| 特恵関税を認めぬ米国市場 かけはし2006.6.26号 |
韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の南北経済協力事業の要である北朝鮮・開城市での大規模工業団地建設事業は、第1段階工事(330万平方メートル)の完工を来年にひかえている。完工を前にして、その経済効果をどう分析し、どう対処するかで韓国と米国がFTA協議の中で攻防を繰り広げているという興味深い事実が紹介されているので訳出した。(「かけはし」編集部)
韓国、米国それぞれの思惑
ノムヒョン政権が韓米FTA締結に命をかけるのを見て、「北韓問題」を取り巻く「南北関係」が取引説の核心だという推測が広まった。しかしブッシュ政権の執拗で冷淡な態度に、もしやとは思ったもののやはり米帝国主義らしく自身の意図をあらわにしつつ具体化している。
韓米FTAが米帝国主義の政治・経済・軍事的覇権化の手段として活用されていることは周知の事実だ。こうした状況で、開城工団を名分として韓国を圧迫しようとする米国の思惑が露わになっている。米国の開城工団に対するケチつけと、ノ政権の強硬対応が行き交いながら開城工団問題が、韓米FTA協議の中心題目として急浮上している。
最近、ノ政権が国会で明らかにした韓米FTA協議の目標及び交渉文草案の中でも、開城工団の生産物品に対する原産地認定の根拠規定導入を目標に掲げて特恵関税を付与できる根拠条項を別途に規定することにし、その帰趨が注目される。
ネオコンの三段論法
開城工団に対する米国の言いがかりがひどくなっている。その先頭に立つのはJ・レフコウィッツ米対北人権特使。彼は最近米下院聴聞会で開城工団事業で北韓に数億ドルをすくい取られていると証言した。
3月には開城工団の勤労条件問題を提起し、その中で労働者の1日の賃金が2ドル以下という問題や労働権問題などを取り上げつつ、国際労働機構(ILO)等を通した調査、評価をした後で国連に報告するようにしなければならないと主張した。
4月には「すべての韓国人に自由を」という題目のウォールストリートジャーナル紙への寄稿文で、「開城工団の中で実際にどんなことが起きているかほとんど知ることができない」とし、@北韓では個人の権利が存在せず、政権が人身を売買しA開城工団事業は労働者搾取のおそれが大きくBモニタニングがなされない対北支援は金正日政権の維持を助けておりC中国が脱北者を北韓に強制的に北送していると主張した。
これは韓米FTA協議で韓国側が、開城工団の製品もFTAに含まれなければならないと言う立場であることと関連し、開城工団の北韓労働者の賃金や労働条件の実態が、米国側の立場においては重要な要因だという意向をほのめかすものとして解釈される。
参考までに、彼は昨年9月北韓人権特使に任命された後に、開城工団を北韓労働力の搾取現場だと指摘し、日本人拉致及び脱北者問題を絶え間なく提起しながら「米国と日本は善」「北韓は悪」、したがって「北韓を支援する南韓勢力は反米・反日・親北勢力で悪」という三段論法確立の先頭に立っている典型的ネオコンだ。
米議会、労働界の圧力
米帝国が沈没しつつある。国際情勢急変に米国が焦りを示し始めながらうろたえているのだ。ヨーロッパ、北米、アジアの三極体制が形成され、中南米までもが米国の影響力から抜け出し始めるやいなや、米国は世界宗主国の地位を維持するために必死なのだ。韓国、マレーシアなど東アジア諸国とのFTAは、中国の影響力拡大を遮断し地域統合を阻止しようとする努力の一環だ。
米国は3月6日の韓米FTA予備協議で、中国産原資財や中間材使用製品と開城工団製品を韓国産として取り扱わないと明らかにすることによってこうした意図を明確にした。政府は、韓米FTAが攻撃的開放通商政策を追求する我々の要求に基づくものだと言うけれども、むしろ備えなしに米国のFTA拡散戦略に巻き込まれている。
米国の開城工団に対する「ケチつけ」はこれまでの戦略物資搬出、通行・通関・通信問題などによって執拗にブレーキを加えてきていたためにある程度予想されたことだ。米国は基本的に開城工団製品の韓国産認定にとても否定的だ。そうした米国の開城工団に対する「ケチつけ」は、昨年9月のニセ札問題の提起以来米国内で続けられた対北圧迫論の延長線上にあるものと思われる。このことは、最近の関心事として急浮上したいわゆる「微妙な情勢変化」の延長線上で展望する視角だ。その間に米国が北核問題から始まりニセ札問題、そして金融凍結措置まで進行したけれども特別に得るものはなかった。どこか水が漏れるため圧迫と封鎖に対しての効果がないと考えたのだが、そこがまさに開城と見たのだ。
最近では人権問題をはじめとして麻薬取引、切手偽造、ニセたばこ、ニセ医薬品などの不法活動や取引を理由に北韓に対する圧力を増大させている状況だ。その中心に開城が置かれている。北核問題解決についての米国の「集中度」がはっきりしていない状況で、米国の対北接近方法が「体制転換の枠組み」で接近しようとする立場が強化されている、というレフコウィッツの発言はこうした局面転換の流れを象徴的に示すものだ。こうした状況がさらに加速化されれば問題が複雑になるしかない。
第2に、韓米FTA協議で有利な位置を占めるための戦術として分析できる。すなわち韓国からもっと多くの譲歩を得る「協議カード」にしようとの観測だ。開城工団に対する韓国政府の意志をよく知っている米国が、韓米FTAの協議過程で有効なカードの一つに開城工団の原産地問題を活用するだろうとの予測は常識的に妥当だと言えよう。さらに、どのような形態になっても開城工団に対する例外を韓国側が認定されたら、韓国はやはりそれに相応する見返りを米国側に提供しなければならないことも常識だ。
南北間の和解と協力の雰囲気を破壊するとの非難を甘受してまで開城工団製品に対する原産地認定を拒否することより、韓国との協議カードに十分に活用した後に相応する大きな実利をとることが米国の選択になると思われる。
第3に、米国内の産業界の圧力のためでもある。FTA協定で派生する労働者の被害を最小化しようとする米国の労働界が、開城工団労働者の処遇問題を名分として行政府を圧迫しているのだ。米国労働総連盟―産別会議(AFL―CIO)は「(開城工団労働者の)賃金が韓国の基準に比べて極度に低く、(開城工団労働者は)独立した労働組合を構成したり労働権を行使できないものと認識している」、また「韓国がFTAを締結したなら(開城工団製品による米国への)どんな影響がもたらされるのか多くのことを憂慮をしている」と指摘したことがある。実際、米議会と労働界は開城工団に対して否定的立場だ。
米国がこのように開城工団に対する圧迫を本格化しているのは、ともかく南韓と北韓が構想している南北経済共同体の象徴のようなものである開城工団が、自分たちの影響下から抜け出して拡大することに対するけん制次元のこととして分析される。
米国は北核問題が膠着状態にあり、人権、ニセ札、麻薬などを総合的に提起している「北韓問題」が解決もされないうちに、南北韓が開城工団を媒介して経済交流や統合を加速化させれば、今後自分たちが展開できる政策の領域が減少しかねないことを憂慮しているのだ。
ノ政権の開城工団賛歌
米国の開城工団に対する言いがかりに、ノ政府は「内政干渉」だとして強く反発して強硬対応を鮮明にした。最近まで開城工団での戦略物資搬出に比較的協調的だった米国が、開城工団事業に「人権」の視角まで接ぎ木して否定的立場で背を向ける場合、中長期的に多国籍企業誘致まで夢見るノ政府の構想につまずきがもたらされるほかない。
去る5月9日にはイジョンソク統一部長官が開城工団を訪問し、「どんなことがあっても開城工団の開発と生産を中止することはないことをここで共に確約する必要がある」とし、「どんな難関があっても必ず成し遂げる」と明確にしたことはそうした脈絡で解釈できる。この日の訪問は開城工団事業に対するノ政府の確固とした立場を再確認する機会となった。
同様にノムヒョン大統領は、5月19日に「開城工団事業は南北間の統一事業としてだけ見てはだめだ」とし、「わが経済のさらなる別の突破口として見なければならないし、南北経済の未来のために必ず必要な事業」だと述べた。つづいて「開城工団事業が成功するとき南北関係のすべての面で安定性が高まって国家安保も堅固になる。政府は開城工団事業の成功ために最善を尽くす」と述べ、強い意志を明らかにした。
ノ政府にとって開城という空間はどのような意味があると思って政治生命をかけるのか? その理由は「開城工団事業は、現政府の対北政策のすべてが集約された縮小版だ」という政府関係者の発言に集約されている。開城工団はノ政府にとって対北接近方式の象徴的事例であると同時に北韓変化のための切り札なのだ。
現在、開城工団ではモデル団地に入る企業15社中11社が工場を運営し、北側労働者7200余人と南側人力500人が仕事をしている。第1段階本団地は基礎固めと道路、上下水道などの構造物工事が、それぞれ来る7月と来年上半期に終わる予定で、昨年8月に1次分譲して以降、企業24所と機関が工場新築などの準備作業を始めている。
開城工団開発が予定通りうまく進行すれば、第3段階開発が終わる2011年には二千戸の企業が入居し、北側労働者だけで35万人になるという。扶養家族まで合わせると50万人に達する大都市になる。現在の開城人口は20万人だがその段階に至ると北韓ではピョンヤンに次ぐ大都市になる。人口規模だけで言えばそういうことになるのだが、生産力を計算すれば当然にも北韓の第一の都市になることは間違いない。資本主義方式で運営されるこのような大都市が、硬直した北韓経済に及ぼす衝撃もまた同様に小さくないだろう。
ノ政府は、中国やロシアという接境地域の経済特区がうまくいかないのと比べて開城工団は活発に活動しており、韓国の開城工団投資は高賃金によって韓国内で運営が困難な中小企業体のためのみならず、北韓に進出する中国企業や資本に対応する意味があると見ている。ノ政府は開城工団建設を中小企業第一の原則にするが、大企業と外国企業の参加を通した公団の安定的推進と経済力強化をも図る計画だ。
両極化の解消か拡大か
米国と韓国が、開城工団の商品を韓国産として認定する条項を含むFTAに合意したら開城工団製品は特恵関税の適用を受け、はるかに安い価格で米国市場を攻略できる。現在、米国は北韓産に対して一般関税率より2〜10倍も高い超高関税を適用している。対米輸出の道がふさがるわけだ。しかし、韓国産として見なされれば開城工団の主品目である衣類、靴、鞄などの対米輸出は大きな力を得られる。それが無理なら、中国や東南アジアなどで生産された製品と価格競争を始めなければならない状況におかれるしかない。
特にノ政府の立場では、両極化の解消と関連があるためにとても重要な事案だ。現在は重要な争点だけれども、解決の可能性は高い方だ。単に時機の問題だ。米国は2003年に締結されたシンガポールとのFTA協議で、シンガポール域内ではないインドネシア地域で生産された製品に対しても例外的に原産地認定をした事例がある。同じく1986年に締結された米―イスラエルFTAでも、後になるほどQIZ(Qualified
Industrial Zone)方式でイスラエル内部のPLO自治区域(ガザ地区とソアン地区)はもちろんヨルダンやエジプトの特定地域で生産されたイスラエル製品に対しても原産地の例外適用を通して特恵関税を受けられるようにした。このために妥結の可能性がさほど難しいことではない。
米国の立場では、北韓の不満を弱めながら経済活性化で支援をしてやることができるからだ。同じくノ政府の立場では、両極化の解消に一定程度寄与できるし、南北経済協力の活性化に支援もでき、それによって国民の支持を一時的に回復することができるため米国の支援が切実に必要だと考えている。反面、米国としても合意を多少難しくしてやることでFTA締結を有利に導くことができるためにお互いにウィンウィン(win-win)戦略と考えられる。
より重要なことは、開城工団という空間が統一費用の減少(削減)をもたらし、国内福祉予算増大に有利な与件を作ると同時に、南韓の過剰資本の一つの出口になれることだ。南韓の資本や海外の資本が、北の高級労働力を活用することによって現在の南韓の両極化問題の解消に一定程度こたえることもできるけれども、むしろ新自由主義の世界化に包囲された資本主導の成長問題と労働問題が衝突して、両極化問題を拡大再生産することに留意しなければならない。(「労働者の力」第103号、06年5月26日付、ペ・ソンミン/韓米FTA阻止教授学術共対委/明知大教授)
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