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危機に駆られた金正日独裁体制の破滅的冒険       かけはし2006.10.16号

北朝鮮「核実験」強行を糾弾する

経済制裁反対! 東北アジアの非軍事化を


さらに激化する軍事的緊張

 十月九日午前十一時半、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、朝鮮中央通信を通じて初の地下核実験を行ったことを発表した。現在のところ、この「地下核実験」がどの程度の規模のものであるかは判明していないが、十月三日の「核実験を行うことになる」という北朝鮮外務省声明が一週間もたたないうちに実行に移されたことは確かである。われわれは、東アジアの軍事的緊張を激化させ、北朝鮮の労働者民衆を塗炭の苦しみに追いやりながら、自らの絶望的延命を図ろうとする金正日軍事独裁体制指導部の冒険主義的挑発を断固として非難する。
 この文章を書いている段階では、今回の「地下核実験」実施の目的に関する詳細な公式発表は得られていない。しかし十月三日の北朝鮮外務省の「予告声明」の中にその内容が記されている。
 十月三日の声明は、「朝鮮半島では米国の日ごとに増大する核戦争の脅威と極悪な制裁圧力策動により、わが国家の最高の利益と安全が由々しく侵害され、わが民族の生死存亡を決する厳しい情勢が生じている」と述べ、ミサイル発射に関する七月の国連安保理決議を「事実上の宣戦布告」と規定し、「米国の反共和国孤立・圧殺策動が極限点を超えて最悪の状況をもたらしている」とした上で、以下の三点を宣言していた。
 「1 今後、安全性が徹底的に保証された核実験を行うことになる」「2 われわれは、絶対に核兵器を先に使用しないし、核兵器を通じた脅威と核移転を徹底的に許さない。われわれの核兵器は、朝鮮半島で新たな戦争を防ぎ平和と安定を守る頼もしい戦争抑止力になるだろう」「3 われわれは朝鮮半島の非核化を実現し、世界的な核軍縮と終極的な核兵器の撤廃を推進するためあらゆる方面から努力するだろう。われわれの最終目標は、朝鮮半島でわれわれの一方的な武装解除につながる『非核化』ではなく、朝米敵対関係を清算し、朝鮮半島とその周辺からすべての核脅威を根源的に取り除く非核化である」(要旨)。

対立を深める中朝国家関係


 十月九日の「核実験実施」は、米ブッシュ政権による金融制裁の解除と「対米直接交渉」を実現するための最後の瀬戸際的外交カードである。それはまた「核保有国」グループに参加することで、体制存続保障を得ようとする北朝鮮指導部の思惑から発している。
 七月のミサイル発射に引き続く「地下核実験」の強行実施は、国内の民衆の自由と権利を徹底的に剥奪し、飢餓状況にたたきこんでいる北朝鮮の独裁体制が自らを崖っ淵に追い込む以外の手段を持ちえていないことを示している。核実験強行はまた、金正日独裁体制の暴走を統制しようとしてきた中国政府と北朝鮮との関係をきわめて困難なものにし、中国政府の金正日体制への対応をいっそう厳しいものにせざるをえないだろう。またそれは北朝鮮との「融和」政策を追求してきた韓国のノ・ムヒョン政権の政策転換を促している。
 北朝鮮情勢に詳しい中国・延辺大学の姜龍範教授は「北朝鮮は関係各国と交渉できるような大義名分を探っている。ミサイル再発射説や核実験説は、北朝鮮が各国の反応を見極めるため意図的に流しているとみるべきだ。実際には、国連制裁や中国との断絶に直結するミサイル再発射や核実験に踏み切ることはない」と分析していた(毎日新聞9月24日「どうなる北朝鮮」上)。しかしこの専門家の予測は裏切られた。
 十月八日の日中首脳会談の翌日に行われた「核実験の実施」は、中朝の国家間関係が、きわめて鋭い対立的局面に入ったことを示すものである。今回の核実験強行は、北朝鮮軍事独裁体制にとっては、米国との関係のみならず中国政府に対するデモンストレーションでもある。それによって北朝鮮の独裁体制は、最後の命綱をも断ち切る危機に自らを追い込もうとしているのだ。

「制裁」求める国連安保理決議

 十月六日(日本時間七日)に開催された国連安保理は、北朝鮮外務省による「核実験実施」宣言に「深い懸念」を表明し、北朝鮮政府に対して核実験を行わないこと、七月の国連安保理決議(決議1695)に従うことを求め、六カ国協議の早期再開を支持するとももに、「北朝鮮が国際社会の呼びかけを無視すれば、安保理は国連憲章にもとづく責任をもって行動する」との「議長声明」を満場一致で採択した。この「警告」は、核実験実施の際には、さらなる追加的「経済制裁」とともに、国連憲章第七章四十二条にもとづく軍事行動の可能性をも内包したものであることが、米日両政府によって了解されていると報じられていた。
 十月九日の「地下核実験実施」の発表により、北朝鮮への「制裁」をふくむ国連憲章第七章にもとづく措置を伴う安保理決議の採択の動きが進んでいる。すでに米日をはじめとする帝国主義諸国のみならず、中国政府や韓国政府も北朝鮮の核実験強行に対する異例の厳しい非難の談話を発表している。それはあらゆる正当性のかけらさえも失ったブッシュ政権の「テロに対する戦争」戦略に新たな口実を与え、ボルトン米国連大使などの「ネオコン」グループの強硬発言を導き出している。それは「北朝鮮の脅威」を口実に米日両政府が推し進める「米軍・自衛隊再編」=「グローバルな日米同盟」構築に拍車をかけるものとなるだろう。
 安倍政権も、一方で中韓両国との首脳会談を通じて小泉政権の下で危機に陥った外交関係の修復を進めながら、北朝鮮に対しては、彼らの追い詰められた冒険主義的挑発を最大限に利用しようとしている。すでに安倍政権発足の直前に日本政府は北朝鮮に対する金融制裁措置を発動し、安倍政権発足の当日である九月二十六日には、法務省主唱による「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」を十二月十日から十六日までの一週間にわたって開催することを決定している。
 安倍政権は北朝鮮の核実験実施発表後、ただちに首相官邸に対策室を設置し、「わが国の安全への重大な挑戦」として九日夕刻には安全保障会議を招集し、米政府との緊密な連携の下に国連での「制裁決議」や独自の制裁措置の検討に入った。「北朝鮮の脅威」を口実にした米国のグローバル先制攻撃戦略の下での日米の「軍事的一体化」がレベルアップされる絶好の実験場が築き上げられたのである。
 そればかりではない。北朝鮮の「核実験」は、公然たる「日本核武装」論者である中西輝政・京大教授らをブレーンとする安倍政権の下で、世論の一部に「独自核武装」への衝動を解き放つ可能性をも作りだしている。
 小泉政権の「対話と圧力」という北朝鮮政策は、安倍政権の下で、当面「圧力」に特化するものとなっていく。しかし現情勢において米国や日本の「圧力をさらに強化する」政策に成算があるわけではない。われわれはカンパニア的危機アジリを避けなければならないがこの対「北」政策の行き詰まり状況の中で、米日支配層の中から軍事的選択に賭ける傾向が登場する危険性に注意を払わなければならない。

民衆の連帯による平和を

 われわれは、北朝鮮に対する軍事包囲網に反対する闘いを作りだしていくことをすべての人びとに訴える。アメリカによる小型核兵器の「先制的使用」の可能性に注意を払い、それを阻止しなければならない。すべての核兵器保有国は率先して核兵器の廃絶に踏み込まなければならない。
 われわれは北朝鮮へのあらゆる「経済制裁」に反対する。何よりもそれが、飢餓に直面する北朝鮮の労働者・民衆に最大の打撃を与えるものになるからである。われわれは二〇〇二年九月の日朝「平壌宣言」にのっとった日朝国交回復交渉の早期実現を求める。そして小手先の外交的術策で「靖国に行くか行かないかは明らかにしない」と語りながら、日本帝国主義の侵略戦争・植民地支配を正当化する安倍の排外主義的ナショナリズムの本質への批判をさらに強め、中国・台湾や韓国・朝鮮民衆の戦後補償の要求を実現するために闘っていかなければならない。このような立場から、われわれは北朝鮮に対する軍事的包囲や船舶臨検をふくめた経済封鎖のエスカレートに反対し、北朝鮮の核兵器の廃棄と朝鮮半島の非核化に向けた包括的な交渉を再開するよう求めていく。
 しかしそうした日本の労働者市民の課題は、北朝鮮・金正日独裁体制の民衆抑圧と拉致に代表される国家的犯罪を糾弾し、拉致被害者の即時解放、事件の全容解明を求める闘いの必要性をいささかもあいまいにするものであってはならない。北朝鮮の独裁者による拉致・人権抑圧の国家的犯罪と核武装は決して切り離すことができない。北朝鮮の「核実験」=核武装は、決して「強制」された自衛のための反撃として正当化されるものではなく、追い詰められた金正日独裁体制の反民衆的政治意思の表現そのものなのだ。 
 いま沖縄では、パトリオット・ミサイルの嘉手納基地配備に抗議し、ミサイル本体の陸揚げを阻止する闘いが天願桟橋で徹夜で繰り広げられている。韓国では、平澤米軍基地拡張を阻止する闘いが継続している。こうした闘いこそが、東アジアの平和を大きく切り開いている。
 資本の新自由主義的グローバル化と地域の軍事化に反対し、「もう一つのグローバル化」=民主主義と人権、公正と平和を求める労働者・民衆の共同の闘いのために全力を上げよう。
(10月9日 平井純一)                          


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