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    かけはし2016.年10月31日号

改訂地方最低賃金の施行


一五〇〇円めざす運動広げ
引き上げを確実なものに!

今すぐどこでも一〇〇〇円

 一〇月一日から各地方の改訂最低賃金が施行となった。七月二六日の中央最賃審の最低賃金引き上げ目安決定(一時間当たり全国加重平均二四円)を受け、各地方最賃審が決定した引き上げ額が適用される。ここでは、六県(埼玉、兵庫、鳥取、島根、香川、高知)の審議会が「中央目安」を一円上回る答申を決定、確定した地方最賃引き上げ額の全国加重平均額は、中央最賃審の引き上げ目安を一円上回る一時間当たり二五円となっている。
 生活破壊と貧困化が進む中、最低賃金の引き上げは火急的課題、今年は年初から最賃の抜本的な引き上げを求める運動が活発に展開された。安倍が旗を振る三%引き上げではとうてい生計は成り立たないとして、一時間一五〇〇円へ、それをめざし「今すぐどこでも一〇〇〇円」が共通のスローガンとなった。若者たちのグループの独自的運動が注目されたが、全労連や全労協も春闘の中に積極的に位置づけ、またナショナルセンターを横断する単位労組を軸に結集する「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」の運動も展開された。特に最後の運動体は、各地方最賃確定後の施行状況の点検、その確実な実施を求める活動も進めるとしている。
 これらの運動の中では、各地方最賃審に対する働きかけも積極的に行われた。春先の申し入れ行動を始めに、七月末から八月にかけた地方最賃審では特に、審議会での意見陳述、公開審議要求、さらに答申後の異議申し立てなどが意識的に追求された。

労働運動の主導性を

 しかし今年の最賃引き上げに際しては、明らかに安倍の主導性が際立ち、労働者の運動が主導性を発揮するまでにはいたっていないことも事実だ。二五円引き上げではまったく不十分であることがはっきりしているだけに、労働者運動にとっては、この現状を打開することが極めて重要な課題となっている。特に最賃の地域間格差の広がりは人権の格差とも言うべきものであり、その克服、全国一律最低賃金制度の確立は、真剣な挑戦課題とされなければならない。この格差に対する問題視には現実にも広がりが見え始め、たとえば中央最賃審目安を上回る地方最賃答申には、このままでは「雇用の流出」は避けられないという地方の危機感も反映されている(各地方紙を参照。たとえば高知新聞は「今回は、全体の審議前の専門部会で、二二円引き上げが全会一致で決まった。主張に隔たりはあったものの全国最下位の最賃を意識し、『労働人口を増やすためにも高知県のマイナスイメージを払拭(ふっしょく)すべきだ』といった意見が出たという」八月二〇日)。この課題こそ格差に無関心な安倍政権にできることではなく、まさに労働者運動の力にかかっている。
その挑戦に向け、この秋、最低賃金闘争の継続的な拡大強化を追求することが求められる。施行に入った最低賃金の確実な履行を迫る闘いがその第一弾となる。明らかに不十分な二五円引き上げとはいえ、それでもその額は、多くの労働者の生活には大きな意味をもつ額となることも事実だからだ。しかしまた地域によっては、中小企業経営にとってそれが極めて厳しい数字になることもあり得るからだ。おそらく、行政、発注先大企業、あるいはチェーンストア本部などを巻き込んだ闘いが必要になると思われる。そこに向け地域の多様な共同をさらに豊かに深め、積極的な運動形成に挑もう。なおこれらの挑戦の参考として、宮城全労協ニュース三〇一号から、宮城県最賃審で陳述した宮城合同労組組合員の意見、宮城全労協の異議申し立て、を別掲として付記する。
(神谷)

資料

宮城地方最低賃金審議会での「意見陳述」

清掃作業は差別賃金の適用外!

全労協全国一般全国協宮城合同労働組合・組合員

    (1)

 私は(一〇年ほど前から)ビル管理会社に雇用され、清掃業務に就いてきました。
私と会社との雇用契約は、六ヵ月ごとに契約更新する有期雇用です。
労働時間は、始業午前七時三〇分、終業午後一六時、休憩時間は合計一時間三〇分で一日七時間労働となっています。そして四週六休のサイクルの労働を繰り返していますから、月の労働日が二四日といったところです。
賃金は、日給制で五,五〇〇円、時給換算で七八二円、所定賃金の月額は一三万二〇〇〇円です。

 家賃一万五〇〇円の市営住宅に入居しているので何とか生活できていますが、次の給料日まで財布をもたせることは、けっして容易なことではありません。風邪や打撲程度では医者にかからないで済ませています。消費税が八%になってから生活が一段と苦しくなりました。さらにこの先一〇%に引き上げられると、より深刻な状況となります。
また今の低賃金は将来の年金の低水準を意味し、老後を考えると不安でなりません。
業務委託契約料が上昇しないことを理由にして、賃金引き上げは働き始めてからほとんど行われてきませんでした。私の職場全体の賃金が低いものですから、生活が成り立たず退職者が後を絶ちません。慢性的に人手不足になっているので、低賃金の反面、一人当たりの業務量は相当多いと思います。

    (2)

 仙台市では、庁舎の清掃業務や警備業務の入札に際し、価格競争の激化による低価格で入札するケースが生じているとして、業務の品質低下や、労働者の雇用環境を悪化させないために、「低入札防止策」を講じています。仙台市によっても、清掃業務の低賃金問題が取り上げられているのが実情です。
宮城県の最低賃金は現在七二六円ですが、鉄鋼、電子部品他、自動車小売業には、宮城県特定(産業別)最低賃金が定められています。
鉄鋼業を例にとると最低賃金が八二七円ですが、「適用除外労働者」の規定があり、「一八歳未満又は六五歳以上の者」、「雇入れ後三月未満の者であって、技能習得中の者」と「清掃又は片付けの業務に主として従事する者」については、鉄鋼業に直接雇用されていても八二七円ではなく、一〇一円低い七二六円が適用されます。業種による適用除外は、清掃業だけです。
電子部品他、自動車小売業においても清掃業だけが産業別最低賃金から適用除外され、見放されています。私は清掃業も最低賃金が決定されているものと考えていました。
清掃労働者は大部分の者が非正規であり、非正規労働者の低賃金構造と相まって、他の業種の労働者と比較しても一段と低賃金が目立つ存在だと言えます。働く現場から改善する努力もしなければなりませんが、それには限度があり、「最低賃金引上げ」、「公契約条例の制定」等に頼らなければ改善できないのが現状です。

    (3)

 世界的には、日本のように各県ごとに細分化されている最低賃金はマレです。
昨年、東京と沖縄などでは二一四円もの差がつきました。二〇年前にはこの差は九六円でした。格差が拡大していることにより、最低賃金の低い地方から若年労働者が流出し、地方の疲弊を増幅しています。清掃で働く労働者は、東京でも宮城でも沖縄でも、やる仕事はほぼ同じです。
やる仕事が同じなのに賃金に差がつくのは、最低賃金の格差がそのまま個々の賃金に影響しているからです。政治政策において最低賃金を一〇〇〇円に引き上げようとする意向もありますが、全国平均で一〇〇〇円以上ではなく、私は、「今すぐ、どこでも一〇〇〇円以上の最低賃金」と訴えます。
宮城県の最低賃金が一〇〇〇円に引き上げられると、それに伴って私の日給は七〇〇〇円になり、月額で一六万八〇〇〇円になります。しかし、入院を必要とするような傷病の治療費確保には追いつかず、軽い傷病の治療費に充当させる程度だろうと思います。
私は健康で文化的な生活を送るために、「一五〇〇円以上の最低賃金」を求め続けます。
宮城県の最低賃金の動向が、直接毎日の生活に影響している者の一人として、率直な意見を陳述させていただきました。
(一部略)
2016年8月1日

資料

「宮城県最低賃金の改正決定」

(答申)への異議申出書

宮城全労協/二〇一六年八月一七日

 宮城労働局長より二〇一六年度の「宮城地方最低賃金審議会の意見に関する公示」がなされました。宮城全労協は「時間額七四八円」(二二円引き上げ)とする改正決定に対して、最低賃金法第一二条の規定に基づき、以下のように異議を申し立てます。

 なお宮城全労協は二〇一
六年度改正に関して、「時給一〇〇〇円超」への引き上げをはじめとする「要請書」(三月二三日)を審議会に提出しています。また審議会では宮城合同労働組合組合員が意見陳述を行っており(八月一日)、それらによって私たちの意見を表明しています。

 異議の内容

1.「時給七四八円」は宮城全労協が求めている「一〇〇〇円超」からかけ離れています。また「中央目安」からの引き上げもなく、地域格差は広がる一方です。以上により、同意できません。
2.首相の意向と審議会の関係が例年になくとりざたされました。だからこそ、地域に開かれた審議のあり方が問われたはずです。しかし、改善の方向性が見られません。

 異議の理由

(1)「時給七四八円」では「健康で文化的な生活」を送ることはできません。

 全国平均「八二二円」の目安額でも月額一二万から一三万程度であり、「七四八円」はそれを大きく下回ります。
現行二〇一六年度の最賃額では東京(九〇七円)で年収一七〇万、沖縄など(六九三円)では年収一三〇万円に達しないとされています(月一五五時間働いた場合)。
このような水準の最低賃金で「健康で文化的な生活」など不可能です。
欧米資本主義諸国で第二の経済力を誇る日本で、この程度の最低賃金がまかりとおっていることが異様なのです。そのひずみが貧困や格差の拡大として、またそのことに起因する諸問題として社会に現れています。
このような事態に歯止めをかけることが、とくに地方最賃審議会の任務であるはずです。
欧米では「時間一五ドル」を求める運動が広がり、日本でも「一五〇〇円」を求める若者たちの声が注目されてきました。
「時給一〇〇〇円」が政府を含めて意識されているのは、この額でようやく年収二〇〇万円が見えてくるからです。一五〇〇円の最低賃金をめざし、「誰でも、どこでも、いますぐ一〇〇〇円」を実現すべきです。

(2)拡大する一方の地方格差

 「目安」が地域格差を自動的に拡げる要因になっています。昨年は引上げ額の差は三円、今年度目安では四円に拡大しました(Aランク二五円、B二四円、C二二円、D二一円)。
このような考え方や算定方式が容認されているのなら、地方から異議を突きつけ、廃止させるべきです。
中央審議会が地域格差を縮小させる「目安」を示さないのであれば、とくにDランク、Cランクとされている地域で「目安」を上回る引き上げが実施される必要があります。
そうでなければ、格差の拡大は合理的だとして、いつまでも存続することになります。
「第一ランクである首都圏との賃金格差」は地方に大きな影響を与えます。
「これでは、若者の首都圏流出、地方の人口減は止められまい」「最低賃金が果たす役割は格差を強いられてきた地方でより重くなってきたといえる。現行のランク分け決定方式の見直しを含め、地域間格差是正に向けた論議が不可欠だ」(河北新報社説「最低賃金引き上げ/地域間格差の是正も必要だ」八月一六日)
このような主張は各地でなされており、地域審議会の対応を求めています。

(3)「三%」「一〇〇〇円」は政権側の都合のよい数字

 安倍政権が打ち出している「三%引き上げ」「二〇二〇年に時給一〇〇〇円」は、都合の良い数字を抜き出し並べたものです。このことは多くの新聞等で指摘されていることです。
毎年三%引上げたとしても、全国加重平均で「一〇〇〇円」に達するのは二〇二三年度です。民主党政権時代、雇用戦略対話(二〇一〇年)で合意した「二〇二〇年までの目標」に及びません。
「全国平均一〇〇〇円」が実現したとき、Dランク県は八〇〇円台にとどまっています。三%引上げが続いても、Dランク県が一〇〇〇円に達するのは「全国平均」からさらに五年後になると試算されています。しかも、前述したように地域格差は拡がる一方です。
そもそも「三%」といっても、政府は日銀とともに「二%物価上昇」を堅持しています。消費税は五%から八%に引上げられ、先送りされた一〇%の導入は二〇一九年一〇月です。

(4)「地域最賃」の審議が、地域社会に開かれていない

 今年度改定審議は「異例のスピード決着」が話題になりました。「『官製』の最低賃金」と表現した記事もありました。
「審議会の舞台回しを担う厚労省には後味の悪さだけが残った。(中略)首相の「三%」発言に関し厚労省は終始蚊帳の外だった」(日経新聞七月二九日「『官製』最低賃金/首相の念願/異例のスピード決着」)。
今回、新聞各紙の多くが、公労使という三者協議の審議会と首相意向の関係について触れています。それほど政治的な圧力が強かったということです。最賃審議会は首相の政策をPRする場ではありません。そのような疑念を払拭するためにも、地域審議会ではこれまでに増して、十分な審議が課題となったはずです。
民主的で地域に開かれた地域審議会のあり方が、近年、これほど問われたことはありません。しかし、結果は従来どおりと言わざるを得ません。地域審議会の検証を求め、異議申立てとします。


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