「一月二十九日午前七時半ごろ、東京朝鮮中高級学校一年の女子生徒(16)がJR埼京線に乗車し登校中、若い男によってチマチョゴリのスカートの後ろ側を横に約七センチ、刃物で切られた」と同校は発表し、地元警察に被害届けを出し、政府に再発防止を取り組むように申し入れを決めた。
在日本朝鮮人人権協会によると、朝鮮学校や児童・生徒への被害は、日朝首脳会談で金正日総書記が日本人拉致を認めた昨年九月十七日以降、今回のケースを含めて三百十九件。うち十三件が暴行(未遂を含む)という(毎日新聞、1月31日)。
われわれは昨年暮れに、日弁連会長が発表した声明(別掲)を全面的に支持するとともに、こうした排外主義的暴力を絶対に許さない。
在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ等に関する日弁連会長声明
1.朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という)は、二〇〇二年九月十七日の日朝首脳会談で日本人拉致事件を公式に認めるに至ったが、同日以降日本各地で、朝鮮学校に通う子どもたち多数と朝鮮学校が心ない人たちによる嫌がらせや脅迫的言動に遭っている。
例えば、朝鮮学校に通う子どもが、登下校中、駅のホームや電車の中で腕を捕まれる、民族衣装のチョゴリを引っ張られる、「植民地時代に朝鮮人を全員殺しておけばこんなことにはならなかった」・「朝鮮に帰れ」などと言われる、すれ違いざまに「拉致」と言われるなどの被害を受けている。
朝鮮学校は、学校のホームページの掲示板への書き込み・手紙・電話などにより、朝鮮学校の子どもに対する危害の予告が行われ、そのために一時的に休校せざるを得なかった例もある。
これらの嫌がらせや脅迫的言動は、在日コリアン(在日韓国人・朝鮮人)の子どもたちの生命・身体の安全と自由を脅かし、教育を受ける権利を侵害している。
同時にこれらの行為は、憲法第十三条及び世界人権宣言第一条・第二条・第三条をはじめ、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子ども権利条約などにおける人の尊厳の保障及び人種差別禁止の理念及び規定に反する。
2.北朝鮮による拉致行為は、拉致被害者に対する重大な人権侵害行為であると同時に、逮捕・監禁罪及び国外移送目的略取罪に該当する刑法上の犯罪行為であって、許されるものではない。当連合会は二〇〇二年九月十九日、日本政府に対し、刑法上の犯罪として徹底的に捜査し、北朝鮮による拉致行為及び被害実態の真相の究明、生存者の家族との面会等の実現、被害に対する補償の実現を強く要請した(同日付会長声明)。
しかし、在日コリアンの子どもたちは、北朝鮮による拉致行為に対して何らの責任がないことは明らかである。現在行われている嫌がらせや脅迫的言動はいかなる理由であっても決して許されない。
3.これらの嫌がらせや脅迫的言動は、朝鮮学校に通う子どもを含む在日コリアンに不安と恐怖を生み出しており、早急な対策を講じることが必要である。
当連合会は、前記憲法及び国際人権法に基づく政府の責務として、日本政府に対して、在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせや脅迫的言動を防止するための対策を直ちに講じるとともに、国籍や民族が異なっても、何人も安全・平穏に生きる権利を保障し、そのための方策を講じ、実現することを要請する。
当連合会は、今後、国籍や民族の異なる人々が共生する社会の実現に向けて、いっそう積極的に取り組む決意である。
二〇〇二年十二月十九日
日本弁護士連合会 会長 本林 徹
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