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    かけはし2016.年9月12日号

やめろ!南スーダンPKO


TICADと連動した対中戦略

アフリカをめぐる新自由主義的
投資競争と自衛隊派兵のねらい

再開・激化する内戦

 さる八月一二日、国連安全保障理事会はアフリカ・南スーダンで展開中の国連PKOについて、より強い権限を持つ四〇〇〇人の「地域防護部隊」を派遣する決議案を採択した。このPKO増派は南スーダンの「大統領派」と「副大統領派」の争いが激化し(石油利権をめぐる部族間対立とされているが、そう単純化することはできない)、昨年八月の停戦合意――今年四月の暫定政府成立の枠組が崩壊し、内戦が再開したことによるものとされる。
 七月一三日には南スーダンの首都ジュバに滞在するNGO関係者九三人がチャーター機でケニアに退避せざるをえなかった。
 八月上旬には大規模な内戦が再開し、キール大統領はマシャル副大統領を解任した。戦闘が激化しており首都のジュバ周辺や、南部でも戦闘が激化していると報じられている。中国のPKO隊員二人、国連職員もこの戦闘により死亡し、国連敷地に避難していた市民も戦闘に巻き込まれて死亡している。
 八月一二日の国連安保理決議による「地域防護部隊」追加派遣については、肝心の受け入れ国である南スーダン代表自身が「われわれの視点を検討すらしていない決議を拒絶する。主要な紛争当事者の合意というPKO原則に反している」と反対した。安保理決議案は日本をふくむ一一カ国の賛成で可決されたが、中国、ロシア、エジプト、ベネズエラの四カ国は棄権した。

PKO5原則に違反


 一一月中旬以後、自衛隊から南スーダンに派遣されるPKO部隊は、この「地域防護部隊」の一環として「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」任務に就くことになる。自衛隊からの次期派遣部隊となる青森駐屯地の陸自第五普通科連隊を中心とする部隊は、すでに八月二五日から実戦を想定した「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」の訓練を開始した。
 稲田朋美防衛相は八月一五日に東アフリカ・ジブチの自衛隊基地を訪れたのに続き、九月中旬にも南スーダンを訪問して同地の自衛隊を「激励」するとされている。これが一一月から交替派遣される自衛隊部隊の「新任務」に対応したものであることは間違いない。
 南スーダンPKO部隊の新任務は、明らかに「内戦への軍事的介入」を通じて、現地武装部隊・住民との「殺し、殺される関係」に入っていくこと、すなわち「戦争のための派兵」という安保協力法=戦争法の本当の姿をごまかしようもなく既成事実化することになってしまう。稲田防衛相は南スーダンの情勢がPKO派遣五原則(@停戦合意が成立A紛争当事国によるPKO実施と日本の参加への合意B中立的立場の厳守C基本方針が満たされない場合は撤収できるD武器の使用は命の防護のための必要最小限に限る)に適合するかを問われて、「現段階では適合している」と答えた。
 しかし最初に触れたように、八月一二日の「地域防護部隊」派遣という国連安保理決議を南スーダン政府当事者は受け入れていない。「地域防護部隊」派遣と一体の自衛隊の新任務の下での派遣は、「PKO派遣五原則」の明確な違反であることは言うまでもない。
 したがって一一月にも予定される「駆けつけ警護」など「新任務」での自衛隊南スーダン派兵は、のっけから違法なのだ。
 とにかく何がなんでも「新安保法」=戦争法の下での自衛隊PKO派兵の「既成事実」を作ってしまうことが優先されており、それが南スーダンの紛争解決に良い結果を与えるのかどうか、自衛隊員と現地住民の生命への配慮などは念頭にないというべきだ。

「アフリカ開発会議」と連動

 それではなぜ安倍内閣は、安保法=戦争法の下での南スーダンへの派兵に前のめりになっているのか。ここではアフリカの市場としての獲得・開発をめぐる対中国を意識した戦略があることに間違いはないだろう。
八月二七日からケニアの首都ナイロビで第六回アフリカ開発会議(TICAD)が開催された。日本が主導するTICADは「アフリカ」という名を冠しているものの、アフリカで開催されたのはこれが初めてである(第一回:一九九三年・東京、第二回:一九九八年・東京、第三回:二〇〇三年・東京、第四回:二〇〇八年・横浜、第五回:二〇一三年・横浜)。
これまでTICADの開催は五年に一度、東京か横浜で行われていたが、今回は前回から三年後、しかもアフリカで開催されたということに安倍政権のなみなみならぬ決意を見ることができるだろう。すなわち先述したアフリカ開発・投資において先行する中国との官民一体となった対抗ということである。
安倍首相は八月二七日のTICAD6基調演説で、アフリカからの「国連安保理常任理事国入り」を訴えて「国連安保理改革こそ日本とアフリカの共通目標」と語り、「日アフリカ官民経済フォーラム」の立ち上げ、総額三兆円(三〇〇億ドル)規模の官民による投資、人材育成、トヨタの「カイゼン」方式で「質の高いアフリカ」をつくると述べた。明確に対中国を意識したアフリカ協力策のアピールである。
他方、中国の側はどうか。すでに昨年一二月に南アフリカで開催された中国・アフリカ協力フォーラムで、習近平国家主席が六〇〇億ドルと日本の倍に当たる協力を約束しており、日本側はそれを意識して「量より質」の支援と説明している。
安倍は同演説の最後にはっきりと中国への対抗を念頭に入れて「自由で開かれたインド太平洋戦略」を訴えた。朝日新聞はこの演説について「南シナ海や東シナ海で権益の拡大を図る中国の強硬姿勢との対比」を意識したものと分析している。

新自由主義戦略との闘いへ


TICAD6の期間中、日本の二二企業・団体がアフリカ側と計七三件の覚書を交わしたと報じられている。
「NECはコートジボアール政府と、生体認証技術などの新技術で治安対策に協力することで合意。テロ対策やサイバーセキュリティーの強化に向けた取り組みを進める」「丸紅は計一四件の覚書を締結。ナイジェリア政府との間では、総事業費一九〇〇億円規模の火力発電所受注に向けて調査を始めることを決めた」(朝日新聞)などである。
お分かりだろう。南スーダンPKOで「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」などの新任務を自衛隊に課す安倍政権の政策は、アフリカ市場を意識した日本資本のグローバルな展開と不可分一体であることが。
しかしアフリカ諸国の政治・経済・社会的状況は、資本にとって有利な市場を育成する環境を作り出しているとは言えない。その正反対である。グローバル資本の収奪と搾取の中で多くのアフリカ諸国の社会的紐帯は解体され、貧困と飢餓がテロリズムの土壌を作り出している。内戦・テロ、疾病と飢餓――この悲惨な現実を「対テロ戦争」やPKOで解決することも覆い隠すこともできない。
南スーダンPKOに反対する闘いは、戦争法廃止と憲法改悪を許さない闘いであるとともに、資本の新自由主義的グローバル化がもたらす貧困と差別と飢餓、社会的紐帯の解体に立ち向かうという課題を労働者・市民に提起している。
アフリカをめぐる日本と中国の経済的・政治的抗争は、決してアフリカ民衆の生活と社会の再建、環境破壊の防止に貢献するものとはならない。資本の新自由主義的開発の論理は軍事的介入とセットとなって進行する。
南スーダンPKOに反対する闘いをこうした観点から作り出そう。 (純)

8.21

お・こ・と・わ・り東京五輪

私たちはなぜ反対するのか

多様な批判をクロスさせよう

今からでも
「返上」可能だ
 リオ・オリンピックの報道でメディアが覆いつくされている八月二一日。この日、二〇二〇年に予定されている東京五輪に異議を提示し、批判・反対の運動を作り上げるために出発したNo Welcome! Tokyo Olympic Games実行委員会(お・こ・と・わ・り実)は、東京の千駄ヶ谷区民会館で「お・こ・と・わ・り 東京オリンピック」集会を開催した。集会には九〇人が参加した。
 実行委員会を代表して宮崎俊郎さんが、「東京オリンピックに伴う様々な問題を議論し、どういう観点でオリンピックに反対するのかを議論するために、この集会を持つことにした」と説明し、オリンピックの問題点として@拝金主義A国家主義Bメダルの数に象徴される勝利至上主義、を上げ、さらに羽田空港の航路変更にかかわる危険性、環境問題などについても指摘した。
 宮崎さんは、一九四〇年に予定されていた東京五輪が、中国での戦争を理由に一九三八年七月の閣議決定で返上になったことを挙げながら、あと四年で返上に追いこむことは可能だと訴えた。

オリンピック
そのものがダメ
第一部の講演は谷口源太郎さん(スポーツジャーナリスト)、小倉利丸さん(経済学者、実行委員会)、鵜飼哲さん(一橋大教員、実行委員会)の三人から行われた。
谷口さんは「オリンピックそのものは悪くないという考えはやめるべきであり、オリンピックそのものがもうダメ」と鮮明に結論づけ、一九八四年のロサンゼルス大会以後、拝金主義・国家主義・勝利至上主義が完全に支配するものとなってしまった、と語った。
小倉さんは、ロス五輪は新自由主義が台頭してきた時期と重なり、その時代にオリンピックが最終的な変質を遂げたことは、その後のオリンピックにとって決定的だったと訴え、速さ、ポイントなどで数値化した基準を価値化し、優劣を決定することと今日の資本主義の価値基準の関連性を語った。
鵜飼さんは、原発事故の隠ぺいと東京招致の関連について語り、未曾有の複合災害をスポーツナショナリズムで乗り切ろうとする二〇二〇年は、改憲・天皇代替わり・首都再構築と超近代化という複合的な意味を持たされると指摘。一九六四年東京五輪の時も、それを批判した作田啓一、小田実、谷川雁、寺山修司などの言説を掘り起こすことを訴えた。

人権と環境を
破壊するな!
第二部は各分野で活動している人びとからのアピール。
反五輪の会の仲間は、リオデジャネイロに赴いて貧困者が多く住むファベーラの住民などとともに反対運動に合流したことを語り、東京五輪に対しては反ミリタリズムの問題として東アジア全体に視野を広げた活動が必要だと語った。
さらに被ばく労働を考えるネットワーク、オリンピックいらないネットワーク、教育現場、差別・排外主義に反対する連絡会。反天皇制運動連絡会から野宿者排除、霞ヶ丘住宅の住民の追い出し、障がい者と「健常者」の完全分離と障がい者権利運動が果たしてきた役割の軽視など、さまざまな側面からの問題提起・批判が行われた。
さらに相互の連携を強めながら、オリンピック批判の言論と運動を発展させよう。        (K)


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