真の公共サービスを防衛しリストラ攻撃をはね返そう
具体的中身を明示
しえない基本方針
政府の経済財政諮問会議(議長・小泉首相)が発表した「郵政民営化の基本方針骨子」が九月十日、数項目の保留事項を決着させて閣議決定された。
その主な内容は、@〇七年四月に民営化し、遅くとも一七年に最終的な民営化A持ち株会社の下に窓口ネットワーク・郵貯・簡保・郵便の四機能を株式会社として独立B窓口会社は過疎地の拠点維持C郵便会社はユニバーサルサービス業務を課すが優遇措置を付加D郵貯会社・簡保会社は新規契約分は政府保障を廃止し、おのおの銀行法・保険業務法を適用E職員は国家公務員でなくなるF郵便事業の債務超過は郵貯資産を振り替え、経営の自由度を拡大G三年ごとに状況を見直す委員会を設置、というものだ。
郵政民営化方針の決着を優先させた骨子であるがゆえに玉虫色は否めず、例えば、一七年の最終民営化時点で、郵貯・簡保を持ち株会社から完全に分離するのか否か、全国一律サービスを郵貯・簡保に義務づけるか、新経営陣の判断に委ねられた貯金・保険・窓口ネットワーク会社が地域分割されるのか否か、貯金・保険の預け入れ・加入上限額を当面維持とあるが期間はいつまでか、など骨子の根幹に関わる内容さえ明示できない代物である。
庶民の貯金をリス
クマネーに吸収
骨子では、民営化後の新規契約から政府保障が廃止され、一七年までに完全民営化とし、民間銀行と同じ郵貯会社が設立される。政府はこの郵貯会社を住宅ローンや中小企業金融など地域密着型の小口金融を目指すとしているが、果たして地方の活性化に役立つ金融機関となるのだろうか。
個人融資あるいは住宅資金融資に関しては進めていくことは可能だが、融資および査定のノウハウを持ち合わせていない新生民営郵貯銀行に企業融資ができるとは思えない。したがって、経営の維持と利潤獲得のために投資による資金運用を中心とした運営へと向かうことは想像にかたくない。
庶民の零細な資金を投資というリスクマネーに吸収しようとしているのだ。
コンビニ・金融チ
ェーンとして展開
全国で二万四千八百ある郵便局ネットワークは、三事業、地方公共団体のサービス、民間金融機関の業務の受託を含め、小売りなど幅広い事業分野への進出を可能にするとして、郵便局で扱える商品を増やし、文房具から金融商品までの、言わばコンビニ・金融チェーンとして全国展開されることになった。
高齢化が進む過疎地の郵便局は維持することが決められてはいるが、郵政官僚が民営化の手本としているドイツポストでさえ、郵便局の数は九一年の二万五千八百局から九六年の一万六千六百局と五年間で九千局が廃局となったことを見逃すわけにはいかない。
この一方で、組織的な選挙違反で現職近畿郵政局長を始め特定局長などの逮捕者を出した「高祖事件」で矢面に立たされた特定局制度に関しても、自由任用制・私有局舎制・無転勤六十五歳定年制の三本柱についてまったく触れてはいない。
ユニバーサルサー
ビスが崩壊する
郵政民営化の決着を最優先させた小泉首相の思惑を利用する形で、民営化反対からすでに民営化推進に舵をとっていた郵政公社は、民営化にあたって「経営の自由度の拡大」「幅広い事業分野への進出」という、〇七年民営化までの期間に子会社への出資や物流部門への業務拡大(企業買収、提携を含む)に道を拓く「成果」を挙げた。
日本郵政公社と中国国家郵政局は日中間の郵便事業を強化するため、包括提携に合意したばかりだが、この提携を足かがりに物流部門の多国籍資本としての将来を見据え、アジア市場・世界市場へ打って出ることになる。
競争至上主義の
新賃金制度導入
民営化を見据え、郵政公社は本年四月、人事制度・給与制度の改革を行い、能力給が導入された。加えて〇五年からの五十五歳での定昇ストップも決定された。
この新制度では廃止・縮小される原資を用いて、能力・実績に反映させることとあわせて、課長・課長代理クラスへは役職調整額を引き上げる側面をも備えており、職階制を軸としたピラミッド型処遇システムに移行し、事実上の競争至上主義の新賃金制度が導入されたのだ。
この賃金制度改悪は職員にとどまらず、ゆうメイト(非常勤職員)にも適用された。ゆうメイトの賃金はマクドナルド方式を採用し、ABC三ランクの査定を導入したが、スキル評価の基準も曖昧なままにAランクに入らない限り、一率に地域別の最低賃金制の水準近くまで引き下げられてしまった。とりわけ職員とほぼ同じ業務をこなす六時間雇用のゆうメイトは生活の維持すら困難となっている。
ジクザグを繰り返
す「効率化施策」
郵便事業の赤字構造からの転換を目指す郵政公社は、営利追求を第一義としてこの数年間、様々な施策を打ち出してきた。一九九八年、郵便配達業務と郵貯や簡保の営業・集金を抱き合わせとした総合担務制が全国の集配特定局に導入されたが、現在は廃止・見直しを含めて事業上、破綻している。また、「失敗は許されない施策」として〇二年、書留・速達・小包を対面配達と位置づけ職員が配達、通常郵便物を受箱配達としてゆうメイトが配達するという、郵便事業を根底から揺るがす「新集配システム」が導入されたが、利用者からの誤配・誤還付・不着などの苦情が相次いだことやゆうメイトの安定確保の困難さからいまだに全国展開のメドすら全く立っていない。
さらに〇二年十二月、コスト削減・品質向上を掲げて埼玉・越谷局に導入されたトヨタ方式による立ち作業と縦型道順組立棚配備で作業の短縮・効率化をねらったカンバン方式もまた、同じ状況に据え置かれたままとなっており、矢継ぎ早のさまざまな施策の導入とその失敗のジグザグを繰り返している。加えて、かつて新夜勤方式が導入されたものの、運送便の深夜への集中に伴い、その過酷さと反対の声の広がりによって二年で廃止されたが、昨年深夜勤が再導入された。そしていままた、時代に逆行した拘束十二時間の実働十時間勤務が東京の二局に九月以降、試行実施されることとなった。
このように、服務合理化、職員定数の大幅減とゆうメイトの増大などで経営基盤の確立を図る郵政公社だが、郵便の民間企業の参入と郵便物数の漸減傾向を踏まえて民営化に舵をとった公社は、前述したように国内外の物流企業との提携買収を射程に入れ、アジア市場・世界市場への参入を見据えた物流事業における資本のグローバル化を目指しているのだ。
郵政二大労組のJPU(旧全逓)・全郵政は、郵便の現場労働者がこうした諸施策で辛酸をなめているなか、組織機構の維持と関連企業への天下りの拡大に躍起となっている。
前進する郵政ユニ
オンの取り組み
郵政民営化への流れの中で、郵政ユニオンは少数であるとは言え、労組の解体をねらった人事交流=強制配転に対する人事院での闘い、ゆうメイトへの解雇や賃金の不払いについての裁判闘争と処遇改善に向けた取り組み、深夜勤の復活実施に対する全国規模での裁判闘争、越谷局トヨタ方式の全国化阻止の闘い、サービス残業の告発、今年で十五年目を迎えたピースサイクル運動、4・28反処分闘争など身の丈を数倍超えるほどの闘いと活動を取り組んでいる。
この結果、少しずつではあるがゆうメイトの組織化を含め、確実に組織が拡大している。
事業収益を第一義とした民営化は、いずれ公共サービスの崩壊、地方とりわけ過疎地の郵便局の閉鎖、郵便料金の値上げに向かって突き進んでいくことはもはや自明の理だ。新自由主義グローバリゼーション反対、郵政民営化反対を掲げ、真の公共サービスを提供する事業として確立するための提言とその闘いに取り組んでいる郵政ユニオンとともに職場地域そして市民運動との連携をさらに広げ、深めて闘いを大きくつくり上げていかねばならない。(中村哲也)
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