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    かけはし2016.年7月25日号

平和を築き 戦争を止めよう


南シナ海をめぐる軍事的衝突の危機

2016年7月/マニラ

アジア平和運動

 

 七月一二日、ハーグの国際仲裁裁判所は南シナ海の大部分が自らの管轄権に属するという中国側の主張を認めない判決を出した。これに対して中国側はこの仲裁裁判所の判決を拒否し、軍事的な実効支配を強める態度を打ち出した。深まる緊張を背景にマニラで行われたアジアの平和運動家の会合の中で、中国側の強硬な領有権主張と軍事的緊張を強める動きを批判するアピールが出された。以下掲載する。


国際仲裁裁判所
中国の主張拒否
二〇一六年七月一二日、国際仲裁裁判所は、南シナ海(フィリピンの呼び方では西フィリピン海)のほとんどの領域(島ならびに岩礁)を中国が占領していることに対して、フィリピンが申し立てを行った案件に関して判決を下した。フィリピン政府は、フィリピンも中国も他の一六五カ国とともに署名している国連海洋法会議(UNCLOS)にもとづいてこの案件を持ち込んだのである。
中国政府は、ハーグの国際仲裁裁判所が行った聴聞に参加することなく時間稼ぎを行い、またしても国際法廷の判決を尊重しなかった。
世界の見解は、フィリピンの申し立てを支持するこの国際法廷判決をすでに予期していた。中国政府も国際法廷を欠席したことにより、敗北を予測しており、この「不利な判決」に備えてきたのである。
中国は、この国際法廷の判決が押し付けられるならば戦争になるだろうとのメッセージを発した。中国政府は、あくまでも軍事的基盤の上に立っている。国際法廷の決定が出た翌日、漁のためにこの海域に向かったフィリピンの漁民は、予期されていたように中国の沿岸警備隊の船によって追い出されてしまった。

判決を拒否する
中国の強硬姿勢
しかし国際仲裁裁判所は、相争う双方の政府にその決定を確実に遂行させる機能を持っていない。フィリピン政府の側は、すべての利害関係者が自制と慎重さを保つよう呼びかけた。
中国政府は係争問題になっている島/岩礁に軍事施設を建設し、実戦的軍事展開をすることでフィリピンに対して仲裁に従わないという態度を示している。
中国は航空防衛識別地帯(ADIZ)を南シナ海に張り巡らす計画を諸国に熟知させようとしている。この動きは確実に、戦争に向かう沸騰点にまで情勢を悪化させるだろう。すでに米国は、ADIZが作られることになればそれに反応することを示しており、それは明らかに中国の挑発的行為となるだろう。
フィリピンは、とりわけ前政権の下で、米国との相互防衛協定の強化を強調しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)とともに、その中での外交的攻勢を強化している。米国は、中国が権利を主張している水域を大洋であり国際水域であり、中国は権利を要求すべきではないとしてフィリピンとの共同軍事作戦を強化している。ここは年間五兆米ドルの価値の物資が行き交う水域として知られてきた。この事実は、大洋の戦略的な場所に位置する係争地域の重要性をくっきりと浮かび上がらせている。それはまた米国や中国といったグローバルパワーの双方にとって、おもに軍事的な実践活動が行われる理由となっている。

非戦の解決を
方向づけよう
フィリピンの新大統領は、国際仲裁裁判所の判決に勝利したという状況の中でさえも、中国との討論にオープンな対応を取り、戦争という選択を考えに入れないという態度を(明確な表現をもって)断言的な形で表現した。
他方、双方の国が、主要な利害関係者――すなわち民衆――に意見を問うという広範な機会を提供しないことは、注意すべき重要なことがらである。対立する双方の戦争によって、最初に、そして最悪の影響を直接にこうむるのは民衆である。戦争に向かう挑発的行動は、民衆の名によって行われるべきではない。
中国に有利ではない裁判所の決定は、他の利害関係者が係争になっている南シナ海の領域をめぐる問題で、自らの要求を強めるよううながすことになるだろう。それは中国にとって、防衛的な反応として戦争態勢をとらせる付随的要因となるだろう。世界の見解は、仲裁裁判所の決定を、領域的あるいは海洋をめぐる衝突を解決する「法の支配」の勝利として使い、中国に関して逆向きの効果を生み出すだろう。
中国は、フィリピンや、中国に要求を突き付ける他の関係者に対して仲裁裁判所の決定に反対する態度を示し、自国民と世界に対してそれが戦争に向かうことを意味しようとも、国家的利益を守るというメッセージを発している。
平和的で非戦の解決に至るためには、双方が「ウイン―ウイン」の関係になる解決策が緊急に必要である。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領のフィリピン新政権は、係争地域と海洋資源の管理に関して、相互の利益と協力に基づき協力するというサインを示した。

平和運動のイニ
シアチブ発揮へ
フィリピン、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイで、世界の他の地域や平和活動家やその支持者とともに、それぞれの政府や関心を抱く政党に向けて、紛争を平和的に解決する圧力をかけることができる。
すべての関係者に対して利益をもたらす解決策は、戦争のマヌーバーや戦争に向けた姿勢を示す枠組の外で、民主的な討論を行うことによってのみ可能である。
関係諸国の一貫した平和建設者や活動家は、平和運動を発展させ、生気を吹き込む者であり、現存する他の平和グループや世界の他の部分における運動とのつながりを持つべきである。
アジア太平洋平和会議は、平和建設者、活動家、そして南シナ海・西フィリピン海の紛争の平和的解決のための唯一実行可能で持続可能な選択肢の討論を支持するものである。
時は過ぎ去ろうとしており、全世界の平和建設者と活動家、しかし何よりも最も影響を受ける南シナ海地域の住民は、実行可能で持続可能な唯一の選択肢である平和を緊急に実現すべきである。さもなければ戦争を訴えている者たちが優勢を占め、この破滅的な選択の呼びかけが、私たちの名前で行われることになってしまうのだ。(見出しは本紙編集部)

 


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