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    かけはし2018年6月18日号

対イラン戦争煽る者たちにノー


イラン

トランプの核合意撤回

イランの進歩的、革命的反対派に支援を

フリーダ・アフリー

 トランプ米大統領のイランとの核合意撤回は、中東に新たな緊張要因をつくり出しただけではなく、諸国間の世界的関係にさまざまな波紋を起こしている。以下ではイラン人在米活動家が、これらを分析しつつ、イラン国内の進歩的反政権民衆勢力への連帯が決定的に重要だ、と訴えている。(「かけはし」編集部)

中東と世界に
不穏な波伝播


 イランとの核合意、つまり包括的共同行動計画から米国は撤退する、とのドナルド・トランプの公表は、驚きではなかった。しかしながら、イランに対するものばかりではなく、中東と世界に対するものをも含んだ、その不穏な効果の広がり全体は今後分かることとして残されている。
 イランにとっては、それは、破壊的な制裁と、米国の支援に基づくイスラエルとサウジアラビアによって言明された直接的あるいは継続中の間接的戦争を意味するだろう。それは中東にとっては、さらなる破壊と帝国主義による様々な地域的競合を意味するだろう。それは世界にとって、米国とEU間のさらなる分裂、そして諸々の帝国主義のさらなる世界的競合を意味するだろう。
 トランプとネタニエフは、イラン政府は、核兵器開発の秘密計画にしがみつくことによって、弾道ミサイル計画を推し進めることによって、さらにシリア、イエメン、レバノン、イラクでの軍事介入によって二〇一五年の核合意条件を守らなかった、と公言した。問題の核合意には後者二つが含まれていなかったものの、それは、イランの核能力に一定の制限と検証計画を課すことに成功していた。そして、国際原子力機関(IAEA)、国連、さらにこの核取引に対する他の署名国(ドイツ、英国、フランス、ロシア、中国)によれば、イランはここまでこの検証計画にとどまっていた。
 この核取引からの米国の撤退とイランに対するさらなる制裁の行使は、イランだけではなく、イランとの間でビジネスを行うすべての企業、およびイラン中央銀行と取引する全銀行をも処罰の対象にするだろう。これらの企業は、イランでのそれらの操業を終わらせるための猶予期間として九〇〜一八〇日を与えられることになり、そうしなければそれらは米国の銀行システムと衝突することになる。原油に対する制裁は、欧州とアジアの諸国に、イランからの輸入を減らすことを必要とさせるだろう。
 ここまでのところ、英国、ドイツ、フランスは、それらの諸国とEUは一体的にこの核取引を守ってとどまるが、同時に弾道ミサイル開発、および地域における軍事介入という課題に関し、イランとのより幅広い協定を何とか完成させるよう試みるだろう、と宣言している。イラン政府もまた、欧州、中国、ロシアが核取引を守るならば、イラン政府もそれを守ってとどまるつもりだ、と明らかにしてきた。
 イスラエルとサウジアラビアは、トランプの決定を熱を込めて支持した。イスラエルはトランプの公表から一時間も経たないうちに、イランが使用していたシリア軍の基地にミサイル攻撃をしかけた。イランは、ゴラン高原のイスラエル軍前線部隊に対するロケット弾発射で応じた。次にイスラエルは、ロシアに通知した後、シリア内のイランの軍事、治安施設五〇個所への空襲で応じた。

中東の2陣営間
覇権闘争が背景


 イランは依然としてトルコに続く中東第二の経済大国であり、その政府はサウジアラビア(中東第三の経済大国)と張り合う一定程度の地域帝国主義的関与を行っている。西側帝国主義とイスラエルに対するイスラム共和国の反対は、その存在の多くの間、シーアとスンニのムスリム双方内部に多くの影響力を与えてきた。とはいえ、バシャール・アサドの殺人的体制を支えるイランのシリアへの軍事介入は、その影響力の多くを取り除いた。この介入とレバノンとイラクにおける他の介入はまた、イランを経済的に破綻させることにもなった。
 サウジアラビアとサウジの新たな同盟者であるイスラエルと競合する形での、イランの近年の対トルコ連携は、この地域内部の覇権闘争がシーア対スンニという分割、さらにムスリム対ユダヤという分割さえをも超えている、ということをあらためて示している。それは、この地域の資本と戦略的な地政学的影響力を求める闘争を伴い、シーア派のイスラム原理主義的イデオロギーの輸出に限定はされない。
 イランの現在の経済的破綻、およびイスラム共和国に対するイラン民衆の高まる反対は、しかしながら、サウジアラビアとイスラエルがイランの体制を取り除く好機を見出す情勢をつくり出した。
 トランプ政権がオバマ政権が交渉した二〇一五年の核合意からの撤退を公表したのは、まさにこうした脈絡の中においてだ。

米国はEU遠ざけ
中・ロに塩送る


 しかしながら米国の現在の立場は、自身を元の欧州の連携相手と争うところに置くだけではなく、事実上、その世界的な帝国主義のライバル、ロシアと中国を強化する可能性がある。
 バラク・オバマ大統領二期目の国家安全保障補佐官であったスーザン・ライスは次のように語っている。すなわち「米国の世界的指導性に対するコストは法外なものだ。米国が何らかの不履行がないにもかかわらず国際協定を一方的に廃棄するならば、われわれはわれわれの信頼性と責任に対する国際的な見方を掘り崩す。これはまさしく、パリ気候協定と環大西洋パートナーシップに対しわれわれがすでに行ったことだ。しかしイランとの取引を破ることはもっとはるかに危険だ」と(ニューヨークタイムス、二〇一八年五月九日)。
 イランの主な貿易相手の一つであり、輸入品の最大の提供者である中国は、イラン原油の購入を続け、それに対し商品と建設計画で支払うと思われる。イランに兵器を売り、イラン国内で原油と天然ガス施設に、さらに原子力発電所建設に関わっているロシアはすでに、核取引からの米国の撤退は実際上ロシアを助けるだろう、と明らかにしている。ロシア外務省の高官であるウラジミール・イエルマコフは「米国の撤退は、イランとの経済協力に関しもはや制限は消えるのだから、経済的にわれわれを助けることになるだろう。われわれは、エネルギー、運輸、ハイテク……を含んで、あらゆる分野におけるわれわれの二国間関係を継続するだろう」と語った。

最も苦しむイラ
ン民衆に支援を


 もっとも苦しむことになるのはイランの多くの民衆だ。彼らは、もっとひどく苦しいものにさえなり得る制裁に直面するだけではない。イラン人は今、イスラエル、サウジアラビア、米国によってイランの本土で発動される直接的戦争、という強い可能性をも前にしている。
 イスラム共和国の打倒とシリアとレバノンにおける介入の停止を求めて声をあげた、昨年一二月と今年一月の大衆的抗議に続いて、労働者の抗議行動とストライキの波が国中に広がってきた丁度その時に合わせた制裁と直接的戦争の可能性は、致命的な影響を及ぼすだろう。それらは、純粋に進歩的で革命的なあらゆる反対派に、米国、イスラエル、サウジアラビアに対する支持の表現とのラベルを貼り付けることを、体制に可能とするだろう。それはまた、体制の背後に諸勢力を結集させる民族主義的感情をも強化するだろう。街頭で今抗議している若者たちは、兵士として召集されるだろう。
 自身を正統化するために自身の背後にたとえ体制が十分な諸勢力を結集させられないとしても、戦争と帝国主義的介入は、進歩的勢力と革命的勢力の結集を極度に難しくするだろう。
 戦争のサイレンの只中で女性労働者の指導者であるパルヴィン・モハムマディが嘆願することこそ、以下のことを世界中の進歩的な人びとと革命派が広める必要がある、ということだ。
 すなわち「イラン政府には大きな財源と巨大な資産がある。……もっとも重要な部分は、国内の軍と宗教諸機構に、またシリア、レバノン、ハマス、イエメンなど戦争支出に与えられた大きな資金からなっている。これには、盗まれ着服された何十億という額は含まれない。……飢えた労働者に対暴徒守備隊、抑圧、投獄、排除で応じている政府には、たった一つのメッセージしかない。それは、労働者の前にある惨めさ、諸問題、経済的袋小路に対する解決策はまったくない、というメッセージだ。……われわれの前にある任務は、何百万という労働者階級の家庭の失われた暮らしに取りかかり、彼らに福祉、医療、住宅、教育を、一言で言えば、二一世紀の人類にふさわしい暮らしを提供することだ」と。
 米帝国主義および世界と地域のあらゆる帝国主義諸勢力に反対する人びとは、イランの労働者、フェミニスト、学生、知識人の反政府運動内部で、臆することなく声をあげている進歩的諸勢力と革命的諸勢力に対する支持を表す必要がある。(二〇一八年五月一〇日、「中東社会主義者連合」より)
▼筆者は中東社会主義者連合のブログに寄稿している。(「インターナショナル・ビューポイント」2018年5月号)


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