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    かけはし2018年10月15日号

危機を抱えた改憲突破路線


安倍第4次改造内閣の発足

沖縄の勝利に続き、総力で反攻を

「安倍1強体制」に亀裂


  九月三〇日の沖縄県知事選で、沖縄県民の「辺野古新基地NO!」の強い意志に完敗を喫した安倍政権は、一〇月二日、第四次改造内閣を発足させた。
 自民党総裁選で対立候補となった石破の予想を超えた「善戦」に続き、与党・首相官邸を挙げた「総力戦」で闘った沖縄県知事選での安倍政権の敗北は、安倍が政治生命をかけている二〇一九年改憲のスケジュールに深刻な影響を与えることになるだろう。安倍政権与党の公明党は、九月二七日の沖縄県知事選で、連日の党幹部総動員による必勝態勢で構えたが、沖縄の公明党県本部はもともと「辺野古新基地建設反対」の立場であり、かつ創価学会信者の中からも約三〇%が玉城デニー候補に投票した、といわれるほどの反乱に直面した。女性たちの玉城デニーさんへの投票も六割を大きく上回った、と報じられている。
 盤石であるかに見えた「安倍一強」体制に亀裂が走り、このままでは二〇一九年を射程に入れた安倍改憲戦略そのものに深刻な影響が出ることは必至となっている。公明党は、沖縄県知事選での支持者の離反のような事態を繰り返さないために、改憲案についての自民党との事前の調整を拒否する対応を取ることになった。
 このため安倍自民党が目指す「改憲四項目」(自衛隊の明記、緊急事態項目、教育の「無償化」、合区解消)についての公明党との事前協議は、断念せざるを得なくなっている。もちろん安倍自民党にとって、改憲にあたっての公明党との事前調整による合意の取り付けは、必須の要件である。しかし、ここで一歩退いた「弱み」を見せることは改憲を至上命題とする安倍政権にとって、存立基盤そのものの瓦解につながることになるだろう。したがって第四次安倍改造内閣は、まずは内閣を忠実な側近、「お友達」で固めることになった。

看板倒れの「女性活躍」


 安倍内閣の看板だった「女性登用」は今回の組閣では片山さつき地方創生相一人にとどまった。
 第三次安倍内閣の発足時(二〇一四年一二月二四日)、女性閣僚は高市早苗総務相、上川陽子法相、山谷えり子国務相(国家公安委員長)、有村治子国務相(女性活躍担当相)の四人だった。第一次改造内閣(二〇一五年一〇月)では丸川珠代環境相、高市早苗総務相、島尻安伊子国務相(沖縄・北方領土担当)の三人となった。二〇一六年八月の第二次改造内閣でも高市早苗総務相と稲田朋美防衛相、丸川珠代国務相(オリ・パラ担当)の三人だった。二〇一七年八月の第三次改造内閣では野田聖子総務相と上川陽子法相の二人。そしてついに今回の第四次改造内閣では片山さつき一人となってしまった。
 「女性活躍」をキャッチフレーズの一つにしていた安倍内閣のポーズは、その化けの皮を剥がされている。女性記者へのセクハラ、LGBT差別などに貫かれた安倍政権の「女性活躍社会」の中身が、いかに差別的利用主義に貫かれたものだったかがあらわになっている。
 安倍政権を取り巻く状況は、じわじわと厳しいものになっている。安倍政権はそうであればあるほど、「改憲国民投票」による強行突破への衝動に駆られている。今回の改造内閣に入った自民党閣僚一九人全員が「神道政治連盟議員懇談会」の会員であり、一四人が「日本会議国会議員懇談会」の会員だと報じられている。改憲の調整役である党総務会長は腹心の加藤克信前厚労相であり、党憲法改正推進本部長は、盟友とされる下村博文元文科相だ。柴山文科相は「教育勅語は使える」と語っている。
 安倍政権は、こうした状況の中でも不安と焦りをつのらせている。自民党は一〇月末にも予定されている臨時国会で、自らの「改憲四項目」について公明党と調整することを見送り、単独で自党の案を憲法審査会に提出する方針を固めたとされる。実際はどうか。

臨時国会での攻防


 いま公明党は沖縄県知事選で、創価学会員の三〇%が玉城候補に投票したとされることに動揺している。読売新聞(一〇月五日朝刊)は、自民党は改憲案について公明党の合意が得られないことを見越して、単独でも憲法審査会に提出し、臨時国会期間中にも「発議」をめざそうとしている、と報じている。
 「自民党は、一〇月下旬に召集予定の臨時国会で、今年三月にまとめた四項目の憲法改正案を単独で提示する方針を固めた。連立を組む公明党との事前協議は見送る」。
 「自民党の憲法審査会で条文案を示し、各党による議論を始めることを目指している。自民党の憲法改正推進本部長に就任した下村博文・元文科相は四日、党本部で推進本部の最高顧問に就く高村正彦・前副総裁と会談し、公明党との協議を見送り、条文案を憲法審査会に示すことを確認した。条文案は(1)自衛隊の根拠規定の明記(2)緊急事態対応(3)参院選の合区解消(4)教育の充実―の4項目。党は『条文イメージ』と位置づけており、幅広い合意を得るため、他党との協議で修正して憲法改正案を作ることを想定している」(読売新聞10月5日朝刊)。
 他方、朝日新聞は翌日、一〇月六日付朝刊で、「三日に首相官邸で約一時間にわたって行われた首相と高村正彦・前副総裁の会談を取り上げた。「関係者によると、会談では秋の臨時国会に党改憲案の提出を目指すと表明した首相発言について、高村氏が『総理の発言を<改憲四項目を憲法審査会で説明する>という風に私なりに解説している。そういう理解でいいですか』と聞くと、首相は『それでいいです』と応じたという」「二氏が確認したのは、憲法審査会で目指すのは『説明』であり、会長を交代させても提出を目指すという強硬路線は取らないことを意味する」との記事を掲載した。
 自らの改憲案を、安倍が与党・公明党の躊躇をも押し切って「自民単独の改憲案として憲法審査会に提出する」と見なしているのが「読売」であり、高村の説得に応じて、憲法審査会に「提出」するのではなく「説明」するだけ、そんなに簡単ではないよ、と釘を刺しているのが「朝日」という、それぞれの「希望的観測」に応じた説明をしているのがマスメディアの構図だ。

「立憲主義的改憲」ではなく


 われわれは、沖縄県知事選で安倍政権が少なからざるダメージを受けた今、決して楽観主義に陥ってはならない、と判断すべきだろう。沖縄県知事選での大敗は、安倍にとっても、公明党にとっても実に大きな打撃である。とりわけ憲法改悪をめぐって、公明党・創価学会の動揺が始まりつつあるとき、安倍政権はなんとしても公明党にどう喝をかけ、安倍改憲の政治コースに公明党を無条件に引き入れるためにも、あらゆる手練手管を行使することは間違いない。
 同時に、われわれは「安倍改憲反対」の旗を掲げつつ、「立憲主義的改憲」を看板に、個別的自衛権の容認を通じて、憲法九条で「自衛隊の合憲性」を明確化させ、米国の「集団的自衛権」行使を前提にした日米同盟の堅持を訴える主張(たとえば立憲民主党・山尾志桜里『立憲的改憲』ちくま新書の主張)などにもはっきりとした批判が必要となるだろう。
 山尾の主張は、明確に沖縄の米軍基地の存在を容認する論理とならざるを得ないのである。(たとえば山尾は、彼女の主張に対する駒村圭吾慶大教授の質問に対して「現時点で日米安保の構図を大きく組み替えるものではありません」と答え、また「我々は集団的自衛権を行使しないけれども、アメリカの集団的自衛権は拝借するということになる」との挑発的突っ込みに対しても「そこはそうです」と対応している)。
 われわれは、沖縄県民の闘いによって、安倍改憲の総力を挙げた攻勢にゆらぎが見える今だからこそ、労働者・市民による改憲阻止の主張と論理を、沖縄の人びとの粘り強い闘いに学びつつ鍛え上げていく必要がある。
 言うまでもなくこうした主張は、「総がかり」的安倍改憲阻止の大結集に水をかけようとするものになってはならない。しかし、「総がかり」の力は、あらゆる自由で誠実な批判を通じてこそ、強固なものとなることをも忘れてはならないのである。      (純)
 


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