| 店長は「管理監督者」なのか?
かけはし2006.1.23号 |
管理職ユニオンが提訴当日に集会
労働者が人間らしい生活を取りもどすための正念場だ
昨年の六月以来、東京管理職ユニオンは、日本マクドナルド社と、店長職労働者の残業割増賃金問題等について団体交渉を繰り広げてきた。交渉の過程で、パート労働者は賃金に関して、一般労働者については残業割増賃金に関する三十分未満の切捨て問題の解決(二十二億円)が実現するという大きな成果をあげつつ、店長職労働者の未払い残業割増賃金問題については、昨年九月三十日に決裂、十二月二十二日に東京地裁に提訴した。
提訴したその日に記者会見を行い、夜には総評会館で「マクドナルド残業訴訟勝利!ホワイトカラー・イグゼンプションNO!12・22集会」を管理職ユニオンの主催で行った。
最初に、小川英郎弁護士が訴訟の中味と意義について報告した(別掲)。続いて、堀浩介弁護士の後に、圷由美子弁護士が「今回の訴訟の特徴はふたつある。@現職の人が訴訟を起こすのは勇気がいるA単なる金銭ではなく、36協定を守れというものである。これは外食産業に働く労働者を使い捨てにしているのを是正させるものだ。労働者が機械のように扱われ、家庭・私生活が破壊されている。人間らしい生活を取り戻すものだ。そしてこの闘いはホワイトカラー・イグゼンプション導入を阻止するものだ」と本訴訟の意義を語った。
次に、訴訟を起こした高野広志さんが「マクドナルドは店長を管理職だという立場を貫いている。もし、この訴訟が負ければホワイトカラー・イグゼンプションが導入されてしまうだろう。私の訴訟は正義だと胸をはってがんばっていきたい。これからもご支援をお願いしたい」と訴えた。
続いて支援にかけつけた管理職ユニオンだけではなく、全国ユニオンの鴨桃代会長、下町ユニオン、自治労北海道、東京ユニオンなどから相次いで、激励とともに闘うあいさつが行われた。管理職ユニオンの設楽さんは「Aさんが裁判に勝つと全国の店長に法的に残業代を払わなくてはいけなくなる。千八百店舗で七百万円から八百万円になる。総額で百八十億〜二百億円だ。これは他の外食産業などへの大きな影響がある」と日本の今後の労働条件へ極めて大きな影響を及ぼすことを明らかにした。裁判を支援していこう。(M)
小川英郎弁護士の報告から
判例から見て勝てる
未払賃金等請求訴訟は一〇九九万七九七一円。
請求の趣旨。1 原告が 被告に対し、被告の直営店店長としての地位にある間、労働基準法36条の規定による労使協定の締結及び同協定の所轄労働基準監督署への届出がなされ、同協定内容が周知され、かつ、同協定が定める事由及び限度時間の範囲でなければ、1日8時間、1週40時間を超えて労働する労働契約上の義務を負っていないことを確認する。
この意味なんですが、マクドナルドの方は高野さんは労働基準法上の管理監督者に当たるから、労働時間管理はいらないし、残業代も払わなくていいという立場をとっている。仮に残業代だけで勝ったとしても、会社の扱いが変わらなければ、また同じ裁判を起こさなければいけない。過去に適用できない。高野さんをはじめマクドナルドの店長の法律の地位が管理監督者でないと裁判所に確認してもらいたいということでこういうものを入れた。
今回の争点は、高野店長が労基法の41条2項の「管理監督者」かどうかだ。労基法の41条2項の「管理監督者」は世間一般でいう管理者ではなく、もっと狭い概念になっている。経営者と一体的な地位にある人、賃金をもらって労働者だけだけれども、かなり経営者に近い。もう少しいけば取締役直前という人、あるいは部長クラスというものだ。これぐらいの権限の人が通常は「管理監督者」である。
なぜかというと、管理監督者と規定されてしまうと、労基法による労働時間規定が及ばない、一日何時間働いても残業代を払わなくもいいとなってしまう。それでこの範囲を余り広げてしまうと、労働者の健康が害されてしまうということで、裁判所も行政も厳格にこれをしぼっている。
この判断基準は三つぐらいのメルクマールになっている。
@職務内容、権限、責任A出・退勤等についての自由度Bその地位にふさわしい処遇。
判例も、上記のような判断要素で管理監督者の該当性を検討し、その大半はこれに該当しないとしている。例えば、上記@の要素について、たとえ労務管理に関わっていたとしても、部下からの勤怠の届出に承認を与えたり、考課の際に意見を述べる程度のもの(日本コンベンションサービス事件・大阪高裁2000年)、当該人事考課には上位者による考課が更に予定され、最終的には支店長(上位者)の考課が総合評価とされるような場合(東建ジオテック事件・東京地裁2002年)には、経営者と一体的立場にあるとはいえないと判断されている。
また、上記Aの要素について、タイムカードの打刻が免除されていても、支店の業務量の増大に伴い残業を余儀なくされているような場合には、出退勤の自由があったとはされない(前掲日本コンベンションサービス事件)。
本件と類似の判例として、レストランの店長として、コック、ウエイター等の従業員六、七名を統括し、ウエイターの採用にも関与したことがあり、材料の仕入・売上金の管理等を任されているが、出退勤の自由はなく、仕事も店長としての前記のような職務にとどまらず、コック、ウエイター、レジ係、掃除など全般に及んでいる「レストラン店長」について、管理監督者に該当しないとしたものがある(レストラン「ビュッフェ」事件・大阪地裁1996年)。
こうした過去の判例からいって高野店長もまったく管理監督者にあたらない。マクドナルドの店長さんは、実際管理職的な業務もやるわけですが、それ以上に自分が店のカウンターに立って、お客さんの接客をしたりして働いている。
実際には管理業務以上に現場での肉体作業が多くの時間を占めている。高野さんの場合も二〇〇四年十二月から、百時間を超える残業が何カ月間続いた。そのために体調を崩した。こういうようなやりかたをしなければいけない店長がたくさんいる。他のファーストフードも同じだ。
管理監督者扱いは
人件費抑制のため
昔と違って営業時間がどんどん延びている。マクドナルドも二十四時間化を考えているらしい。三百六十五日営業で休みがなくなっている。そんな中で責任を負わされる店長はひとりしかいない。そうなるとどんどん労働時間が延びていく。それを使用者の方は管理監督者として扱うことによって、人件費を押さえようとしてきた。そういう実態を問わなければいけない。
ホワイトカラーイグゼンプションNO!とのからみでひとこと。アメリカではマクドナルドの店長さんや副店長の一つ下ぐらいまではイグゼンプションなんです。残業代払わなくてもいいと法律(規則)で決まっている。日本では先程言いましたようにもちろんなっていない。いま、財界あるいは厚労省が考えている法案(昨日素案が出た)は、いま時点では現場にいる店長さんのような人は入らないだろうが、管理監督の一歩手前くらいの課長代理、プロジェクトチームリーダーなどを入れようとしている。
すぐに店長さんが入れられることはないだろうが、風潮は広まっていくので、いずれは対象に入れられるだろう。そういう中での象徴的な裁判になるだろう。
判決までは一年かもうちょっとかかるだろう。
(発言要旨、文責編集部)
b訴訟についての連絡先
〒160―0023東京都新宿区西新宿4-16-13MKビル2F 03-5371-5170.Fax03-5371-5172発行:東京管理職ユニオンMac対策部
http:www.mu-tokyo.ne.jp
e-mail:abe326@netlaputa.ne.jp
反天連が討論集会
改憲と新自由主義の関係をどう捉えるべきか
「公共」をどのよ
うに構想するか
十二月二十三日の天皇誕生日に、反天皇制運動連絡会(反天連)は東京の千駄ヶ谷区民会館で、恒例となっている「『天皇誕生日』に天皇制の戦争責任を考える12・23集会」を行った。
今回のテーマは「ネオ・リベラリズムと[改憲]」。自民党新憲法案や「女性・女系天皇」容認の「皇室典範に関する有識者会議」報告に示される「復古主義」的天皇イデオロギーの後退と、ネオリベラリズム(新自由主義)的国家・社会再編の流れとの関係をどう捉えるかについて始まった論議を、さらに深めていくために設定された。
最初に杉村昌昭さん(フランス文学研究者)が報告した。杉村さんは、フランスやオランダの国民投票で否決されたEU憲法に関してマスメディアが当初、全く誤った評価を下した、と切り出した。
「メディアは極右勢力がEU憲法に反対したかのように報道していた。たしかに主要メディアやほとんどの議会政党は、EU憲法推進論だった。しかし反対運動の圧倒的中心としてダイナミズムを作りだしたのは、極右ではなくATTACを中心とする反グローバリズム運動だった。新自由主義の矛盾を最も受けている地方が大都市を包囲する形で反対運動が広がった。今回の青年たちの社会的反乱と、EU憲法反対票が多かった地域はぴったり一致している」。
「ドイツの総選挙結果もグローバリズム派と反グローバリズム派の対立として表現されており、それが『大連立』対左派党の国論を二分する対立構図となっている。ところが日本では共産党と社民党合わせてドイツの左派党よりも多数の票を得ているにもかかわらず、両党とも反グローバリズムをハッキリと打ち出していない。われわれがどういう対案を出していくかが問われている」。
杉村さんは、さらに欧州では新自由主義は近代をかいくぐった「ポストモダン」的言説と一体となって登場しているが、日本では「女性・女系天皇」をめぐる論議に見られるように「プレ・モダン」的なものからの「近代への入り口」という位置どりで新自由主義が主張されている、と分析した。そして自民党新憲法草案で「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」に変わったことを取り上げた。
「自民党新憲法案では『公』とはあからさまに国家を意味する。ところが反グローバリズム派にとっても『公』は大きな価値を持っている。ネグリは『公』と『私』の間に『共』を立て、それを軸にした社会構想を主張している。『公』をどう疎外から解き放つかという問題は、憲法論議でも重要な位置を持っているのではないか」。
ネオリベラルと
「平和天皇制」
次に小倉利丸さん(ピープルズ・ブラン研究所)が発言した。小倉さんは、「ヒト、カネ、モノ、情報が国境の壁を超えるグローバリズムの中で、国家は社会を統合するために掌握してきた裁量権を手放し、安全保障と警察機能に純化する古典的『夜警国家』のようなものになるが、二十世紀の国家は社会保障を通して一般民衆をカネで買う『福祉国家』となっていた。その解体の中でさまざまな原理主義が登場している」と語った。
「しかし日本では、この原理主義的ナショナリズムはアメリカとの関係では『売国』的ナショナリズム以外にはなりえない。日本のナショナリズムには出口はない。グローバル化の中で、日本の独自性を出せない焦りが『公益、公の秩序』による自由と権利の弾圧として現れる」。
「いま日本だけではなくアジア諸国でも改憲ラッシュとなっている。それはいわば各国憲法のグローバルスタンダード化という流れだ。しかしラテンアメリカでも欧州でもネオリベラリズムのメッキは剥げている。少数の先進国以外でグローバル化に対応して国民統合のできる国はない。いまアジアでは、グローパル化へのとりわけ農民たちの抵抗が発展している。中国も例外ではない」。
このように語った小倉さんは「民衆にとってのチャンスはある」と結んだ。
天野恵一さん(反天連)は、皇太子妃雅子の誕生日の「医師団」による病状報告が、明確に皇太子夫妻による皇室内部のいさかいへの「メッセージ」に他ならないことを紹介しつつ、こうした象徴天皇制の家族内のケンカを表に出したメディア・パフォーマンスで、「皇室典範」の「改正」問題が改憲とからみあわさって論議されることに注意を促した。
天野さんは次のように語った。「戦後の日本の国家原理は『平和天皇制』で一貫していた。靖国神社でさえ一九五〇年以後の一時期は平和主義にかかわっており、もっぱら『追悼と慰霊』の施設として押し出していた。われわれが闘わなければならないのは、『平和天皇制』と『追悼天皇制』をかついだネオリベラルだ」。
三人の報告を受けた討論の中では、杉村さんが「話題づくりを目的にしたメディアの天皇制論議への介入の仕方を考えなければいけない。反対の立場であれ、天皇制論議にかかわること自体が天皇制の延命につながるのではないか」と問題を提起し、「反天皇制」言説の組み立て方についても今後の実践の中で考えていく必要を訴えた。 (K)
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