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    かけはし2016.年8月8日号

われわれには反戦の政府必要


英国

チルコット報告 反戦の大義裏書き

民衆への支配階級の犯罪許さず
責任のがれと開き直りに追撃を

フレッド・レプラート

 つい先頃英国の公式的イラク戦争調査組織から報告(チルコット報告)が公表され、それがブレア政権の責任を厳しく指摘しているとして、世界的に大きく取り上げられた。これは、日本政府を含み当時ブッシュ政権に無批判的に追随した世界のエリートたちの「犯罪」を再確認することにより、彼らの正統性にあらためて痛撃を与えている。以下は、この報告の意義を英国政治に即して確認しつつ、左翼に提起される任務を明らかにしている。(「かけはし」編集部)

既成エリートを追い詰めた民衆


英国のイラクでの戦争に対するチルコット報告は、英国の既成エリートとトニー・ブレアに対し致命的な裁断を下すことになった。その結論は、戦争は不要だったというものであり、その理由は、平和という選択肢のすべては使い尽くされていず、サダム・フセインからの差し迫った脅威はまったくなかった、というものだ。その上でチルコットは、戦争後の計画では大失態だったとして、ブレアと彼の政府を厳しく批判している。チルコットはブレアを嘘つきと責めてはいないかもしれないが、そのことは、この報告の中で読み取られ得るただ一つの結論だ。
バトラーとフットンによる、この戦争に関する前の二つの報告は、ブレアと既成エリートの責任を免れさせていた。七年に及ぶチルコット調査組織の設立は、唯一、ストップウォー連合および戦争反対軍人家族会の粘り強さを通してのみ可能となった。その報告は、真実全体を暴露する寸前まで到達し、既成エリートたちにめまいを起こさせつつある。結果として、米国と英国は、この戦争の結果としてイラクと中東を巻き込んだ惨害について、互いに責任を押しつけあっている。
チルコット報告は、反戦運動が二〇〇一年以後力説してきたことの正しさを裏書きしている。二〇〇三年二月一五日ロンドンでストップウォー連合を先頭に行進した二〇〇万人、そして世界中の六〇〇都市でデモを行った他の数百万人は当時、ブレアが嘘をついていたこと、戦争を正当化するものなど何一つないことを分かっていた。当時の世論調査すべては、圧倒的な反対を示していた。
ブレアと彼の政府は、英国の民衆多数に背を向けることによって、民主主義に対する侮蔑を示した。彼らはこの点で既成エリート、保守党、メディアから十分な支持を受けた。二〇〇三年三月に下院指導者を辞任したロビン・クック、大量破壊兵器はまったくないということを確認した国連主席査察官のハンス・ブリックス、イラク侵略は英国へのテロ攻撃を大いに増加させる可能性があると警告したMI5トップのエリザ・マニングハム―ブラーといった、僅かな例外もいくつかあった。
戦争に対するこの国の大量反対にもかかわらず、二〇〇三年三月一八日、労働党と保守党のほとんどを含む、四一四人の下院議員が戦争に賛成投票した。今日、これらの議員のうち一三九人――労働党六六人、保守党六九人――が今も議員を続けている。ジェレミー・コービン、ジョン・マクドネル、ダイアン・アボットは、ブレアに公然と反抗した八五人の労働党議員の中にいた。しかし今コービンに挑んでいるアンジェラ・イーグルは戦争を支持したのだ(その後支持の低さが判明し撤退:訳者)。

「テロとの戦争」の本当の役割


二〇〇三年三月に始まったイラクでの戦争は、第二次世界大戦以後の他のどれよりもはるかに深刻でかつ長期に続く結果を残すことになった。一九七五年のベトナムにおける米国の軍事的敗北は、ベトナムに平和をもたらした。それはまた二〇〇一年まで、米国が大規模な軍事介入に乗り出すことを妨げた。そしてこの二〇〇一年米国は、NATOの支援の下に、九・一一のテロ攻撃の後アフガニスタンに侵攻した。
ツインタワーに対する二〇〇一年九月の攻撃は、英国のような忠実な同盟者たちと共に、永遠に終わることのない「テロとの戦争」に乗り出すために、米帝国主義がつかんだ好機となった。
「テロとの戦争」は、西側帝国主義に対する支持をつなぐ思想的接着剤を提供するもくろみだった。実際西側帝国主義は、ソ連邦と中国からの脅威に対し諸国家を動員する冷戦というムチをそれまでに失っていたのだ。したがってそれは当時、その経済的権力と歩を並べる軍事的力を再確立するために、軍事介入を正当化する新たなものを必要としていた。米大統領のジョージ・ブッシュは二〇〇二年、北朝鮮、イラン、イラクは「世界の平和を脅かす悪の枢軸」を構成する、と宣言した。それゆえ戦争は、悪とテロに対決する必要物となり、軍事介入は体制変革と民主主義の創出にとって基礎的なものとなった。
アフガニスタンとイラクに対する戦争と占領は、悲劇的な結末をもたらした。少なくとも一七万四〇〇〇人の、そしておそらくは一〇〇万人にのぼる非戦闘員が死亡した。また、四四九一人の米軍人と一七九人の英軍人が殺害された。イラクでの戦争と占領は、英国には一〇〇億ポンドの負担となり、それがアフガニスタンで費消された二〇〇億ポンドに上乗せされた。

中東に残された寒々しい諸結末


戦争の悲劇的な長期的結末が、戦争期間中に起きた殺人と破壊という悲劇に上乗せされている。トニー・ブレアは今なお、サダム・フセインが取り除かれなかったとすれば世界と中東はさらに悪いものになっていただろう、などと主張し続けている。彼は「この闘争は結局効果がなかったなどとは私は信じない」とBBCに語った。
終始決算書は軍事作戦の一三年後に、誰もが見える形でここにある。イラクでの戦争は、テロリストのアルカイダとISISの発展をつくり出した。チルコット報告発表の前日、バグダッドの自爆攻撃が、三〇〇人近くを殺害した。イラクでの体制変革は、民主主義ではなく、腐敗と宗派主義と暴力をもたらしているのだ。
この地域の光景はまさに寒々しい。アフガニスタンでタリバンは敗北していない。シリアの民衆は、ISISと残忍なアサド独裁体制という二つのバーバリズムを源とする五年の内戦を今耐えている。おそらく五〇万人が死亡し、五〇〇万人が難民として国を逃れ、さらに同じ数が国内難民となっている。イスラエルがその不法な占領と入植地建設を続ける中で、パレスチナ民衆にとっての公正な平和は今なおまったくない。湾岸首長諸国の原理主義的宗教体制の独裁は続いている。彼らが帝国主義の忠実な連携者だからだ。民主主義と社会的かつ経済的公正に向けて希望を与えたアラブの諸蜂起は、失速するにいたった。これはエジプトでもっともはっきりしている。ここでは、選挙で選ばれた大統領であるモルシに対する軍事クーデターを率いたエル・シシの新政権を、帝国主義が後押ししている。

西側でも民主主義破壊が続く


そして西側においても、この戦争は否定的な諸結果をもたらしている。諸々の市民的自由は、「テロとの戦争」を名分に縮小されてきた。そこには、「過激主義」のそぎ落としを追求するとする、つい先頃の予防戦略が含まれている。この予防戦略で政府は、過激主義の定義を極めて緩い形で定めた。つまり、「民主主義、法の支配、個人的自由、および異なった信仰と信念に対する寛容と相互の尊重を含んだ、原理的な英国の諸価値に対する言葉と行動による反対」としてだ。これが王室や貴族院に対する暴力ではなく言葉や行動での反対、あるいは不公正な諸法に対する市民的不服従を含む可能性があることは、容易に理解可能だ。
九・一一直後にブッシュは、テロとの戦争を「文明の衝突」として定義した。これが、広範囲に広がる全般化の形でイスラムはテロリズムと結びついているとして、イスラム嫌悪とレイシズムを正当化した。英国内を含む右翼勢力と民族主義勢力は、イスラムは西側社会とは相容れない、と言明できた。国民投票での離脱決定後に解き放たれたこのレイシズムは、この一五年の中で十分に準備された土台を得ていたのだ。
英国はその上、拷問や裁判なしの投獄などに協力した。これはチルコット調査の範囲を超えたものだったとはいえ、アフガニスタン、イラク、グアンタナモに置かれた、悪名とどろく地獄のような施設における英国の共同行為については、今なお明かされるべきものが多く残っている。しかしわれわれはカダフィ大佐のリビア人敵対者を通じて、秘密裏に独裁者と協力していた英国から彼らがだまされ、次いで拷問と投獄のために国に戻された、ということを知っているのだ。
結局のところ西側帝国主義は、民主的だが自立し民衆的な諸国家よりも、むしろ忠実だが残酷な独裁者と共に活動するだろう。英国は何十年間も、彼の忠誠を失うまでサダム・フセインと共同してきた。リビアとの外交関係は、カダフィが残忍な独裁者であるにもかかわらず、疑いなくうまみのある石油に関する諸契約を目的に、二〇年続いた凍結後に再確立された。
世界をより良い場所にするために「善意をもって行動した」とブレアが言明するのは、まさに信用に値しない。彼は、その結果がどうなろうと、英帝国主義の利益、および米国の戦略的な同盟者としてのその役割の確保のために行動した。実際彼はブッシュに宛てて「何があろうと私はあなたと共にある」と書き送っていた。彼と既成エリートに対する政治的結果が今判明しようとしている。彼はどこに行こうと追跡対象になる、と予想することも可能だ。在任中の職権乱用、損害賠償、あるいは議会での弾劾といった法的対応にも現実性がある。

既成エリート拒絶と左翼の課題


しかしこの戦争の結果としてある最大の政治的結果は、保守党と労働党双方の伝統的な政治的既成エリートに対する拒絶だ。彼らは、帝国主義戦争支持、また民衆に対する緊縮支持という二党補完政策を英国で遂行し続けてきたのだ。労働党指導者としてのジェレミー・コービン選出における圧倒的勝利は、疑いなく部分的には、イラクでの戦争に対する彼の一貫した反対と反戦運動における彼の役割の故だ。ここには、彼がストップウォー連合の共同議長であること、またCND(核軍縮運動)の五〇年に及ぶメンバーであることが含まれている。
イラク戦争に対してコービンが議会で労働党を代表して行った謝罪は、指導者が別の者であったのならば起きることはなかったと思われる。この言明が行われていた中で労働党議席にいたイアン・オースティン議員がヤジで騒ぎ立てたことは、議員の多くには戦争に対する自責の念などまったくないことを示している。
トニー・ブレアと共に支持投票を行うことで戦争を後押しした保守党には、一六人の議員を例外として、確かに自責の念はまったくない。キャメロン――戦争支持の投票を行った――はコービンとは異なり、謝罪することも、あるいは戦争が「失策」であったことや「誤っていた」ことを認めることすら拒否した。
チルコット報告から生じる左翼にとっての主な政治的任務は、戦争を支持した全議員を心に留め続け、ブレアを法廷に引き出すことに加えて、労働党指導者としてのジェレミー・コービンを守ることだ。彼の敵たちは、緊縮に精力的に反対できなかったばかりでなく、労働党を帝国主義的介入の用意がある戦争の党に戻したがってもいる。また大量破壊のトライデント核兵器システムを支持したがってもいる。イラクの悲劇の繰り返しを阻止するためにわれわれは、英国における反戦の政府を必要としている。

▼筆者は、ソーシャリスト・レジスタンスの指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年七月号)

イエメン

隠されたドローン戦争

EUは協力の事実語れ

ラディア・アルムタワケル

 

 世界の支配階級が呼号する「テロとの戦争」では、有力な手段としてドローンを使う攻撃が大々的に進められている。しかしそれは無責任かつ非人道的な破壊となり、むしろテロリズムをかき立てる温床となっている、との告発が続いている。以下は、このドローン攻撃に苦しめられているイエメンからの告発だ。(「かけはし」編集部)

欧州の協力国は
第三の当事者だ


 イエメンで米国が行っているドローン戦争秘密作戦――今や少なくとも一五年経っている――が続いている。欧州諸国は直接、間接に関与している。
 イエメンでは死がわれわれを取り巻いている。二〇一五年三月以来、サウジが率いる連合による空爆は、ここに記録があるものとして、四四件の中で六一四人以上の死を引き起こしてきた。しかし進行中の内戦だけがわれわれの恐れる暴力、というわけではない。イエメンで米国が行っているドローン戦争秘密作戦が、日々の暮らしを必死で送っている子どもたち、女性、イエメン人を殺し続けているのだ。それは責任を負うことから免れ、効果のないものだが、むしろ逆効果になっている。そして欧州が共謀している。それを止める必要があり、EUはそれを助けることができるのだ。
 EU議会は先頃、イエメンにおける武装ドローンが及ぼす人権への影響を議論した。これは、反テロリズム作戦における武装ドローンに関し、精度に疑問を投げかけ、人間的な負担を理解する上で、重要な第一歩だ。欧州諸国は実際、イエメンにおける米国のドローン攻撃に直接、間接に関与し、これらの超法規的殺人を共謀しているのだ。英国諜報機関は、標的を探しだし確定する上で、CIAのドローン計画で決定的な役割を果たしてきた。ドイツとイタリアの米空軍基地は、この計画にとって決定的だ。
 われわれはEU諸機関に、武装ドローン使用に関し原則的な立場を取るよう求める。われわれはさらにこれらの機関に、もっと高い透明性と説明責任を尽くすべくEUメンバー諸国に圧力をかけるよう求める。それらの諸国は、米国のドローン攻撃において三番目の当事者として責任を負わなければならない。ドイツとイタリアは、彼らの国土にある米軍基地の役割に関し情報を公開すべきだ。英国、オランダ、デンマークは中でも、こうした意図的な不法殺人に向けて諜報機関が米国と共同で使われないようにする防護措置が、適切に機能しているか否かを公開すべきだ。

ドローン称賛は
完全にでたらめ

 ドローンを支持する者たちは、市民の苦しみを限定する正確で技術的に進んだ武器としてそれを持ち上げている。われわれイエメン人はそれには同意しない。ドローンは平和も安全保障ももたらしてはいないのだ。それらがもたらしているものは、死と破壊と苦しみであり、失われ何世代にもわたって取り返しのきかない暮らしなのだ。ドローンに関してわれわれが抱く考えは、焼かれた遺体と乗り物のイメージによって、殺害された子どもたちと負傷者のイメージによって、さらに平和の不在によって、頭上のホバーリングによって形作られている。
これらの攻撃が及ぼしている衝撃は、死や負傷に限定されるわけではなく、それはまた、一家の稼ぎ手を失った家族をも破壊し、影響の及ぶ共同体の社会的、心理的な状態をも病的にしている。ひとりの犠牲者のある家族メンバーは私に、その事件以来彼女の家族は恒常的な恐怖の中で暮らしている、彼らは怖れの中で畑に行き、子どもたちは学校に行くのを怖がっている、と語った。
ドローン攻撃の戦略的な影響に関する限り現実が示すものは、これらの標的を絞った殺人戦術はテロリズムを根絶することも、その浸透を限定することもできなかった、ということだ。それらはむしろ逆効果となってきた。
ドローン攻撃にもかかわらず、イエメンのアルカイダは、その作戦が限定的な不意打ちに限られていた戦闘分子たちから、体系的な戦争を実行し、大きな領域を支配する戦士を抱える常備軍へと転じたのだ。アルカイダが支配する地域にあるイエメンの田舎は、テロリズムの地獄とドローンの地獄の砲火の間にはめ込まれている。空襲が市民を襲い殺害したところで私があった当地の人々は、今正義を求めている。彼らは無実な者たちへのドローン攻撃を、アルカイダに加わり、「殺人者」のアメリカ人に闘いを挑む動機、と見ている。標的にされた村の部族長、マブクフート・ビン・サレー・アルオバハは、この攻撃は彼の村の人びとの心中にテロ気分をつくり出し、彼らの怒りをかき立てた、と語った。つまり彼らはこの攻撃を、臆病者の作戦であるとみなし、ある者たちは、復讐すると荒れているのだ。

EUとして説明
責任を保証せよ


EUは、特にその一定数のメンバー諸国が彼ら自身のドローンを開発中である以上は、この経験から学ぶべきだ。EU諸国が確かなものにすべきは、ドローン使用に関する彼らの政策に透明性と説明責任を保証することだ。彼らは、世界の他のところでの、これらの非人間的な兵器の使用と多くの無実な人びとの殺害を制限できるのだ。
オバマ政権は先週金曜日、このドローン秘密作戦の六年間に関係する、非戦闘員の不慮の死傷者統計、および一定数の機密扱い文書を公表した。EUはこれにならうだろうか? 彼らは結論的に、米ドローン作戦への彼らの関与に関係する情報を公開するのだろうか? 現在の、またまもなくそうなりそうなドローン使用諸国家は、内外の軍事紛争におけるドローン攻撃に関する彼らの政策をはっきり語る用意があるのだろうか? EU議会は最低限であっても、イエメンとそれ以外での武装ドローン使用における、より高い透明性と監視と説明責任に対する要求、またEUの共通の立場に対する要求を何度でも繰り返さなければならない。
イエメン人には、内部的紛争からのあるいは頭上の空からの恒常的な死の恐怖ではなく、平和の機会を得る資格がある。イエメンの犠牲者家族と生き残った者たちが彼らの失われた者たちを弔い、遠くのドローンのうなりを注意深く聞いているとき、より高い透明性は、説明責任、賠償、また補償に向けた、最初の――また決定的な――一歩となるだろう。(二〇一六年七月八日)

▼筆者は、イエメンにおける人権の保護を目標とする独立したイエメン人組織である、「人権のためのムワタナ組織」の議長。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年七月号)


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