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    かけはし2018年4月16日号

背後には今後の予測不能性


ロシア

筋書き通りの大統領選

イリア・ブドライツキス

 三月一八日に行われたロシア大統領選挙は、事前に確定的と予想されていたプーチンの圧勝で終わった。しかしそれはプーチン体制の堅固さと安定を意味しているわけではない。圧勝はある意味で演出された圧勝であり、ロシア社会で進行する深い危機の反映とも言えるからだ。その事情をロシアの同志が以下で論評している。(「かけはし」編集部)

プーチン支持の
前回と今回の差


 今年三月三日、ウラジミール・プーチンの主要選挙前集会がモスクワのルツニキスタジアムで開かれた。国の様々な地域から何万人もの公務部門の労働者が運ばれ、大統領の演説、および彼を支持して登場する俳優や歌手の話を聞くことを望まれた。プーチン自身が現れるより少し前には、犯罪の過去を一つもつ人気歌手のグリゴリー・レプスが、彼の持ち歌である「全盛」を歌った。きっかり六年前の二〇一二年大統領選挙前夜、プーチンを支持するもう一つの集会でも、レプスは「全盛」を歌っていた。時の経過を通じても不変の政治体制の勝利をまるで確証するかのように、台本にはほとんど変化がなかった。
 実際に、ヒロイックな千年記的民族史を根拠として「永遠の現在」としてプーチン主義を表現することは、今なお、支配的エリートの中心的なイデオロギー的比喩的語法の一つだ。
 しかしながら現実には、二〇一二年の「全盛」は、二〇一八年の「全盛」とはまるで似ていない。当時に戻れば、体制は、愛国的レトリック以上のものを通して多数の支持を受けた。プーチンは、原油の高価格と継続的な経済成長を背景に、公務部門の賃金引き上げを約束し、住民全体の所得成長を保障できた。しかし二〇一八年のロシアは、より深くと言っていいほどに貧困に沈められた国であり、新たな経済回復に向けた展望はどのようなものも奪われた国だ。

次の6年への
約束は皆無に


 二〇一四年のクリミア併合、結果として続く諸々の制裁、そしてエネルギー価格の下落は、ソビエト時代から相続した産業的潜在能力の略奪的収用を基礎とした資本主義のロシアモデルの発展を抑え込んだ。
 過去二、三年を通じて、ドミトリー・メドヴェーデフの政府は、一貫して「緊縮方策」のロシア版を繰り出してきた。その厳しさは、EUのエリートたちから見てうらやむものだったと思われる。インフレが主に賃金の実質「凍結」を通して抑え込まれた中で、医療と教育は、病院と学校の閉鎖を伴う「最適化計画」にしたがわされた。ロシア人はエリートがつくり出した危機に対価を払うべき者にされた。そしてそれは今も続いている。
 ウクライナ危機の始まり以来政権が採用した「包囲された要塞」のレトリックは、事実上あらゆる社会的抗議を、ロシアに対して西側が展開する「ハイブリッド戦争」の一部と断言することを可能にした。
 ウラジミール・プーチンは、彼の新たな六年期前夜、引き続く経済停滞とより深い貧困への沈み込み以外は、何も提起できない。専門家が公然と議論している本物の政府綱領は、「財政規律」への断固とした支持、年金受給可能年齢の引き上げ、また社会的支出のさらなる切り下げを見越している。

大統領ではなく
最高司令官選出


 将来展望のこのぎょっとするようなまったくの欠落は、今年三月一日にプーチンが行った綱領的演説の中で完全に映し出された。彼は、「生活の質を改善する」というおざなりな約束をいくつか言明しつつ、次には主要な課題となる問題――軍事的脅威――へと移った。小さな大統領の姿を覆うように、巨大なスクリーンが照らし出され、先立つ世代を偲ばせる映像が次々に送り出された。プーチンは心からの喜びをもって、米国のミサイルシステムを楽々と突破できると想定される新型の核兵器を説明した。プーチンは近年しばしば繰り返した議論を行った。つまり、西側に話し合う準備がないならば、われわれはわれわれの強さを通して彼らが聞くようにさせる、と。ロシアの軍事力における成長は、プーチンの支配に刻まれた成果となっている。しかしながらこの国は、自らが諸々の敵から囲まれている、と見出し続けている。こうしてその生き残りには、現在のコースを継続することが必要となる。
 三月一八日の来る選挙で実際に売りに出されているものは、平和時の大統領の選出ではなく、最高司令官の選出だ。つまりそこで選ばれる指導者は、戦時に、チャーチルやスターリンのように、「血と汗と涙」以外は何も約束できないタイプの指導者なのだ。プーチンという人物は、それ自体で、社会政策と経済政策を超越し、それによりその義務を政府のテクノクラートの権限に移し替える。プーチンは国民の指導者であり、主要には戦争と平和の問題に責任を負っているのだ。

権力の正統性は
内外の脅威頼り


 したがって軍事的レトリックが、国内政策の主要なイデオロギー的方向となり、新自由主義的社会路線並びに市民権に対する引き続く弾圧と権威主義体制のさらなる塹壕構築作業双方を正当化している。その受け取る資金供与が近年継続的に高まってきた多様な治安機関は、外部からの脅威を前に国民の統一のための闘いにおいて、永続的な非常事態の下で行動する権限を委任されてきた。選挙前夜、ロシア連邦治安軍(FSB)がロシアのアナーキストに対する新たな大規模訴訟を始めたのは偶然ではない。FSBの捜査は、体制に対する武装行動の共謀という滑稽な構図をでっち上げる彼らの努力の中で、必要な証拠を得るために肉体的拷問に頼った。
 政府の正統性に対する主な正当化として、内外の脅威に頼ることは事実上、現存体制の弱さと劣化をはっきり示している。三月一八日のお飾り的選挙でプーチンの勝利が予測可能になっていることの背後には、この国の今後の展開に対する予測不能性が潜んでいる。(二〇一八年三月一六日)
▼筆者は、第四インターナショナルロシア支部であるフペリョード(前進)の指導者。フペリョードは、ロシア社会主義運動(RSD)の創設に参加した。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年三月号)



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