もどる

    かけはし2016.年12月5日号

パク・クネ大統領に国民的不信が爆発


「崔順実ブラックホール」に隠されたニュースの数々

セウォル号船体「引き揚げ」、故ペク・ナムギ農民葬儀以降の「特検」、鉄道労組スト


  10月30日、大統領の背後で国政を牛耳っていたとの疑惑を受けているチェ・スンシル(崔順実)氏が遂に全国民の前に姿を現した。検察に出頭したチェ・スンシル氏の写真が1面を飾った翌日、新聞は主要記事を配置する総合面を丸ごと「チェ・スンシル・ゲート」に割いた。チェ・スンシル氏が検察捜査の間に「コムタン(牛肉・骨などの煮こみ)を食べた」という記事が仰々しく扱われるほどに、韓国社会は「チェ・スンシル・ブラックホール」に陥った。
 彼女が姿を現した10月31日、全羅南道珍島膨木港沖合いに沈んだセウォル号がその姿を現す機会は、またも霧散した。海洋水産省は同日、政府世宗庁舎で「セウォル号引き揚げ船尾作業の工程変更」のブリーフィングを行った。事実上これまでのやり方での引き揚げは失敗したとの発表だった。
 翌日の主要日刊紙で海水省の「引き揚げ失敗」の記事は見あたらなかった。クォン・ヨンビン4・16セウォル号惨事特別調査委員会常任委員(真相糾明小委員会委員長)は「年内引き揚げは手が届かなくなった。海水省は幾度となく言葉を変えながら、引き揚げの時期が引き延ばされている。水中のセウォル号は沈没原因を明らかにすることのできる主要な証拠物で、海水省が引き揚げを続けるのは適切ではない状況なのに、社会的関心のありようがもどかしい」と語った。
 「チェ・スンシル・ゲート」でパク・クネ大統領に対する国民的不信が爆発している中、パク・クネ政府の4年間に累積された失政に関連した社会的イシューを「チェ・スンシル・ゲート」が覆うというアイロニーがかもし出されている。「チェ・スンシル・ゲート」に覆い隠されてはならないイシューを挙げてみた。

@セウォル号年内引き揚げ霧散

 「チェ・スンシル・ゲート」で、セウォル号惨事当日のパク・クネ大統領の行状と関連した「セウォル号、空白の7時間」についての関心が熱いけれども、セウォル号の「現在進行形」のイシューは船体の引き揚げだ。海水省は今年5月に引き揚げ作業に突入するとともに、同作業の完了時期について「7月末」と公言したものの、技術的困難さを理由として引き揚げの時期を8月、9月、10月と何度も引き延ばしてきた。その挙げ句が10月31日の「引き揚げのやり方を変更する」という発表によって、「年内の引き揚げ」は不可能になった状態だ。
チョン・スンウク4・16家族協議会引き揚げ分科長(故チョン・ドンス君の父)は「引き揚げのやり方を変えるというが、船体が損なわれないやり方なのかが心配だ。海水省が技術的検討をしたとは言うものの、検討内容を公開してくれという要求には、ただ『待て』と言うばかりだ。技術の検討をしたということも家族たちは知らずにいて、ブリーフィング当日に技術検討タスク・フォース(TF)に入った方に会い、話を伝えきいたというぐらいだ。技術検討TFでは専門委員たちが船体引き揚げに必要のない技術について多く言及したというが、いかなる問題があるのかは全く公開されず実にもどかしい」と語った。
セウォル号惨事の真相調査に関連して、セウォル号の船体は、ほとんど最後に残された「証拠物」だ。クォン・ヨンビン・セウォル号特調委常任委員は「未収拾者9人の収拾と共に、船体を完全に引き揚げて衝突の痕跡があるのか、運航システムの故障があったのかなどを確認しなくては沈没原因の端緒をつかむことができない」と語った。
引き揚げられたセウォル号の船体調査を担うセウォル号特調委は、与党セヌリ党が特調委の活動期間を船体引き揚げ以降に保障するという内容のセウォル号特別法改正案に反対したために9月30日に解散されたままだ。ミル財団やKスポーツ財団の設立に、影の実力者とみなされたチェ・スンシル氏が介入したという9月20日付の新聞「ハンギョレ」報道によって9月末から点火された「チェ・スンシル・ゲート」で、セウォル号特調委強制解散の問題も覆われた。
クォン・ソンウク分科長は「『年内に引き揚げる、信じて待ってくれ、このやり方で引き揚げることができる』という政府の言葉だけを信じていたのに、結局はそうではなかった。個人的考えとしては政府が当初に約束したことが間違いだったということが明らかになった以上、引き揚げ過程で遺家族や国民を欺いた部分について海水省長官であれ、誰かが責任を取るべきだと思う。このような点について一言半句もないのだから、もどかしい。家族らの立場からすれば今の状態がこうだから、何だかんだと言うことなく腹が煮えくり返りいらだつ」と語った。
11月3日、検察はセウォル号の民間潜水士コン・ウヨン氏(61)を業務上過失致死の容疑で起訴した事件について、大法院(最高裁)に上告した。検察は、セウォル号の犠牲者収拾のために潜水の途中に亡くなった同僚の民間潜水士イ某氏(53)の死に責任があるとして2014年8月コン氏を起訴したが、1審、2審のいずれも裁判で無罪判決となった。
4・16連帯は論評を出し、「たった1人も救えなかったパク・クネ政権の救助責任を再び国民に押しつけた。命をかけてセウォル号惨事の犠牲者を収拾した潜水士を法廷に立たせて困らせるのではなく、『たった1人も救えなかった』パク・クネ政権を法廷に立たせなければならない」と批判した。

A鉄道労組スト最長記録更新


去る8月27日、「成果年俸制導入撤回」などを要求条件として掲げて始まった全国鉄道労働組合(鉄道労組)のストが11月4日現在で39日を迎えた。これは公共部門労組の最長スト記録である2002年の発電労組の民営化反対のスト期間38日を更新したものだ。労組との交渉に乗り出すべきコーレイルは事態解決の措置に踏み出さないまま事実上、事態を傍観しているのが大きな理由だ。
労組は「チェ・スンシル・ゲート」に伴った国政コントロール・タワーの崩壊が原因だと見ている。キム・ソヌク鉄道労組事務処長は「鉄道ストは青瓦台から指示を受けたり話が行き交わなければならないのに、今はそのようなラインがないので、解決する方法も分からず、またその意志もないコーレイル社長が、ひとごとのように手を抜いているという形勢だ。社長が単独で動きがたいことは理解できるが、公共機関の長として責任を取る姿を示さなければならないのにじれったくもどかしい」と語った。
コーレイルが交渉を回避したまま代替要員の投入にのみ没頭している間に、鉄道の安全には赤ランプがともった。列車が突然停車し、乗客150余人が1時間10分もの間、列車の中に閉じこめられたり(分塘線)、列車から煙が出て乗客200余人が待避する(地下鉄3号線)など、軍所属の代替機関士たちが運航した列車で事故が相次いでいる。特に国土交通省が鉄道ストを「社会的災難」と規定し、国防省に軍の代替人力投入を要請したけれども、実際に主務部署である国民安全処や国防省が「鉄道ストは社会的災難ではない」という立場を明らかにし、代替要員の投入も限界状況に達した。
キム・ソヌク事務処長は「ミル財団やKスポーツ財団に800億ウォンを強制募金させられた各大企業が『チェ・スンシル・ゲート』の局面で『被害者のコスプレ』をしているが、パク・クネ大統領が各企業の宿題だった成果年俸制や低成果者の退出(解雇)を可能にしてくれたという点で、各企業は実利をまるまる手にした。このような部分が、『チェ・スンシル・ゲート』の怒りにすべて隠されている」と語った。

B教育省、報復性の保育予算削減


「保育大乱」を招いた保育予算をめぐる葛藤は今年も繰り返される兆候が見える。10月24日、京畿道教育庁は「教育省が交付すべき予算(地方教育財政交付金)のうち5356億ウォンを削減した」として「来年度の教師・教職員の人件費や学校基本運営費が不足し、教育財政の破綻が憂慮される」と発表した。満3〜5歳の幼児無償教育政策を総称する「ヌリ過程」はパク・クネ大統領の2012年の大統領選での公約で本格化したが、当初の「国庫で責任を取る」という約束とは違って、市・道教育庁の小・中・高の予算で負担するようにし、教育監(市・道教育委員会の事務を総括)たちが予算編成を拒否するなど、2013年から毎年、葛藤が繰り返されてきた。
特にイ・ジェジョン京畿道教育監やキム・スンファン全羅北道教育監らは、教育省の所管である幼稚園と違って、依然として保健福祉省所管のオリニチプ(保育所)の場合、主務部署を一元化する幼保統合(幼児教育・保育の統合)が先決されるまではヌリ過程の予算を編成することはできないという強硬な立場を示した。教育省が今回の予算編成で唯一、京畿道(5356億ウォン)と全北(762億ウォン)の予算を削減したのも、このような背景のせいだとの背景のせいだとの分析だ。
これにより各保育団体までが時局宣言に乗り出す計画だ。チャン・ジナン韓国民間オリニチツプ連合会長は「ハンギョレ21」の電話インタビューで「無償保育政策を初めとする国政の正常化を追求する時局宣言を準備している。これまで保育政策がメチャメチャになり、無償保育の公約が徹底して投げすてられた裏面にはチェ・スンシル集団の国政壟断の影響があったと思う。『チェ・スンシル・ゲート』が整理されれば、無償保育政策を初めとする国政が正常化されるだろうと期待する」と語った。

C故ペク・ナムギ農民、特検が残った


「ペク・ナムギはパク・クネ下野闘争の埋め火となったのだ。たきつけは本来、火を付けてからこそ、その役割を果たすものだ。今まさに野火が起きれば良い」。故ペク・ナムギ農民の妻パク・スルレ氏が葬儀の日程を論議しながら闘争本部の関係者たちに語った言葉だ。10月25日の解剖令状の期限が満了して4日が過ぎていた10月29日、警察は「(遺体の強制)解剖令状を再申請しない」と発表した。
それ以降、故人の葬儀委員会が構成されて11月5日にソウル明洞聖堂での葬儀ミサと光化門広場での永訣式(告別式)、6日に光州望月洞に埋葬するという葬儀日程が破綻した。韓国天主教(カトリック)のトップであるヨン・スジョン枢機卿が執典(注1)し、キム・ヒジュン大主教が講論(注2)する葬儀ミサは、故人に対する社会的礼遇を示すものだ。
闘争本部関係者は「枢機卿が葬儀ミサの執典を快諾した。枢機卿が平信徒たちの葬儀ミサを執典することはほとんどないという点で極めて特別だ。ペク・ナムギ・オルシン(老人への敬称)に対する伸寃(注3)の意味、名誉回復の意味を込めていると見ればよい」と語った。・
今や残されたのは特別検事を通じて責任者の処罰と、死亡以降の解剖令状発付と執行の試図をめぐって新たに提起された警察とソウル大病院の癒着疑惑などを明らかにすることだ。再発防止のための放水砲の退出(使用禁止)を公式化することも特検の過程で伴わなければならない。
闘争本部関係者は「『チェ・スンシル・ゲート』によってペク・ナムギ特検やセウォル号特検が埋没させられると見ることもできるが、むしろ個別事案によってそれぞれの特検を推進することよりも、パク・クネ政府の総体的不実が現れた状況にあって、市民社会や野党に国民的支持が集まれば一括解決できる部分があると思うと語った。(「ハンギョレ21」第1136号、16年11月14日付、チン・ミョンソン記者)

注1 儀式や典礼などを担当して執行すること。
注2 カトリックで「信者に教理を説明し、教えること」を指す言葉。
注3 恨みをはらすこと。

コラム

「過労死と労組」

 昨年一二月、新卒で入社した女性社員(当時二四歳)が過労自殺した。働いていた大手広告代理店・電通には、「鬼十則」と呼ばれる心得があった。
 いわく「仕事は自ら『創る』べきで、与えられるべきではない」「頭は常に『全回転』、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ」。極めつけは「取り組んだら『放すな』殺されても『放すな』、目的完遂までは……」。四代目社長の遺訓で執筆は六五年前という。今ならパワハラ丸出しのスローガンだが、時代に流されず、連綿と受け継がれてきたことにも、強権的な同社労務管理の一端が見える。女性の遺族が会見で問題視した。
 今年九月の労災認定を受け、都労働局は先月、立入り調査した。だが電通社員の過労死は彼女で三人目。これまでも長時間労働で是正勧告を受けていた札付きの企業だった。遅すぎる強制捜査である。
 奇しくも彼女の労災認定と同時期、友人の職場でも象徴的な出来事があった。中小印刷会社の四〇代の営業職員が、ある日突然姿を消した。得意先は電通内の部局だった。労働時間は彼女に勝るとも劣らない。真面目で几帳面な性格で、ミスもほとんど起こさなかった。同僚の信望も厚く、将来を期待された男性だった。
 たった一人が職場から抜けたことで、課内はパニックに陥った。発注者に迷惑をかけるわけにもいかず、急きょ手分けしてその穴を埋めているという。いかに多くの仕事を一人でこなしていたか。鈍感な上司もようやく彼の激務に気づいた。
 有能な人材ほどすぐに辞めると友人は明かす。御用組合役員はお互いにサービス残業を競いながら、管理職への登用を待ち続けている。その条件、能力や人格とは思えない。もっとも重要なのはロイヤリティ、つまり忠誠心だという。土日祝日の出勤要請にも応じ、無給労働を厭わず実績を積み上げれば、課長職にありつける。タイムカード偽装など日常茶飯事である。
 救い難いのは、その奉仕精神が、ちっぽけな企業組合を支配していることだ。世代交代が進むほど、労組本来の姿とは乖離していく。まるで「ミニ電通」である。
 氷山の一角なのだ。電通の企業風土も軍隊的な指示系統も、「鬼十則」当時と変わらないのだろう。こうした資本の成長神話が、下請けや他業界にまでコピーされている。メディアは企業を叩いても、労組は批判しない。その視点は性善説で塗り固められていないか。無知にもほどがある。
 ルポライターの鎌田慧氏が、電通事件について書いている。「労組幹部よ、人間的になって尊敬されよ」(表題・一一月二〇日東京新聞「本音のコラム」)。この警告、どれだけ彼らの耳に響くのか。とりあえずは同感である。(隆)


もどる

Back