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    かけはし2016.年5月30日号

ヨーロッパ規模でIMF・EUとの対決を


ギリシャ

第三次メモランダムの持つ真実

労働者民衆に一層の犠牲を転化

雇用が破壊され、社会保障が奪われる

アントニス・ダヴァネロス

 昨年夏EUの支配階級はギリシャ民衆の自己決定権を完全に拒絶し、彼らの奉じる民主主義がどれほどいかさまか、を欧州民衆にさらけ出した。しかし、彼らが自らの政治的資本をそれほどまで傷つけてもギリシャ民衆に押しつけようとしたギリシャの債務問題とユーロ危機の「解決」は、予見されていたことだったとはいえ、一年を待たずに早くもその脆さをあらわにしようとしている。以下は、その現実をギリシャから伝えている。(「かけはし」編集部)

「冗談はもうたくさんだ!」


われわれは、「冗談はもうたくさんだ!」と言って差し支えない地点に到達した。ここで私が言っているのは、新たな緊縮計画から生まれてくる貧困層を保護するという、想定上の前向きな「埋め合わせ」諸措置に関する愚劣なおしゃべりのことだ。
現実にわれわれは、第三次メモランダムの真実が白日の下にさらされる時に到達している。政府は、債権者団との一協定に署名しなければならないだろう。そして議会は、社会保障、諸々の税、賃金、公共サービス部門での雇用、加えて未返済住宅ローンに関する死を呼ぶような諸方策を採用しなければならないだろう。
この協定を実効化する債権者団は、社会的権利と労働者の権利双方に深刻な打撃を加えるだろう。ギリシャにおける日々の暮らしは、労働者と貧しい者たちにとってはるかにもっと困難なものとなるだろう。同時にこの協定には、資本家――この危機を通じて苦しみを受けたことなどなかった社会層――の利益を脅かす方策はどのようなものも含まれていない。それどころか彼らは、彼らの利益を高め、より多くの富すら蓄積してきた。
社会保障に関わる諸方策が知られるようになるや否や、債権者団の反社会的な冷酷さが明るみに出るだろう。それを構成しているものは、社会的諸計画で保護されている人びとの中のもっとも弱い立場にいる人びと――いろいろある中でも失業期間を理由に年金全額への権利をはっきり主張できない人びと――への前例のない攻撃だ。
この類型に入る人びとはここまで、少なくとも最低年金給付を受け取ることを期待できた。その額は二〇一五年八月まで、月額四八六ユーロとなっていた。シリザ政権はこの最低額を、保守派の独立ギリシャ人(ANEL)の社会保障相であるパヴロス・ハイカリスが提案した方策の下に、月額三九二ユーロまで引き下げた。
議論にかけられている協定は、この最低給付をさらに月額三四六ユーロまで切り下げると思われる。季節仕事や建設産業で途切れ途切れに雇用されている労働者階級の層全体が彼らの退職年金で、二〇一四年比でおよそ三〇%の引き下げをこうむるだろう。

高齢者と障がい者を標的に


政府が行おうとしている社会的暴力のもう一つの例は、六ヵ月以内というさらなる早さをもってEKAS(高齢者と障がい者向けの一種の社会保険手当)を引き下げるという合意だ。そこには、五五歳以下の配偶者を亡くした女性に向けた給付の排除が含まれている。
多くの女性たち――労働者階級家族の減少阻止を名目に、家庭内に閉じこもるよう資本主義が強制した――は、彼女たちの配偶者を亡くした場合、そしてそれはしばしば職場に関連する事故や病気の結果として起きているものなのだが、他のどのような形態の所得もないまま、五五歳に達するまで生き延びることを強いられるだろう。もっと悪いことに、女性の未熟練労働者を最大に当てにしている部門の失業率が三八%であるとき、労働者階級が仕事を見つけることは不可能だ。
この残忍さは、労働者階級全体に影響を及ぼすだろう。しかし親政府派の報道は、あらゆることを控えめに扱っている。エスノス(国民)紙は「一〇〇〇ユーロまでの引き上げ」について全員の不安を取り除き――露骨な虚偽――、大衆向けニュースサイトのEF・SYNは、方策は「ほんのわずかの後退」と描いている。
これらの言明は、極めて人気のある労働、社会保険、社会連帯相であるゲルオギオス・カトロウガロス――彼は「年金は減額されないだろう」と言明した――が行った約束が単に過去のことにすぎない、ということを明確に示している。ギリシャの六七歳になる退職者は、四〇年働いた後ですら、手当すべてを合わせて月額一〇〇〇ユーロ以上を受け取ることは期待できない。
この政策の意味はまったく鮮明だ。資本家階級がしでかしたさまざまな盗みは、シリザの承認印に基づいて、一定の時間の中で、結局は現在と未来の退職者によって支払われることになるだろう。

底辺層にだけさらなる打撃


税金に関する諸方策は、等しく冷酷な状況をあらわにしている。付加価値税(勤労民衆と貧困層にもっとも厳しい打撃を与える消費税)率は、水道と電力料金に対し、請求書上で二四%を超える引き上げが設定されている。結果として何千という家族は、これらの必須なものを欠いたまま暮らすことを強いられるだろう。
以前に所得税は所得の最低区分層には適用されなかった。今日これはもはやない。政府はこれまで、年収九一〇〇ユーロまでに当たる人びとに対する課税除外を提案してきた。しかし債権者団は、この閾値を年収八二〇〇ユーロまで引き下げたいと思っている。この数字を基礎とすれば、二〇一六年、二〇一七年、二〇一八年に対し一八億ユーロと見積もられている増税額のより大きな部分は、九〇〇〇ユーロから二万ユーロまでの年収がある納税者によって負担されることになるだろう。
逆に政府と債権者団は、もっとも多くの特権を持つ者たちに対する課税に対しはるかに多く心配しているように見える。OPAP(サッカー試合での賭けを管理している組織)での利益に課税する提案は、これが五億ユーロを生み出す可能性があるにもかかわらず、完全に忘れ去られた。宿泊滞在――たとえば五つ星ホテルでの――に課税する提案にも、これは「ギリシャの観光企業に致命的な一撃」を加えるだろう、との言明が矢継ぎ早に出された後、同じような運命が待ち受けているように見える。
「国民の福利」のためには全員が――ほんのわずかを例外として――犠牲を払うことが必要と熱を入れて主張することが続いている中でさえ、支配階級はその諸特権に対する完璧な保護を確保した。「例外」の中の首座にある者たちは、海外資産をもつ富裕なギリシャ人の「ラガルドリスト」あるいはパナマ文書が暴露したように、スイスの諸々の銀行に巨額のカネを預け入れてきた者たちだ。
はっきりしていることとして、シリザ政府は、頂点にある者たちをやさしく扱う一方で、底辺にある者たちに向けた社会的残忍さに加わりつつある。

大富豪と手を結ぶシリザ

 この点に関していくつか疑問をもっている者すべてが必要としていることは、高名なエヴァンゲロス・マリナキス氏(プロサッカーチームのオリンピアコスの会長、特にうさんくさいビジネスとの評判に包まれている)とディミトリス・メリサニディス氏(石油産業の大物、ギリシャスポーツ賭博企業OPAPの主要株主、そしてアテネを本拠とするプロサッカーチームAEKのオーナー)に向けた、首相官邸のマキシモス・マンションで会談するためのアレクシス・チプラスによる招待の意味をよく考えることだ。
この二人はまさに、過去においてシリザが「闇の請負人」として非難を込めて言及するのが常であった――そして党が権力に達するやすぐにその効力を消すと約束した――種類の特性をまとった者だ。しかし今日彼らは、シリザと政府の監督下での「対話」に加わるよう招待されている。この招待が、サッカー試合中に暴力が爆発し続け国際機関の介入に導いているその時に浮上している事実は、大いに意味があることだ。
現政権は恥知らずにも、「企業家主義」精神の中での腐敗と利害対立に立ち向かう計画の一部として、こうした関係を磨き続けてきた。
債権者団との合意には他の厳しい諸方策も含まれている。その一部が大量追い立てに導くことになる未返済住宅ローンに対する保護すべての廃止、賃金切り下げ、そして公共部門における雇用の厳格な制限だ。

チプラスに圧力をかけるEU


EU、欧州中央銀行、欧州安定機構(ユーロ圏財政に特化している政府間組織)、IMF、およびギリシャ政府の間にあるいくつかの違いが、協定署名に一定の遅れをつくり出してきた。しかしながら今回政府は、抵抗の最低限の印も示すことなく交渉に加わった。
この遅れを説明する要素が二つある。
第一に、国際諸機構それ自身の内部に――たとえばIMFとカルテットの欧州部分の間に――いくつかの違いがある。例としてドイツ財務相のヴォルフガング・ショイブレは、ギリシャ債務の軽減の可能性を議論するつもりはないことを明確にしてきたが、他方でIMFは、計画が「実行可能」となるためにギリシャ政府はもっと思い切った方策をとるべき、と強調している。
このへとへとの疲れをおぼえる歩みは、EUの統治機構内部にある指導性の危機を映し出している。新たな協定をめぐる交渉が四月一二日に駄目になった一日後、マルティン・シュルツ(EU議会議長、ドイツ社会民主党メンバー)は、「ユーロ圏崩壊」の危険に関する彼の決まり文句を繰り返した。次いで彼は、「鋭い分極化」というこうした諸条件の下に大胆な行動をとるよう、EUの指導者たちに訴えた。
第二に、効果的であることを目的に、IMFが要求した「思い切った諸方策」は、ギリシャ内部での、ある種より強力な政治権力の確立を必要とする。諸機構が分かっていることとして、シリザ・ANEL政権の一五三議席だけでは、チプラスがそれらの方策を単独で適用することは不可能なのだ。
こうして債権者団は財務相のエウクリド・ツサカロトスと経済相のギオルゴス・スタサキスに、まったく無遠慮な言葉で彼らの要求を出し続けている。彼らは、政治の変更を加速したいとのメッセージを送り続けている。つまり彼らは、チプラスの政権をさらに中道や保守派諸政党にまで扉を開くことによって、彼の議会的基盤を広げるようチプラスに圧力をかけ続けている。次いでこの基盤を広げた政府が、第三次メモランダムを適用する責任を引き受けるだろう。
労働者と民衆諸勢力は、今一面見出しを占めているこうした交渉から何も期待してはならない。われわれがわれわれの諸権利と達成成果を守りたいと思うのであれば、代わりに、社会と政治の光景への彼らの決然とした参入――絶対的に必要な年金改革反対の四八時間ストライキをもって始まっている――こそが、本質的な必要条件となる。直接の目標は、メモランダムすべての取り消しとならなければならない!
先に視線を向ければ、フランスにおける諸決起が、われわれの政府の最高位諸階層によって設定された政治的課題を変更する潜在的可能性を指し示している。

▼筆者は、ギリシャの社会主義グループである国際主義労働者左翼(DEA)メンバーであると共に、昨年のシリザ屈服後にシリザから分裂して形成された民衆連合の指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年五月号)

エジプト

フランスNPA声明

逮捕と検閲をやめよ

シシ政権に抗議を

 ジャーナリスト団体への手入れ、恣意的逮捕、体系的な暴力、失踪、活動家、ジャーナリスト、また弁護士の逮捕……、エジプトでの抑圧は前例のない規模に達することになった。四月一五日以後一二〇〇人以上の人々がエジプト治安部隊によって逮捕されている。
 報道に偶然に明かされた政府のメモは、異議と民主的諸要求のあらゆる形態に敵対して戦う政権の意図を証明している。シシ政権が報道に強要しようとしている沈黙の壁は、そのもっともあからさまな印だ。
 この情勢の重大さは、われわれの国際主義者としての連帯を求めている。われわれは、この軍事独裁を適切なものとして昇格させる、フランスとエジプト間の諸協定、特に軍事的なそれを厳しく非難する。
 われわれは、全政治犯の釈放を要求する。また、民主主義を求めるエジプト民衆の闘争に対するわれわれの全面的な支援をあらためて確認する。(二〇一六年五月九日、モントレール)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年五月号)


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