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    かけはし2016.年10月10日号

SPDとCDUの政策がAfDを下支えした


ドイツ


各州議選で続く極右の勝利

政治的分極化の進行と不満成長
に反資本主義の見える回答不在

マヌエル・ケルナー


 ドイツの地方選で、極右と見られているAfDが躍進を続けていることが、国際的に懸念を伴って注目されている。以下は、同様にAfDが躍進した、九月四日に行われたメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選結果と、それに対する若干の分析を伝えている。特に、左翼党もこの中で後退していることに関し、左翼党が抱える問題に触れている。なお、この後九月一八日に行われたベルリン市議会選挙でもAfDは初の議席を獲得したが、ここでは左翼党も支持を伸ばしている。(「かけはし」編集部)


メクレンブルク・フォアポンメルン州は、元東ドイツ領域に位置するドイツ北東部の州だ。人口は僅か一三三万人。そうであっても、九月四日にこの州で行われた州議会選の結果は、ドイツにおける政治論争を連邦レベルにいたるまで激しくしつつある。結果は、AfD(ドイツのためのオルタナティブ、フランスの国民戦線や英国のUKIP〈英国独立党〉の同類)のめざましい勝利だったのだ。この党から全政党が票を奪われたが、それは特にSPD(社会民主党)とCDU(キリスト教民主同盟)に当てはまり、左翼党にはさらに当てはまると言える。

反難民に加え
反既得権益層


二〇一一年に州議会選に参加した有権者は五一・五%にすぎなかった。今回その数字は約六一%となった。公衆の注目をかき立て、五年前には投票所に行かなかった人々の票を動員できたのは、攻撃的なレイシズムと外国人嫌悪を前面に突き出すことによる、AfDだった。
CDUと共にこの州を統治してきたSPDは、得票率三〇・六%をもって最強の党としてとどまっているが、得票率で五%の後退となった。フォルシュングスグルッペ・ヴァーレン研究所によれば、SPDに打撃を限定させることができたものは、辞任予定の主席閣僚、エルヴィン・セレリングの人気だった。世論調査によれば、七五%の有権者が、彼は州政府首班として「良い仕事を行った」、と認め、三分の二は、彼が彼のポストに再選されることを望んでいる。
この州で初めて選挙に出たAfDは、得票率二〇・八%となり、選挙という観点から見た時、この州における二番目の政治勢力となっている。この州には極めて僅かの移民や難民しかいないが、この党によるけたたましいデマに満ちた呼びかけは、まったく十分に功を奏した。その呼びかけとは、ドイツの社会システムに乗る居候、テロリスト、ムスリム、また難民、こうしたものの「波」に反対し、ドイツへの避難を求める全員を招待したと思われるがゆえに無責任だとして、アンゲラ・メルケル首相に反対して、さらに普通の人々と国の利益を気にかけない「既得権益層の政治」その他に反対して、容赦なく闘う、との呼びかけだ。われわれは後で、この不吉な上首尾に対しいくつかの理由を示すだろう。
CDUは得票率で一九%を得たにすぎない。そしてそれは四%の低下に対応し、メクレンブルク・フォアポンメルン州での史上最悪な結果を表している。その上に、選挙という観点から見た時、この党はこの州でAfDの後塵を拝することになったのだ。この芳しくない結果は、ドイツでの大衆的な論争の中で、アンゲラ・メルケル、および彼女に想定されている難民への友好的にすぎ歓迎的にすぎる姿勢に対する、政治的な平手打ちとして特に解釈されている。
左翼党は得票率一三・二%をもって五・二%以上をも失った。ここでの左翼党の政治的特質付けはむしろ穏健であり(旧東ドイツのすべての新しい州におけると同じく)、特にSPDおよび緑の党と共同で統治することを夢見ている。左翼党は、幅広い層から政治的既成勢力と見られているのだ。
二〇一一年(その時二・八%を得た)に最低限の前進があった自由主義派のFDP(自由民主党)は、得票率三%となり、州議会の議席は依然ゼロとなるだろう。同じことがファシストのNPDにも当てはまる。この勢力は三%を得たにすぎない(二〇一一年には六%)。もちろんこの党は、AfDのめざましい成功の「犠牲者」だ。AfDは、極右支持の選挙民の大多数を引きつけたのだ。

AfDの得票源
左右全体に分布


絶対的数字を見れば、われわれは有権者の他の政党に向かう動きについて、そしてそれはインフラテスト・ディマプ研究所から公表されたのだが、いくつかの事例を見ることができる。AfDが得たほぼ二一%は、ほとんどが男の、そして相当にそれより少数の女性の、一六万七〇〇〇人に対応する。AfDは、二〇一一年には投票しなかった人々のうち五万六〇〇〇人を、さらに二〇一一年には極小政党に投票した二万三〇〇〇人をも動員できた。AfDは、CDUから二万三〇〇〇票を取り上げ、NPDからは二万票、左翼党から一万八〇〇〇票、SPDから一万六〇〇〇票、緑の党から三〇〇〇票を得た。それゆえAfDは、網羅的に票を稼いだ。特に、左翼の有権者の重要な部分に対するAfDの掌握は、左翼党の隊列内で注意深く討論されなければならないだろう。
メクレンブルク・フォアポンメルン州の新議会で、SPDは二六議席を得、AfDは一八議席、CDUは一六議席、左翼党は一一議席だ。それゆえ左翼党を伴うSPD政府は、なおあり得るものとしてとどまっている(CDUとAfDを合わせた三四に対して三七議席)。しかしこの選択は現状では、ありそうには見えない。
AfDは選挙の前も後も、その理由として既成政党との連携という枠組み内では主な目標を達成することはできないだろう、ということを前提に、あらゆる連立に参加する意志はない、と公言してきた。したがってもっともありそうな結果は、SPDとCDUの「大連立」の継続だ。しかしわれわれは、関係諸政党代表間の交渉結果に対しては、まだ待つ必要があるだろう。

AfDのデマを
政権党が正統化


AfDのめざましい成功は非常にありそうなこととして、連邦レベルで政府を形成している諸政党(CDUとSPD)が、特にバイエルン州のCSU(キリスト教社会同盟、CDUの姉妹政党)の圧力の下に、極右のデマゴギーを有効にする大量のものごとを行っている、という事実に結びついている。彼らは、難民たちがEUやドイツに来るのを阻止するためにあらゆることを行っている。彼らはエルドアンのトルコと恥知らずな取引を行った。彼らは二つの場合に関し、難民資格を得る権利をぼろぼろに引き下げ、ドイツ内の難民の状況をさらに不快なものにまでした。
人々は周知の政治・心理学的なメカニズムにしたがって、コピーよりも元々のものに投票することをより好むのだ。AfDの支持者は、AfDが野党にとどまるとしても、党の選挙での強化によって実行される政策に実質的に影響力を行使できる、と根拠をもって考えることができる。

既成政党視招く
弱点が左翼党に


メクレンブルク・フォアポンメルン州の左翼党にとっては、抑制のない新自由主義の資本主義を批判する点で、関心を呼ぶ言うべきことをいくつももっているとしても、また難民歓迎に関する良い諸提案や、富のより公平な分かち合いに向けたもっと社会的な諸政策などを作成しているとしても、この党はいかなる形でも、反資本主義かつ国際主義的なオルタナティブとは思われていない。
この党はまったく鮮明に、SPDおよび緑の党と共に統治する自身の用意を公表している。EUに関しては、たとえば、それを改良し民主化することを提案しているにすぎない。その上彼らは、二〇二〇年までに債務をゼロにまで削減する(それは、ドイツで政府に参加する誰に対しても要求される入場切符だ)ことを目的とした「財政規律」を尊重するとした、自らの意志を公表している。
左翼党は確立された政治の一部であるもののように見えている。より一層分極化している政治的空気の中で、また人口中の増大一方の層内部でより一層明白な不満、を背景にしてのことだ。
旧東ドイツに対する郷愁は、東部ドイツの新しい州に存在する党の隊列内には確かにある。たとえば、メクレンブルク・フォアポンメルン州左翼党の先頭に立つ候補者であった、ヘルムート・ホルターは八月二〇日、東ドイツにかつて存在した社会的支援のための市民団体、フォルクスソリダリテート(民衆的連帯)、のランデスヴァンデルターク(一日をかけた小旅行、あるいは伝統的な年一回の散歩)に参加した。この種の催しへの参加者は、いくら控えめに言っても概して非常に若いとは言えない。しかし新しい州の左翼党は同時に、「ウンレヒトシュタート」(ナチの独裁とSED――東ドイツの『共産』党――の独裁を同列に置く、ドイツの保守勢力によって創案された用語)として、東ドイツに対する儀式的な弾劾の諸声明に今も署名している。そしてSPDはそれを、左翼党との連携に向かう場合には決まって強要している。
AfDには、東ドイツの過去への郷愁感情に合わせる上で何の問題もない。その郷愁は、極度の政治的・文化的保守主義にまったく十分に付合できるのだ。左翼党は、プーチンのロシアの諸政策を正当化する一つの傾向を抱えている(それは残念ながら、その反資本主義的翼の多数派にははるかにもっと強く当てはまるのだが)。そしてAfDはと言えば、それはプーチンのロシアを明け透けに、かつ何の当惑もなく支持しているのだ。(二〇一六年九月五日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年九月号) 

イスラエル/米国

新しい軍事援助協定と
帝国の防衛システム

ミシェル・ワルシャウスキー


変わらずに
続く腐れ縁
今週、安全保障担当のベンジャミン・ネタニヤフの顧問、ヤコブ・ネグエルは、米国との一〇年間の戦略的協定に、ほんのおよそ三八億ドル〔原文のまま〕に署名するためワシントンに出かけた。バラク・オバマと彼の政権に侮辱を一身に浴びせた後でも、イスラエル首相には、そのカネを受け取ることに何の問題もなく、彼は彼の口の端で「サンキュー」と言うことさえした、と私は想像している。
オバマは確実に、ネタニヤフも彼の政策も好きではないのだが、米国とイスラエル間の不滅の友情について演説するだろう。彼がヒラリー・クリントンの選挙キャンペーンで彼女を助けたいと思っている以上、なおのことそうだ。そして彼女は、あらゆる大統領候補同様、イスラエルの友人たちの支持を必要としている。
ネタニヤフもまた、大きな個人的勝利としてこの協定を描き出している。実際はそれは、アメリカ人が語るように、「少しも大きな取引ではない」。つまりイスラエルは、すでに数年間にわたって、毎年の軍事援助として三〇億ドル以上を米財務省から受け取り続けてきたのだ。
そしてそれゆえそこには、ネタニヤフの家族がからむ腐敗事件の取り調べに完全に同意することを裁判所が決定したように見えるその時に、民衆的支持を必要としている首相の自画自賛にもかかわらず、実質的な変化はまったくない。

イスラエルは
安上りの空母
相互に嫌い合う関係と重要な政治的不一致にもかかわらず、米政権はなぜイスラエル国家に対する大規模な支援を新たにしようとするのだろうか? ある人びとは、この前例のない軍事援助に対する主な理由として、親イスラエルロビー(ユダヤ人と特に福音派)の影響力に触れるだろう。実際は、このロビーの影響力は議員との関係では真実であるとはいえ、米政府機構のレベルでは、それが民主党であれ共和党であれ、相対的なままにとどまっている。
ワシントンとテルアビブ間の長期に続く戦略的連携の底にあるものは、第一にまた何よりも、中東におけるイスラエルの役割であり、帝国の防衛システムにおけるその位置だ。それを理由にワシントンが与える三八億ドルと外交的楯と引き換えに、イスラエルはこの地域の……そして時々はそれをさらに離れて、米国の世界的利益を防護する。
それをすべて合わせれば結局それは、米国にとって良い取引なのだ。つまりユダヤ人国家は、この地域におけるある種の第九艦隊の代わりになっている。そしてこの艦隊は、三八億ドル以上の費用になったはずだ。その上、誰かがたとえ殺されることになったとしても、それは米兵ではなく、イスラエルの兵士となるだろう。イスラエルは、相対的につつましい費用の米軍の巨大な航空母艦なのだ。

尻尾は犬の意志
に従うしかない
米政府が時にぶつかる問題は、イスラエルが、ホワイトハウスと国務省の優先課題と常に一致するわけではないイニシアチブをとる、ということがしばしば起こる、ということだ。尻尾が犬を振り回そうと試み続けている……。しかし、米国の戦略的利害が関係する時、米国とイラン間の協定によってまさに確証されたように、尻尾は犬の意志に従うしかない。ちなみにそのイランはイスラエル人ネオコンによって、自由な〔原文のまま〕世界にとっての脅威、力によってのみ取り除くことができる脅威である、と今も考えられている。
したがって米国はこの小切手と共に、新しい地政学的現実およびイスラエルがそのハードディスクを変える必要を、ベンジャミン・ネタニヤフに十分説明するつもりだったのだろうが。(「インターナショナルビューポイント」二〇一六年九月号) 

 


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