| ホワイトカラー・イグゼンプション導入を許さない かけはし2005.11.28号 |
マクドナルド残業代訴訟泣き寝入りはしないぞ
今年の八月一日に、日本マクドナルドは社員やアルバイト十三万人に対して、未払い残業代及び、未払い賃金を二年前にさかのぼって払うと発表した。残業代及びアルバイト社員の賃金について三十分未満を切り捨てていたのを是正するというものだ。その額は二十二億円。これは東京管理職ユニオンによる闘いの成果だ。さらに、同ユニオンはマック熊谷店のA店長に対しての未払い残業代を要求したがマクドナルドは九月三十日に、これを正式に拒否した。同ユニオンは裁判で争うことを決めて争議になっている。
もし、「店長は一般労働者」との判決が下れば、マクドナルドはA店長だけでなく、約千五百人の店長全員に、百億円規模と試算される残業代を支払わなければならないことになる。
バブル崩壊後、大規模なリストラが起こり、長時間労働が強制され、サービス残業が横行している。こうした状況に泣き寝入りしていることが多い状況が続いている。マックでの闘いはこうした状況を打ち破り、労働者の労働条件が向上できるのかどうか、きわめて注目されるものとなっている。
さらに、ホワイトカラー・イグゼンプションを導入して、「一般労働者と違う」として過酷なサービス残業・長時間労働を強いる攻撃をはね返すことができるのか、重要な攻防になっている。マック争議の行方は、今後、この国で働く労働者の雇用に大きな影響を及ぼす可能性をもっている。この問題を担当している東京管理職ユニオンの安部誠さん(同労組書記次長)にインタビューした。
月に百時間以
上も残業だった
――マクドナルド争議の経過についてお聞かせください。
今年の五月の連休明けに、熊谷にあるマクドナルドの店長Aさんが相談にきました。Aさんは四月に軽い脳梗塞になった。正社員は彼しかいないから、店を開いてはいけないことになる。それはマック本部のマニュアルで定めている。
それで、Aさんは本部の管理部門に対して、「病院に行きたいから、代替要員を出してくれ」と訴えた。正社員は彼しかいないから、彼がいなくなるとお店を開いてはいけないことになる。それはマック本部のマニュアルでそう定めている。当然の要求をしたわけです。そうしたら、「お前は時間管理がなっていないから、病院に行く時間を作れないんだ」と言われて、ほとんど病院に行けなかった。
ちなみに、彼は去年の暮れから今年の五月までの半年間のうち四カ月は百時間以上の残業だったんです。朝の九時から夜中の十一時〜十二時という就業だった。それを毎日。
そのマックの店は朝の六時から夜の十時まで営業していた。開店の準備と閉店の片付けがそれにプラスされる。彼の他にもう一人スイングマネージャーという人がいる。この人はアルバイトの中でも、特にマックの中で資格を持った人です。店を開くためには、店長かスイングマネージャーどっちかいなくちゃいけないことになっている。
朝六時から夜十時までだと十六時間。二人で割ると、八時間。そうすると残業しなくてよいと思うかもしれないが、それに従うと休みがとれなくなる。だから、無理なんですよ、残業をやらないと。しかし、残業をやったのに、残業代は払われていなかった。
その店に労基署が調査に入ったんです。それで、マックはたぶん善処しますと言ったんでしょうが、このA店長をつかまえて、「お前が労基署にチクッたんだろう」とやった。それだけでなくて、Aさんは「私ではありません」と言うと、「それだったら、お前の女房にきまっている」と決めつけられた。
マック側は組
合脱退を強要
――A店長の問題について、管理職ユニオンとしてはどう対処しましたか。
A店長の知人にうちの組合員がいたので、その紹介で東京管理職ユニオンに相談にきました。その後、六月三十日に第一回目の団体交渉をやりました。こちらの要求は三つ。一つ目は、店長Aさんを労基法四一条の労働時間の適用除外の扱いをはずせ。普通の労働者であることを認めろ。
二つ目は、アルバイトの人たちも残業の三十分未満のピンはねを知っていたから、「正規・不正規かかわらず、労基法をきちんと遵守しろ」と要求した。マック側が「具体的になんですか」と聞くから、「アルバイトも毎日残業代を三十分未満カットしているだろう。二年前にさかのぼって、払えという」と要求した。そして「店長も労働者だから、払え」と。
三つ目は、団体交渉をやる前に、マック側が行ったA店長に対する組合脱退行為を謝罪せよ、という要求でした。A店長を一回四時間くらい缶詰にして、「マクドナルドに労働組合は似合わない」などと脱退強要をつごう四回やった。もっともマックは、『脱退強要のつもりはなかったが、誤解を招いたことは申し訳なかった』と言っていますが。いずれにしても、Aさんは何回脱退強要しても屈服しなかったので、しょうがなく団体交渉に応じた。
残業代二十二
億円を支払う
――マックが未払い残業代二十二億円を支払ったのはなぜですか。
わたしたちは、マック側の代理人弁護士とも何回も交渉した。するとその過程でアルバイトと一般社員の残業代の賃金未払いの問題をマック側が正すと言った。それはなぜかと言うとぼくたちに言われたから是正したと思われたくなかったのでしょう。労基署の査察が入ってもほっといたのだから、労基署に言われたから払ったわけではない。ぼくたち労働組合に言われたから二十二億円払った。もっとも、どんな事情であれ、払ったことについては評価しています。
店長の身分を
めぐり提訴へ
――A店長の問題はどうなりましたか。
三点目の不当労働行為については、文書で謝罪すると言っている。残ったのは一番目だ。マック側はA店長は、四一条に基づく管理・監督者だから残業代は払わない、と最後まで言い張った。
その理由は、第一に、時間管理の問題で出退勤について自由であるということ。第二に、人事権がある。第三は報酬が高額である。
一点目については「どうやって自由な出退勤ができるの」と、言ったら黙ってしまった。人事権といっても、アルバイトを面接して雇うかどうか決めるのは分かるが、それ以外にどんな人事権があるのか。ちなみに、このお店って正社員はこの人しかいない。人事権なんかないわけですよ。
報酬が高額といっても、毎月百時間ということはないけれども、年間八百時間以上の残業をやって年収六百万円なんですよ。これは二年前、三年前に比べると、額面だけでも、百五十万円から二百万円落ちていて、しかも残業が増えているんです。残業代を入れると、時間単価は千五百円ぐらいだ。とても、高額とはいえない。九月三十日に交渉は決裂し、十一月に裁判に訴えることを決めています。
「割増賃金」の
対象を狭める
――今回の争議はどのような意味をもっていますか。
個別マクドナルドの問題や外食産業の残業未払いというのは大きな問題だけれども、ここでマックが固執している店長は四一条に基づく管理・監督者だと言い張っていることが問題だ。というのは、ホワイトカラー・イグゼンプションにつながってくるんです。
ホワイトカラー・イグゼンプションとは、アメリカでは「公正労働基準法」第七条が、「週四十時間を超えて労働させる場合は通常の賃金の一・五倍以上の時間外手当を支払わなければならない」と定めています。第十三条では、この規定の適用除外を定めており、「管理的被用者」「運営的被用者」「専門的被用者」「外勤販売被用者」などです。これら、一定の要件に当てはまり、週四十時間を超えて働いても時間外手当を支払わなくてもよい人たちは、「ホワイトカラー・イグゼンプション」「イグゼンプト」と呼ばれています。
イグゼンプトの要件は、労働長官が定める規則で決められています。規則では「俸給基準テスト」(支払いが月給・年俸など時間給ではないこと)、「俸給水準テスト」、「職務テスト」の三つがあり、そのすべてを満たせばイグゼンプションとなります。
日本でもこの制度を導入する動きがあり、その前哨戦としても、ぼくらは何としてもこれに勝たなければならないと考えています。いま、労基法があってもやりたい放題のことをやっている。ホワイトカラー・イグゼンプションが導入されたら、日本の労働者は奴隷ですよ。
もちろん、連合も猛反対です。労働契約法とのからみで言うと、中間報告に労働三団体すべてが反対している。年収四百万円以上、ホワイトカラーというと幻惑されるわけだけど、まるまるブルーカラーの労働者でない四百万円以上の労働者が全部イグゼンプションにひっかかるというのが、日本経団連が提案していることです。
労働契約法とのからみで言うと、日本経団連もこの間の中間報告反対なんです。というのは、ああいう内容でも、企業に対する規制が多すぎるというのです。やっぱり規制緩和論なんです。
それよりも、ホワイトカラー・イグゼンプションと解雇問題の金銭解決ルールを早く導入しろといっている。そういう意味の反対なんです。だから、この争議はきわめて重要な意味を持っています。
やって良かったと思うのは未払い賃金が払われたというのもそうだけれど、他の外食産業に波及しているということ。残業代の不払い問題も「是正します」と、株式を上場している会社の八割ぐらいが残業代を払っているという。これはいいことだと思っている。
現場で組合の
役割を果たす
――闘いによって、二十二億円も払われたわけだから、組合に入ろうという人は増えていますか。
まだ、全然ありません。いま、考えていることは、十一月に訴訟を提起します。それと合わせて、全国一斉のキャンペーンを張ろうと思っている。裁判だけで終らせようとは全然思っていない。
――他の業界の問題はどうですか。
アウトソーシング業界最大手のクリスタルという会社があります。あれは偽装請負の疑いが濃厚な会社です。派遣以下なんです。大手派遣会社の幹部が私たちに『頼むからあそことは一緒にしないでくれ』と泣きが入るくらいの会社です。
酷い話はたくさんあるのですが、私が聞いた一番酷いのはこんな話です。例えば、私が工場を経営し、三十人従業員がいるとします。給与原資が十だったとします。ある日、従業員を集めてこのままでは、工場をたたむしかない。ただ、転籍してくれれば、給料は下がるけれどどうなんだと言ったら、たいてい分かりましたとなる。クリスタルが営業をかけた後に、いまいったようなことが起こったというのです。
どういうことかというと、たぶんこういうカラクリなのです。昨日と今日は仕事は同じことをやっている。給与が十から七に下がる。クリスタルは八・五でその会社を買う。時々、管理・監督者と称する人が来るそうですけれど、前の日と仕事は全然代わらない。その一・五の利ざやを単に口を入れただけでぬいていると言われても仕方がない会社といってよいでしょう。
これが全国で、ほとんど非正規なんだけど、十万人を派遣していると称している。この会社があらゆるところに手をのばして、観光バスの会社まで乗っ取っている。いま、そこにうちの組合があって、クリスタルは乗っ取って失敗したと思っているだろう。
虚業では成功しているが、実業に手をだして失敗し始めている。当然、労基法、派遣業法など違法・違反のオンパレードです。この間、派遣業法違犯で、業務停止命令が出そうになった会社をつぶして、親会社に統合した。それが悪質だというので、親会社ごと(親会社といってもクリスタルの子会社なんだけど)、十社くらい合併された企業がある。その会社ごと業務停止になった。戦後二件目だと言われている。
クリスタル問題なんかでは、全労連などとも付き合っている。組合員を増やすのも重要だが、不法なものには社会に訴えていかないと、組合の役割を果たせないのではないか。
長い間、ありがとうございました。(文責編集部)
フランス大使館に緊急申し入れ行動
非常事態宣言を今すぐ撤回し、弾圧を中止せよ
パリの郊外で始まった、アフリカや中東からの移民の子弟たちによるフランス政府・警察の差別的政策と失業への怒りを爆発させた「暴動」は、フランス全土に拡大している。フランス政府は、非常事態宣言、夜間外出禁止令、集会禁止令などの弾圧をエスカレートし、二千人以上の若者を逮捕している。
十一月十四日午後二時、フランスの「NO VOX」など差別され、排除された人びとの社会運動と連帯してきた「持たざる者」の国際連帯行動実行委員会は、緊急のフランス大使館行動を行った。フランス大使館は警察官に守られて固く門を閉ざし、仲間たちの会見要求を拒絶した。仲間たちは、警察の弾圧をはねのけて申し入れ書を叩きつけ、抗議のシュプレヒコールを繰り返した。
フランス政府への申し入れの要求項目は以下のとおり。
b非常事態宣言を今すぐ撤回し、貧困地区への強権的抑圧を止め、被弾圧者をすぐさま釈放すること
bサルコジ内相は従来の発言を謝罪し、死者に対する責任をとって辞職すること
b排外と人種主義(レイシズム)を煽る現在の政策を止め、貧困と差別を再生産する新自由主義的政策を根本的に改めること
b移民若年層を覆う社会的不平等、失業、貧困と社会的排除の現状克服へ、何より、当事者が主人公として参与し得るよう改めること (K)
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