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「反韓イスラム団体」はなかった            かけはし2004.11.08号

偏見が作り出したとんでもないハプニング


 10月13日夜、TVニュースを見ていた国民らは全く驚いた。公衆波放送3社が先を争って「最近、相次いだテロの警告の中で、国内でイスラム反韓団体が初めて摘発され、組織員が追放された事実が遅ればせながら明らかになった」との内容のニュースを流したのだ。翌日、一部の朝刊紙なども「国内の反韓イスラム団体初の摘発」という見出しのトップ記事を載せた。
 
安養イスラム
寺院への弾圧
 
 マスコミ報道を総合すると、この団体の名前は「タワトゥル・イスラム・コリア」(イスラムへの招待の意)で、京畿道安養、安山、軍浦などの工業団地で働いているバングラデシュ人500人が会員として活動している。
 国家情報院は今年4月、ソウル出入国管理所と合同で、反韓活動取り締まりの次元でこの団体を摘発し、N氏(27)ら幹部組織員3人を検挙して強制追放するとともに、残りの主要組織員らの検挙には失敗した。彼らは1億余ウォンの資金を集めバングラデシュのある政党に送金、また不法滞留者への就業あっ旋によって政府の政策に反対してきたものと明らかになった。彼らのテロ支援の有無について国情院が取り調べをしたが外交関係などを考慮して非公開にしたという状態だ。この事実を公開したキム・ジェギョン・ハンナラ党議員は「最近、あるイスラム団体が国内の施設に対する攻撃を敢行すると公言しただけに、関連機関は不法滞留者のテロ支援の可能性についても警戒を緩めてはならない」と指摘した。
 ところが、この事件は翌日から、あいまいになった。イスラム武装団体が韓国をテロ対象国家として目を付けた中で反韓イスラム団体が摘発されたのであれば、その団体の規模や反韓活動の内容は何なのか、主導者たちは何者なのか、カネを送金されたというバングラデシュ政党とはいかなる政党なのか、潜伏した他の組織員らはどのように追跡しているのか、類似団体はないのかなどについての政府発表が相次いでさまざまな続報として出てきて然るべきなのに、それは全くどこかへ行ってしまった。理由は簡単だ。イスラム反韓団体なるものは最初から存在していなかったからだ。
 キム議員が反韓団体だとして公開したタワトゥル・イスラム・コリアは安養市万安区安養5洞、安養大学正門真向かいにあるイスラム寺院だ。付近の地域で働いているバングラデシュ人をはじめ、パキスタン人、インドネシア人など多様な国籍の移住労働者たちが集まり礼拝を行い、情報を交換する寺院共同体だ。
 この寺院はイスラム教徒である韓国人、故ユ・某氏が1992年に自己所有の建物の2階に開設したが、規模が小さく97〜98年に移住労働者たちが助け合って8千余万ウォンを集め3階を増築した。ところが02年、一帯にマンションが建つとの話が出回った。寺院の特性上、賃借しがたいために移住労働者たちは、いっそのこと建物を買い入れることを計画し募金を集め始めた。この知らせを聞いた全国のイスラム移住労働者たちがコツコツと送金してきて現在、そのカネは1億2千万ウォンを上回り、約定した分まで含めれば1億8千余万ウォンに達する。カネは現在、ある韓国人の名義で外換(外国為替)銀行安養支店にそっくり貯金されている。
 
「政党に送金」
は事実無根
 
 この寺院の事務局長を担っているエマラート・フセイン(43、ファミリーネーム、パブ)氏は「今年4月、不法滞留の取り締まりに引っかかって追放されたN氏が通帳を管理していたが、彼が追放される直前、出入国管理所の助力で名義変更をし、出入国管理所から確認の電話さえもらった」「その時、私がちょうど寺院にいて、その電話を直接、受けた」と語った。外換銀行安養支店の関係者は「金額は1億2千万ウォンをはるかに超えている」「このカネを他の国に送金したことはない」と確認した。「1億ウォンのバングラデシュ送金」は事実無根の話なのだ。
 それならば「幹部組織員」だったというN氏や他の2人は、どんな人々なのか?
 N氏はバングラデシュで神学を専攻した移住労働者で、昨年からこの寺院で礼拝を管掌していた。この寺院礼拝の導師が坡州の寺院に移ったために信徒たちはN氏を一時的に推戴し、1万ウォンずつ集めて毎月85万ウォンずつを月給として渡したという。N氏は昨年秋、雇用許可制が施行されたとき、韓国滞留4年を超えビザ発給の対象となれなくなるとともに「不法滞留」の身分となったものと伝えられた。
 N氏とともに追放されたO氏と、また別のO氏も滞留期限を過ぎた状態だった。昨年4月の取り締まりの際、N氏は安山の友人の所に行っていた最中で、O氏は豆腐工場で働いていたところだった。もう1人のO氏は工場の寄宿舎から逃亡し、その翌日に近くの旅館でつかまった、という。3人とも平凡な未登録滞留者であったというにすぎない。
 組織員の規模が500人であるかのように紹介された「会員500人」は、とんでもない所から根拠が確認された。昨年の大邱地下鉄の惨事の際に、ここに集まっていた移住労働者たちが救援カンパ50万ウォンを集めて送ったところ幾つかのマスコミ社が彼らを「会員500人の外国人労働者親睦団体」として紹介したのだ。
 そもそも何で国内の惨事に救援カンパを出すほどに「韓国に好意的だった」イスラム寺院共同体がイスラム反韓団体に化け、国内16万人に達する未登録滞留者の一部だった3人が反韓団体の幹部組織員にまつりあげられたと言うのか。
 このことを初めて公開したキム・ジェギョン議員は、どんな証拠も根拠となる資料も示せずにいる。キム議員側は「反韓団体が摘発されたという情報を偶然に聞き、調査をしていたところ信じるに値する高位関係者から『口頭で』この事実を確認した」とし「法務部(省)に公式資料を要請したが資料をもらえず、政府レベルで事件の実体や真実を明らかにせよとの趣旨で内容を公開することにしたもの」だと語った。キム議員側は、事実を確認してくれたという「信じるに値する高位関係者」がだれなのかは明らかにしなかった。
 キム議員の主張とは違って法務部は「4月に摘発し追放したバングラデシュ人らは出入国管理法違反の事犯として、国情院の要請によってソウル出入国管理所が取り締まったもの」であり「不法滞留が事由であって他の嫌疑について(キム・ジェギョン議員側に)確認を与えたことは全くない」と語った。
 キム議員と法務部は、まるで「ピンポンゲーム」をするよう責任を押しつけ合っている中で、当時彼らへの「取り締まり要請」をしていた国家情報院は、「確認を与えることはできない、というのが公式の答弁」であるとして沈黙している。ある国情院関係者は「(国情院は)反韓活動という表現を使ったことはなく、またそのように結論を下してもいなかったし、報告書も作らなかったものと承知している」と伝えた。

根拠もなしにテ
ロリスト呼ばわり

 大部分のマスコミはキム議員が法務部から資料をもらい、この事実を公開したかのように報道した。だがキム議員が提示した法務部資料は4月に作成された「不法滞留者の反韓活動についての総合対策」と「反韓活動関連者取り締まり実績表」が、すべてだ。これらの資料にはタワトゥル・イスラム・コリアという名前はもちろんのこと、4月に3人のバングラデシュ人が検挙され追放されたという事実さえ言及されてはいない。当然にも「1億ウォン送金の有無」や「不法滞留者への就業あっ旋」など、彼らが行った「反韓活動」の内容も見つけることはできない。唯一の「関連情報」は03年に2人、04年8月末現在で12人を取り締まった、と簡単に記載された取り締まりの数値だけだ。
 その代わりに、資料には法務部が規定している反韓活動の範囲や内容が詳しく書かれている。いわくb韓国の体制(政策を含む)を否定したり韓国人に対する敵対感をもって韓国の否定的側面を強調する者bテロをしたりテロの陰謀または脅迫をした者b国家政策に反対する集会・デモを扇動・主導・積極参加する者b政治的主張を行いつつ政府の施策を批判・誤導し、これを宣伝・主導する者、などだ。単純な犯罪や未払い賃金の清算・事業場の人権改善要求は除外する、とのただし書きが付いてはいるものの、恣意的な解釈がいくらでも可能な規定だ。
 実際にこの資料において代表的な反韓活動の関連者として紹介されたバングラデシュ人、ピドゥ氏やネパール人タパ氏は国内では、かなり知られた人々だ。ピドゥ氏は昨年、不法滞留者取り締まり抗議集会に参加したとの理由で、タパ氏は民主労総傘下のソウル京仁地域平等労組移住労働者支部長として今年2月にイラク派兵反対と不法滞留者赦免運動を主導したとの理由で強制追放された。
 結局、いかなる根拠もなしに、キム・ジェギョン議員の一方的な主張に法務部の反韓活動の規定が「後光」のように付け加えられるとともに、バングラデシュ人や移住労働者全体が「潜在的テロリスト」として罵倒されたというわけだ。
 安養移住労働者の家のイ・グミヨン館長は「国会議員の『大げさな言いたて』と政府当局の『実績主義』、そしてマスコミの検証なき『受け売り』がかもし出した無責任でとんでもないハプニング」であり「反韓活動を口実として移住労働者の人権や表現の自由を弾圧したり、不法滞留者問題をテロと関連づけて移住労働者集団に対する国民的偏見がひどくなりはしないかと心配だ」と語った。

抗議に対して韓
国当局は沈黙

 この問題は、すでに外交的葛藤にまで広がった。駐韓バングラデシュ大使館は異例なことながら15日に報道資料を配り、「われわれは、大韓民国政府当局からバングラデシュ国籍である数人が反韓イスラム組織との関連性によって追放された、との内容を伝達されたことはない」「マスコミは情報が正確であるかどうかを確認せずに、バングラデシュについての誤った内容や否定的イメージを表現する根拠のない報道をしたことについて、極めて遺憾にしてかつ不幸なことと考える」と発表した。バングラデシュ大使は、これとともに抗議の意味で外交部長官との面談も要請したことが明らかになった。
 10月18日現在まで「反韓イスラム団体、初の摘発」記事を大々的に報道したどのマスコミもバングラデシュ大使館の主張を記事にはしておらず、いかなる政府当局も事件の経緯について責任ある解明をしてはいない。(「ハンギョレ21」第531号、04年10月28日付、キム・ソヒ記者)


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