もどる

    かけはし2016.年7月18日号

「緊急事態条項」を許すな!


7.1

関西共同行動2016年第二回反戦平和講演会

中北龍太郎さんが講演

 【大阪】七月一日関西共同行動は今年の連続講座の第二回目を開き、中北龍太郎さん(関西共同行動代表、弁護士)が「緊急事態条項とは?」と題した講演をした。
司会の三橋秀子さんが冒頭、二〇〇五年自民党憲法起草委員会の事務総長をしていた与謝野馨が「緊急事態が何を示しているのか不明確だ。政府が国民の命や財産を守るのは当然で、あってもなくてもいい規定だ」と言いきっていることを紹介。早速講演に入った。(講演要旨別掲)

緊急事態法と
国民保護法
質疑応答の中で一つだけふれておく。それは、国民保護法との関係だ。おそらくどの自治体でも、保護計画の実施体制は完成しているといわれているが、その実態は全くわからない。現行の保護法には強制力はない。しかし、緊急権ができればこの法律は強くなる。緊急権について弁護士会はこぞって反対しているが、その理由として、国民保護法があるからそれで十分ではないかという意見もある。
質疑応答の後、行動提起、ミナセン(みんなで選挙)からのアピールがあった。( T・T)

中北弁護士の講演から

戦争国家と不可分の法制

国家に依拠しない市民の行動を

国民の生命と
財産保護名目に
自民党は参議院選挙戦の期間中本音を表には出さず、アベノミクスのフル回転で選挙戦を展開しているが、選挙後は緊急事態条項を盛り込む改憲が最初の争点になる。安倍を支えている日本会議は、緊急事態条項を第一の課題に挙げている。緊急事態条項が言われ出したのは、東日本大震災直後だった。その後も何度となく緊急事態条項の主張を繰り返している。改憲賛成の者は責任感が強い人間だとも発言している。しかし、参議院選が近づくにつれ言い方を変え、三分の二を確保するのはむずかしいから、改憲は決意として述べるにとどめた。しかし、諦めたわけではない。六月一九日には、次期国会から憲法審査会を活動させると言っている。
自民党の改憲草案(第九章緊急事態)のQ&Aによると、外部からの武力攻撃・内乱等による社会秩序の混乱・地震等の大規模自然災害のとき、内閣総理大臣は緊急事態を宣言し、政府は政令を制定し、それによる緊急措置に国民は従わさせられる。両院の議員の任期は延長される。このような条項は西欧にもあると政府は言っている。国民の生命・身体・財産を守るという大きい人権のためには小さい人権(いわゆる憲法が規定する人権)は多少制限されても仕方がないという言い分だ。

 国家緊急権とは

 戦争、自然大災害、内乱など、平時の統治機構が麻痺する事態には、国家の存立維持のため緊急措置を取る権限を内閣総理大臣に一任する。その目的は、国家の存立を守ること。その効果は、憲法の停止・立憲的秩序の破壊だ。
大日本帝国憲法下では、緊急勅令、緊急財政措置、緊急戒厳令、非常大権と四つの緊急権があった。現在の自民党改憲草案でも、災害を理由とした戒厳令は可能である。そのような場合、自衛隊は災害救助ではなく治安出動をすることになる。一九四四年の東南海地震の時は、地震の被害を国民に隠蔽した。映画スターウォーズは銀河共和国の崩壊と銀河帝国の勃興を描いた作品だ。

 戦前ドイツの場合

 社会権等が初めて導入された最も民主的なワイマール憲法だったが、四八条の緊急権条項(大統領命令)が二五〇回以上も発動された。首相に任命されたヒトラーも、この条項を使って国民保護という名目の大統領命令を出させて左翼の選挙活動を弾圧したり、国会放火命令(放火事件に対処)により左翼を弾圧し、四〇〇〇名の共産党や社会民主党員を逮捕した。それをもとに国会の議席数を変えて、政府に法律をつくる権限を付与する授権法を制定させた。そして、政党・労働組合は禁止され、ワイマール憲法は存在するままに死んだ。

 韓国の場合

 韓国には、李承晩・朴正煕・全斗煥と三つの独裁の時代があるが、中でも朴政権の時代は典型的だ。一九七二年維新クーデターの後、維新憲法で緊急権条項を持つ憲法が作られた。その下での国家保安法などで多くの犠牲者が出た。八七年六月抗争を経て、韓国は民主的な政権が誕生するが、未だに国家保安法は憲法に残っている。
水も漏らさぬ緊急権体制。議会が廃案にした法律も、政令でそれを決めることができた。関東大震災の時も軍事戒厳令を発動し、朝鮮人を多数虐殺した。「進め一億火の玉だ」の標語が日常生活に浸透し、道の真ん中を歩いていると注意される時代だった(NHK朝ドラ:ととねえちゃん)。高度国防国家の行き着く先は敗戦という大失敗だった。安倍はまさにこの体制をめざしている? 

緊急権と憲法・安保

 現行憲法には緊急権はない。意識的になくしたからだ。憲法制定時の金森国務大臣は国会で「民主政治には国家緊急権は極力防止しなければいけない」と発言した。一方、安保体制は、憲法・特に九条の破壊を企んでいる。米国のアーミテージは、日米同盟について、「自衛隊が命をかける約束をした」と評価した。
安倍も、米国の利益を図ることで、自国日本の利益をもはかることを考えている。安倍は、戦後レジームからの脱却、つまり戦後民主主義と憲法体制を壊して、強い国をめざす。国民はその国に命を捧げる。日本の自存自衛をめざす。改憲して、戦争する国づくりを完成させる。人権・立憲的秩序を破壊し、公共の福祉ではなく、公益・公の秩序を優先する。緊急権はそのための切り札。

 米国の場合

 建国以来二四〇年、戦争しなかったのは二一年間だけ。大統領は軍の最高司令官で、マーシャルロー(戒厳令、戦争法規)で認められた戦争の権限を持っている。議会は追随してきた。ベトナムの北爆はその典型の一つ。二〇〇一年のテロ事件以来緊急権は一層強くなった。

 フランスの場合

フランス大革命の流れをくむフランスの法体系は英米とは違う。近代憲法とブルボン王朝の一八一四年にできた緊急権が併存していた。戦後、一九五八年のアルジェリア独立戦争の時、ドゴールが大統領に全権委任する非常大権のような緊急権をつくり、現地アルジェリア反乱の時に使い、多くの犠牲者を出した。

 ドイツの場合

 戦後ドイツの憲法(基本法と呼ばれる)には、緊急権は盛り込まれなかった。しかし、NATO加盟にあわせ、冷戦構造の最前線であったドイツに国防軍がつくられ、一九六六年の大連立政権の時、緊急権が入れられた。しかし、多くの縛りがあって、発動できないようになっている。

大災害時には
緊急権が必要?
一見受けがいいように感じられるが、緊急権はむしろ有害無益である。災害時には現行の災害対策法や救助法がある。その地域を最もよく知っている地元自治体首長に権限を委譲するのが有効だ。 災害対策は、事前の充分な対策がポイント。中央集権的な緊急権は災害救助・復興には役に立たない。市民の相互扶助が大きな力を発揮する。緊急権は、ショックドクトリンの発想と似ている。つまり、突然の大惨事で人々が混乱しているときに、考える暇を与えず権力者たちの都合のいいように大改造をしてしまうということ。

 私たちの課題

 緊急事態条項の問題は、参議院選の結果のいかんに関わらずやってくる。反改憲の民衆の力が選挙後に問われる。憲法の枠内で対処していくが、緊急事態が起きたときは、主権者である市民が国家に頼らず、自ら判断し対処することだ。市民参加で!非武装で!沖縄のように!その中から新しい社会の在り方が見える。わかりやすい宣伝を考えよう。(報告要旨・文責編集部)

北海道ジェイアール物流は高橋さんに
対する不当な退職要求・雇い止めを撤回しろ

高橋さんの裁判闘争への支援のお願い

 

  【札幌】札幌在住の高橋勇(いさむ)さんはJR貨物のグループ企業(子会社)の、北海道ジェイアール物流株式会社を五月三一日に解雇されました。
 その理由とはJR貨物本社からの「七〇歳以上の者を雇用しないように」という子会社への「要請」を根拠に、五月一三日で満七〇歳を迎えた高橋さんを雇い止めにしたのです。
 高橋さんは六〇歳の定年後も再雇用され、六五歳までフルタイムの契約社員として毎年雇用契約書を取り交わし、国鉄時代を通じて三六年間、鉄道貨物の委託事業で働いてきました。
 定年以降今日まで毎年連続して雇用契約を更新してきており、常雇いと同じ身分関係にあります。高橋さんには当然雇用継続の権利があります。
 さらに「契約社員就業規則」にも七〇歳年齢による定年の規則などは明記されてはいません。
 これまで、年休を本人の承諾もなく勝手に指定したり、休憩時間を取れないような勤務ダイアを押し付けられていることに抗議し、労働基準監督署の指導を要請し、職場の労働環境を改善させようとしてきました。しかし、会社は労働者の権利を守ろうと闘ってきた高橋さんを解雇したのです。
 会社側のこのような一方的な雇い止めは、年齢による就業差別です。高橋さんは就労の権利を奪う攻撃に対して口頭や文書で雇用の継続や労働条件の改善を幾度も会社に訴えましたが全く聞き入れられず、解雇撤回・雇用継続を獲得するために裁判で闘うことを決意しました。
 厚生労働省によると生活保護を受けている世帯は、今年四月の時点で一六三万世帯余り、六五歳以上の「高齢者世帯」は三八五六世帯増えて八三万五一二世帯となり、増加が続いています。このうち独り暮らしの世帯がおよそ九〇%を占めました。安倍内閣の「一億総活躍社会」の号令にもかかわらず、格差の拡大とさらなる貧困化が進行していることが浮き彫りになっています。
 労働者の唯一の生きていく術である労働する権利を奪おうとする攻撃に対して反撃しなくてはなりません。
 高橋さんは職場の労働条件、労働環境改善のために先頭になって闘っていく決意をしています。ぜひ裁判資金のカンパにご協力を訴えます。
【送り先】働く者の交流会
郵便振替02780=4=70784

コラム

運命の朝

 カーテンの隙間から、鈍い光が差している。午前四時。毎週土曜は銭湯に行って、家で火照った身体を冷ましてから、一〇時には床に就く。だから日曜日の目覚めが早い。新聞もまだ来ていない。今日の予定を反すうしながら、布団の上で悶々とする。結局、平日より一時間も早い朝食を取ることになった。
予報通り、快晴の朝である。しかも湿気が少ないさわやかな風が吹く、絶好の行楽日和だ。風呂場の残り湯をバケツでベランダの洗濯機に運ぶ。力仕事が終わると掃除機をかける。一週間分の空き缶を近くのコンビニに捨てに行く。残り湯を使い切れば、風呂掃除が始まる。それが終わると、新聞の整理をする。軍手をはめカッターで重要記事を切り抜きながらの作業である。
朝早いせいか、投票所はひと気もまばらだ。私たちは何度この道を歩いただろうか。この数分間の往復で、この国の将来が決まる。有権者たちは、どんな気持ちで一票を投じるか。低い投票率は自公を有利にする。つくづく恨めしい青空である。
今回の参院選に至る安倍自民党政権のメディア監視は、これまでとは様相を異にしている。とりわけ選挙報道への不当な介入は、過熱の一途をたどっている。
「中立を守れ」という脅迫のキーワードにメディアは委縮し、権力に都合の悪い情報を抹殺している。一方で各局は、今回もまた投票時間終了前から特番を組んで「開票速報」を打ち出している。選挙中にまともな報道できないなら、せめて勝敗だけでも派手に演出・劇場化し、視聴率を稼ごうというわけである。
こうした参院選直後のお祭り騒ぎも、つかの間の饗宴である。前座の後には、メインステージが待っている。舛添要一辞任後の都知事選である。
すなわち、安倍が改憲への大義名分を手にする歴史的選挙は、「争点隠し」どころか「選挙そのもの隠し」の様相を呈していた。前都知事の説明責任も、疑惑の解明も果たされぬまま、次のトップ選びへと世論は誘導された。
選挙期間が短ければ短いほど、各党は政策や人柄より、知面度と人気で「勝てる」候補を担ぎ出すしかなくなる。私たちが全力で支援した過去の候補者以外は、金まみれ薬物まみれの五輪を強行する、権力への煩悩を隠そうとしない。有権者の無関心が政治の劣化を許し、汚職・腐敗のまん延が市井の厭世気分に拍車をかける。まさに思考停止のスパイラルである。
それでも今回、三二の一人区で野党統一候補が登場したことは、国会前行動に象徴される粘り強い市民運動の成果といえる。どんな結果に終ろうとも、われわれはたじろがない。安倍政権を打倒する日まで、怒りと情熱を燃やし続けるだけなのだ。騒々しいテレビを消した、投票日の夜に。(隆)

 


もどる

Back