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    かけはし2016.年8月8日号

「小池勝利」で問われる課題


都知事選

野党共闘と草の根民主主義の再確立を

今こそ民衆運動の連携強化へ

格差・貧困と闘い強権政治はねかえせ

政党支持の流動化

 舛添前東京都知事が政治活動費をめぐる不正によって辞任したことを受けて、参院選投票の三日後の七月一四日公示、七月三一日投票という慌ただしい日程で東京都知事選が行われた。今回の知事選では、当初求めていた自民党東京都連への支援を受けないまま立候補した小池百合子前衆院議員・元防衛相が、自民・公明・こころに支援された増田寛也元総務相・元岩手県知事や、民進、共産、生活、社民の野党共闘が支援する元ニュースキャスターの鳥越俊太郎氏に大差をつけて圧勝した。
 投票率は、前回二〇一四年二月都知事選の四六・一四%を一三ポイント以上上回る五九・七三%となり、二〇一二年の六二・六〇%を下回ったものの、二一世紀になってからの六回の都知事選の中では二番目の高さだった。
 小池百合子の得票は二九一万二六二八票、増田寛也は一七九万三四五三票、鳥越俊太郎は一三四万六一〇三票。これを直近の七月一〇日投票の、参院選東京選挙区与野党候補の得票数と比べてみれば、自民・公明・こころにおおさか維新の田中康夫を加えた票数の合計が三三四万一一八七票であるのに対し、野党共闘を構成した民進・共産・社民の得票数に「怒りの国民連合」の小林興起を加えた票数の合計は二四七万三一四五票となる。すなわち参院選での与党支持票のうち、増田に投票したのは約半数、野党支持層のうち鳥越に投票したのも約半数ということである。
 実際、朝日新聞の出口調査によれば、今回の都知事選で自民支持層の四九%が小池に投票し、増田に投票した四〇%を上回った。公明党支持層では六九%が増田に投票したが、二四%は小池に流れた。他方、野党支持層ではどうか。ここでも野党支持層のかなりが鳥越ではなく小池に流れたと分析されている。同じ朝日新聞の出口調査では、民進支持層の二八%が小池に投票し、鳥越票は五六%にとどまった。共産党支持層でも一九%が小池に流れた。また社民・生活支持層の約二割が小池に投票し、無党派層では小池への投票が五一%と過半数を占め、鳥越への投票は一九%にとどまったとされている(朝日/八月一日朝刊)。さらに東京新聞によれば、前回、宇都宮健児候補に投票した人で鳥越に投票したのは半数にとどまり、三割弱が小池に、一割が増田に投票したという。

顕在化しなかった争点


 このように見た場合、自民・公明が圧倒的多数(定数一二七のうち自民五六、公明二三)を占める都議会与党に支えられ、強大な権力を持つ東京都知事が、猪瀬、舛添といずれも任期半ばで「カネ」にまつわる不正行為で辞任に追い込まれるという事態を巧みに利用した小池百合子の描いたシナリオはみごとに功を奏したということができる。
 小池は、都議会自民党の悪に孤軍奮闘で闘いを挑む「ジャンヌ・ダルク」として自らを描き出し、いったんは都議会自民党に支援要請を出しながら、それが受け入れられないことをあらかじめ予測した上で、敢えてその支援要請を撤回し、「単身、悪に挑むヒロイン」というイメージを打ち出すことに成功した。こうして参院選の対決構造が深まる中で浮上した都知事選は、当初から小池百合子のペースで進んでいったのである。
 昨年の「安保関連法国会」を引き継ぐ最大の政治決戦となった参院選と並行して進む都知事選の準備は、こうして参院選終了後わずか四日で公示というスケジュールの中で、本番直前に候補を決め、「政策」も不明確なままスタートすることになった。
 オリンピック、再開発、保育・子育て・医療、高齢者、格差と貧困、教育、環境などをはじめとした東京都が抱える深刻な諸問題に対して、民主主義・住民参加と自己決定、情報公開をベースにどのような政策を打ち出していくのか――こうした諸問題を明確な争点としてどのように打ち出していくかは、選挙戦の中で論議される余地はほとんどなくなってしまった。

宇都宮健児氏の主張


 二回の都知事選に立候補し、自公与党が押し立てた猪瀬、舛添との論戦を挑んだ、宇都宮健児弁護士(元日弁連会長、反貧困ネットワーク代表)は、今回の舛添辞任に伴う東京都知事選に三度目の挑戦を行うことに意欲を燃やしていた。宇都宮さんは毎回、都議会を傍聴し、東京都が直面する諸問題を明らかにし、住民参加の民主主義によって問題の解決を進めるためのプログラムを提起していた。
 宇都宮健児さんが中心になった「希望のまち東京をつくる会」の「東京改革2016」は「1:都政のすべてを都民のために 2:『困った』を見捨てない、頼りになる都政 3:子どもたちのことを第1に 4:にぎわいとふれあい あったかみのある東京へ 5:3・11をわすれない。原発のない社会をめざす 6:コンパクトでシンプルな五輪 7:人権・平和を守る東京を」からなる政策を示している。
 しかし事態は宇都宮さんの、こうした思いを飛び越えて進むことになっていった。参院選投票日の七月一〇日から、都知事選公示までの実質三日間で、自公両党は元岩手県知事の増田寛也を与党候補に決め、民進、共産、社民、生活の四党は、一定の成功を収めた「野党共闘」の枠組を次回の国政選挙まで拡大・発展させることを至上の目標として、鳥越俊太郎氏を共同の候補者にすることを決定したのである。それはまさに「政策」も定まらないままの決定だった。
 宇都宮健児さんは、民進党が主導して進められたこの「政策不在」の候補者決定に対して都知事選後、「日刊スポーツ」などのインタビューの中で厳しい批判の言葉を投げかけている。宇都宮さんは、「週刊文春」などが報じた鳥越氏の「女性の人権侵害」問題に対しても批判した。
 われわれは、都知事選においても「野党共闘」の枠組を発展させる必要があるという立場から、鳥越俊太郎候補への投票を呼びかけた。しかし今回の都知事選の結果は、あらためて候補者選定のためのプロセスや政策の具体化をふくめて、「時間がない」ことに解消されない重要な問題を提示している。市民運動の側が、各級選挙との関連でどのような立場を取り得るか、ますます主体的な決断が問われることになるだろう。

レイシストの公然登場


 新東京都知事になる小池百合子は、安倍政権を支えて憲法改悪をめざす極右の「日本会議」メンバーであることを問われて、八月一日の記者会見で「ここ数年は距離を置いているが、日本の国益、伝統、歴史は大切にするという点では賛成している」と述べた(朝日新聞 八月一日夕刊)。彼女が外国人参政権に反対の立場であることも、同記事は触れている。
 「日本会議」の小池百合子が圧勝した今回の都知事選で、もう一つ注目しなければならないことがある。それは「ヘイトスピーチ」の開祖とも言うべき「在日特権を許さない市民の会」元会長の桜井誠が初めて立候補し、主要三候補以外の一八人のうち二番目の一一万四一七一票、一・七四%を獲得したことである。これは決して無視すべきことではない。
 安倍政権の下での憲法改悪・戦争国家への攻勢は、政治状況全体の極右・強権主義化の中でこうした公然たるレイシスト集団の選挙への登場を伴ったものになることに、われわれは注意を払わなければならないのだ。(八月二日 平井純一)


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