることを避けるよう行動しなければならない。これは、変革諸勢力の政治的領域と社会的領域を広げ続けることが必要、ということを意味する。すなわちわれわれは、諸々の危険で一杯となる、しかしまた一九七八年の体制と全体主義的な緊縮の体制を終わりにしたいと思っている者たちにとっての好機に満ちたものとなるであろう、そうしたシナリオにおいて最良の位置にあるべく準備しなければならない。

旧体制との絶縁
へ駆動力新たに


エリートたち、寡頭支配者たち、EU諸機関によって準備されているこの大連立形成の可能性は、体制の復古に向けた政治的駆動力を助長する社会的受動性を基盤とするかもしれない。われわれはこの危険を前に、決起の新たな駆動力のみが先の政治的駆動力を有効に変えることができる、と考える。そして先の政治的駆動力とは、一つの経済枠組み内部での安定感創出に向け方向付けられ、その経済とは、いわゆる回復からはほど遠く、失業、貧困、不安定を生み出し続けているのだ。これを前に変革の諸勢力は、先の政治的、社会的シナリオを崩壊させる幅広い社会的連合を推し進めなければならない。
それゆえアンティカピタリスタスは、ギアチェンジが今必要だ、と考える。それは一方で、エリートたちおよび新自由主義と絶縁できないPSOEと僅かでも関係を持つことをやめることを必要とする。そして他方で、エリートたちの駆動力に対するオルタナティブな駆動力、民衆諸階級を含む変革のブロックの社会的基盤を広げる駆動力、それを発展させることを必要とする。
われわれ、変革の諸勢力は、体制の諸政党が彼らの大連立を築くに応じて、われわれの多様性を基礎に、この国に指導性を発揮できる社会的ブロックの建設に基づき、先に進み、そのことで資本が二度と統治することがないようにするだろう。
注一)二〇一六年三月四日、シウダダノスとの合意に達したPSOE指導者のペドロ・サンチェスは、PP議員とポデモス議員の反対投票によって、二回目の政府形成の試みを打ち破られた。
注二)二〇一一年五月一五日は怒れる者たちの運動が始まった日。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年四月号) 

【訂正】本紙前号(5月16日付)5面沖縄ツアー記事上から2段目の小見出し「チリチビガマ」を「チビチリガマ」に、7面ブラジル記事の最上段左から2行目の「ブラジル社会運動党」を「ブラジル民主運動党」に訂正します。

 

スペイン

声明:変革への好機開け

ポデモス・IU合意歓迎

5月10日  アンティカピタリスタス

 選挙連合を形成するとするポデモスとIU(統一左翼)間の合意は、投票箱で体制を打ち破ること、そして働く社会的多数に有利に諸政策を変えることに専心している全員にとって非常に好ましいニュースだ。
 アンティカピタリスタスは、これがものごとの通常の進行を中断させる歴史的好機を開くものだ、と確信する。PPとPSOEというあたり前とされてきたものは、腐敗、失業、不安定社会、諸々の切り下げ、質の低い民主主義から構成されている。それゆえにこそわれわれは、この総選挙で互いに対立しあっているものは、政党だけではなく社会に関する二つのモデルでもある、と信ずる。つまり一方には、われわれの前に変わることなくあったエリートに奉仕しているもの、そしてそれに対面する形で、多様性と多元性を通して、底辺にある民衆のサービスに向けたオルタナティブの建設に専心する、そうした変革のブロックを起点にわれわれが提案するものだ。
 今こそ可能なあらゆる分野で決起するときだ。幅広い統一したキャンペーンを活性化するために、ポデモスとIUの社会的基盤を超えて広がり、伝統的な選挙空間の先まで進むことのできる社会運動と労働組合運動を組み入れるために、だ。ポデモスやIUの活動家ではないが、ものごとの変化に向け貢献する用意ができているあらゆる人びと、そうした人びとを組み入れる必要がある。
 選挙に勝つことは、権力を勝ち取ることを意味してはいない。まして、世界を変革することも、われわれの世界をも意味してはいない。あり得る選挙の勝利は単に、野心的な改良の一計画の実行に向けた第一歩、経済を民衆の役に立て、債務返済よりわれわれの諸権利を優先させ、雇用改革を廃止し、市民による統制の下に銀行や電力企業を国有化し、追い立て強要や自由な解雇を禁止し、性差別的暴力を終わりにし、エコロジカルな惨害をきっぱりと断ち切り、公的投資を雇用創出や教育や住民の健康に役立つものにする、そうしたことに向けた第一歩にすぎない。
 選挙を勝ち取ることの意味はそれゆえ、新しい進路の獲得を始める好機ということだ。それこそが、経済と政治の実権を握る者たちが安閑と過ごすことがない理由だ。中傷と脅迫のキャンペーンは深刻なものとなるだろう。われわれは、選挙の戦場で、また社会の場でも前進する民衆の力を生み出しつつ、彼らの脅迫に抵抗する準備をしなければならない。
 要約としてわれわれは、われわれもその一部であり、その始まりから建設を続けてきた一つの構想であるポデモス内部で、その党支持者全員投票にあたって先の合意を支持する「イエス」投票を呼びかける。今こそ勝利を拡大するときだ。イエス・ウィ・キャン!(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年五月号)

コラム

タックスヘイブン

 今、世紀のリークとして世界中が注目しているのが「パナマ文書」だ。この文書は大手銀行や仲介業者と連携しタックスヘイブンでの法人設立(ペーパーカンパニー)を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」のものを『南ドイツ新聞』が入手し、共同通信などが参加する「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が分析したもの。その件数がすごい。法律事務所が一九七七年から約四〇年間にわたって扱った一一五〇万点以上の文書と二一万余の法人情報だという。
 文書の中には世界各国の政治家、富裕者、大企業が税を逃れ、税のかからないオフショアに資金、資産を蓄えている名前が並ぶ。その上、今までは推測の範囲を出なかったり、一部分しかかい間見えなかった麻薬取引、武器の密輸取引で得たカネを洗浄したり、国際的「経済」制裁の抜け道、テロ資金を運ぶルートを実際に提供していた事実も大挙出てきている。まさに二〇世紀末から、二一世紀にかけて全世界を形作った新自由主義的グローバリゼーションの裏側を体現していたことが分かる。
 それは名前の多さと多様さに表現されている。メキシコの麻薬王に始まり、武器を買って得た資金を隠している北朝鮮の高官、ほとんどの独裁者の名が並ぶ中東の国々。さらにプーチン、キャメロン、シリアのアサド、ウクライナのポロシエンコ、パキスタンのシャリフ、アイスランドのグンロイグソン、また中国の習近平、劉雲山政治局員など。ジャッキー・チェン、サッカー・バルセロナのメッシなど芸能人もスポーツ選手も多彩。日本人でも楽天の三木谷浩史や丸紅などの商社・大企業も続々。
 だがわれわれが肝に銘じなければならないことは、パナマ文書のリークが労働者民衆の闘いがつくり出したものでも、偶然の賜物でも決してないという事実である。行き詰った新自由主義の「次の時代」をめぐる帝国主義間の「世界経済」の争奪戦だということを忘れてはならない。株式評論家の山本伸は「(タックスヘイブンを使い)英国が牛耳ってきた世界の経済システムを、米国が取り戻そうとしている」と述べている。それを裏付けるように、米国の富裕層や企業の名前がほとんどパナマ文書には登場していない。
 『タックスヘイブンの闇』の著者ニコラス・ジャクソンもパナマ文書の延長線上でオフショアでの金融システムが簡単に壊れることがないと指摘する。事実二〇〇七年の「オフショアトラストの実態を明らかにしようと決議したロンドンサミットも、今年五月一二日にロンドンで開かれた腐敗対策サミットにもバハマやジャージー・バージン諸島などタックスヘイブンを持つと言われる多くの国・地域は参加していない。つまり拒否したのだ。米国も世界共通システムに参加することを拒否し、独自のシステムに固執し続けている。これもタックスヘイブンに対する規制反対の態度だ。五月末に開催される伊勢志摩サミットも形だけで、逆に「延命のための抜け道」を準備するだけだと発言するアナリストも大勢いる。
 毎日新聞の「余録」は今回の事件を「権力者やセレブたちには(悪夢を)世界中にまき散らすパンドラの箱」と呼び、客員編集委員の牧太郎は租税回避は「巨悪」だ。「マスコミよ、巨悪に立ち向かえ!」と呼びかけている。「巨悪」は税逃れで富を増やし、庶民はそのツケを払わされるのだ。 (武)


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