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ブラジル                       かけはし2005.10.31号

新自由主義に妥協するルラ(PT)政権の危機と分解

ラウル・ポントとのインタビュー

PTが歴史上最も厳しい危機に直面委員長選は路線転換のための闘い

解説
PT内で闘うのか離党して闘うのか

 十月九日に行われたブラジルの政権党・PT(労働者党)の委員長選挙の決戦投票で、第一回投票で二位につけた社会主義的民主主義潮流(DS、PT内第四インター派)のラウル・ポント(前ポルトアレグレ市長)は、左派票を集めて四八・四%を獲得したが、僅差で主流派のリカルド・ベルゾーニに僅差で敗北した。
 この間、ルラ大統領の出身母体であるPTは、政権の推し進める新自由主義路線をめぐって深刻な分解と危機に直面している。とりわけ党財政の不正、議会内での票買収スキャンダルはブラジル民衆の期待を背負って誕生したルラ政権とPTの権威を大きく揺るがしている。
 PTの危機は、新自由主義的グローバリゼーションの矛盾に対する労働者・民衆の大衆的闘いを基盤に成立した左派政権が、新自由主義の枠組みと決裂する展望を切り開くことができず、財政危機・債務危機を背景にした金融資本の国際的な圧力の中で妥協を繰り返ていくことによってもたらされたものである。この矛盾は、第四インター派の革命的社会主義グループであるDS(社会主義的民主主義潮流)をも直撃している。
 昨年、PTを離党したDSの一部のメンバーをふくむ左派は、PSOL(社会主義と自由党)を結成し、PTに替わる新しい革命的社会主義党の旗を打ち立てた。PTを除名されたDSのエロイザ・エレナ上院議員がPSOLの委員長に就任した。PSOLは、ルラ政権の新自由主義政策を批判するPT内外の左派を結集して、この間拡大している。
 第四インターナショナルは今年二月の国際委員会で、国際的討論に踏まえて「ルラ政権内に地位を占めることと、われわれの綱領的立場と一致したブラジルにおけるオルタナティブとの構築が矛盾することに、もはやいかなる疑問もありえない」と決議した(本紙05年4月25日号)。それは、DSのミゲル・ロセットを農業改革相に送り込んだDS多数派への批判を意味する。
 これに対して、DS多数派は、PTから分裂した独自党路線をセクト主義であると批判し、PT内部の左派を結集した新たな路線の獲得のための闘いを提起している。本号に掲載したラウル・ポントの発言に、DS多数派の考え方が簡潔に示されている。
 この論争は、国際的に左派が直面する任務の複雑さを改めて提起するものであり、われわれは今後ともブラジル情勢ならびにPTの動向を追っていく必要がある。 (純)


 ブラジルのニュース代理店「カルタ・マイオール」が行った以下のインタビューは、ブラジルの政権政党であるPT(労働者党)の委員長選の結果が判明する前に行われたものである。PT内第四インターナショナル派の社会主義的民主主義潮流(DS)のラウル・ポントは十月九日に行われたPT委員長選の第二回の決戦投票で四八・四%を獲得したが、五一・六%を獲得した主流派のリカルド・ベルゾーニに敗北した。なお決選投票の投票数は二十二万八千百七十五票で、この数はPT全党員数の三〇%強にとどまっている。

 ポルトアレグレの前市長で労働者党(PT)創設メンバーのラウル・ポントは、PTの党内選挙の第二ラウンドは、ルラ政権への賛否をめめぐる衝突ではなく、PTを危機に導いた政策をめぐる討論だと語っている。
 リオグランデドスル州の代表であり社会主義的民主主義潮流の支持者であるポントは、多数派陣営の支持者であるリカルド・ベルゾーニの対立候補として十月九日に予定されている第二ラウンドの選挙に参加することになるだろう(注)。
 ポントは、第一ラウンドの投票で左翼明確化潮流の候補ヴァルター・ポマルを僅差で上回り、第二位となった。いまポントは、第二ラウンドで多数派陣営を打ち負かすために、党からの離脱という脅しをかけている異論派と対決しつつ、より穏健な部分の支持を獲得しながら、党の左翼的部分の統一のために挑戦するという新しい闘いを準備している。
 この闘いは、ウルグアイ出身のガウチョ(スペイン系と先住民の混血の牧童)でPTの出発以来の党員である彼にとって、彼のこれまでの生活の中での新しい挑戦である。彼はその政治活動を一九六〇年代後半の学生運動の中で開始した。その時、彼はリオグランデ国立大学生の中央指導部代表に選出された。
 カンピナス大学で政治科学の学位を取った彼は、大学で政治社会学と経済学を教えた。四期にわたって国会と州議会の議員をつとめた彼は、ポルトアレグレの市長にもなった。彼はそこで参加型予算の立ち上げに加わった。
 公共的経営と市民の権利を高める政策である民衆参加の断固たる擁護者だったポントは、『ポビュリズム批判からPTの建設へ』、『PT略史―その起源から第一回大会まで 一九七九―九一』、『民主主義、参加、市民権――左翼のビジョン』といった書籍の著者である。彼は二〇〇二年に、PTの候補者の中では第一位、全候補者の中でも二位の六万九千四百五十三票を獲得し、再びリオグランデドスル州議会議員に選出された。
 このインタビューの中でポントは、PTがその歴史上最も重大な危機に直面している時にリカルド・ベルゾーニと対立する意味について分析している。彼は、多数派陣営の候補者が提出している分極化を否定している。多数派によれば、第二ラウンドでの対立はルラ政権を擁護する者とそうでない者との対立である。ポントは「ベルゾーニは、汚れた、人を誤らせる議論を作りだそうとしている」と述べ、彼のキャンペーンのトーンは党内で新しい方針の必要性をPT党員の多数に確信させようとするものだと示唆した。(「カルタ・マイオール」)

第2ラウンドのための闘い

――PTがその歴史上最も厳しい危機を経験している時に行われる第二ラウンドでの競争の意味についてのあなたの意見を聞かせて下さい。

 第一ラウンドから私たちが引き出せる結論は、党の活動的な生命力と強さを示したことでした。
 基盤的活動家は、党内の後継の問題だけではなく、ここ数カ月の腐敗非難の波の中でなされたキャンペーンに立ち向かうために、アピールに応えてきました。このキャンペーンは党への直接的な攻撃に転化してきたのです。私たちの敵対者の多くは、このキャンペーンを利用して政治勢力としてのPTの破壊をもくろみました。そして私たちの闘志は、これに力強い回答を行ったのです。いまや第二ラウンドの中で、私たちは動員を強化し、党に新しい方針を与えるために活動することが必要です。

政府を批判し方針を訂正させる

――あなたには当選のチャンスがあると思いますか。

 多数派陣営に反対した六つの陣営を合計すれば、十七万人近くの党員数になります。これらの党員たちは、党の現指導部を批判し、ルラ政権の政策の一部、とりわけ経済的分野での政策をPTが実行した方法を批判するテーゼを支持しました。
 このような投票は、明確に党と政府を方向づけ直す希望を鮮明に表現しています。私たちは、党を離れることなく、政府の擁護をやめることもなく、批判を行い、これらの方針を訂正することを望んでいます。この方針は党員から大きな支持を受けており、私たちはそれが第二ラウンドの投票で表現できると確信しています。そうなるという保証はありませんが、条件は有利です。

私はPTを離党することに反対

――プリニオ・デ・アルーダ・サンパイオが議員グループや活動家たちとともに離党を決定したことは、第二ラウンドでのあなたのキャンペーンの基盤を掘り崩すことになりませんか。

 私は、プリニオやイヴァン・ヴァレンテなどの同志たちの決定は政治的失策だと思います。それは嘆かわしい態度です。なぜならそうしたやり方は、左翼を分解させバラバラにする道であり、ブラジルの左翼が築き上げてきた最も重要な経験に新しい方針を与える役にはたちません。
 これは私たちに一定のダメージを与えましたが、ブリニオの立候補を支持して彼に投票したメンバーの多くは、党内にとどまり第二回投票で私たちを支持すると確信しています。そのため、私たちがこうした投票の多くを失ったということを私は信じないのです。
 現在までに発表されたものによれば、PTを離党するという決定はAPS(社会主義民衆行動)に限定されています。カトリック教会とつながる広範な部分、社会主義フォーラム、社会主義ブラジル潮流(プリニオを支持した)は、第二ラウンドにおいて私たちとともにあるでしょう。しかし離党は嘆かわしいことです。
 第一回投票で私たちが参加したいくつかの討論で、プリニオは、第二ラウンドでは最も得票数の多い左翼候補を支持すると言明しました。この陣営の他の候補は、同じ約束をしました。彼は離党することにより、この団結を弱めたのです。

戦略的討論の再開を支持する

――この障害に打ち勝ち、党の方向づけをしなおすために、どのように期待しますか。

 私たちは、PTを新しい路線に方向づけるという目的を持って、多数派陣営が党を指導したやり方に反対するすべての勢力の統一を擁護します。この目標の中で、最初から私たちが支持してきたものを私たちは擁護します。すなわち年末以前に党大会を招集することであり、私たちは犯された不正常の評価のプロセス、責任者の不信任を進めていくことを願っています。
 大会は、私たちの綱領を今日的なものとし、二〇〇六年の選挙に向けて党を準備するだけではなく、短期的な政府の方針を転換するための政策を定義する場です。
 私たちは、たとえば巨額の基礎予算黒字――国が作りだした経済の大きな分け前を財政収入に移転することを保証するメカニズム――を確立する政策を変えたいと願っています。私たちは政府と党を第二期目に立ち向かうよう準備させたいと思います。このために私たちには、今まで実践されてきたのとは違う連合政策が必要です。また私たちは、PTの社会主義についての戦略的討論の再開を支持します。私たちの戦略的ユートピアの磁石の北を移動させる必要があるのです。それなしには私たちはどこにも行くことができないのです。

主要な選挙母体に力を集中

――第二ラウンド投票に向けたあなたの戦略は何でしょうか、短期間すぎはしませんか。

 その通り。キャンペーンの期間は数日間しかありません。私は、少なくともCBNで放送された第一ラウンド投票前の討論のように、全国規模の広範な討論を保証することが重要です。私たちにはすべての州に行く時間がありません。
 私たちは、第一ラウンド投票以前に行けなかった州に向かう意志を持っていますが、私たちの力を主要な選挙母体に集中する必要があります。これは歪みではありません。
 たとえばサンパウロは国内最大の選挙母体で、ベルゾーニの主要な力もここにあります。サンパウロ以外でもリオデジャネイロ、ミナスジェライス州、パラナ州のような党員の多数が集中している大きな選挙母体があります。リオグランデドスル州とサンタカタリナ州では、私たちはすでに、左翼明確化潮流のような他の左派潮流の支持を当てにできます。
 私たちは、サンパウロ、パラナ、ミナスジェライス、リオデジャネイロの支持が必要です。これらが主要な選挙母体だからです。そうしたことを実現し、可能な場所を訪れるのに一週間半ほどの時間があります。

失敗を繰り返さないための討論

――リカルド・ベルゾーニは、第二ラウンドの投票は、ルラ政権を支持する者とそうでない者との間で分極化した選挙になると述べました。あなたはそれに同意しますか。

 それはウソの分極化です。ベルゾーニは、汚れた、人を誤らせる議論を作りだそうとしています。問題はルラ政権を支持するか否かではありません。党全体で論議されている問題は、私たちが今日突き当たっている危機についてです。それは採択された連合政策が良い結果を生み出したかどうかについてであり、回答は否定的なものです。私たちが討論し回答を出すべきなのはそのことなのです。
 この期間の最終段階で、この同盟政策は党にとって積極的なものだったのか。こうした勢力とともに構成した政府は、私たちの政府が改革や、政府が進めようとした政策を実現する上で助けになったのか。明らかにそうではなかったように思えます。
 現在、私たちは国会議長の選出問題でまたもや困難にたたきこまれています。それは、私たちの批判を定式化し、バランスシートを作成することの評価から開始するのであり、こうしたデタラメな分極化に基づくものではありません。
 PT全体が政府を選出し、政府を擁護しています。私たちに必要なことは、それをいかに前進させるか、犯された失敗、私たちすべてに重くのしかかっている失敗をいかに繰り返さないかを討論することなのです。

(注)リカルド・ベルゾーニは第一ラウンドの投票で十二万二千七百四十五票を獲得した。他の候補者たちの得票は以下の通り。ラウル・ポント、四万二千八百五十七票。ヴァルター・ポマル、四万二千七百八十二票。プリニオ・デ・アルーダ・サンパイオ、三万九千九十六票。マリア・デ・ロザリオ、三万八千八百六十二票。マークス・ソコル、三千九百五十三票。ゲゲ、千九百四十票。多数派陣営に同一化していない六人の候補者は、十六万九千二百九十票を獲得した。
 第一ラウンド投票の後、プリニオ・デ・アルーダ・サンパイオ――ルラ政権への支持を拒否した唯一の候補――は、社会主義と自由党(P―SOL)への加盟を決める一方、彼を支持したPT党員とまだPTからの離党を決めていない党員に対し、第二ラウンド投票でラウル・ポントへの支持を呼びかけた。ヴァルター・ポマル(左翼明確化潮流)とマリア・デ・ロザリオ(運動潮流)も、第二ラウンドでラウル・ボントへの投票を呼びかけた。
(「インターナショナルビューポイント」05年10月号) 



数百人がPTを離党しPSOLに加盟
PTの再編と新しい闘いの局面の開始

 ブラジルの多くの左翼活動家が労働者党(PT)を一斉に離党して社会主義と自由党(PSOL)に参加した。以下は、その報告である(PSOLのウェブサイトより)。

1 九月二十四日の土曜日、セアラ州(ブラジル東部の州)のフォルタレーザでPSOLの上院議員エロイザ・エレナが出席した大衆集会が開催された。その場でジョアオ・アルフレッド(セアラ州選出のPTの下院議員で、第四インターナショナルと密接な関係にある社会主義的民主主義潮流〔DS〕の支持者)は、セアラ州のDSメンバーの約三分の二とともにPTを離党してPSOLに加盟すると公的に声明した。
 セアラ州はリオグランデドスル州に次ぐ社会主義的民主主義潮流(DS)の強力な基盤であった。地方紙の報告では、これは百五十人から二百人のDSメンバーがPSOLに加盟したことを意味する。
 フォルタレーザ市長のルイジアンヌ・リンスなど、セアラ州の著名なDSメンバーは、当面のところPTにとどまっている。ジョアオ・アルフレッドなどは、PSOLとして彼女(ルイジアンヌ・リンス)の市政を支持し続けるだろうと述べた。

2 九月二十六日から二十八日には、サンパウロ、リオデジャネイロ、カンピナスなどで同様の動きが公式に発表された。サンパウロではDSメンバーで下院議員のオランド・ファンタッツィーニが、多くのDSメンバーをふくむ数百人のPT党員とともにPSOLに参加すると発表した。リオではチコ・アレンサル(DSのメンバーではないが、長年にわたって議会内で協力してきた)が同様の動きを取った。

3 同時に、APS(以前は社会主義勢力潮流として知られ、左翼明確化潮流、DSに次いでPT内で三番目に大きい左派潮流)の二人の国会議員、イヴァン・ヴァレンテとマニンハが、PSOLに参加したと発表した。APS全体が同じ行動を取りそうである。彼らは、かつてMST(土地なき農民の運動)と密接な関係にあったPTの歴史的人格であるプリニオ・アルーダ・サンパイオをPT内の指導部選挙で支持してきた(プリニオは多くの人びとから最も「左派」的な候補と見なされてきた)。プリニオもまたPSOLへの加盟の意向を発表した。

4 ブラジルのさまざまな地方で、多くの個人とPT内の小潮流が、PSOLへの加盟を発表している。その中には、ルシアナ・ジェンロのMESを離れたMUS(MESはまだPT内部で闘う必要があると考えたために、MUSが分離したのである)や、ジョルジーニョなど労働組合センターCUTの重要な左派指導部が含まれている。

5 これらの新規加盟の動きは、PSOLを数の面でも、社会的・議会内的ウェイトの面でも大きく強化するものであるが、また新党をよりいっそうイデオロギー的に複数主義的なものにし、PT内の一部の人びとが新党をセクト主義的行動として描きだす(それはつねに不公正なやり方でだが)ことをいっそう難しくさせる。
 この脱退は、DSのラウル・ポント(前ポルトアレグレ市長)に人格的に代表されるPT左派が、PT委員長選で勝利する可能性を持つ時期に行われた。十月九日の第二ラウンドの選挙で勝つ可能性がきわめて高いとは言えないが、第一ラウンド投票では、ルラに近く、そのすべてが汚職の告発がされている件に関与している多数派の候補リカルド・ベルゾーニが四二%を獲得したのに対し、ラウル・ポント(DS)、ヴァルター・ポマル(左翼明確化潮流)、プリニオ・アルーダ・サンパイオ(無所属)が、それぞれ一四・七%、一四・六%、一三・四%を獲得した。

 したがって、ラウル・ポントが第二ラウンドで勝つ可能性があるのである。最近PTを離党した人びとの一部は、依然として党内にとどまって第二ラウンドでラウルに投票する人びとを激励すると語った。
 しかし多くの人びとは、MUSのベルナデーテ・メネゼスの言うことに同意している。彼女は「ラウルの勝利はありそうにない。そしていずれにせよルラの多数派の支持者は、PTの全国機関と州指導部機関のほとんどすべてを依然として支配している。かりにラウルが勝ったとしても、彼は『イングランドの女王のようなもの』、つまり表看板でかつ無力な存在になるだろう」と述べたのである。
 こうしたことすべては、もちろん汚職スキャンダル(不法な党財政活動と議会での投票の買収)の直接の結果であり、それはこの数カ月にわたってPTとルラ自身の基盤を最悪な形でますます掘り崩してきた。
 しかし、さらにこの間の問題としては、二つの分解への触媒が存在していた。第一は、PTの党内指導部選挙の最初の結果であり、それは左翼によるPTの大規模な「再構成」を排除するものだった。第二は、二〇〇六年十月に行われる次期選挙に立候補するための政党登録の締め切り(九月三十日)だった。
(「インターナショナルビューポイント」電子版05年10月号) 


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