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    かけはし2018年5月28日号

パレスチナの人々を殺すな


イスラエル軍による虐殺許さない

トランプ政権は挑発をやめろ

国際的な抗議の声をさらに強めよう

困窮と孤立の中で抵抗の
意思表現した平和的デモ

 イスラエルによる包囲下のパレスチナ・ガザ地区で三月三〇日から五月一五日まで、一九四八年のイスラエル建国の際にパレスチナを追われ、各地に離散した難民の帰還権を主張するデモが呼びかけられ、金曜日ごとに数万人が参加した。
このデモはガザ地区の青年、女性団体、人権NGO、労働団体、文化団体など広範な社会層を代表する委員会によって組織され、ハマスとPLOのほかPFLPなどの左翼組織を含む政治党派が結集する全国委員会も結成された。
 一九九三年のオスロ合意に基づく和平プロセスが、その後のイスラエルによる入植地拡大とガザ封鎖、ヨルダン川西岸地域における人種隔離壁の建設、そして繰り返されるガザへの空爆によって事実上破綻し、エジプトを始めとするアラブ諸国もパレスチナの抵抗を見捨てて対米協調を深め、パレスチナにおいてもPLOとハマスの対立とPLO主導の自治政府による抵抗運動の抑止、経済的利権の独占と腐敗の中で、ガザ地区の二百万人の人々は困窮と孤立の極限状態に置かれ続けている。

「衝突」ではなくジェノサイド


帰還権を求めるデモはこの背景の中で、抵抗の意志を示しつづけるためのギリギリの行動だった。イスラエルが築いた包囲の鉄条網に肉薄する平和的デモとして呼びかけられ、ナクバを経験した高齢者から子供まで全世代が参加した。
家族ぐるみ、村ぐるみの参加である。武器を使用しない、境界線の鉄条網を越えないという委員会における合意は完全に守られた。散発的な投石や火炎瓶を除いて、イスラエルやイスラエル兵に対するいかなる攻撃もなかったし、一カ月半にわたるデモの中でイスラエル兵の負傷は報告されていない。
ところがイスラエルはデモの初日から、無防備のデモ参加者に狙い澄ました銃撃を続け、百人以上のデモ参加者が殺害された。負傷者の数は数千人に上る。その多くは銃弾を受け、重傷である。特に米国大使館のエルサレム移転式典が強行された五月一四日には死者六十人、負傷者三千人という戦慄すべき蛮行が実行された。
多くのメディアはこの蛮行を「パレスチナのデモ隊とイスラエル兵の衝突で多数の死傷者」という内容の見出しで報じた。何が「衝突」だ! 完全武装のイスラエル兵が、何の脅威も危害も存在しない状況の中で、平和的デモの参加者に一方的に、狙い澄ました銃撃を繰り返したのである。報告されている死傷者はすべてパレスチナ側である。「自衛のため」というイスラエル当局の発表と、それを追認する米国政府は、「ハマスがデモを扇動した」という誤った情報以外、何の根拠も示していない。「衝突」という印象操作は、このあからさまな犯罪を相対化するイスラエルおよび米国の意図を反映しており、犯罪に加担するものと言わざるを得ない。
五月一四日に、米国大使館のエルサレム移転記念式典が開催されているまさに同時刻に展開されていたこの蛮行は、「衝突」ではなく一方的殺戮であり、それはパレスチナ人の抵抗の意志を打ち砕き、イスラエルへの「脅威」を永久に取り除くために計画され、継続されてきたジェノサイドの一環である。
ナチス支配下のドイツでのジェノサイドを経験したユダヤ人たちの間でも、米国を中心にネタニヤフ政権の下での入植地拡大とパレスチナ人への抑圧への批判が強まっている。キリスト教右派勢力がネタニヤフ政権とトランプ政権による国際社会への挑戦に喝采を送る中、ローマ法王はイスラエルによる蛮行を強く非難している。国連のゼイド・フセイン人権高等弁務官もイスラエル軍の行動を非難しており、国際的人権団体はイスラエルの戦争犯罪についての調査を要求している。

問われる国際的責任

 メディアでは進歩的と言われているコメンテーターの中でも、イスラエルとパレスチナの対立を「宗教対立」として解説し、双方の責任について述べる論調が目立つ。これはイスラエル建国とパレスチナに居住するアラブ系住民(パレスチナ人)に対する迫害の歴史を改竄するものであり、英国の植民地支配とその後のイスラエル建国への主導的役割を正当化する議論である。現実には、「宗教対立」の様相が表れてきたのは戦後のアラブ民族主義の運動が敗北し、パレスチナにおいても左派が主導する闘争が敗北し、イスラム勢力としてのハマスが台頭した一九八〇年代以降のことである。
歴史的脈絡と切り離して西洋的民主主義の価値観やキリスト教の価値観とイスラム教の価値観の対立として描き出すこと自体が欺瞞であり、常に二重基準(米国の同盟国に対する基準と反米諸国に求める基準との乖離)を使い分けている、このような二重基準の下で、イスラエルの占領政策は容認され続け、パレスチナの人々の生存権は国際社会の関心に上ってこなかったのである。
イスラエルの包囲下のガザにおける新たな抵抗運動は、アラブ民族主義運動とパレスチナにおける左派が主導する闘争の敗北を越えて、尊厳のある平和、監獄的生活条件からの解放と自由を目指している。圧倒的に不利な力関係の中で果敢に続けられているこの運動に連帯し、支援することは国際社会の責任である。
第二次世界大戦後に確立された戦後世界は、パレスチナや朝鮮半島、沖縄などの「周辺」に犠牲を押し付けることによって「繁栄と平和」を謳歌してきたが、構造的な矛盾・民族抑圧と差別を不可視とすることで成り立ってきたとも言える。
パレスチナに連帯し、イスラエルの占領政策とアパルトヘイト政策の中止を求めるためのBDS(ボイコット、投資引き上げ、経済制裁)運動をめぐる攻防は、まさに国際社会の責任を問いかけている。イスラエル政府は外交ルートや諜報機関を通じてBDS運動を阻止しようとしており、フランス等でBDS運動を非合法化する動きが強まっている。ドイツでは反ユダヤ主義の禁止の枠組みの中でイスラエル批判が抑制されている。ヨーロッパと米国では労働組合の中でBDS運動への支持が大きな政治的論争となっている。
日本では「パレスチナの平和を考える会」などの市民団体がBDS運動に取り組み、ガザでのイスラエルの戦争犯罪に対しても緊急行動を重ねてきた。
五月一四日を頂点とするイスラエルによるジェノサイドの責任を追及し、これ以上繰り返されないようにするためには、BDS運動を中心とするパレスチナ連帯の運動を飛躍的に強化しなければならない。完全武装のイスラエル軍を前に、恐怖に打ち勝ちながら一カ月半にわたって平和的に抵抗の意志を示してきたガザの人々に立ちふさがっている最大の壁は国際社会の無関心である。 (小林秀史)

5.18

パレスチナの人びとに連帯

警察の妨害に抗して緊急行動

抗議の声をさらに大きく

 米国のトランプ政権は、昨年一二月の在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すという宣言を受けて、五月一四日、ついにエルサレムへの米国大使館移転を強行した。トランプ大統領の娘イバンカ・トランプ大統領補佐官と夫のジャレット・クシュナー大統領上級顧問が、エルサレムでの式典に参加した。
 このきわめて挑発的なトランプ政権の暴挙に抗議して、ガザとエルサレムのパレスチナ民衆は非武装で抗議の大衆行動を行った。五月一五日はパレスチナの民衆にとって、七〇年前に七〇万人ものパレスチナ人が難民にさせられた「ナクバ」(大破局)の日だ。しかしイスラエルの政府と軍は、パレスチナ民衆のデモに実弾射撃で応え、乳児をふくむ一〇〇人以上のパレスチナ民衆が殺された。イスラエル軍は非武装のパレスチナ人による抗議のデモに実弾射撃で応え、ガザへの空爆まで強行したのである。
 トランプ政権のヘイリー国連大使は、パレスチナのデモは「イランによる攪乱行為」とでっち上げ、ガザの平和的デモに対しても「イランに支えられたテロリストがイスラエル兵への攻撃を駆り立てた」と罵っている。イスラエル軍はガザ地区への空爆まで行ったのである。

警察は妨害を
直ちに止めろ
五月一八日午後六時半、NAJAT(武器輸出反対ネットワーク)の呼びかけで、イスラエルによるパレスチナ民衆の平和的デモへの銃撃・虐殺に抗議する行動が行われた。行動には緊急の訴えにもかかわらず七〇人が参加した。この日の行動に向けて、パレスチナを取材してこの日帰国したジャーナリストの志葉玲さんが撮影した生々しい弾圧の写真を使い、セブン・イレブンのネットプリントで印刷した人びとの姿が目立った。
イスラエル大使館に近い地下鉄麹町駅には警察が阻止線を張って、イスラエル大使館に近づくのを阻止している。以前は、イスラエル大使館に面する道路の反対側で抗議の行動を行うこともできたのだが、今やイスラエル大使館が見えるところに近づくことさえ認められていないのだ。
杉原浩司さんが司会し、警察の弾圧に抗議の声をあげて始まった集会では、最初にNAJATの奈良本英佑さんが発言。「イスラエルの建国によって、七五万人もの人々が難民として故郷から追い出された。今、狭いガザ地区には一〇〇万人ものパレスチナの人びとが閉じ込められている。今ガザで帰還を求める六週間前から続けられている。この行動にイスラエル軍は実弾射撃で応じたのだ」と訴えた。
東京経済大教員の早尾貴紀さんは、イスラエル軍とパレスチナ人の「衝突」という報道を批判し、イスラエルによる「一方的民族浄化」に他ならない、と批判した。多くの参加者から、イスラエル国家によるパレスチナの人びとへの一方的虐殺や、トランプ政権の挑発的な「大使館移転」を批判する発言が続く。
警察は、あくまでもイスラエル大使館に近づくことを何の理由もなく妨害し続けた。さらに持続的な、パレスチナ連帯行動を積み上げよう。      (K)

 



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