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 ATTAC公共サービス研究会                 かけはし2004.11.01号

郵政民営化を阻止し、「もう一つの郵政改革」の道へ


 九月二十三日、東京の文京シビックセンターでATTAC Japan公共サービス研究会主催の「郵政民営化をとめろ! another postからanother world へ」が開催された。ATTAC Japanはこの間、トヨタのカンバン方式が導入された越谷郵便局の見学などを通して、政府や利権集団、マスコミの中だけで進められる民営化論議に対して、これまでは政治家と官僚の利権としてゆがめられ、そしていま世界的な民営化攻勢の中で多国籍資本の利益のために解体されようとしている公共サービスを守り発展させるという立場から郵政民営化NO!の声を上げている。

効率論ではなく
金融の論理主導


 講師は『ピープルズプラン』編集長の白川真澄さんと郵政労働者ユニオン越谷支部の田中英樹さん。
 白川さんは、これまでの民営化議論では、財政赤字など深刻な問題を解消するために、非効率な官による経営を効率化させることを目的としてきたが、今回の郵政民営化においては、そのような議論が後景化し、もっぱら郵貯・簡保の資金をどのように民間に流し込めるかという「金融の論理」で進められたと指摘した。そして民営化に賛成する世論が形成される背景となった公的資金の使い方、具体的には郵貯・簡保を資金源とする特殊法人などのでたらめな運営を批判した。
 また書き換え債など、一般予算には出てこない隠れ借金などを含めた発行額が百兆円をこえる国債によって日本の財政が維持されているが、この国債を大量に購入してきたのが他ならない郵貯資金である。白川さんは、「資金を官から民へ」と叫ぶ小泉が、国債を買い支える巨大な資金源としての郵貯・簡保をあてにせざるを得ないことを明らかにした。
 そして「郵貯や国債を通じて集まった資金は公共性のある資金。いま崩壊の危機にある地域経済や地域社会を支える役割が公共性のある資金にはある。地域の市民と労働者が参加して使い道を考えるシステムを作っていくべき」と発言を結んだ。
 田中さんは、二〇〇三年四月から越谷郵便局に試験的に導入されたトヨタ方式=ジャパンポストシステム(JPS)が郵便の職場と労働者にどのような影響を及ぼしているのかを報告した(別掲)。
 郵政労働者ユニオンの内田正委員長からは、政府が試算する窓口ネットワーク会社の「九千億円の利益」が、五千局程度の廃局を前提にしたもので、ユニバーサルサービスの破壊が前提になっていることが紹介された。また国内物流のシェア一〇%を獲得するために躍起になる一方、無権利な非常勤化が拡大し、賃金や福祉、労働条件が低下し続けていることも紹介された。

国会・社会のビ
ジョンに関わる


 参加者からは、「これは公共サービスの問題でもあると同時に、日本の国家財政、ひいては国家ビジョンという大きな問題だ」、「霞ヶ関の官僚には経営能力も自信もない。その実態を明らかにしていくべきだ」、「民営化攻勢とは、戦後資本主義がよってきた高度成長の行き詰まりを、労働者や民衆から再収奪することで生き延びようとする資本の戦略である」などの意見がだされた。
 最後に、利用者と労働者がともに郵政民営化を監視するネットワーク結成の準備が進められていることが紹介され、ATTACや郵政労働者ユニオンも積極的にかかわっていくことが確認された。

利害対立を反映
した「基本方針」


 九月十一日に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」は、小泉・竹中や多国籍金融資本など民営化推進論派の狙いである郵貯・簡保資金三百五十兆円を民間多国籍金融資本へ流し込むという方向を確認する一方で、自民党の利益誘導政治の温床となってきた特殊法人の財政基盤の郵貯・簡保資金を手放したくないという族議員や郵政官僚、既得権を確保したい特定郵便局長会、アジア、特に中国を視野に入れた多国籍物流のメジャーを目指すための飛躍点として郵政民営化賛成に舵を切った郵政公社、そしてそこにしがみつくことだけで存在意義を維持したい日本郵政公社労働組合などが、それぞれの思惑を今後国会議論の水面下で談合、妥協できるというまさに新自由主義的玉虫色の内容であると言える。

 最大野党の民主党の岡田代表は、九月五日に出演したテレビ討論会で「いきなり身分をがらっと変えるのは非現実的だ。労働組合とも納得できるよう話し合って民営化を進める」として支持団体である日本郵政公社労働組合に気を使いつつも郵政民営化に推進の立場を打ち出している。もちろん「郵貯、簡保は民間でできる。国がやる必要はない」という金融資本の狙いを代弁することも忘れていない。

郵便局を大資本
に売りわたすな


 十月八日には、政府の郵政民営化準備室と日本郵政公社との間で「連絡検討会」が設置された。週一回程度の定期会合を開くほか、公社側から経営データの提出を受け、各事業の収益性や分社化に際しての人員・資産の配分などを実務的に検討する、としている。公共サービスを食い物にする妥協と打算の産物である「基本方針」が民衆の見えないところで進められようとしている。
 われわれは公共サービス民営化を許さない世界の闘い一部として郵政民営化を阻止し、もうひとつの郵政改革への道を切り開かなければならない。郵便局を利権集団と新自由主義に売り渡すな!郵政民営化NO!公共サービスを守れ!の声を強めよう。(早野一)


田中秀樹さん(郵政ユニオン越谷支部)の報告から
トヨタ方式で郵便現場は大混乱

トヨタには3億円も支払った

 越谷郵便局にトヨタ方式が導入され一年半が経過した。越谷市の人口は約三十二万人、越谷郵便局では正規職員が約四百人、非正規が約三百人働いている。二〇〇二年十二月はじめにトヨタ物流システムから七人が越谷局にきて、今年三月まで常駐していた。トヨタには一億七千万円のコンサルティング料を支払い、その他さまざまな経費を含めると三億円近くをトヨタのためにつかったのではないか。

年賀も大幅遅配続出する腰痛者

 トヨタシステムはジャパンポストシステム=JPSと呼ばれている。それは作業の平準化とジャスト・イン・システムを基本としている。
 作業の平準化のためにまず労働者の勤務時間の管理が必要になってくる。郵便物を集配する集配課では昨年の九月から椅子がいっせいに撤去され、すべて立ち作業になった。昼休みと配達のバイクに乗るときだけ座れる。腰痛で入院した労働者や慢性の腰痛に悩む労働者も出た。トヨタは「座っての作業は無駄」という。当初、人は減らさないといっていたが結局はコスト削減の人減らしが目的だった。
 この一年間は、常態的残業、サービス残業、配達時間の遅れなど、利用者に迷惑をかける状態になっている。これまでは遅くとも五時には配達が終わっていたが、いまでは六時や七時になることもざらだ。遅配はレアなケースではない。一般の市民や企業からの苦情が増えている。また職員の交通事故も増えている。
 年賀の時期は最悪だった。年賀状が元旦に届けられない。三日、四日にも届かない。各課の課長など総動員で年賀に対応して七日から八日にやっと混乱が落ち着いたという状況だった。

ポスト回収回数がへらされている


 トヨタ方式が導入されたことは利用者はよく知っているが、部内の効率化のためだけに遅配などが続出していることはサービス向上ではないという指摘もされた。いってみれば郵政公社とトヨタは地域利用者をつかって実験をしている。郵便の鉄則である「迅速で正確」な作業ができなくなっている。
 またより具体的なサービスの低下は、一日の郵便物の回収回数がおおくのポストで減ったことだ。トヨタ方式導入で、利用頻度が多いと考えられる駅前などのポストは回収回数を増やしたが、利用頻度が低いと判断されたポストは回収回数を三回から一回に減らされた。回収が一回に減らされたポストは集配の職員がポストを開けている。
 これまでは日逓など下請けの会社に委託していた。この改革によって下請けに委託料を支払わなくてもよくなったが、利用者の利便性は大いに低下した。自分が一日一回開けるポストは、郵便でいっぱいになっていることもある。

命令と服従の労務管理方式


 また労働条件が厳しくなっている。欠員が出ても補充されないなかで、労働が強化されている。五月三十日には集配の労働者が一人亡くなっている。
 混乱した年賀を終え、欠員が出たままそれをカバーするために労働強化の状態が続いた。また残業が常態化している。労使で協議してきめる三六協定でさだめた残業時間を大幅にオーバーする状態が続いたことから二回も三六協定を結びなおしたという前代未聞の事態も起こっている。
 トヨタ方式はムリ、ムダ、ムラをなくすのではなかったのか。トヨタ方式は誰にでもすぐに平準化された作業を実現するのではなかったのか。結局トヨタ方式は命令と服従の労務管理でしかなかった。トヨタの工場で働く労働者も大変な状況であることが容易に想像できる。

労働強化に協力する労組指導部

 郵政民営化の防波堤としてトヨタ方式導入によるコスト削減と労働強化を導入した。かつて全逓が強かったときはこんなめちゃくちゃな労務管理を職場には導入させなかった。橋本行革以降、民営化を回避するために労働組合自体が労働強化に協力してきたことの現われだろう。しかし結局、利用者には迷惑しかかけなかった。
 これがトヨタ方式の本質だ。JPSは今年度から全国十五局に拡大し、さらに全国の各局に拡大させようとしている。


反安保実9期の出発シンポ

米軍の再配置と沖縄・神奈川・韓国の反基地闘争


 十月十六日、東京・文京区民センターで「米軍の再配置と自衛隊の派兵に反対する10・16シンポジウム」が開催された。主催は「イラクからの自衛隊撤退と沖縄の米軍基地撤去を求める実行委員会」(新しい反安保実\)。このシンポジウムは、一九九六年二月から始まった「新しい反安保行動をつくる実行委員会」の第9期の出発にあたって準備されたものである。会場には六十五人が集まった。
 最初に、沖縄・辺野古のボーリング調査阻止座り込み闘争や海上抗議行動のビデオが上映された。緊迫した現地の状況が実感できる映像に参加者は食い入るように見入っている。
 シンポジウムは、沖縄・神奈川・韓国をつなぐ米軍基地の再編をメインテーマに、安次富浩さん(名護・ヘリ基地反対協)、木元茂夫さん(すべての基地に『NO』を! ファイト神奈川)、都裕史(ト・ユサ)さん(沖韓民衆連帯)をパネリストとして行われた。
 安次富さんは辺野古の座り込み闘争が沖縄の県民世論にもたらした激変と、米軍の再配置(トランスフォーメーション)構想について次のように語った。
 「辺野古の座り込み行動がこんなに続くとはだれも予想しえなかった。県内・県外から保守派の人びとをふくめて多くの人が激励に訪れ、カンパを寄せたり、差し入れをしている。参院選・沖縄選挙区では投票率が低かったにもかかわらず、糸数慶子さんは九万五千票もの大差で圧勝した。この選挙は事実上、辺野古移設にイエスかノーかを問う選挙だったのであり、県レベルのの選挙でこれほどの大差がついたことは今までになかった」。
 「宜野湾市の人口は八万人。それに対して辺野古をふくむ名護市東海岸の人口は二〜三千人。だから市街地の基地よりも海上基地は安心だ、と推進派は言っている。しかし米軍ヘリは市街地の上を飛ばないと訓練にはならない。海上だから安心だというのは全くのナンセンスだ。米軍のトランスフォーメーションによって宜野湾の部隊が岩国に移動するという可能性もまったくないとは言えない。そうなった場合、本土の側がどう闘えるか、問われることになる。本土でも市民、住民にもっと広がるような闘いが必要だ。少なくとも名護では八年間闘いぬいてきた。われわれがそれぞれの現場で闘う以外にはないのだ」。
 木元さんは、最初に厚木基地のFA18スーパーホーネットの離着陸の際の耳をつんざく状況をビデオで示しながら、横須賀の原子力空母母港化、座間への米陸軍第1軍団の移転、池子米軍住宅建設問題など、神奈川県内の米軍基地の再編に対する闘いを報告した。
 「三月十一日に、米太平洋軍のトマス・ファーゴ司令官は、二〇〇八年に最も能力のある空母を横須賀に配備すると、米議会で証言した。外務省の海老原北米局長は。ファーゴの発言を受け入れるのが当然と語ったが、横須賀市長はそれを拒否し、六月四日には横須賀市議会も全会一致で原子力空母の母港化反対を決議した。自治体の側もスンナリ受け入れるわけではないことが明らかになった」。
 木元さんは、横須賀、池子、座間の問題を相互に関連づけて闘っていこうと呼びかけた。
 都裕史さんは、米軍の世界的トランスフォーメーションが、迅速に展開する部隊の循環配置を意味することを強調し、駐韓米軍司令部のソウルから平澤(ピョンテグ)への移転、パトリオットミサイルの西海岸への集中配備を取り上げるとともに、韓国で拡大する反米軍基地闘争と連帯し、日本の反「北朝鮮」挙国一致的状況を打破する必要を強調した。また米軍基地撤去に向けた方法論として「駐留軍地位協定」の抜本的改正をテーマに上げる必要があるのではないか、と提起した。
 質疑応答の後、安次富さんは現在の米軍基地再編を「本土の沖縄化」と捉え、「本土」でも沖縄と共通の土俵に立って闘う必要性を訴え、都さんは「日本の国民的社会意識の戦争体制化」を変革しなければならないことを強調した。(K)           


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