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    かけはし2016.年10月17日号

人権と自治と民主主義ともに


沖縄情勢の現段階と展望(下)

アジアの島々の非軍事化へ

米の軍事支配取り除く連帯で

沖縄 N・J


県は「真摯な
協議」求める
 「和解」により実際に工事が止まった。政府防衛局は海上からフロート・汚濁防止膜と工事台船を撤去した。陸上からの工事車両の出入りもなくなった。他方、法的解決のプロセスは、「県に対する国の是正の指示」「県による国地方係争処理委員会への審査申し出」と進み、六月一七日、第九回の会合を開いた係争委が審査の結論を下した。
 係争委は五人の委員の全員一致で、翁長知事の埋め立て承認取り消しに対する国交相の是正の指示について、「地方自治法の規定に適合するかしないかの判断をしないことを審査の結論」としたことを明らかにした。小早川委員長は会議後の記者会見で、「例外的な措置ではあるが」「肯定、または否定のいずれかの判断をしたとしても、それが国と地方のあるべき関係を両者間に構築することに資するとは考えられない」として、「国と沖縄県は普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが問題の解決に向けての最善の道である」と述べた。
 沖縄県はこの係争委の結論に対し検討を続けた結果、七月九日、高裁に提訴せず国との協議を求めていく方針を明らかにした。

2. 現在の闘争局面について

オール沖縄の
伊波さん圧勝
七月一〇日の参院選で、オール沖縄の統一候補・伊波洋一さんが、安倍内閣の現役閣僚・島尻沖縄担当相(自民党沖縄県連会長)に一〇万六四〇〇票の大差をつけて当選した。 
かくして、沖縄選挙区から選出される衆参両院の議員はすべて基地反対! のオール沖縄勢力が占めることになった。自公は全滅だ。翁長知事、県議会多数派、沖縄選出の衆参議員とともに、日米両政府に対抗して沖縄県民の人権と自治と民主主義を実現するための闘いは文字通り、県民ぐるみ、島ぐるみ、オール沖縄の闘争態勢が築き上げられたのである。

米軍利益代弁し
国家暴力総動員
それに対し、日本政府・沖縄防衛局は、参院選翌日の七月一一日から高江のヘリパッド建設工事を再開した。七月二二日には、全国各地から動員した五〇〇人の警察機動隊・七〇人の防衛省職員および数百人の県警機動隊を投入し、高江N1ゲート前の座り込みテントと車両を強制撤去し、工事用ゲートとフェンスを設置した。高江集落周辺を取り囲むように配置計画された六カ所のヘリパッドのうち、N4地区の二カ所はすでに完成し先行提供されているが、残り四カ所(N1地区のAおよびB、G地区、H地区)のヘリパッドを来年三月までに何としても完成させることが彼らの目的である。
米海兵隊は二〇一三年に太平洋地域の基地運用計画についてまとめた「戦略展望二〇二五」の中で、「最大で約五一%の使用不可能な北部訓練場を日本政府に返還する間に、限られた土地を最大限に活用する訓練場が新たに開発される」と述べているように、北部訓練場の返還予定地は米軍にとり「使用不可能」で不必要な土地だ。その代り米軍は、オスプレイ訓練のための宇嘉川流域・河口海域と近接ルート上の高江周辺での六カ所のヘリパッドを手に入れる。基地面積は減るが、基地機能は増す。北部訓練場は陸海空の結合した総合訓練場に強化される。
四カ所のヘリパッドのうち、G地区、H地区は特に自然が豊かなことで知られている。二〇〇七年、当時の那覇防衛施設局がまとめた環境影響評価(アセスメント)図書では、六カ所で合わせて三五カ所の国の特別天然記念物ノグチゲラの巣穴が確認されていた。G地区は一五カ所、H地区は一一カ所あったという。ノグチゲラは世界でやんばるの森だけに生息する、環境省レッドリストで最も絶滅の恐れが高い「絶滅危惧1A類」に分類される鳥だ。ヤンバルクイナとともに、文字通り亜熱帯の森やんばるを象徴する鳥で、生息数は四〇〇〜五〇〇羽にすぎないといわれる。
ところが、米軍は宇嘉川流域と連携して訓練することのできるこの地区のオスプレイパッドをつくりたい。二〇〇七年のアセスにも、米軍から「海域を含めた訓練のために必ず必要との要望があった」と記している。沖縄防衛局は米軍の利益の代弁人だ。アセスには「ノグチゲラへの影響は生じない」「周辺集落への影響は小さい」などの現実無視の記述が並ぶ。

「違法確認訴訟」
判決は9月 日
国は沖縄県にたいし「「是正の指示に従わず、提訴しないのは県の不作為で違法」との「違法確認訴訟」を七月二二日、福岡高裁那覇支部に起こした。しかも審理は一回で終えるようにとの上申書を付けたのである。八月五日開かれた第一回口頭弁論に先だち、一五〇〇人が結集した事前集会で翁長知事は、「国の大きな壁があるが、私たちには正義がある、民意がある。どうしても負けるわけにはいかない。辺野古新基地は造らせない、造れない。昨年の苦しさに比べたら、今の状況はなんでもない。世界が見ている。後の世代の人々が、あの時の人たちが頑張ってくれたから基地のない平和な世の中ができた、と言われるように全力を尽くそう」と述べた。
判決がどのような内容になるか予測できない。裁判官が法の番人として法律に忠実に法理を積み上げれば当然県勝訴の判決になるだろうが、法の無視が横行する現在の日本政府の政治の流れに追随すれば、国勝訴の判決になりうる。いずれにしろ、県と国との闘いは終わらない。
高裁判決に対しては敗訴した側が上告するので、裁判は最高裁まで行くことになる。最高裁の判決は年内か年明けと言われる。ここで埋め立て承認取り消しに対する法的手続きは完了する。敗訴した側はどうするか。万が一国が敗訴すれば辺野古新基地建設はそこで終わる。県が敗訴すれば、前知事の埋め立て承認が生き返る。国は工事を再開する。しかし沖縄県が辺野古新基地反対の立場を変えるわけではないので、工事の強行を阻止する別の新たな行政権力を行使する方策がとられ、国との闘争が継続することになる。

辺野古での動き
工事再開の画策
辺野古において三月四日の和解成立以来中止されている工事について、政府防衛局はキャンプ・シュワブ内の陸上部分についての工事は「埋め立て工事とは無関係」として再開する考えである。防衛局が再開を明らかにした工事は、隊舎や娯楽施設の建設、生コン製造施設などである。沖縄県は政府との協議の中で、生コンプラントは新基地建設に結びつく恐れがあるとして拒否したが、隊舎の建て替えは認める考えを明らかにした。ところが実際問題として、埋め立てと無関係な陸上工事はない。辺野古新基地建設の計画では、キャンプ・シュワブの辺野古崎を挟む大部分の土地は更地にされ作業ヤードとして使用されたあと、滑走路・駐機場建設のために分厚いコンクリートが打たれることになっている。陸上部分の工事も新基地建設の地ならし工事あるいは再配置工事に他ならない。

沖縄反基地闘争
新しい闘争段階
「和解」による工事の中止に示される国と県との力の均衡を覆そうと、日本政府は全面攻撃をかけてきた。高江、辺野古、裁判、さらに、基地と振興のリンク論、と連続する攻撃は日本政府が沖縄の抵抗を一挙につぶそうとしていることを示すものだ。
沖縄は、翁長知事の沖縄県政、高江・辺野古の現地二四時間監視・抗議行動、沖縄県議会多数派、衆参両院の沖縄選挙区選出の六人の国会議員、オール沖縄に結集する広範な県民運動がすべて一体となる闘争構造の下で、安倍政権の攻撃を真っ向から受け止め闘い抜いている。かつてなかった沖縄反基地闘争の新しい闘争段階と言っていい。
二〇年前のSACO合意は、「沖縄の負担軽減」を名目としていたが、嘉手納以南の基地の中北部への移転に伴う、結局は辺野古・高江の二カ所の新たな米軍基地建設であった。「今でも基地は有り余るほどあるが、決して容認したものではない。仕方なく我慢しているのだ、もうこれ以上基地の押し付けはごめんだ!」という県民の意思は固い。
新しい米軍基地の建設を阻止する意味は大きい。米軍は意のままになる基地がほしい。住民の反対運動で基地ができなくなるようなところには居たくない。沖縄が県民ぐるみで新基地建設を阻止し続けることは、海兵隊の撤退の第一歩、ひいては沖縄からの米軍の撤収につながる。
沖縄は日本の中の少数派だ。面積で全国の〇・六%、人口比で一%余りの小さな地域が一体となり、大きな日本の中央政府、そしてその背後に控える米軍に対し、人権と自治と民主主義を求めて果敢に闘う姿は日本全国、世界各地に伝えられ、大きな共感を生んだ。アメリカ、フランス、イギリス、ロシア、中国、韓国、その他さまざまな国々のメディアが沖縄のおかれた不条理と屈しない人々の姿を伝えた。国連での知事のアピールも大変注目を浴びた。かつて大交易時代に「レキオ」として伝えられた東アジアの黄金の島・琉球はいま、基地帝国・アメリカの支配にNO! を突き付ける誇りと勇気ある人々として注目されているのである。
アメリカでも支援と連帯の動きが広がっている。カリフォルニア州のバークレー市議会の「名護市辺野古への新基地建設に反対し県民と連帯する決議案」の全会一致での可決、約六六万人の会員を擁するアジア太平洋系アメリカ人労働組合(APALA)の「辺野古、高江における新基地建設と米軍基地の拡張に反対して闘う沖縄の人々に連帯する」との決議、マサチューセッツ州ケンブリッジ市議会の新基地反対の決議、VFP(ヴェテランズ・フォア・ピース)年次総会での辺野古連帯決議など、少しずつ浸透していっている。
日本各地からの連帯は、共産・社民・生活・民進の一部国会・地方議員を含め、「弱い者いじめ」をする国家の不条理が許せないという若い感性、非暴力の抵抗を身を挺して続ける高江・辺野古の人々への共感をもとに大きく広がっている。現場には北海道から九州まで各地からひっきりなしに訪れる。本当に若い人々が多い。これまで運動は年配の人が多かった。けれども、高江・辺野古は違う。これからの日本の社会の中心になる若者がいてもたってもいられず、高江・辺野古にやってくる。
その意味で、高江・辺野古の運動は新しい時代を切り開いた。日本で一番ひどい攻撃にさらされている沖縄。また同時に、日本の闘いの最前線の沖縄。高江・辺野古はいま重大な闘いの時を迎えている。

3. 沖縄と日本、朝鮮半島、アジア

朝鮮半島情勢
と沖縄の基地
一九五〇年六月二五日に勃発した朝鮮戦争で、国連軍の衣装を着けた米軍の兵站基地となったのは日本、沖縄だった。朝鮮戦争に出撃した米軍部隊のいない駐日米軍基地に自衛隊の前身たる警察予備隊が配置されたのに対し、米軍政の直接支配下で米軍の行動になんの制約もなかった沖縄の米軍基地は、核基地化の道をたどった。配備された核兵器は、核砲弾、地対空ミサイル、空対空ミサイル、対潜ロケットなど一七種類、約一三〇〇発だった。ちなみにその時、韓国九〇〇発、グァム六〇〇発、など、アジア太平洋地域で合計約三二〇〇発にのぼったといわれる。復帰にあたり核は撤去されたとされるが、嘉手納弾薬庫、辺野古弾薬庫には核貯蔵施設があり、いつでも持ち込むことができる。
沖縄基地は朝鮮半島情勢と密接に結びついている。朝鮮半島の緊張の激化は沖縄基地の稼働を高める。そして、朝鮮半島の南北の分断と対立が沖縄基地の配備理由の一つに挙げられる。逆に、朝鮮半島の分断と対立の解消は沖縄基地の存続の理由を奪う。南北分断と沖縄基地は一体だ。
沖縄基地の撤去を闘うわれわれはそれゆえに、朝鮮半島の南北分断と対立の解消を求め、そのために活動する朝鮮半島の人々と連帯する。何よりも問題は朝鮮戦争が停戦に入って六〇年以上が過ぎているにもかかわらず、いまだ戦争が終結していないということだ。また、この戦争状態が継続しているという情勢が朝鮮半島における人権抑圧の政権の存立基盤となっているのだ。平和条約を締結し、南北の軍事的対立を解消しなければならない。韓国の運動勢力との連帯、北朝鮮の人権擁護の取り組みが必要だ。

非軍事化の時期
過去にあった
かつて琉球諸島が非軍事化された時期があった。第一次世界大戦後、いわゆるワシントン条約(1922年2月6日、日米英他調印の「海軍軍備制限条約」)によって、沖縄、奄美を含む琉球諸島での新たな軍事基地の建設が禁止された。沖縄には実質的に軍事基地はなかった。沖縄での軍事基地建設が始まるのは、日本が一九三四年ワシントン条約を破棄し二年後に失効したあと対米戦争に備えた一九四一年九月以降である。各国のパワーバランスの中でも非武装地帯を創出することは可能だ。われわれは、各国の平和条約と軍縮、そしてアジア平和の海とアジアの島々の非軍事化を求める。
われわれが共有する価値は人権と自治と民主主義だ。アメリカのアジア支配の軍事的かなめ・沖縄で、人権と自治と民主主義を求める闘いが米軍の軍事政策を揺るがしている。米軍が永久にアジア支配を続けることはありえない。米軍のアジア関与の衰退がいろいろな形で不可避的に政治日程に上ってきている。それが各国の軍事対立の激化と軍拡競争の道ではなく、人々の人権と自治と民主主義に基づくアジア各国・各地域の非軍事的協同の新しい道になるよう、国境を越えたアジアの人々の共同作業をすすめなければならない。      (おわり)


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