かけはし重要記事

frame01b.html

もどる

小泉首相の靖国参拝                  かけはし2002.4.29号より

有事立法策動と一体-新たな「英霊」作りの決意表明だ


 四月二十一日の日曜日の午前、小泉首相は突然、この日に始まった「春季例大祭」にかこつけて靖国神社を参拝した。小泉は、この日の朝起きた時に参拝を不意に決めたと述べている。実際、自民党をはじめとする与党の多くの幹部たちが知らされたのも朝八時頃だった。それはマスコミにもつかまれていなかったため、小泉が午前八時半に靖国神社に着いた時には報道陣はだれもいなかった。このままではお得意のパフォーマンス効果が得られないので、小泉はテレビの取材陣がそろうまで一時間ほど時間をつぶしてから、本殿に向かう渡り廊下に姿を現したのだという(朝日新聞4月22日)。
 小泉は「将来にわたって、平和を守り、二度と悲惨な戦争を起こしてはならない」という「不戦の誓い」を込めて「心ならずも、家族を残し、国のために、命を捧げられた方々全体に対して、衷心から追悼を行う」と「首相所感」でうそぶいた。そして「終戦記念日やその前後の参拝にこだわり、再び内外に不安や警戒を抱かせることは私の意に反するところ」と、八月ではなく、この日に靖国参拝を強行した理由を述べている。
 われわれは、小泉が「戦争賛美神社」としての靖国に参拝を行ったことを怒りを込めて糾弾する。「不戦の誓いを堅持する」という欺瞞に満ちた主張を許してはならない。戦争法である「有事関連三法案」を国会に上程した四日後に靖国神社に参拝するということは、この有事法案が想定する新たな戦死者を、まさに「国のために命を捧げられた英霊」として顕彰するための準備をする以外のなにものでもないからだ。「有事関連三法案」の一つ、自衛隊法改悪案では「出動を命ぜられた自衛隊の隊員が死亡した場合におけるその死体の埋葬及び火葬」について「墓地、埋葬等に関する法律」の条項の適用除外が規定されている(第百十五条の四)。
 中曾根康弘元首相は、一九八五年八月十五日の靖国公式参拝を行う直前に、自民党の軽井沢セミナーで「国のために倒れた人に国民が感謝をささげるのは当然で、さもなければだれが国のために命をささげるか」と述べた。
 いま小泉が「靖国参拝」にこだわる理由はここにある。有事法制の確立を通じた戦争動員体制は、「国のために命をささげる国民」の形成を必要とする。小泉が靖国に参拝するのは決して過去の戦死者に「感謝」して「不戦の誓い」をたてるためではない。それは「新たな戦争」に向けた「覚悟」を人びとに受け入れさせるための「誓い」なのだ。
 「有事法体制」=戦争国家体制の形成と連動した靖国参拝に「不戦」や「平和」の仮面をかぶせようとする小泉の策謀を絶対に許してはならない!
 「八・一五靖国参拝」という昨年の総裁選以来の小泉の公約は、「なぜ批判されるのか分からない」と居直った小泉の予想を超えて、アジア諸国の政府と人民の猛烈な反発と批判に見舞われた。それは扶桑社版の侵略戦争正当化歴史教科書問題と重なって深刻な外交問題を引き起し、小泉は「八・一五」をずらして八月十三日に靖国参拝を行うことになった。
 それ自体、侵略戦争で殺された日本軍人・軍属を「英霊」として意味付与する、決して許すことのできない憲法違反の暴挙であった。しかし同時に、繰り返し言明してきた「八・一五参拝」の公約がアジア諸国との関係で大きな政治的抗争を引き起こしたことは、「靖国」にかけた小泉の政治的目標が全面的には貫徹できなかったことを意味している。アジア諸国の戦争犠牲者への「戦後補償」も拒否したままに、憲法改悪と「戦争国家体制」づくりを推進する小泉が、侵略戦争を賛美する靖国神社に参拝することが、アジア諸国の政府と人民に対する挑発以外のなにものでもないことは明らかであった。まさに小泉首相の歴史認識そのものが、アジアの人びとによって拒否されたのである。
 こうした経過の上で、「八月」を避けた今回の小泉の靖国参拝は、それなりの計算の上に準備されたものである。
 新しい「国立墓苑」抗争など「慰霊・追悼」施設のあり方をめぐるさまざまな議論の噴出を背景に、昨年十二月に発足した福田官房長官の私的諮問機関である「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」(「平和祈念懇」、座長・今井敬経団連会長)は、これまでの四回の会合を経て、新たな「追悼施設」を作る場合@追悼の対象は軍人・軍属に限定しないA一般戦災者や外国人も追悼の対象に加える、という線で大筋一致し、年末をめどに報告書をまとめるとされている(読売新聞4月22日)。しかし、靖国に代わる「新たな追悼施設」構想については反対論・慎重論も根強い。
 ここで浮上したのが、「八・一五」を避けて、靖国神社の最大の儀式である春秋の「例大祭」に首相が参拝しようという方式である。八月を回避することでアジア諸国からの批判をかわすことができるし、国内の「靖国護持」派など右翼勢力からの反発をも押さえ込むことができるのではないか、という思惑から発したものだ。
 二月に新たに日本遺族会会長に就任した古賀誠前自民党幹事長は「八月十五日にはこだわらない」との意向をすでに提示しており、遺族会として四月二十一日の参拝を全面的に評価する姿勢を示している。この点は、靖国神社側も同様である。
 しかし韓国、中国の両政府の外務当局者は、今回の靖国参拝に対してもはっきりと批判の意思を表明した。韓国・中国の両政府は、侵略戦争と植民地支配に居直る日本帝国主義者への自国人民の怒りと謝罪・補償の要求を無視することはできないのである。4月22日付の「ヘラルド・アサヒ」紙も「神社参拝は近隣諸国の怒りをかきたてている」という見出しで韓国、中国からの批判を報じるハワード・フレンチ記者(「ニューヨークタイムズ」)の記事を1面トップで掲載している。
 われわれは小泉首相の靖国参拝に対するアジア諸国人民の怒りを自ら受け止めつつ、新たな侵略戦争に踏み込もうとする「有事法」=戦時法制定の策動を全力で阻止しなければならない。四月二十三日には「有事関連三法案」を審議する「武力攻撃事態対処特別委員会」が衆議院で設置され、四月二十六日には法案の趣旨説明が行われ、五月の連休明けから衆議院で本格審議が繰り広げられる。
 四月の闘いを引き継ぎ、5・24の明治公園集会(陸海空港湾労組二十団体、キリスト者平和ネット、日本山妙法寺呼びかけ)など五月の連続的な行動を通じて戦争法案の成立を阻止しよう。(4月23日)  (純) 

もどる

Back