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    かけはし2016.年8月1日号

専制支配体制批判こそ核心


前号研究ノート「朝鮮労働党7回大会」への批判

何よりも一般民衆との連帯の立場から


 前号に掲載した「朝鮮労働党第七回大会」についての木下正同志の研究ノートについて、滝山五郎同志からの批判を掲載する。現在の朝鮮民主主義人民共和国の体制とその動向は、日韓連帯運動の分野、安倍政権との闘いにおいてもきわめて重要であり、さらに討論を深める必要がある。(編集部)

なぜ大会が開かれなかったか


 朝鮮労働党七回大会の論評が研究ノートとして発表された。北朝鮮労働党の公式の一時資料に当たりながら、「客観的」に分析したというものだ。しかし、私にはかなりの違和感があった。それは以下の点にある。
 第一。今回の大会は三六年ぶりに開かれた。逆に言ったら、なぜ今まで開かれなかったのかその分析が必要である。ざっくり言ってしまえば、@党の公式機関を正常に運営できないほど個人独裁が進んだことAソ連邦崩壊によって、石油などあらゆる援助が打ち切られることにより未曾有の危機に陥った。そして水害など自然災害が重なり、党や政府機関が崩壊に近い形に陥った。
 これを乗り切るために、金正日は「先軍政治」体制を打ち出し、国防委員会を最高指導機関とし、その委員長に就任した。軍を前面に打ち出す体制を作り出した。二〇一一年一二月に金正日が死去し、三代に渡って指導者の世襲を行った金正恩は、金正日が後継体制を支えるとして残したナンバー二の張成沢(妹の夫)や軍幹部たちを粛清したこと。今回の朝鮮労働党七回大会の開催は金正日がしいた「先軍政治」からの党体制への転換ではないか。金正恩は新しく作った朝鮮労働党委員長に就任した。
 第二。七回朝鮮労働党大会は核開発と経済発展を並行して進める「並進路線」を採択した。一九九四年、米朝枠組み合意により、金正日は核開発を凍結する見返りに、米国から毎年重油五〇万トンの供与を受けた。しかし、これも最終的に破たんし、六者協議(2003年)の開催を行ったが、結局二〇〇六年に核開発の再開・核実験・ミサイル発射を行い、六者協議は凍結された。金正恩も金正日時代にも増して、度重なる大陸間弾道弾ミサイル発射と核実験を繰り返している。この結果国連安保理の制裁が強化され、中国も基本的にこれに賛成する立場に転換した。かつてリビアやイランが核開発し、それに対する国連などの制裁・経済封鎖が起こり、国内経済が疲弊した。結局リビア・イランも核開発の凍結や放棄によってしか、国際社会への復帰がなされなかった。
 貿易の九割を中国、その他を開城工業団地による南北交易と言われていたが、開城工業団地は閉鎖された。残るのは中国との貿易、五万人とも言われる出稼ぎ労働者が稼ぎ出す外貨獲得、石炭など資源輸出だ。金正恩になってから、年率一%台の経済成長と一定の富裕層の現出が言われている。経済の国家統制を緩めて、一定の市場経済を認めたことによるものと言われている。二四五〇万人口の一割をピョンヤンが占めているが金正恩体制を支える特権層が住み、地方との格差が広がる一方。今後国連の経済制裁の強化による貿易の縮小や外資が入らない状態が予想され、中間的富裕層が政権との関係でどのような存在になっていくのか、地方の貧しい人々を政権が掌握していくことができるのか。「並進路線」の未来に何の展望も見いだせないだろう。
 「全体の半分近くを占め、中国が主な輸出先になっている石炭が去年の同じ時期に比べておよそ四〇%、アフリカ諸国などに輸出している武器については八八%落ち込んでいる。北朝鮮は仕方なく漁業権を中国に売って旧来の三倍の一五〇〇隻の操業を認め、三〇億円を得た」(7月1日、NHK)。
 「韓国政府の推定によると、いままで北朝鮮が核・ミサイル開発に投じた費用は、少なく見積もっても三〇億ドルを超える。一回の核実験で一億ドル、長距離弾道ミサイルの本体を製造するだけで三億ドルかかるとの試算もある」(日経新聞電子編集部次長・山口真典、2015年)。
 「しかし、ミサイル一つ打つお金があるなら、そちらの住民たちの三年分の食糧を供給できるそうです」(石丸次郎、2016年3月2日)
 金正恩の「並進路線」は先の見えない迷路に入り込んでおり、北朝鮮民衆にとって、さらなる困難・困窮を強いるものとなっている。

石丸次郎さんに同意


 第三。どのような視点に立って問題を考えるべきか。北朝鮮の金正恩一族を中心とし、それを支え・群がる専制的支配層による政治支配体制を我々は厳しく批判する。それは同時に、北朝鮮の一般民衆との連帯を求める立場である。こうした視点からする「北朝鮮分析」が必要である。
 アジア・プレスの石丸次郎さんは北朝鮮取材三回、朝中国境地帯での取材は約七五回を数え、八〇〇人を超す北朝鮮の人々へのインタビューを行ってきた。彼が二〇〇三年に書いた文章がある。私は彼の立場に同意する。そのような立場から北朝鮮問題を扱うべきだと思う。やや長いが紹介する。
 
隣人として急いで行動すべきとき
 
 核、拉致、日朝国交正常化などについてこの一年あまり、日本の中でも多くの議論がなされてきた。しかし、決定的に欠けていると私が思うのは、議論の対象である当の北朝鮮に住む人々の苦難について、どれだけわれわれが思いを巡らせ、苦痛を和らげるために考え、動いたのかということだ。
 記事で紹介した朴父娘には何か罪はあるのだろうか。人間らくし生きようとすることがなぜ叶わないのだろうか。
 北朝鮮の人権蹂躙の度合いは見過ごせる程度をはるかに超えており、その解決は、朝鮮半島を巡る数々の懸案の中でも、極めて重要度、緊張度の高い課題である、と私は考えている。
 私は、北朝鮮への人道食糧援助に大賛成であるが、食糧を送るだけでは隣人の飢餓を根本的に解決できないことも強調したいと思う。現代社会にあって食糧危機が飢餓に転じてしまうのは、そこに民主主義が欠如しているからだ。北朝鮮の民衆が飢餓と抑圧から解放され、人間としてまっとうな生を営むためには、結局のところ北朝鮮が民主化と開放に進むしかないのだ。
 さしあたって、隣国に住むわれわれにできるのは、北朝鮮国内にあっては、移動の自由の保障、国際食糧支援の透明性強化、各種拘禁施設の公開、そして中国に潜伏する人々の難民認定と保護など、緊急かつ最低限の状況改善に向けて、国際協議の実現を訴えることだ。北朝鮮の人権状況がいかなる基準に照らしても、もはや看過できる水準でないことを、国際社会が共通認識とし、金正日政権に改善を働きかける「人権に関する多国間協議体」を作ることが緊要だ。
 隣人として、私たちにできることは何か。真摯に考え、そして急いで行動すべき時が来ていると思う。(『週刊金曜日』2003年11月14日)

われわれの歴史的立場

 第四。われわれは何を継承すべきなのか。第四インター日本支部の立場と変遷。
二〇〇二年と二〇〇四年に小泉首相が訪朝し、金正日国防委員長と二度にわたる首脳会談が開かれ、日朝国交正常化に向けて、日朝ピョンヤン宣言が発表された。同時に、北朝鮮による日本人拉致事件が明らかにされ、金正日が謝り生存者を返すことになった。日本において、北朝鮮をめぐる報道が過熱した。北朝鮮の国家支配体制はいかなるものであり、どのような歴史をたどって、「金王朝」ともいえる一族支配体制が継承されてきたのか。左翼はどのようにこの政権をとらえていたのかが鋭く問われた。
二〇〇三年にアジア連帯講座で、「第四インター日本支部が北朝鮮・金日成政権をどのように捉えていたのか」について発表する機会があった。@「極東解放革命と統一朝鮮革命」がどのような問題意識から出されたものかA酒井与七同志が書いた「朝鮮問題に関するテーゼのために」理論機関誌『第四インターナショナル』15号、1975年1月)などを紹介しながら、問題点を指摘した。一九八九年東欧崩壊・一九九一年ソ連邦解体、一九九四年〜九五年、金日成の死去と金正日体制への移行、数百万人が餓死したと言われる時期、日本人拉致事件以後、北朝鮮をめぐる情報・研究はそれ以前に比べようもないような質と量となった。酒井同志の論文への批判的コメントは今だから書ける要素もかなりあったことも加味しなければならないだろう。
今回、この時のレポートを公表することにする。北朝鮮問題をどのように考えるのか、一つの参考にしていただきたい。(2016年7月3日 滝山五郎)
(レポートは資料として次号に掲載します[編集部])

7.18

「海づくり大会」反対討論集会

天皇の「生前退位」とは何か

始まった「Xデー」と改憲攻撃


代替わり準備へ
計算づくの動き
 七月一八日、「聖断神話」と「原爆神話」を撃つ8・15反「靖国」行動は、築地社会教育会館で「天皇行事の『海づくり大会』はいらない!海づくりは、海こわし7・18討論集会」を行い、四五人が参加した。
 七月一三日、報道は天皇アキヒトが天皇の位を生前に皇太子ヒロノミヤに譲る「生前退位」の意向を示していることを一斉に配信した。宮内庁は、天皇自らの「生前退位」という皇室典範の法改正につながる政治的発言は憲法違反であることが明らかなため「否定」した。しかし「生前退位」報道は、安倍政権によって事前のシナリオに基づいて参院選挙後、憲法改悪攻撃と連動した皇室典範改正など天皇漬けをねらったものだ。天皇の代替わり賛美キャンペーン=Xデーが始まったのである。
 今後の天皇の行事と休日は、この延長で演出されることになる。安倍政権は、天皇賛美を最大限に利用しぬき、改憲の野望にむけて踏みだそうとする。その初戦として本日の反天皇闘争集会を開催した。

放射能汚染と
「海づくり」宣伝
天皇制賛美行事である『第三六回全国豊かな海づくり大会?やまがた』が九月一〇日〜一一日に山形県で開催される。「漁業の推進等を通して水産業の振興と発展をはかることを目的に、天皇皇后両陛下のご臨席を通例として、毎年各県持ち回りで開催」し、大震災と原発事故による被害から「復興」を目指す機会と称して漁業、諸団体、学生たちを動員する。しかし福島原発事故は深刻な状態であり、汚染水放出による海洋汚染を拡大し続けている。この現実を直視せず、隠ぺいするために「海づくり大会」=天皇賛美づけを推し進めているのだ。
二〇一六年岩手「国体」、二〇一八年福島「植樹祭」へと続き、二〇二〇年東京オリンピックをゴールに演出が大仕掛けになっていくだろう。そもそも「海の日」は、一九九五年戦前の「海の記念日」を復活・制定したのであり、天皇制への民衆統合の一環だ。天皇賛美を許してはならない。
鈴木雄一さん(反戦反天ネット山形)は、「東北(支配)と水産業」というテーマから東北の地域歴史と水産業、山形県の水産業の現状についてスケッチしたうえで、「福島原発事故による福島県の魚汚染は、国は基準を超えるものはなくなったと言っているが、民間レベルで測定すると基準値を上回りウソであることが明らかになっている。宮城県の漁業は、水産基本法によって大型化を押し付けている。これまでの漁業協同組合は、じゃまとなり、経済特区へと再編しようとしている。つまり、東北の水産業は原発汚染も含めて産業だという強引に位置づけて、カネをつぎ込んでいるのだ。『海づくり大会』は、このような東北の『復興』のために演出される」ことを強調した。

皇室典範改定と
イデオロギー攻勢
天野恵一さん(8・15反「靖国」行動実)は、「天皇行事の政治的意図」について次のように問題提起した。
「天皇の『生前退位』が発表された。今日の集会は、偶然だが歴史的なものとなっている。天皇のXデープログラムに対して最初の反撃の集会となった。『生前退位』というシグナルをどう受け止めるか。昭和天皇のXデープロセスを検証してきたが、日本列島をめぐる自粛騒ぎだった。今回は、同様な形では進まないだろう。『平成天皇』のXデーは、生きたまま始まった。皇室典範改正の問題が出てくる。天皇が生きたまま即位したり、元号が変わったりする。具体的にどう反撃していくかを自覚しなければならない」。
「アキヒトは、諸儀式で間違いをしたり、火葬ではなく土葬にしてくれなど自分の死に対して介入しだしていた。くたびれたから退位できないだろうかということだ。安倍ら官僚も大筋で了解し、『生前退位』が明らかとなった。宮内庁は、『否定』した。皇室典範を変えろというのは政治的行為だからだ。天皇の意向で法律を変えますとはいかない。象徴天皇制の自己矛盾を露呈しながらXデーが始まった。今後、このことがどのように押し上げられていくか注意する必要がある」。
「安倍政権下で平成Xデーが始まってしまった。ヒロヒトXデーに抗して日本中で反対集会をやり、駆け回った。アキヒトXデーは権力側による複雑怪奇なプロセスで始まった。今後の天皇儀礼は、全部Xデープロセスで演出される。棄民化政策、被災者の切り捨てを行いながら『震災の復興』を演出する。その総仕上げは、『復興』茶番の東京オリンピックだ。このことを同時に考えていかなければならない」。
「共産党は、天皇出席の国会開会式に出席した。これまでの象徴天皇の政治化を制限し、許さないという立場から象徴天皇条項の『解釈改憲』に屈服し、『民主的改革のための積極的対応』だと言い出している。護憲派の総崩れに対して見ているだけではだめだ。やはり『違憲の行為はやめろ』という土俵で共闘していくような言論と運動をどのように作っていくかが、かなり大切な局面に入っていくだろう。『天皇の行為は違憲だ』と主張する人々との共闘枠を考えていく必要がある。討論の渦を作り出していこう」。
 最後に主催者から七月三〇日(土)の「討論集会「聖断」のウソ――天皇制の戦争責任を問う/講演:千本秀樹(午後六時/文京区民センター2A)と八月一五日(月)の反「靖国」行動(午後二時三〇分集合/在日韓国YMCA)への参加が呼びかけられた。   (Y)


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