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    かけはし2016.年8月8日号

野党共闘はいかに実現されたか


参院選

寄稿

新潟選挙区、森ゆうこ氏が大激戦の一人区を制す

中山 均(新潟市議・緑の党)

 七月参院選で最も注目を浴びたのは一人区の野党共闘がどのような結果をもたらすかであった。結果は一一の一人区で野党共闘が勝利し、十分ではないにしても注目すべき成果を得たと言えるだろう。今週号では、緑の党の中山均さんから新潟での勝利について報告していただいた。北海道からも報告を寄せてもらった。(編集部)

積み重ねられた共同行動

 昨年の安保法制の制定を前後して進んだ野党と市民運動の共闘や連携は新潟でも積み重ねられ、全国版「市民連合」の動きに呼応して「市民連合@新潟」が今年一月に発足し、共同代表には佐々木寛・新潟国際大教授(日本平和学会会長)をはじめ、学者・弁護士・「ママの会」の代表などが就きました。この「市民連合@新潟」が参院選で共闘に向けた各政党間をコーディネートし、議論が進められました。
しかし、実際の候補の絞り込みは難産で、元職の森ゆうこ氏を含め、各党最大四名が名乗りを上げた時期もありました。結局、県内に現職六名を擁する民主(現・民進)党が党所属独自候補の擁立を断念し、最終的に森ゆうこ氏で野党統一を決定、五月末、連合や民進党も含めて各野党が推薦する枠組みが実現することになりました。

 臨戦態勢へ

 本番までに急ピッチで選挙態勢が組まれました。「オールにいがた平和と共生」という確認団体のもと、私の所属する緑の党も含め、各政党や団体は「連絡調整会議」という枠組みに参加、この会議は本番最後まで選挙戦の戦略・戦術に関する協議や情報交換の場として機能しました。
元職である森氏の個人事務所の体制は必ずしも十分ではなかったため、野党は選対にスタッフを派遣、私も事務局の一翼を担いました。各政党・団体は県内各地で協力体制を構築し、出遅れを取り戻すべく、精力的に事前活動に力を注ぎ、本番を迎えました。

国家権力との対決

 自民党安倍政権は、事前の世論調査に基づき、接戦となっている一人区に全力投入する戦略をとり、新潟は長野などと同様、首相や閣僚・党幹部クラスが連日乗り込んでくる異常事態となりました。バングラデシュでのテロ事件の直後でも、NSC(国家安全保障会議)の要役である官房長官がそれを放り出して選挙応援に来たり、安倍首相自身も選挙戦直前を含めて三回新潟入りしています。自民党やそれを支援する「日本会議」は、本番中も違法ビラや中傷ビラを新聞折り込みするなど、なりふりかまわない活動を繰り返しました。政権の意向を忖度し萎縮して、明らかな違法ビラを折り込みする業界の実情も深刻です。
自民党のカネと強権を使った組織戦に対抗し、私たちは各政党の特色を活かし、それぞれ全力で取り組みました。森氏がかつて民主党を離脱した経緯から懸念された民進党の対応も、最終盤に向けて次第に一枚岩となって行き、国会議員や各地方議員のがんばりは脇から見ていてもはっきりわかりました。また、市民連合や「ママの会」などのボランティアにも支えられ、事務所には育児コーナーが設けられるなど、業界・議員主導の組織選挙の自民党陣営と対照的な「市民選挙」で運動が進められました。
また、昨年以来、私も世話人を務める「自治体議員立憲ネットワーク」には、民進・社民・緑・無所属の自治体議員が参加し、この枠組みを媒介にして共産党との連携も深めてきましたが、地域や議会で積み重ねられた協力関係がそのまま選挙戦に活かされました。さらに、国政野党四党に加え、国会に議席を有しない緑の党や新社会党もこの選挙戦の重要な一翼を担い、各野党の党首・幹部クラスが応援に駆け付けた二度にわたる大街頭演説会では、私も司会の大役を与えられました。私たちも事務やポスティング・街宣などを分担するだけでなく、政党や団体に組織されない無所属議員への協力要請など、大政党の手の届かないところへの働きかけを意識的に強化しました。
新潟の野党共闘の枠組みは、これまでの各地域や議会での連携の積み重ねが基盤となったことに加え、私たちのような少数政党も尊重される政治文化と、少数政党の側も独自の貢献を果たしたということが特徴のひとつだったと言えます。
選挙期間後半は、各種世論調査の多くが自民候補の一歩リードでした。しかしその差は一〜二ポイント、「この差は引っくり返せる」ことを確認し、選対は最後の猛反撃に出ました。「オールにいがた」の共同代表も務める佐々木さんは県内JA単協に乗り込み、農業やTPP問題を議論して協力を要請、最終盤では元自民党で自治大臣も経験した白川勝彦氏が森候補の応援に立つなど、ウイングがさらに広がりました。また、無所属議員も含め、支援する野党議員は後援会名簿への徹底した働きかけを展開し、票の押上げを図りました。
開票日当日の結果は大接戦で、開票率九九%の時点でも「当確」とならず、最後の最後で森ゆうこ候補が約二八〇〇票差で勝利を獲得しました。
各政党が文字通り全力で取り組み、懸念された民進党支持層も九五%、そして無党派層の圧倒的多数が森候補に投票したことが報道機関の調査で判明しています。野党共闘の勢いと、無党派層への支持拡大がこの結果をもたらしたと同時に、「アベノミクス」「経済」「改憲」が有権者の圧倒的支持にはつながらなかったことが表れています。
ただし、森候補の得票数はこれまでの国政選挙の野党票の総計に近い一方、自民党候補の得票数はこれまでの同党票を大幅に上回っていることも冷静に見る必要があります。過去の選挙で野党の各候補が掘り起こした票の総計と森候補の得票数を単純には比較できないこと、一人区となった激戦で自民党側もこれまでで最大規模の取り組みだったことなどを考慮すると簡単な議論はできませんが、約半数の有権者の「死票」にこめられた地域経済や雇用・生活への期待は、野党の側もしっかりと受け止める必要があると思います。
いずれにせよ、得票数の差は投票総数のわずか〇・二%、誰が欠けても、またどの取り組みが欠けても、この勝利はあり得ませんでした。しかし、わずかな差とはいえ、政権・自民党が文字通り全勢力をかけ、全組織をフル回転して取り組んだ選挙で、堂々それを跳ね返したことは、野党と市民の側の「大勝利」です。私もこの大勝利に貢献できたことを誇りに思います。
選挙戦を通じて一層強まった各野党や市民運動の仲間たちとの信頼と友情も大きな財産となりました。また、「市民連合@新潟」の代表メンバーらが自ら野党や団体と交渉し、保守系組織にも働きかけ、会議を仕切り、積極的な方針を次々打ち出していったことも、この選挙戦の特徴です。ともにこの勝利を勝ち取ったすべての関係者の皆さん、そして県内・全国で応援していただいた皆さんに、あらためて敬意を表したいと思います。

北海道

民進党が2議席獲得!

TPP反対の意思の表れ

札幌 ST


道民はアベノ
ミクス反対だ
改選数が二から三に増えた参院選北海道選挙区は民進党が二議席を獲得し、自民党が現職一議席を守るにとどまった。
道選挙区には一〇人が立候補し、自民党、民進党はそれぞれ二人、共産党は一人を擁立した。
民進党新人の鉢呂氏は「憲法改悪、TPPに北海道からストップをかけよう」と訴え、また現職の徳永氏も平和主義の重要性や格差是正などの基本政策を伝えることで当選を果たした。
一方、TPP批准は高品質な道産品の販路拡大につながると主張した自民党新人は落選し、TPP反対を鮮明にした民進党の二候補が当選したことは、道民のTPPに対する不安・反対の意思の表れと言っていいだろう。
また、安全保障関連法=戦争法の廃止を訴え、改憲にも否定的な姿勢を示した民進党、共産党の三候補の道選挙区での合計得票率は五〇・七%、対する自民二候補のそれは四四・四三%。
規制委の審査中である北海道電力泊原発を巡っても、再稼働すべきだと明言した自民党候補は落選した。
いずれも、安倍政権と与党が参院選の争点から憲法改悪、原発再稼働などを隠し、「アベノミクスの成果」を前面に出した選挙キャンペーンに対する、道民による明確な反対の態度表明だろう。
道選挙区での民進党の躍進は比例代表の道内得票率にも現れている。

衆院選共闘
に向けた展望
自民党が前回比二・六四ポイント増に対し、民進党は旧民主党時代の前回に比べて一三・八二ポイント増の三〇・六二%であった。
徳永氏は連合北海道の支援を受け自民党現職に次いで五六万票。民進党道連が中心となって支えた鉢呂氏は、落選した自民党新人に九千票差で四九万票。票割りをせずに、奇跡的なほどにきれいに票を分け合った。
また、共産党支持層からも九%が鉢呂氏、六%が徳永氏に票が入った。
こうした有権者の行動は、昨年からの戦争法成立阻止の労働者・学生・市民の運動と、今年四月の衆院道五区補欠選挙での野党共闘の成果であろう。
共産党新人候補が当選圏から外れたとみて、共産党支持者が「改憲勢力三分の二阻止」の一点で動いたのではないかとみられている。
次期衆議院選においても共産党道委員会は衆院道五区に候補者を擁立せず、民進党公認候補を支援すると報じられている。
二〇一八年九月までの自民党総裁任期中の改憲を目指す安倍首相。秋の臨時国会から改憲論議を加速させようと目論んでいる。
改憲勢力は参院の三分の二を獲得し、衆参両院で改憲発議が可能となり、安倍政権の暴走に対抗する「改憲阻止」「戦争法廃止」の連帯の輪の拡大が急務となっている。

7.28

自治体議員立憲ネットが集会

沖縄の闘いが提起する課題

 七月二八日、東京・水道橋のYMCアジア青少年センター9階国際ホールで「憲法・沖縄問題から見る参院選後の政治」というテーマで集会が行われた。主催は自治体議員立憲ネットワーク。同ネットワークは二〇一四年六月に結成され、民進党、社民党、生活者ネット、緑の党、無所属の地方議員などによって構成されている。会員・サポーター合わせて八三六人と発表されている。
 この日の集会のメイン報告者は、さる七月の参院選沖縄選挙区で「島ぐるみ」候補として現職の自民党閣僚・島尻安伊子候補に一〇万票以上の大差をつけて圧勝した伊波洋一さんと、六月の沖縄県議選で翁長県政与党の勝利に貢献した仲村未央沖縄県議(社民党)。集会には立憲ネット会員など一〇〇人以上が参加した。

伊波洋一さんが
語る高江の攻防
伊波さんは、先日、高江のヘリパッド建設強行をめぐって現地で行われた攻防から話を始めた。
「辺野古現地で一〇〇〇人規模の集会が開かれるまでには一九九七年から数えて一七〜一八年かかった。決定的だったのは二〇一四年六月に辺野古現地に三六〇〇人を集めた集会だった。この闘いが一一月沖縄県知事選での翁長勝利に結びついた。高江では七月二一日の集会に一六〇〇人が参加することで、二〇〇七年から始まった攻防から一〇年かけて同様のことが始まろうとしている」。
「アメリカでは自国の住民が被害を受けているようなところでは軍事訓練など行わない。ところが日本政府は米軍に対してどのような要請もしていない。オスプレイの訓練は、北部訓練場の多くの部分が返還されて貴重な自然環境が守られる、などというキャンペーンと矛盾している」。
「一九九六年の普天間基地返還合意の内容はどんどん変わっており、普天間代替施設は辺野古以外にないという主張がいかに現実離れしたものであるかが明白だ。これは対米従属的な政権の本質を明らかにするものだ」。

「国家緊急権」
の先取りか?
仲村さんは辺野古や高江で見られている事態が、憲法改悪の主な内容の一つである「国家緊急権」の先取りだ、と強調した。
「沖縄では、現職の閣僚をやぶって伊波さんが参院選で圧勝した。これで沖縄の選挙区で選出された自民党の国会議員はゼロになった。しかしその翌日、何が起こったかのと駆けつけた県職員を県道から追い出して工事資材の搬入が強行された。『ヤンバルの森を世界遺産に』と言いながら、この仕打ちだ」。
「島ぐるみの闘いの構造は、オスプレイの配備に反対するために沖縄の四一の市町村長と自治体議会の議長・副議長すべてが二〇一三年一月二七日〜二八日に『建白書』を持って東京にかけつけたところから始まる。そのオスプレイがいま、那覇市、宜野湾市、沖縄市など沖縄じゅうを飛んでいる。夜の一〇時、一一時まで飛ぶので眠れない子どもたちもいる」。
「辺野古埋立て工事をめぐる裁判所の和解勧告は、このままでは国は負けますよ、ということだ。その根底にあるのは沖縄に米海兵隊がいなければならない理由がないということだ。埋立てのための土砂の県外からの持ち込みを止める運動もさまざまな形で展開されている。沖縄は絶対に内向きにならない、外に向かって発信する価値を私たちは共有している。内向きになっているのは日本だ」。

利益誘導と脅
しに打ち勝つ
沖縄からの二人の発言を受けて、参院選一人区で激戦の末に勝利した新潟の森ゆうこさんがアピール。
「『オール新潟平和と共生』というゆるやかな連絡調整会議を作って参院選を闘った。自民党は『森ゆうこを絶対に落とせ』ということで安倍首相が三回、小泉進次郎が二回も新潟を訪れる力の入れようだった。安倍自らが有力者に直接電話かけをした。いわば国家権力VS森ゆうこという構造だったが、この闘いに勝利した」。
会場からは、普天間市長選での敗北の原因などについても質問が出された。
伊波さんは語った。
「佐喜真現市長は、普天間の基地被害を一刻も早くなくすというところに焦点を合わせ、辺野古新基地の問題については封印した。短期間の選挙戦で何を焦点化するのかについては十分な検討が必要だ。これは都知事選についても言えることなのだが、有権者の関心は保育だけではない。私たち自身が日本の政治のあり方を正面から打ち出す必要があるのではないか。宜野湾市長選ではもっと普天間の問題を中心に据えて強調すべきだった、と感じている。市民がそれぞれ運動に参加できる関係の掘り起こしも必要だ」。
仲村さんは「利益誘導と恐怖心を利用したキャンペーンに打ち勝つことが必要」と語った。
最後にSEALDs琉球のメンバーで宜野湾市出身の元山仁士郎さん(国際基督教大学生)が、沖縄からかけつけてアピール。元山さんは前々日、前日と高江の攻防に参加していたという。
「沖縄でも二〇代、三〇代は反対運動に対してさめた意識を持っており、佐喜真現市長に投票する傾向があった。若い人は参院選でも島尻に投票する傾向にあったという。そこで改めて対話が必要になる。『翁長さんは中国からカネを貰っている』といったデマが受け入れられる動きすらあるからだ。『そんなカネを貰ったりしたら、そもそも違法だろう』というところから話して納得させなければならない」。
SEALDsは八月一五日をもってひとまず区切りをつけて解散し、今後の新しい活動をめざす」という。参加者たちは連帯と激励をこめて元山さんの発言に拍手を送った。    (K)



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