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    かけはし2016.年12月19日号

「廃炉」費用の住民負担強制


福島第1原発

事故責任をあいまいにするな

被災者への補償打ち切り許さない


 経済産業省は一二月九日午後に行われた「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(貫徹委員会)で、福島第一原発事故に伴う賠償・廃炉費用などの負担方法について、その費用を利用者に上乗せさせるプランを明らかにした。
 当日午前中の1F問題委員会で賠償・廃炉など事故処理費の費用が総額で二〇一三年の想定の倍となる二一兆五〇〇〇億円と試算されたことを受けて、そのうち一五・九兆円を東電ホールディングスに負担させるという提案だ。こうした費用を捻出するために何が考えられているのか。
 第一段階として「送電子会社の合理化」、第二段階として「柏崎刈羽原発の再稼働」、第三段階として、国が事故後に持った東電株を売って用立てるというのだ(そのためには現在五二〇円の株価を少なくとも三倍に引き上げる必要がある)(朝日、一二月一〇日)。
 しかし二一・五兆円という天文学的な「廃炉費用」(この額は二〇一六年度政府予算の二〇%以上に達する)は、天井しらずに膨れ上がる可能性がある。柏崎刈羽の再稼働、そして株価の三倍以上の引き上げを前提としたこうしたプランは、およそ「机上の空論」という以上に犯罪的なものだ。
 それが分かっているがゆえに、経産省はこれからもさらに膨れ上がるだろう原発事故費を賄うために、送電線の使用料である「託送費」に事故賠償費を上乗せし、利用者すべてに負担させるというのである。福島原発事故の大惨事を引き起こした責任を、すべての住民の責任として電力使用量に上乗せし、しかもそれを口実に原発再稼働を強行しようというこの暴挙を許してはならない。

原発延命と一体
化した構想だ
さすがにこの「福島第一」廃炉費用処理方針に対しては、多くのメディアが厳しく批判している。「今回の東電救済プランは柏崎刈羽原発の再稼働も前提にしているが、たやすくはない。そもそも経産省は福島事故後、多数の反対の声に耳を傾けず、全国の原発を動かそうという姿勢を変えようとはしていない。東電の再建策だけでなく、政府の電力政策全体に国民が不信感を募らせることにならないか」(「朝日」一二月一〇日小森敦司)。
東京新聞はさらに「福島第一原発以外にも、予定より早く廃炉にする原発の処理に必要な費用も託送料金に上乗せ、新電力の利用者に負担と引き換えに原発の電力を使いやすくする仕組みも導入する」目論見を批判している(一二月一〇日)。
FoE Japanは一二月九日、「事故処理・賠償費用の託送料金への上乗せに反対 東電の責任をあいまいにした国民負担増加は許されない」との声明を発表した。同声明は「賠償・事故処理費用と、老朽原発の廃炉費用を、あらたに広く国民負担とするための制度改革は、福島第一原発事故の責任をあいまいにし、原発事業者を不当に保護する」ものとして批判している。
今回の経産省の方針は、東電を救済し、原発再稼働を進める一方で、福島原発事故被災者に対しては、年間二〇msv以下の地域への「帰還」や、区域外避難者への住宅支援打ち切りを強制する安倍政権の「復興」路線と一体のものだ。
原発再稼働を阻止し、稼働原発ゼロをただちに実現するとともに、すべての被災者への補償を国・東電の責任において実現させなければならない。その上で、脱原発へのプログラムを着実に実行に移すべきだ。
(K)

死刑執行に抗議する

東京弁護士会 会長 小林元治

2016年11月11日


 さる11月11日、田尻賢一死刑囚への死刑執行が行われた。日本弁護士連合会は10月7日の人権擁護大会で2020年までに死刑制度の廃止を目ざすべきことを宣言案として採択した。こうした流れを無視して強行される死刑執行に抗議する東弁会長声明が出された。これは初めてのことだ。死刑廃止を求める立場から同声明を掲載する。(編集部)


 本日、金田勝年法務大臣は、男性1名の死刑が福岡拘置所において執行されたことを発表した。この死刑執行は、今年3月25日に2名の死刑執行がなされて以来、約8ヶ月ぶりのことであり、同法務大臣が就任してから初めてのことである。また、第2次安倍内閣が成立した時(2012年12月26日)以降で数えると10回目で、合計17人が執行されたことになる。
 日本弁護士連合会では、本年10月7日に第59回人権擁護大会において、「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること。死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること」等を内容とする宣言案を採択したが、本執行はこうした流れに配慮しないものであると言わざるを得ない。
 死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。
 現に日本では、死刑を宣告されながら、後に無罪であることが判明した著名な死刑再審4事件が過去に存在した外、近年に至っても2014年3月、静岡地方裁判所は袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をしている。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑が執行されていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていたのである。こうした事件は、刑事裁判における冤罪の危険性と死刑の執行による取り返しのつかない人権侵害の恐ろしさを如実に示すものであり、一方で、死刑存置論も根強く存在するものの、多面的な観点から徐々に死刑廃止に向けて国民の理解も進みつつある。
 さらに、日本では殺人事件、強盗殺人事件等重大事件が1年間に1000件程度と顕著に減少しており、先進国の中でも最も安全な国の一つと評価されている。
 こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 この度の死刑執行が、世界及び日本の情勢を踏まえ、かつ国民の死刑廃止に対する理解の進行を熟考の上でなされたものであったのか、あらためて問われなければならない。
 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議し、あわせて法務大臣に対し、死刑制度の廃止についての多方面からの検討の開始と死刑執行の停止に向けて誠実な対応をするよう、重ねて求めるものである。


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