| イラク派兵延長・新防衛大綱閣議決定糾弾! かけはし2004.12.20号 |
十二月九日、小泉政権は自衛隊イラク派兵の一年間延長を閣議決定した。翌十日、イラク派兵とセットのものとして、海外派兵を自衛隊の主任務とし、「対テロ・グローバル戦争」に参戦する体制を築き上げるための新「防衛計画大綱」と次期中期防衛計画が閣議決定された。
憲法のみならず、日米安保や自衛隊法、さらには「イラク特措法」にも違反して戦地・イラクへの自衛隊派兵を継続し、戦争国家体制構築に大きく歩を進める小泉内閣を、われわれは怒りをもって糾弾する。
イラクへの自衛隊派兵の一年延長決定は、十一月の米軍によるファルージャへの総攻撃によって一般市民六千人が虐殺されるなど、すでに昨年三月の侵略戦争開始以来十万人以上のイラク民衆が殺される中で行われた。米英とともにイラク占領の「連合軍」に参加した諸国のうち、今年中にニカラグア、スペイン、ホンジュラス、ドミニカ、フィリピン、タイがすでに撤兵し、さらに今年中にハンガリーが、また来年三月にはオランダが撤退を決定している。ポルトガルも来年一月に予定されている移行国民議会選挙後に撤退する意思を表明しており、ルーマニア首相も来年六月に撤退する方針を明らかにしている。その他、ポーランド、ブルガリアも派遣人員の大幅に削減する予定である。国家分裂に揺れるウクライナでも十二月になって最高会議(国会)が 大統領に対し撤退を求める決議を採択した。
こうして櫛の歯がぬけるように「多国籍軍」を構成する各国がイラクから手を引こうとしているのに対比して、小泉内閣の対米追随方針は国際的にも際立っている。政府・与党は、大野防衛庁長官や武部自民党幹事長、冬柴公明党幹事長をわずかサマワに数時間だけ訪問させ、「サマワは戦闘地域とはいえない」「子どもたちも手を振って自衛隊を歓迎してくれている」と語るお粗末きわまるセレモニーを演出し、派兵延長に踏み切ったのである。
小泉首相は閣議決定後の記者会見で「イラクに安定した政権を作ることが日本の国家利益に反する。日米同盟、国際協調の両立が日本のの発展、繁栄を確保する道だ」と主張し自らの決定に「迷いはない」と言い切った。「日米同盟堅持」が日本の「国益」であり、米国の苦境を支える以外に日本にとっての選択肢はない、というのが小泉首相と自民党の基本認識である。
今回の派兵延長にあたっては、「@現地の復興の進展状況、A選挙の実施等によるイラクの政治プロセスの進展状況、Bイラク治安部隊の能力向上など現地の治安状況、C多国籍軍の活動状況・構成の変化など諸事情をよく見極め、必要に応じ適切な措置を講じる」との変更を「基本計画」に加えている。これは、公明党に配慮した上で「撤退」の条件を新たに定めたものとされているが、ここでは自衛隊のイラク派兵期間の「終わり」がいつになるかはまったくあいまいであり、米軍が求める限り自衛隊の派兵期間に事実上「期限」が存在しないことになる。小泉は、記者会見で来年十二月に再び派兵期間を延長する可能性についても否定しなかった。すなわちタイムテーブルによればイラクに正式政権が発足することになるはずの二〇〇五年十二月以後も、自衛隊の派兵を継続することを想定しているのである。
それは、反米・反占領の大衆的機運がさらに拡大し、占領軍に依拠したアラウィ暫定政権のかいらい性がますます明白になり、「移行国民議会選挙」や正式政権発足のプログラムが崩壊せざるをえないイラク情勢の泥沼の中に、ブッシュとともに小泉政権がひきずりこまれつつあることを示すものである。
イラク派兵継続に批判的なマスメディアも、強固な「日米同盟」を背景にブッシュの「単独行動主義」に対して「国際協調」への転換を促すべきであるとか、「撤収のマイナス効果、イラク建国支援の重要性も否定できない。戦後の日米同盟の重要性から考えても、米国の苦しい立場に配慮、派遣延長で象徴的な支援を継続することは当面やむをえない」(毎日新聞12月10日、同紙政治部長・倉重篤郎)と、限りなく既成事実に屈服している。
しかし問題は、アメリカによる侵略戦争と占領支配の不法性であり、米軍を中心とする多国籍軍のカイライにほかならないアラウィ暫定政権を通じた「選挙」や「正式政権」への移行プログラムがイラク民衆の大多数にとって、どのような正統性も持ちえないということである。戦争と占領の国際的違法性を明確にし、占領軍の即時撤退によってこそイラクの主権・平和・民主主義・復興が現実化しうるという原則に、あらためて立ち返らなければならない。
イラク反戦運動を国際的に再建し、占領をやめさせ自衛隊の即時撤退を求める闘いを、二〇〇五年に向けて発展させよう。
十二月十日に閣議決定された新防衛計画大綱と次期(二〇〇五年〜〇九年)中期防衛計画は、「本土防衛」のための「必要最小限の防衛力保持」という建前を最終的に放棄し、「国際的平和協力活動」と「多機能・弾力的」な防衛力整備という名目で、先制的「対テロ」グローバル戦争というアメリカ帝国主義の軍事戦略に全面的に対応した自衛隊の「海外作戦軍」化を確認したものである。そのために五千人規模の中央即応部隊を新設することも打ち出された(その実働部隊たる「緊急即応連隊」が陸自宇都宮駐屯地に作られるという。11月8日「東京新聞」)。
陸上自衛隊の定数については財務省は現行の十六万人を十四万五千人にまで削減することを主張していたが、発表された大綱によれば常設自衛官十四万八千人、即応予備自衛官七千人の計十五万五千人となり、防衛庁の側が大きく押し返した形になっている。
「武器輸出三無原則」についてはミサイル防衛(MD)システムのためのアメリカとの共同開発・生産を「三原則」の対象外とするだけでなく、「テロ・海賊対策」などを口実にした他の諸国への艦艇輸出についても「個別の案件ごとに検討の上、結論を得る」と、事実上、武器輸出三原則のなし崩し的緩和=武器輸出の公然たる拡大の方向に道を開くものとなっている。これが日本経団連などが求めるグローバルな武器市場への参入に向けた踏み出しであることは言うまでもない。
新防衛計画大綱と次期中期防が進める「海外派兵大国」の道は、米軍の世界的な基地再編・再配置計画(トランスフォーメーション)と一体のものである。在日米軍の指令中枢ハブ基地化と日米安保同盟の「再々定義」による米戦略の下での自衛隊の海外作戦軍への組み込みが、ドラスティックな形で進行しているのだ。
そしてこうした日本帝国主義国家の軍事戦略の根本的な組み換えが、憲法改悪を急ピッチで進めようとする支配階級の意思の背後にあるものだ、と言わなければならない。それは狭義の軍事に止まらない、国家・社会のトータルな軍事化を意味している。
最後にわれわれは、十二月九日のイラク派兵延長、十日の新防衛計画大綱と中期防の閣議決定が、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による横田めぐみさん「遺骨偽造」の発表との絶妙な兼ね合いでなされていることに注意しなければならない。
十二月八日、小泉政府は、十一月の日朝実務者協議で北朝鮮が提供した拉致被害者・横田めぐみさんの遺骨について、DNA検定の結果、めぐみさんとは違う人物のものであると発表した。われわれは北朝鮮・金正日独裁体制によるこうした非人道的な虚偽工作を絶対に許すことはできない。金父子体制の下で行われた拉致犯罪の全容を徹底的に解明し、責任者を処罰し、謝罪するとともに、現在北朝鮮で生存しているすべての拉致被害者の帰国・原状回復をわれわれは求める。
今回の北朝鮮・金正日独裁体制の犯罪的虚偽工作に対して、小泉政権は、すでに五月の二度目の日朝首脳会談て日本側が約束した食糧支援二十五万トンのうち未履行分の十二万五千トンを凍結することを決めた。さらに与野党の政治家や拉致被害者の家族は。北朝鮮への経済制裁を要求している。われわれはこうした経済制裁の主張に反対する。独裁国家に対する経済制裁は、イラクのサダム・フセイン政権に対する制裁がそうであったように、その打撃はもっぱら独裁政権に抑圧されている一般の民衆、とりわけ高齢者、子ども、女性などの社会的弱者に集中し、独裁体制への民衆の依存を強める場合が多いのである。
いま労働者・市民に求められていることは「経済制裁」の要求ではなく、金正日独裁体制に対する国際的批判を強化し、「脱北者」をふくめて飢餓と人権侵害の虐政に苦しめられている北朝鮮の労働者・民衆への支援を作りだしていくことである。北朝鮮人民への差別的排外主義をともなった「経済制裁」要求は、決してそうした支援にはなりえない。
毎日新聞が十二月十二日に発表した世論調査は、小泉内閣の支持率が三七%に急落したこと、自衛隊のイラク派兵延長反対が六二%(賛成は三一%)、派兵延長について小泉首相が国民への説明を十分に果たしていないと答えた人が八四%(果たしているはわずか一一%)に達したことを報じた。他方、北朝鮮に対する「経済制裁」への賛成は七二%に達している。
自衛隊イラク派兵に対する反対が賛成の倍になっているのに対し、北朝鮮「経済制裁」論が七割以上の多数を占めている、という現実にわれわれは直面している。このことは、イラク反戦運動を闘う勢力が、同時に北朝鮮・金正日独裁体制の国家的犯罪行為に対してどのように向き合い、批判すべきなのかを突きつけている。われわれは、金正日独裁体制の人権犯罪を決してあいまいにすることなく、グローバルな「平和・人権・公正・民主主義」を求める立場を一貫して追求しなければならない。
「経済制裁」論を克服するための闘いは、労働者・市民の側のそうした明白な態度によってこそ前進しうるのである。
(12月12日 平井純一)
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