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    かけはし2018年8月13日号

非人道的移民敵視政策をやめよ


移民

民衆の困難を移民のせいにする

欺瞞拒絶し真の敵撃つ闘い共に 

2018年7月25日  第四インターナショナル・ビューロー



 トランプの米国で親から引き離され、おりに閉じ込められている子どもたち、地中海を渡る中で溺死した数千人、サルヴィニのイタリアにより接岸の権利を拒否された移民を運ぶ小舟、難民支援は犯罪と宣言しているオルバンのハンガリー、再度の軍事襲撃とミャンマー政府による虐殺の後にバングラデシュに逃れた三七万人にのぼるロヒンギャ、南米諸国中に広がっているベネズエラとハイチからの何万人もの経済難民、国外の五〇〇万人以上、そして国内で追われたそれ以上のシリア難民……。古い欧州と米州で権力を保持している者たちは、「移民」という幽霊に対する神聖な魔女狩りに加わっている。それらは、右翼のポピュリズムと伝統的な社会民主主義の中で残っているものを奉じる者の幅広い広がりをもつ連合だ。まさに、サルヴィニとマクロン、プーチンとトランプ――東と西の極端な排外主義――、フランスの自由主義者とドイツの警察……と。

非人道性のエスカレーション


 米国に入国しようとしているメキシコ、中米、また世界の他のところの移民に対するトランプの新しい攻撃は、非人道性の衝撃的なレベルに達した。多くの人々がここ数週間、特に六月、メキシコ、米国間国境を越えようとした両親から、「ゼロ・トレランス」(非寛容)政策の実行を通して引き離された数千人の子どもたちという事例を知ることになった。何千人という子どもたちは動物のようにおりに閉じ込められた。そしてその後、彼らの移民の両親が拘留されている国境地点とは別の、遠く離れた町にある拘留センターに収容された。
 国際的な、しかしまた極めて意味のあることだが米国内部の抗議が、子どもと両親のこの引きはなしを止める大統領令に署名するようトランプを強制した。しかしながら、これらの家族たちを再び一つにするための期間は満了に達し、何千人もの子どもたちは今も両親から引き離されている。そしてその両親の何人かは、この期間中に国外に出され、他は、居場所をつきとめられていず、特定もされていない。
 トランプは引き離された両親と子どもを再び一つにする大統領令に署名した(それはまだ現実になっていない)にもかかわらず、彼はまた、移民に関する「ゼロ・トレランス」政策をあらためて断言した。今や全家族は、子ども連れであっても、彼らがすでに故国と旅の途上で極度の暴力にさらされてきた中で、法的手続きの結果が出るまで拘留センターに閉じ込められることになるだろう。
 メキシコや中米からだけではなく、ブラジルやハイチ、さらにアフリカ諸国すら含むようなそれ以外の諸国からやって来る移民にとっての苦悩は、米国への国境を越える時に初めて始まるのではなく、そこまでの途上すべてのものだ。特に深刻なものは、メキシコを通過する移民の状況だ。そこで彼らは、道ばたで殺されないとしても、彼らの僅かな財の強奪や盗みに会うか、女性を売春させそして男を雇われ殺し屋か麻薬の売人にするために、犯罪集団によって誘拐されるか、という状況にさらされているからだ。メキシコ・米国国境にいたる途上で行方不明になった親戚を捜してメキシコを貫く旅をするために、エルサルバドルのような諸国から人道キャラバンが今組織されている。
 南欧では二〇一四年と二〇一七年の間に、一万六〇〇〇人以上の男、女、子どもが地中海を渡ろうとする中で命を落とした。平均では、渡海を試みたおよそ一〇〇〇人に一人になる。しかし二〇一八年には、五〇人に一人以上だ! 二〇一八年一月以後、海の国境の閉鎖強化により、一一〇〇人の移民が溺死した。そして同時に、砂漠やリビアの海岸といった上流でも、アルプスの山道やカレーという下流でも、劇的状況は悪化している。
 これらの死はすべて、移民に対するレイシズム政策が引き起こしている犯罪だ。そしてその下手人は、イタリアの海岸への上陸を禁じたサルヴィニだけではない。全欧州政権が同じ調子の歌を歌っている。
 ブリュッセルでは六月二九日、EUの指導者たちは、彼らの政策を厳しくし、人道団体による小舟の行動を妨害し、拘留キャンプを欧州外に、北アフリカや中東に設けることで一致した。彼らは、彼らの危機に対する「スケープゴート」として移民を利用することを当然のことと考えている。

反動的諸策とイデオロギー攻勢


 マスメディアと主流政治家は、欧州と北米の数億人が抱える諸問題――経済と雇用の諸問題、個人と社会の安全、環境に関わる生活諸条件――にはただ一つの明確な原因――世界の南からやって来る移民――がある、と力説する。彼らはそうすることで、世界の南の諸国間での大規模な移動、移民全体の三分の二を無視している。
 北に到着している数――人口の〇・五%から一・五%の間にあたる――は、容易に吸収可能だろう。たとえばこれを、レバノンと比べてみよう。およそ五〇〇万人の人口をもつ(数十万人のパレスチナ人を含めて)この国は、シリア難民だけで一〇〇万人以上を自国で引き受けてきたのだ。
 彼らは、賃金が下がり続け、失業が高まっているとすれば、これは、規制を受けることなく非合法に北にやってくる移民の競争圧力でうまく説明できる、と強調している。手ごろな価格の社会住宅が十分にないとすれば、これは、「われわれの文明」が当たり前としている生活水準を低めつつ、移民が受け容れがたい条件で生活している都市における、移民による人口統計的圧力が原因だと想定されている。
 犯罪が増加基調にあり、あるいは安全の欠落感やテロリズムの脅威が高まり続けているのならば、その時それは明確に、移民の落ち度、特にアラブ諸国や大きなイスラム人口をもつ国から来ている者たちの落ち度となっている。
 このタイプの議論は他に多くの例がある。「移民の急迫性」に話がいったん及べば、他のすべては跡形もなく消え去っている。
 消え去っているものは以下のようなことだ。
▼すでに一〇年も続いてきた経済危機。
▼国民所得中に占める賃金が下落してきた中での利益の大上昇。そこにおける南の資源(中でもアフリカ)略奪に果たした多国籍企業――特に主に所有者が米国、欧州、あるいは中国であるもの――の役割。
▼主要な国際金融諸機関から押しつけられた、壊滅的打撃を与える対外債務(多くの場合正統性のない)返済、および構造調整計画と緊縮計画。
▼北の消費水準、および今では地球のあらゆる隅々にある資本主義的発展の持続不可能なモデル、が引き起こした環境危機と気候の惨事。
▼南(特に中東と南アジア)における継続的な地域特有の軍事紛争。そこでは帝国主義大国と地域の大国による介入が大混乱を加え続け、そのほとんどが移民や難民にその国境を閉ざしている諸国で生産される武器に、不足はまったくない。

 現実にはこれらの進展すべて――資本主義システムそれ自身が発生させている――が、世界全体の社会的危機および現在の移民の波双方に対する主要な理由だ。しかしそれらは、支配的な話の中では蒸発し、そしてそこにはイデオロギー的な毒の注入がある。
欧州と米国の諸政権は、国境を閉じ、その領域の外部から来る移民を統制することを、力を込めて選択してきた。彼らは、彼らの境界を外に移すことを進んでやる南の政権(たとえばトルコ、リビア、モロッコ)を利用し、EUに入ろうと試みるかもしれない難民や移民に対処し、汚い仕事をやるために、それらに何百万というドルやユーロを与えている。
これらの政策は多くの場合、レイシズムのあり得る高まりに対する「解毒剤」であるとして、あるいは移民を「正規化する」ために想定される必要として正当化されている。
「国民」の住民から満たすことが他の方法では難しい仕事を行うために「われわれは彼らを必要としている」という理由で、あるいは高齢化しようとしている社会の年金を払うためという理由で、より開かれた国境を受け容れる政治的、文化的立場は、基本的に人間の搾取のパターンを断ち切るものではない。

搾取、隔離、レイシズムの悪化

 過去の多くと同様、特に農業、物流、社会的ケアといったいくつかの「典型的」部門で、移民は二重の搾取に苦しめられている。移民の極度の脆弱性と社会的周辺化が、労働力市場における彼らに対する残酷な搾取を容易にしている。そしてそれらが、小規模、中規模の企業、さらに一国内と多国籍の大企業の利益を最大化している。移民は、非合法な顔役を通した完全に地下的な募集、および高度に不安定な契約、この双方を含んだネットワークを介して仕事を見つけている。
この移民の搾取回路は、「原住民」労働者が取り扱われるやり方と完全に交わらないネットワークではない。実際に、移民の搾取は、それがまさに全般的な搾取の構造と緊密に結びつけられているがゆえに機能する。労働者(移民と「原住民」両者)の役割は結びつけられ、交互に影響を及ぼす形で定められている。
こうした脈絡の中で、国境と移民法は諸々のフィルター――超搾取に対し自分自身を十分に守る権利を与えないことを確実にしつつ、もっとも若く健康な労働者、あるいは特別な熟練をもつ者に許可を与える――として機能する。それらはまた、不安全な小舟に詰め込まれた、あるいは高いフェンスを登る数百人の人々の、そしてそれは次いで「殺到」あるいは「侵入」と解釈される、派手なイメージをも提供するのだ。
新自由主義の構想は、勤労民衆の利益になっている法的あるいは社会的規制のすべてを完全に解体することを狙っているとはいえ、労働力市場を組織化しているレイシズム的階層制は、支えとなっているいくつかの少数の初歩的な規制が当面「原住民」労働者にはまだ維持される、ということを意味している。後者は、通常、常にとは言えないとしても、それに自覚することさえないまま(労働力市場のジェンダー構造の場合とまさに同じく)、移民に対する超搾取から直接、あるいは間接的に利益を得ている。
この搾取構造に沿う形で、次のような隔離もまた存在する。
▼「一時的な」拘留センター(EU、米国、オーストラリア内外の)。
▼ひどい生活条件で暮らす何千人という農場労働者を伴い、孤立した、多くの人には見えない、移民が働き暮らす田舎の場所。
▼都市における居住域全体の、周辺化され、犯罪視も受けるレイシズム的隔離。

 この隔離の内部には、法的状況と社会的状況の全体的広がりがある。しかしそれは、「移民」という一般用語で一切合切がひとくくりにされる傾向がある。ところがそこには、労働許可証のない労働者、難民申請者、人道上の保護あるいは国際的保護を受けている難民、労働許可を受けている移民、移民の子どもと孫などがいるのだ。これが、彼らの権利の問題が全面的に除かれ、何らかの「特権」をもつ(たとえば労働許可証)者とそうではない者の間で彼らが分断される、条件に関するある種の階層制を作り上げる。
北の諸国における移民の社会的、物質的、文化的条件の現実はまた、レイシズム、外国人排撃、イスラム排撃の成長をも見てきた。これらの極めて危険な現象は近年、社会的に支配的影響力をもつようになり、G7内諸政権の政策に生気を与える(米国、イタリアではすでに、そしてフランス、ドイツ、英国では次第に)ことが今日恐れられる、特別の政治的形態を身に帯びるようになっている。
ここでわれわれは、すべてが「ポピュリスト」と不正確に称されてきた別個の諸組織について語っている。しかしながらそれらには、一つの共通の特徴がある。それらは、一つの物語を作り上げることで民衆的支持を得ようとしている。そしてその物語りによれば、移民は「世界的な政治的・経済的エリート」が実行している政策の結果だが、そこには「現住の」住民がその「費用」を払うという原住民にとっての破壊的な結果がつきまとっている。
これらの組織は多くの場合、移民個人とコミュニティ全体への攻撃を伴い、ネオファシズムに近い。反ロマキャンペーンの周期的な再出現が一例だ。
この情勢を前に、自らを自由主義と規定している諸政権は、現実には、状況を改善するために何ごとかをやることができず、またその意思もない。それらは、国境を開く政策と民衆の諸権利の保証で応えることができない。これらの政権こそ、福祉国家の破壊に責任があるのであり、経済危機の主要な原因である多国籍企業と金融センターの主な連携者なのだ。それらは、欧州や米国に来ることを願っている人々を歓迎することや、その人たちに難民資格を提供する、どのような実のある構想も提起してこなかった。

移民との社会的、政治的連帯を


ただ一つの効果的な応答は、移民を「問題」と見なすことを拒否し、代わりに何百万人という女性、男性、移民、また「原住民」の社会的要求を満たすことだ。われわれは、世界の他の国がそうであるように、もっとも裕福な諸国がホスト国となることを要求する。第四インターナショナルの諸組織と活動家は、そうした応答を作り上げるために一つの重要な役割りを果たすことを追求する。多くの場合彼らはすでに、反ファシスト、反レイシストの闘いの最前線に、また移民支援に関わっている。この努力は、次の基本的な諸点を軸に焦点を絞らなければならない。
?われわれは移民する権利を、移動と居住の自由を要求する。われわれは国際主義者として、彼らが居住する国の政治的、社会的権利すべてを享受し、尊厳を保って暮らせることが、あらゆる個人の原理的な権利だ、と信じている。
同時に、移民は自由に選択できる選択肢でなければならない。しかしながら、何百万人という民衆は、悲惨さ、貧困、戦争、環境的惨事を逃れるために、見通しその他を欠いたまま、移民することを強制されている。彼らは、戦争や訴追から逃れている人びとのための難民権を含んで、しかしそれに限定されない、すべての権利をもつべきだ。われわれは、いわゆる「経済」移民と難民の分割を拒否する。
これはすべての国で――特に移民に対するもっとも大きな抑圧がある国では――優先事項であり、あらゆる左翼組織は、女性、レイシズム的に差別されている人々、LGBTIの諸個人、ムスリム、またマイノリティといった人々への特別の注意を払って、すべての移民に全面的な権利を認めるために闘わなければならない。
?われわれは、文化的な闘いの一部としてだけではなく、制度的レイシズムと社会的レイシズム両者の代理人に反対する政治的動員としても、反レイシスト、反ファシストの運動の建設を追求する。この闘争の文化的側面と政治的側面を分けることはできない。差別的でレイシズム的なイデオロギーに対抗する目的では、文化のレベルと教育のレベルに関する努力は決定的だ。しかしまた、レイシズムと資本主義の機能間の結びつきを実践的に見えるものにしつつ、勤労民衆の力と権利を取り戻す社会的闘争に取り組むことも決定的だ。
?われわれは、移民の特殊性と特別な要求を出発点に、しかし階級、ジェンダー、レイシズム的差別の問題に必要なつながりを作ることを期待しつつ、そしてこれがどのように内的に結びついた一つの展開であるかを示しつつ、移民の自己組織と闘争を支援する。
?われわれは、被搾取層と被差別層間の共同と彼らが共有する闘争の経験――ひとつはあらゆるタイプの労働者を含む社会闘争と労働組合の闘争の建設を通すもの、あるいはもう一つとして、自己管理住宅方式、労働者協同組合、諸々の連帯団体、非公式の相互経済・社会援助グループといった集団的な構想を通すもの――を理解する。
?われわれは国際主義者として、自由に選ばれた移民と住民の混じり合いは、社会に前向きな利益をもたらすと考える。移民の出身国と彼らが今住んでいる国の民衆運動と社会運動間につながりを作り上げることは、資本主義に対する抵抗運動を発展させる、また連帯と相互援助に基礎を置く新しい世界の可能性を指し示す、決定的な一部だ。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年七月号)  


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