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    かけはし2016.年8月15日号

破綻明白な戦略への固執糾弾


中東

対ダーイシュ「戦争」

民主的非宗教的な民衆運動支援
こそ国際的連帯運動の中心課題

ジョセフ・ダヘル

 以下は、世界の支配階級が中東で進めている「テロとの戦争」の現状を、地域全体を見渡しつつ概観した上で、その道義のなさと逆効果をあらためて糾弾し、現地民衆に対する国際連帯運動に問われる課題を提起している。(「かけはし」編集部)

敗北の処方箋へのこりない執着

 いわゆる「イスラム国」(通称ダーイシュ)によるもっとも新しいテロ攻撃は、バグダッドの中央商業地区であるカラダで七月二日、少なくとも三〇〇人を殺害した。それは単一では、一三年前米英が率いる諸勢力が独裁者のサダム・フセインを倒した後では最悪の自動車爆弾攻撃であり、治安機関の弱体な能力に関し多くのイラク人の怒りを深めた。これは、地方と他のところでの別のテロ攻撃に続くものだった。
これは、ダーイシュが代表する脅威にどのように回答し、それをいかにして終わりにするかに関する問題を、あらためて提起している。米国が率いる西側諸国は、中東と北アフリカ地域にとってダーイシュを主要な敵と見なしていることを示してきた。ダーイシュは西側当局者の見解では、特に西でのテロ攻撃と一体的に、地域的かつ国際的不安定性の源となっている。しかしながら彼らは、ダーイシュを軍事的に止めようとするために、ダーイシュの発展に燃料を注いだものと同じ諸々の手段を使おう、と提案しているのだ。これはそれゆえいわば敗北の処方箋だ。
米国また他の西側諸国はシリアで、彼らの軍事行動をダーイシュに集中してきた。一方でアサドの権威主義体制の変更はまったく課題にのぼっておらず、実際これまでもまったくなかった。これに加えて六月三〇日オバマ政権は、シリアに関しロシア政府との新しい協定を提案した。これは、米国と接触を保っているFSA(自由シリア軍)グループに対する爆撃をロシアがアサド政権にやめさせることと引き換えに、ダーイシュとシリアにおけるアルカイダ支部であるジャブハト・アルヌスラに対し、二国間の軍事協力を深めるものとされている。アサド政権の同盟者たち(ロシア、イラン、ヒズボラ、イラク人シーア派の原理主義的民兵)は彼らで、民主的であろうと(FSA)反動的であろうと(ジャブハト・アルヌスラおよびダーイシュ)、あらゆる形態の武装反政権派の排除に向けダマスカスに対する彼らの軍事支援を、シリア人非戦闘員に対する犯罪と虐待を続ける中で継続している。たとえば南東部のデイル・エゾル市の町アルクーリエに対する六月二五日のロシア機による急襲は、三一人の非戦闘員を殺害した。一方、非戦闘員なのか、ジハーディストなのか誰も知らない他の一六人も死亡した。

反革命の双方利するだけの爆撃

 こうした爆撃から利益を受けることになる唯一の政治グループこそ実際上、反革命の二つの側、つまり一方のアサド政権、そして反動的なイスラム派とジハーディストの政治勢力だ。二〇一五年一〇月のロシアの介入以後アサド政権はわれわれが見てきたように、様々な武装グループの弱体化によって、しかしもっと特別にはさまざまな地域のFSAグループの弱体化によって、これらの爆撃から利益を受けた。実際後者こそが、ダーイシュやジャブハト・アルヌスラというよりも、ロシアの本当の目標だったのであり、この中で非戦闘員もまた、これらの爆撃から数多くの苦難を味わった。
同時にアサドの部隊は、国の様々な地域に、特に包囲下にあるアレッポの解放地域に攻撃を続けた。しかしそれ以上にこの政権は、「テロとの戦争」における一同盟者として西側に対する「正統性」を回復するという、もう一つの好機を見出している。
他方の側で、この爆撃がダーイシュとジャブハト・アルヌスラを本当に標的とするならば、おそらくそれは短期的に彼らを軍事的に弱めるだろう。しかしそれはまた同時に、もっともありそうなこととして、革命の目標を堅持しているシリア人革命派にとっては逆効果だったことが明らかになるだろう。自身を「不信心者」のアサド政権やロシアと西側の「十字軍」に闘いを挑む唯一の真剣なグループと描くことにより、ダーイシュとジャブハト・アルヌスラ、また他の反動派諸勢力に対する民衆の支持を高め、彼らの隊列にもっと多くの新人を集めることによってだ。
これらの爆撃は、さまざまな西側の国際的諸大国が反アサドのいかなる行動も考えず、またそうしてこなかった中で起きている。そしてアサド政権は、解放されたシリアの人びとに殺人的な戦争を続けている。われわれは、たとえ部分的であれ休戦が実行されるや否や、民主的な民衆運動があらためて反政権のデモを数々始めたこと、しかし同時にジャブハト・アルヌスラのようなジハーディスト勢力にも異議を突き付けたことを見てきた。マーレト・アルヌマン市の人びとは、今にいたる一〇〇日間以上も、ジャブハト・アルヌスラに抵抗を続けてきた。
アサド政権とイスラム原理主義者諸勢力双方を終わりにするただ一つの回答は、革命の目標を堅持しているFSAの民主的グループおよび民主的な民衆運動に力を与え、宗派主義とレイシズムに異議を突き付けるシリア人の様々な部分を統一することだ。

イラクでのシーア派原理主義者


イラクの場合、対ダーイシュの戦闘はイラク軍とそのエリートによって率いられている。しかしまた、イランイスラム共和国(IRI)が政治的、経済的、また軍事的に支援するが同時に、イラクのスンニ派住民の大部分からは、後述する民兵の犯罪や虐待、そして宗派的な主張や諸々の行為を理由に、特に憎まれている、シーア派の原理主義者民兵もまたそれを率いている。
イラン体制のパスダラン(イスラム革命防衛隊の俗称:訳者)の高位将校何人かが、またイラク人シーア派原理主義者民兵の高位指揮官数人が実際対ダーイシュ攻撃で、イラク軍将官と共に、苦闘を強いられた軍事作戦における戦闘と諸々の行動の前線にしばしば現れてきた。二〇一六年五月末、革命防衛隊エリート、クズ軍(対外作戦を担当とする特別部隊:訳者)のトップであるイラン人将軍のカセム・ソレイマニは、スンニ派の都市であるファルージャからダーイシュを駆逐するためにイラク軍と並んで戦闘しているシーア派原理主義者民兵軍を訪問し、この国のさまざまなイラク人スンニ派政治諸組織からの猛烈な批判を刺激する中で名誉を傷付けられた。
二〇一六年六月はじめ、現在と元の米軍人と文民当局者によって以下のことが報告された。つまり、イラク正規軍を再統一し再訓練する一七カ月に及ぶ米国の努力は、かなりの数の機能的なイラク人戦闘部隊をつくり出すことで宗派的な民兵の力を限られたものにすることに失敗した、というものだ。バグダッド北方のサラフッディン州のイラク軍作戦指揮は、シーア派原理主義者民兵指導者のアブ・メディ・モハンディスが支配している。この人物は、シーア派原理主義者民兵諸軍に対する州司令部主席の任に就いている。
しかし彼は、イラクの米軍への攻撃という申し立てを理由に、米財務省から二〇〇九年に経済制裁を受けた。彼はさらに、クウェートの一九八三年に起きた米国とフランスの大使館爆破の件で、クウェートの裁判所で欠席裁判だが有罪判決を受けた。
東部のディアラ州にあるイラク軍第五管区は、バドルグループの指揮下にあり、このグループは、イランのイスラム革命防衛隊諸企業と強い結びつきをもった、シーア派原理主義者の強力な民兵かつ政党だ。バグダッドの米軍将校たちは、イラク軍作戦指揮部を管理する三〇〇人の将校では一〇%から二〇%は、バドル派民兵かシーア派の宗教的指導者であるムクタバ・サドルのどちらかの傘下にあるか、それらと協力している、と評価している。

コインの裏表の一体的打倒へ


ダーイシュのジハーディスト反動諸勢力を終わりにする回答は、軍事的なもののみではあり得ない。特に、IRIに支援されたシーア派原理主義の宗派的諸勢力のような勢力や、ダーワ党が率いる政府に基づいて、ではあり得ない。後者は、二〇〇六年から二〇一四年、元首相のマリキの下で、宗派主義とブルジョア体制全体に異義を突き付ける民主的な民衆運動を抑圧する一方で、イラク人スンニ派住民の大多数を遠ざける、そうした宗派主義と権威主義によって特徴づけられてきた。同じ党出身の新首相、アバディは言葉上の宣伝はあるとしても、この状況に関するどのような抜本的な変革もこれまで行っていない。これらはまるまる、イラクでのダーイシュ発展に燃料を注ぐ点で重要な役割を演じている要素なのだ。
シーア派原理主義者宗派主義諸勢力とダーイシュというこれら二つの主体は、互いに成長を助け合っている。したがってそれらは、イラクがあまりに長く続いてきた悪夢を終わりにすることができるようにする、そうした社会的で進歩的な民衆運動を建設するという希望の下に、打ち破られ打倒されなければならない。
これは実際に、二〇一五年夏にイラクで勃発した民主的な民衆運動の大きな部分によって表現されてきた。それらの層は、「議会とイスラム国は同じコインの裏表」、「ダーイシュは君たちの腐敗から生まれた」といったスローガンの下に、イラクの宗派的政治体制に異議を突き付けたのだ。

反革命の成長助けた政策を断て


リビアで西側諸国は、統一政府の形成を支援した。それは、彼らが言明しているように二つの優先課題、つまりダーイシュ並びに「不法移民」との闘いに基づいて、さまざまなリビア人諸政党を結集しようと試みている最中だ。政治的かつ社会的・経済的課題は事実上無視されている。その中で統一政府は、国全体に、特に東部にその権威を拡張することはほとんどできていない。東部では、七月一日、統一政府の四人の閣僚が辞任した。このリビア東部では、民兵とリビア軍諸部隊は今なお、紛糾の種となっているカリファ・ハフタル将軍(カダフィ政権時代のリビア軍司令官:訳者)の指揮の下で、非公認の権威に対し忠誠を保っている。いくつかのEU諸国はすでに、統一政府を支援する何千万ユーロかを約束した。
左翼の運動からムスリム同胞団までの、あらゆる形態の政府反対派に対し暴力的な弾圧を継続している独裁者、シシに対する西側諸国の支援については述べるまでもない。エジプト政権の大規模な抑圧は現に、この国の中で新たなおびただしいダーイシュメンバーを生み出した。この地域の他の独裁者や権威主義的政府に対する同様な支援も、たとえばサウジアラビアや他の湾岸首長国の例のように、似たような結果をもたらしている。
しかしこの点に関し、サウジ王国を一方に置き、他方にアルカイダやダーイシュを置く戦争でわれわれが信じてならないことは、これらの原理主義的で反動的なイデオロギーが原理的に異なっているという考えだ。サウジジハーディストの一定数はワッハーブ主義の初期の文書を参照点として受け入れているが、この文書こそこの国における公式イスラムの源なのだ。そしてワッハーブを参照する他の著述家はそれを別の解釈の下に行っている。
これらすべての場合で、ダーイシュの暴力の能力すべてを軍事的に終わりにするだけでは、単純に十分ではなく、過去にそうであったように将来の再出現を見るだけだろう。そうではなく、ダーイシュをまたそのの発展を可能にした社会的・経済的諸条件と政治的諸条件に取り組まなければならない。
われわれは、ダーイシュが中東における反革命の基本的な要素である、ということを思い起こさなければならない。その反革命は、権威主義の諸体制による民衆運動粉砕の結果として、前例のない成長を経験してきた。地域と世界の諸国家の介入は、彼らの諸政策と共に、ダーイシュの発展に大きく貢献してきた。結論的に、民衆階級を貧困化した新自由主義諸政策がもちろん、民主的諸勢力と労組勢力に対する抑圧と一体となって、ダーイシュの発展においてはまた鍵を握る要素だ。そしてダーイシュはいくつかの場合に、民衆階級の一定部分に生まれた失望感をつかみ取ることができてきた。
西側諸政権はこの地域に関する彼らの戦略を変えることはないだろう。国際連帯運動としてのわれわれの任務は、これらの政策に反対し、民主的で非宗派的な民衆運動を支援することだ。そうした運動は、かなりの後退があるとしてもこの地域を貫いて継続し、ダーイシュやジャブハト・アルヌスラのような原理主義的宗教運動や権威主義体制双方に公然と立ち向かっている。こうした手段こそが、それらの再誕生に向けた過去の寄与という繰り返された過ちに代えて、先の二つのバーバリズム形態を止めることができる。(二〇一六年七月五日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年七月号) 

トルコ 

報道抑制糾弾

EUは停止求め踏み出せ

リカルド・グチエレス(欧州ジャーナリスト連合書記長)

 トルコでジャーナリストの逮捕とメディアの閉鎖が続いている中で、欧州ジャーナリスト連合と同国際連合(EFJ/IFJ)はEUに対し、エルドアントルコ大統領に報道の自由の侵害に対し責任を問い続けるための、 追加的な段階への踏みだしを要求する。
エルドアン大統領打倒を狙ったクーデターが七月一六日に失敗して以後、EFJとIFJは、申し立てによれば失敗したクーデターの背後にいると告発されている親ギュレン運動と協力しているとして行われた、数多くのジャーナリストの逮捕とメディアの閉鎖に警報を出し続けてきた。
この状況は、逮捕されるとの当地メディアの怖れが増すばかりの報道の沈黙へと導き、その結果表現の自由や公衆の知る権利といった基本的な人権を侵害する、そうした地点にまで到達した。
EFJ/IFJの最新情報によれば、公式筋の話として、七月二七日、ザマン紙の元スタッフ四七人に対し逮捕令状が出された。日刊ザマンのコラムニスト、サヒン・アルパイは、警察が早朝彼の家を手入れした後に拘留された。以前はザマンとツデイズ・ザマン向けに仕事をし、現在はIHS『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』誌(訳注)に報告記事を送っているラレ・サリイブラヒモグルは、彼女の自宅から警察に連行された。コラムニストのヌリエ・アクマン(元日刊ザマン)、元ザマン記者のアリ・ブラジとミュムタゼル・チュルケネも拘留されている。七月二七日、IFJとEFJは、ジャーナリスト二八人の拘留を数え上げた。
バイアネットによれば、ディクレニュース社(DIHA)とエズギュル・ギュンデムもまた、「当局の命令」を理由に、テレコミュニケイションズ・コミュニケイション総裁名(TIB)によって、七月二七日に閉鎖された。DIHAはこれまで今年四三回も、またエズギュルは二回閉鎖されてきたからには、そのような閉鎖はその種のものとしては初めてではない。先週には、TIB決定に続いて、ハベルダル、メイダン、メディアスコープを含む二〇の独立オンラインニュースサイトがすでに閉鎖されていた。
七月二七日夜にトルコ政府は、一三一のメディア組織閉鎖を命ずる新たな指令を発した。官報に公表された指令によれば、三つの報道機関、一六のテレビチャンネル、二三のラジオ局、四五の日刊紙、一五の雑誌、二九の出版社が閉鎖を命令された。メディア閉鎖にはいくつもの新しい媒体が含まれている。
EFJ代表のモゲンス・ブリケルと同書記長のリカルド・グチエレスは、EUとEU評議会に行動を要求する。「ジャーナリストがわれわれの前のまさにここで何十人と逮捕され続けている中で、われわれは沈黙のままにいることはできない。ユンケルEU委員会委員長と安全保障上級代表であるフェデリカ・モゲリーニ(イタリアPDの政治家:訳者)は、この懸念を呼ぶ状況を終わらせるたために、彼らの権限すべてを行使すべきである」、モゲンス・ブリケル・ブジェレガルドはこう語った。
IFJ代表のフィリップ・レルスも「EUは、自身を民主主義と称する一国における、人権条約侵害と報道封じについて立場をはっきりさせ、エルドアン大統領に責任を問い続けなければならない。この状況は即刻終わらなければならない」と語った。
両連合はこれらすべての件を、ジャーナリズム振興とジャーナリスト保護のための欧州プラットホーム評議会に報告した。
以下の行動を。
×各国の政府や同国内トルコ大使館への書状の送付。
×エルドアン大統領にトルコにおける人権の維持を求める、アムネスティ・インターナショナルの請願「苦闘の中で勝ち取られた諸権利を取り上げてはならない」(この請願は、メディアに対する不法な検閲だけではなく、停職や解雇に異議を言う労働者の権利にも触れている)の配布およびそれへの署名。
×トルコからの個人的依頼を支援する目的で、IFJ安全基金に対する寄付の送付。

訳注)ロンドンに本拠を置く情報・分析機関であるIHSが所有する、軍事・軍需企業情報を扱う週刊誌。有名なジェーン年鑑を含むジェーン・インフォメーション・グループの一部門。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年八月号) 


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