| 通貨取引税(CTT)のための世界的キャンペーンの提案 かけはし2004.11.29号 |
| グローバル民主化のためのネットワーク研究所(フィンランド) |
なぜ通貨取引税か
国際社会は三つの大きな問題に直面している。第一に、グローバル経済の安定と持続可能性の問題である。中国を除きほとんどの地域で経済が停滞し、いくつかの地域は深刻な不況に陥っている。第二に、金持ちと貧しい人々との格差の拡大である。何十億もの人々の食糧や飲み水、住宅、雇用、教育などの基本的な必要が満たされていない。第三に、国際金融が民主主義を拘束しているという問題である。たった一つの提案が、この三つの問題を同時に解決するのに役立つ。
「国際ロビンフッド税」は独創的で魅力的な提案である。第一に、この税金の制度を整えるための努力は、国際金融の溶解や不安定による巨大な経済的損失や、人間社会の損失を切り抜けるために支払うわずかな代価である。国際金融市場の再登場は、世界経済の停滞の原因の少なくとも一部をなしている。また、近年頻発している暴力的事件の多くは、国際金融システムと関係している。タックスヘーブン(租税回避地)は税金逃れと犯罪と恐怖のネットワークを助長しており、ユーロとドルの間の統制不可能な抗争はイラクへの攻撃と占領の一つの理由であったと思われる。さらに、経済状況の悪化はさまざまな紛争を煽り、新しい帝国からの反応を呼び起こしている。
今こそ国際通貨取引に課税するべき時だ。それは世界的な安定、効率、公正、民主主義に関わる問題への明快な解決策だ。かつては少数の憂慮する人々の遠い夢だったものが、今では政治的に実現可能で、技術的にも可能なプロジェクトとなった。学術的な論拠も確立され、万全である。今や課題は、この改革に対する残された政治的障害を克服することである。この改革は、より大きな改革プロセスの一つのステップとして考えるべきである。
第二に、通貨取引税は、世界が持続可能な発展と、貧困一掃のための多くの実現されていない約束のための資金を捻出できる最も単純な解決策である。世界の援助資金は減少してきた。国連ミレニアム宣言において、世界の指導者たちは二〇一五年までに最も基本的な人間的ニーズのいくつかを満たすという課題を自らに課したが、そのための資金をどのように捻出するかについては語らなかった。通貨取引税は必要な資金を調達できる。誰が、なぜ、どのように支払うべきかという問題をめぐる果てしない政治的争いも、たちどころに回避できる。
第三に、通貨取引税は同時に、国家の経済政策の自立性を擁護する。つまり、経済政策における民主的自己決定の拡大が可能になる。
しかし、それは国家の自立性の問題だけではない。それは人々が金融の動向がもたらす結果によって生活条件を変えられ、しかも金融の動向について発言権を持たないという問題でもある。民主化はまた、力を持たない人々に力を与え、すべての人々が集合的な自己決定に参加できる平等の、実質を伴う権利を実現することにも関わっている。世界的な力関係に挑戦する試みは、民主主義をめぐる新しい問題を提起する。国際金融の民主的管理もその1つである。このように、通貨取引税はグローバルな民主主義についての討論の出発点となる。
今こそ実現のときだ
一九八〇年代と一九九〇年代における大きな金融危機に関連して、通貨取引税を提唱する多くの声が上げられた。(一九九七年の)アジア通貨危機の後、通貨取引税のためのグローバルな運動が登場した。この運動はこの問題を多くの国の国会や、ヨーロッパ議会、そして国連をはじめとするいくつかの国際機関の議題に上らせることができた。一九九九年にカナダ国会、二〇〇一年にフランス国会が通貨取引税の導入を支持する法案を採択した。同様の法案がベルギー国会で、二〇〇三年夏に一票差で否決されたが、二〇〇四年春に再提案され、可決された。南側世界でも多くの政府が、その政策プログラムの中で通貨取引税(CTT)について言及しているか、それを支持する声明を発表している。ブラジル、インド、南アフリカなどの諸国がそうである。
「トービン税」を提唱する運動は多くの国でキャンペーンを成功させてきたが、まだその主要な目的である国際通貨取引税を実現するには到っていない。同じことが、いわゆるオルタグローバリゼーション運動の総体にとっても言える。運動は新自由主義的「改革」のいくつかの要素に抵抗し、延期させることには成功してきたが、金融や貿易、生産に関わる世界経済の統治について一つの改革も実現できていない。通貨取引税は、この運動の優先的な課題とされる十分な理由がある重要な改革である。
私たちは次の大きな金融危機を待つべきではない。それはこれまで経験したどのような危機よりも深刻なものになるかも知れない。今こそ通貨取引税を実現するべき時である。
キャンペーンの
目的はなにか
キャンペーンの目的は二つである。第一に、私たちは通貨取引税の問題を最優先の政治課題の一つへと引き上げようとする。第二に、私たちは各国政府が通貨取引税条約(の最終案)に署名するよう要請し、要求する。
通貨取引税は単なるキャンペーンの手段から、グローバルな政治課題の重要な問題へと発展してきた。今こそ、次の一歩を進めるときである。このキャンペーンは、この二十数年間にさまざまな形で提起されてきたいくつかの提案を統合した「通貨取引税条約草案」を基礎とする。
条約草案の内容
CTT(「トービン税」)の効果は、それが実現される過程によって決まる。この税の主要目的は以下の三つである。
(1)為替市場と国際的な短期資本移動を抑制する。そのことによってこの税は金融市場を安定化させ、国家の経済政策上の自立性を強化する。これは経済の効率と健全性も増進する。
(2)予防や補償のメカニズムのための、さらには、より一般的にグローバルな公共福利のための世界基金を創出する。
(3)国際金融市場と、それによって解き放たれ、強化された社会的諸力に対する民主的規制を可能にする。
CTTについての多くの構想は、この税の一つの目的にのみ焦点を当てており、他のことに関心を示していない。ジェームズ・トービンの一九七二年の最初の提案は、(1)の安定化と国家の自立性についてのみ取り上げ、(2)はどうでもよい副次的効果として脇に置かれた。トービンは(3)についてはほとんど何も語らなかった。一部のエコノミストは、この点についてトービンを踏襲している。その後の多くの提案は、(2)の世界基金の創出にのみ関心を寄せ、為替取引の量と機能にほとんど影響を及ぼさない低い税率を示唆した。また、最近ではEUによる独立的なCTTの確立について多くの提案がなされているが、それはこの三つの基本的な目標を達成しないだろう。それには世界基金も金融市場の世界的な民主的管理も存在しないだろう。発展途上国が欧州中央銀行による管理を受け入れることを条件にCTT体制への参加を許されるのであれば、CTT体制は(新)植民地的な金融構造の再生産に近いものとなるだろう。
条約草案はCTTのすべての主要目的を組み込んでいる。課税ベースは可能な限り包括的に定義されている。この提案では、税率はやや高く(例、0・1%)設定されている。税率そのものは変動する。よく知られているスパーン・モデルに従って税率は二段階で設定され、為替レートが大きく変動する時には高い税率を課すことにより、大規模な投機による法外な利益を没収する。税は各国ごとに徴収され、各国は歳入の一部を留保する。しかしOECD諸国の歳入の大部分は、自動的に、世界基金に回されるだろう。
もう一つの問題は、CTT機構が学習能力を備えていて、自己変革できなければならないということだ。
CTT機構は種々の考え方に開かれていて、予想外の変化に迅速に対応でき、必要に応じて新しい役割を引き受ける権限が与えられていなければならない。さらに、基金の配分に関する決定のための公正で、透明で、責任が明確なプロセスが存在しなければならない。実効性があり、開放的な民主的機構のみが、そのような要件を満たすことができる。積極的な言い方をすれば、CTT機構は民主的な機構とイニシァチブの見本を示すことによって、世界経済のガバナンス(統治)における新たな民主的参加とアカウンタビリティ(責任)の形態の発展を促進することもできる。
CTT機構は税を監督し、世界基金を管理する。それは評議会、常設事務局、民主的総会によって構成される。三つのタイプのアクター(行為主体)、すなわち政府、国会、世界市民社会のアクター(NGOだけでなく、労働組合等を含む)が当事者として認められる。
全会一致以外の意思決定においては、政府および国会の議決権はそれぞれの国の人口によって決められる。市民社会のアクターは民主的総会における意思決定に参加する。
最初の段階においては、この体制は全ての国が公平な条件で参加できるように開かれていなければならないが、トービン税の必要性についての満場一致での合意は必要ではない。条約は、@三〇カ国が批准し、かつA条約批准国が世界通貨市場の二〇%以上を占めることを準備グループが確認した時点で発効する。つまり、一定数の諸国が批准すればいつでもこのシステムを導入できるということである。CTTの確立のための国際会議を招集する国と、それに参加することに関心を持つ十分な数の国があれば十分である。
条約草案は、具体的かつ詳細な議論のための検討用文書である。しかし、基本的には、最初の三〇カ国が条約に署名し、批准し、CTT機構を設立するためのすべての準備はすでに整っている。
必要な具体的活動
ジュビリー2000キャンペーンは、債務の問題を政治課題にのぼらせることに成功した。このキャンペーンは二千四百万人を超える署名によって支持された。ジュビリー・キャンペーンの成功に鼓吹されて、私たちは次の三つの要素からなるCTTキャンペーンを開始した。
1.個人、政治団体、国家にCTTおよび条約草案を支持するキャンペーン文書に署名することを要請する。署名はキャンペーンに参加している諸団体によって集約される。署名は二〇〇八年のG8首脳会談に提出される。
2.透明性を確保するため、およびキャンペーンの最新情報を即座に提供できるように、インターネット・サイト www.globalCTT.org
を確立している。このサイトにはCTTを支持する動きに関するニュース・フラッシュを隔週で掲載する。情報はこのキャンペーンに参加している団体によって提供される。また、このサイトで通貨取引税条約草案について発言することができる。さらに、このサイトはCTTに関する有益な研究レポートへのリンク、キャンペーン文書を支持する署名の数に関する最新情報も掲載される。
3.このキャンペーンは二〇〇七年末に計画されるCurrency Transactions Conference(「通貨取引に関する会議」)の準備としての役割を果たす。実際には、この準備は、条約草案に関するFAQ(よく尋ねられる質問)についての検討を通じて行なわれる。条約草案は、この会議において市民社会の諸組織によって採択される。各国政府もこの会議に招請され、条約草案への署名を要請される。
このキャンペーンはまた、できる限り多くの団体および個人が、自分たちのターゲットとする人々に対するキャンペーンを発展させる枠組を提供する。
キャンペーンの
主体はだれか
このキャンペーンは、通貨取引税を支持する活動を行なっている全ての団体に、ともに活動に参加し、人々にキャンペーン文書への署名を呼びかけるよう要請する。このキャンペーンの呼びかけ団体にはATTACブラジル、同フィンランド、同アイルランド、NIGDが含まれる
(2004年6月1日現在)。
2008年に向けて
キャンペーンの提案の草案とキャンペーンの目的は、市民社会のフォーラムにおいて討論される。その最初は二〇〇四年六月一三―一八日にサンパウロで開催されるUNCTAD XI(国連貿易開発会議第11回総会)での市民社会フォーラムである。二〇〇四年後半に、私たちはキャンペーンの枠組を発表し、その枠組の中で各団体がいくつかの重点的なキャンペーンやロビー活動を実施する。キャンペーンの枠組の中で、世界社会フォーラムでのイベントを主催し、また、独自に条約草案に関する意見を集め、キャンペーン文書への署名を要請するためのイベントを主催する。署名は二〇〇八年の国連総会と、同じ年のG8首脳会談に提出される。
しかし、主要な点は、政府または政府のグループが条約を検討し、最終案を作成するための大きな会議を準備するよう働きかけることである。政府にとっては、他の数十カ国の政府と、数千の政治団体と、全世界の数百万人の人々に支持されていることがわかれば、そのようなイニシアチブを発揮するのがはるかに容易になる。
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