| 超国籍金融資本の主導する貿易秩序反対 かけはし2004.10.11号 |
自由貿易協定締
結の現実と実態
ウルグアイ・ラウンドの後を受けて新たな貿易の規範を立てるドーハ開発議題(ドーハ・ディベロップメント・アジェンダ、DDA)交渉が進行中だ。
この交渉の基本骨格を設定することにした第5次WTO閣僚会議(03年9月、メキシコ・カンクン)は霧散し、交渉満了期限が1年も延長されるなど、交渉は難航を繰り返している。「実質的で完全な貿易の自由化を通じて南半球の開発を促進する」ことを目標として掲げているものの、実際には南半球各国に「義務」だけを押しつけて貿易の不平等を一層深化させており、そのため多くの人々が激しく抵抗しているからだ。
米国を初めとする交渉主導諸国は超国籍金融資本が主導している世界経済の秩序に適合した貿易秩序をうち立てるために、その費用をそっくりそのまま南半球の各国、そして民衆に押しつけている。このように「多者間」の交渉が難航を繰り返している間、相対的に妥結がしやすい利害当事国間の「2者間」あるいは「地域別」交渉が、しだいに広がっている。
韓国での「2者間」、「地域別」締結の論議は97年の通貨危機を契機に本格化した。キム・デジュン政権は「外資誘致だけが経済を生かす道」であるとして「外国人投資促進法」、「外国為替取引の自由化」など外国人投資家に対して各種の恵沢を付与し、規制を撤廃する制度を導入した。
これとともに98年、米国と日本を対象とした交渉が始められたが、当時は投資の範囲を拡大(短期性投資資本も投資として認定)し、海外投資と国内資本間の差別をなくし、国内政策による海外投資家の損失に対して政府の補償義務を設けることを内容とする「投資自由化(BIT)」協定だった。韓日投資協定は妥結して03年1月1日から発効し、韓米投資協定は現在、交渉の最後の段階にある。
現在、推進されているのは、これよりもさらに包括的な内容を扱うものだ。投資家を保護するさまざまな措置とともに農産物および工業産品についての関税および非関税の障壁を撤廃し、サービスの自由化を促進し、知的財産権を強化する条項を包括しているのが、ほかならぬ「自由貿易協定(FTA)」だ。
最初の自由貿易協定は、農産物開放を加速化し農民たちの生存権を脅かすものと予想されていた「韓チリ自由貿易協定」だ。農民らの反対にもかかわらず、政府はこの協定の締結を強行し、4月1日には発効した状態となった。現在「韓日自由貿易協定」、「韓シンガポール自由貿易協定」締結のための政府間交渉が進行中だ。最近、WTO5次閣僚会議の霧散ととともに、このような「2者間」、「地域別」自由貿易協定締結の動きが世界的に活性化している中で、ノ・ムヒョン政府もまた、このような協定締結の論議を無差別的に拡大している。
7月初め、韓国で開かれた韓米財界会議では韓米自由貿易協定締結のための実務機構を設定することにした。スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国で構成されたヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)とも共同研究を進めている。韓、中、日3カ国間の自由貿易協定締結のための共同研究の結果がすでに発表された状態であり、ASEAN10カ国との自由貿易協定締結のための共同研究を今年中に速やかにまとめ、来年4月から本格的な政府間交渉に突入するだろうと発表するとともに、このほかにもマレーシア、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコなどとの自由貿易協定締結のための研究がすすめられている。
2者間協定をASEANプラス韓中日のような地域貿易協定へ、またこの地域貿易協定間の統合へ、結局は全地球を合わせる自由貿易体系へと拡大することが資本が持っている構想だ。
協定締結に反対
する民衆の闘争
韓チリ自由貿易協定締結の論議が本格化するとともに、これに対する農民たちの怒りも爆発した。超国籍農企業が農業を掌握しているチリとの自由貿易協定締結は、ウルグアイラウンドの農産物開放によってすでに危機に陥った農民らの生存に一層大きな脅威を加えることになるだろうからだ。
交渉がまとめられ国会批准を前にしていた3月には国会議員を対象とした批准反対の声明運動から市、郡、区単位の闘争、全国単位の総力闘争、国会前篭城、全国道路の車両デモなどに全力を尽くして闘った。それにもかかわらず政府は、脱農のための農業構造調整を骨子とする「自由貿易協定特別法」を対策だとか言って持ち出しつつ、国会批准を強行した。農民たちの闘いは最初に妥結された「韓チリ自由貿易協定」の批准を食い止められなかったけれども、自由貿易協定の弊害を公然化させた。またこの闘いは現在、進められているウルグアイ・ラウンドのコメ再交渉、ドーハ開発議題交渉(DDA、注)中断のための闘争へと続いている。
「韓日自由貿易協定」(注)の締結が本格化するとともに、労働者たちが自由貿易協定締結阻止のための闘争に乗り出している。自由貿易協定・WTO反対国民行動(KoPA、以下、国民行動)は日本の市民社会諸団体で構成された「異議あり! 日韓自由貿易協定」キャンペーン(以下、キャンペーン)とともに両国政府の交渉が開始される以前から対応してきた。政府間交渉の土台となる「韓日自由貿易協定産官学共同研究会報告書」を基礎として、この協定が労働者民衆の暮らしに及ぼす影響を分析し、それについての互いの見解を交流してきた。
超国籍資本が国境を出入りしつつ利潤を創出するうえで妨害となるすべての要素を撤廃することを目標とするこの協定は、法が保障している労働者たちの基本的な権利さえも撤廃されるべき「障壁」として取り扱っている事実だけでも、この協定の反民衆性は充分に現れている。政府間交渉が開始された昨年12月末、「国民行動」と「キャンペーン」は交渉開始に反対する両国民衆の声明を組織して発表した。
2カ月に1回ずつソウルと東京を行き来しつつ、両国政府が交渉を進めている間、ソウルの外交通商部(省)や東京の外務省前で抗議デモが続けられたが、回を重ねるごとにこのデモに参加する人々は次第に増えていった。最近、第5次交渉が行われた慶州では現代自動車労組、民主労総慶南地域本部などを含む800余人の労働者たちが集結し決起大会を開いた。
自由貿易協定に反対する民衆の闘いは徐々に広がっている。「韓チリ自由貿易協定」は農民らが主体となり、「韓日自由貿易協定」は労働者(自動車、部品)らが主体となるのは、締結対象国の経済・貿易構造によって真っ先に影響を受ける産業分野が異なるからだ。農業が没落すれば農民らの生存が脅かされるし、製造業が崩壊すれば整理解雇などによってその費用がそっくりそのまま労働者らに押しつけられるので、彼らが最初の闘いに踏み込むことになるのは、ごく当然である。
だがひとつの自由貿易協定が、また別の自由貿易協定の足場となり、これが世界的な貿易の不平等を招来する多国間貿易協定へと収れんするということを考えるとき、被害の著しい産業を保護する闘いによってこれを阻止するというのでは全く不充分だ。しかもこのような自由貿易協定の本質が資本の利潤を極大化するために労働者民衆の諸般の権利を破壊するものだという点をハッキリと認識するならば、自由貿易協定反対闘争を通じてわれわれが究極的に闘い取らなければならないのは、崩壊する産業の保護というよりは労働者民衆の権利だ。現在、多様な領域において噴出している反グローバリゼーションの闘争同士の連帯が切実となる理由は、このためだ。
協定が広がって
いる理由は何か
世界経済が危機に陥った70年代中盤以降、民族国家の経済を出入りする資本は、その大部分が金融投機的性格を帯びる。移動することだけで利潤を創出する。このような金融資本の自由な活動を後押しするのが、まさに現在推進されている各種の自由貿易協定の目標だ。
一方では資本の移動や自由な活動を阻む各種の障壁(ここには労働権、環境権など民私有の諸般の権利も含まれる)をなくし、また他方では教育、保健医療、エネルギー、食糧、水など民衆の暮らしにおいて基本となる公共サービスを市場化し活動の領域を広げることが、このような協定の主たる内容だ。IMFと世界銀行が、南半球の諸国家が直面した外債あるいは通貨危機を媒介として借款を与え、その対価として貿易や資本移動の自由化、脱規制化、緊縮財政などの構造調整プログラムを強要したのだとすれば、各種の自由貿易協定はこれを恒常的に実現できるようにする体系を形成する、というわけだ。
すべての加盟国の同意を協定妥協の前提としているWTOに比べて、「2者間」、「地域別」の自由貿易協定は迅速に、そしてより多くの自由化を実現できる効果的な手段となる。「韓日自由貿易協定」において労働組合を結成して活動する権利、休暇手当など基本的な労働権を「非関税障壁」として取り扱い、それをなくそうとするかと思えば、WTOのサービス協定が規定しているものよりもはるかに高い水準の自由化を追求しているという点は、このような政治的性格を見事にさらけ出している。
超国籍資本が浸透し、利潤を残せる領域を極大化し、これらの資本がいかなる損害をかえり見ることもなく自由に移動できるように、すべての障壁を除去することを目的としている自由貿易協定の中には、労働者民衆が手にできる利益があるわけでは全くない。(「労働者の力」第62号、04年9月10日付、リュ・ミギョン/自由貿易協定・WTO反対国民行動(KoPA)政策企画チーム長)
注 ドーハ開発議題(Doha Developement Agenda, DDA)
01年11月9日、カタールのドーハで開かれたWTO第4次閣僚会議を通じて、新たな貿易の規範を05年から発足させることを目標として始められた新たな貿易交渉ラウンドを指す。04年第5次閣僚会議(メキシコ・カンクン)が霧散して以降、この8月の一般理事会の議決によって終了期限を1年遅らせて06年まで延長するとともに、最終閣僚会議を05年12月に行う予定だ。
「開発議題」という名称をつけて「貿易において開発途上国の利益を増大させる」との明文を掲げているものの、WTO交渉に気乗りしていない開発途上国および第3世界の諸国家を交渉の場に引き込むための体のいい道具というにすぎない。当時国が要求していた「開発途上国への優待措置」についての履行計画は、論議さえされてはいない。農産物への関税を引き下げ、農業に対する補助金を撤廃する一方、必須の公共サービス(教育、医療、水、鉄道、食糧など)を商品化し開発するように誘導し、投資自由化協定をWTO内におくなど「ドーハ開発議題」交渉が資本の目的通りに終わるならば、現在のWTOよりも包括する範囲がさらに広く、さらに多い自由化によって、世界の民衆の暮らしが奈落に落ちるのは時間の問題だろう。
韓日自由貿易協定
06年の発効を目標として、これまで政府交渉が5次まで進められた。両国の貿易構造上、韓国経済の対日従属を一層深化させるものと予想される。特に韓国に進出した日本資本の要求にそってb無労働・無賃金の原則の順守b休暇手当についての使用者義務の廃止b退職金算出の柔軟化b不法労働争議に対する迅速かつ厳格な対処などを「非関税障壁撤廃」の項目で扱っている。
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