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韓米FTA阻止闘争に向けて              かけはし2006.8.7号

民族的イデオロギーに抗して新自由主義と対立する隊列を


新自由主義の構造調整

 80年代末の過剰蓄積と過剰生産の危機によって資本運動は新たな進路、すなわち新自由主義的資本蓄積戦略を模索せざるをえなかった。90年代の初めには、すでに国内に入っている資本よりも出ていく資本が多くなっている状況で、過剰蓄積の危機に追い立てられた資本としては新たな突破口を求めなければならなかった。
 したがってウルグアイ・ラウンドは時宜に適ったものであり、WTOへの加入は適切な措置だった。OECDへの加入もまた、資本の要求に応じる措置だった。そしてIMF・通貨危機という緊迫した状況を経験するとともに、資本は新自由主義的蓄積戦略を全面化する契機を迎えた。
 地球的レベルでの過剰蓄積や過剰生産に対応するために超国籍資本を中心としたシステムの再整備、限界企業の整理、公共部門の民営化など新自由主義的措置を取ることによって、社会の全部門にわたって公共性が縮小され始まった。同時に労働費用を減らすための非常な措置が相次いだ。整理解雇、派遣制に続く労働者への攻勢は弾力勤労制をうち上げることによって、いわゆる第1段階の構造調整を締め括らせる。
 今やすでに労働者の60%を超えている非正規職にもかかわらず、非正規・時間制労働立法、労使関係ロード・マップと呼ばれる第2段階の構造調整に突入している。
 新自由主義の構造調整の結果は貧困の深化を超えて、新たな階級を生み出している。60%を超えた非正規職労働者の現実が物語っているように、労働の性格はすでに変化した。
 韓チリFTAを契機に制定されたFTA特別法はウルグアイ・ラウンド以後、急速に解体されてきた小農、家族農業中心の農民を瓦解させる一方、50万の農業労働者へと転落させており、都市周辺部へと追い立てている。
 同時に、女性に対する貧困は一層、深刻な問題になっている。女性労働人口の70%が非正規職であり低賃金・長時間労働の主要対象だ。このように労働の社会的貧困が深化すればするほど周辺部の非公式部門は拡張されるだろう。今日、新自由主義の結果として形作られている階級の抵抗は、新自由主義の世界化の本質を赤裸々に表しているのだ。

自由主義的政治と北朝鮮

 87年の民衆抗争、労働者大闘争を契機に国家が主導する財閥中心の経済体制が崩れ去り、資本の新自由主義的蓄積戦略が具体化されることによって自由主義的政治体制が導入されるところとなる。
 キム・デジュンの訪北は既存の反共、反北イデオロギーを著しく弱めさせ、国家保安法も事実上、無力化する局面を作った。同時に90年代末の民間交流の活性化を通じて南北交流は国家、資本主義の南北経済協力へと転換することとなる。北核問題の解決を契機に北韓(北朝鮮)は社会主義体制は維持するが、市場は世界市場に連動するフェリー・プロセス、太陽政策などと相まって2002年には配給制を廃止し、部分的な市場経済を導入することとなる。だがブッシュ政権が発足して対北封鎖政策が強化され、これは開放という側面から見るとき、北韓に全般的な制約を加えている。

韓国のFTAロード・マップ


 FTAは資本の運動蓄積や過剰生産の危機を突破するための排他的な市場拡張戦略の一環だ。これは農業とサービス部門の交渉が難関に逢着したばかりではなく、一括妥結と満場一致という決定の方式に伴ったWTO交渉がこれ以上、進展できないことによって一層、加速度を増すに至った。
 特にWTOに期待をかけていた韓国政府と資本はFTAロード・マップに見られるように、より攻撃的な妥結戦略を採択することとなる。チリとのFTAを経て、開城工団を念頭においた意図的な選択として、シンガポールを対象にFTAを締結しているのに続きASEAN+3とのFTAを推進してきた。一方では重層的なFTA戦略という体裁の下でメキシコ、カナダ、インドそれに米国などと無差別なFTAを推進している。これは米国とのFTAを、もはや米国の圧力によるものとばかりは言えないものであり、韓国資本の現状況をハッキリと表しているものであって、ノ・ムヒョン政権の性格を規定する根拠となるものだ。

FTAと地域化・ブロック化

 一方、EUの拡張とユーロの採択、NAFTAのFTAへの拡大評価などによって地域化が拡大されている。これは一方ではASEAN+3に表現されるアジア地域のブロック化、そしてこの5月のADB(アジア開発銀行)総会で単一貨幣を作るための共同単位の構想についてのハン・ドクス副総理と中国、日本の財務相の合意は、スワップ協定に続くアジアの共同通貨創設についての努力だ。
 資本の過剰蓄積・過剰生産の危機は、このような排他的な地域化・ブロック化に対する追求として現れているが、したがってブロック間の保護貿易を越えることができないならば摩擦と衝突の起きる可能性があり、災いの歴史を予想させる。韓国資本はすでに帝国主義的資本運動、特に地域化の流れに身を任せていることに注目しなければならない。
 このように超国籍資本運動の流れが拡大・強化されている脈絡を見るとき、最近の民族主義的、国家主義的な様子を帯びて現れている社会現象は極めて憂慮すべきありようと言わざるをえない。

平澤米軍基地と東北アジア


 過剰蓄積や過剰生産に伴う資本の危機は地域ブロック間の緊張とも相まって武装した世界化という形態を帯びることとなり、これは世界の至る所で政治的、軍事的緊張へと結びついている。これによりこの間、対社会主義圏への対応の軍事力としての全世界の米軍は、このような新自由主義的資本間の緊張に順応した形態へと再編されてきた。
 米国はまた、反共をイデオロギーとしていた軍事力をテロという新たなイデオロギーと仮想の敵に向けて配置している。特に韓国をはじめとするアジアでの駐日米軍、駐韓米軍の再編がそれであり、北韓を念頭に置いた歩兵中心の軍事力は、仮想の敵・中国を対象とする東北アジア地域の軍事力へと、一方では中東までを念頭に置いた機動戦中心の軍事力へと再編している。
 韓国政府は米軍の機動的な移動を意味する戦略的柔軟性に合意することによって、すでに米軍が運営している空軍基地があり、米国が設定した仮想の敵、中国に向けた港湾を備えた平澤が新たな悲劇の現場となっている。平澤米軍基地は東北アジアの紛争に介入する重要な環となるだろう。

韓国資本と韓米FTA


 これまでASEAN+3として表現されていた政府のFTA戦略は韓米FTAを推進する大胆な変化を模索している。東北アジアの金融ハブ(拠点)のための資本市場統合法などの推進のような金融化についての企画が内的には自発的自由化へ、そして韓米FTAと多層的FTAとして現れているのだ。これは過剰蓄積と過剰生産の危機を突破するための韓国資本の要求を反映したものと考えられる。
 通貨危機以降、新自由主義の世界化、金融化への適正な模索のための資本の構造調整は、特に金融部門の開放を加速化し、資本の集中と労働費用の減少のために努力してきた。過剰蓄積、過剰生産の危機を突破するための排他的な市場拡張とブロック化は韓国資本の当面の課題となっている。
 帝国主義的資本とのFTAという危険の負担を甘受してでも突破していくという韓米FTAを阻止するための闘争に、米国式、EU式、ASEAN式の分類を通じて、そして民族の名によって乗り出すことは、一方では戦術闘争の有効性を持ち得るとしたとしても、本質的には闘争を歪曲させることになる。
 これは自由主義政治がその宿命を終え、大衆の民族的成長主義が全面化される限り、一層そうだ。むしろ新自由主義の世界化の本質を明確に認識するならば、資本に抵抗する労働者・民衆の闘争と労働者間の国際連帯の観点を見逃してはならない。

開城と民族イデオロギー


 北韓との交流は紆余曲折を経て、開城工団へと集約されている。開城に工団を設置して南韓と外国の資本を誘致し、一方ではシンガポール、EFTA(注)、ASEANと結んだFTAの原産地条項を米国など他の国家とのFTAにまで拡大して経済的突破口を模索していくというのが現政権の認識だ。
 これは開城を媒介として米国の北韓政策に新たな転換を試みていく意図だが、南北の軍事的、政治的緊張を解消するという肯定的な側面をむしろ歪める。民間交流が政権や資本レベルの経済協力などへとつらなるとともに、北韓経済は南韓に垂直従属する効果が発生しているが、これは韓(朝鮮)半島の平和と統一についての未来を、むしろ歪曲するものへと結びつきかねないからだ。
 したがって民主主義に基盤をおいて民衆が主体となる相互互恵の関係とした、政府や民間レベルの経済協力についての新たな展望を具体化しなければならない時期を迎えている。労働者・民衆を周辺部に追いやるものへと予想される開城工団は、特に世界化に対応する南北の民族経済共助という名の下に民族イデオロギーを強化させる可能性さえ内包しているという点において、一層緊張をもって注視しなければならないところだ。

新自由主義と5・31地方選挙


 5・31地方選挙は与党・開かれたウリ党の惨敗とハンナラ党のひとり勝ちの結果となった。そして民主労働党の不振は、わが社会の政治的流れを示している。持続する新自由主義政策に伴った貧困の深化、非正規職の拡大、韓米FTAの試図のように絶えず続いている農業の解体計画などによって、そして地方主義的投票のありようの再確認とともに、開かれたウリ党の惨敗は、すでに予想された。
 新自由主義政策による二極化と社会的貧困の深化は開発主義、成長主義的選択をしたものと判断され、少なくとも進歩的対案は無視した。これはハンナラ党の一人勝ちとして結果し、民主労働党は少なくとも対案的展望を提案することに失敗している。
 これは労働運動をはじめとする進歩運動の対案不在から生じたものと解釈しなければならないだろうし、この10数年、拡大してきた政治的自由主義は新自由主義の世界化の嵐の前に、大衆はむしろ民族的成長主義を採択したものと考えられる。新自由主義の世界化に伴う階級分化と貧困の拡大は、より具体的な階級的対案を要求している。

労働運動の現在と主体形成


 政権と資本による急激な新自由主義政策のドライブは、むしろ労働組合運動の対応を無力なものとさせた。組織的結集力や闘争力は後退し、社会的合意などをめぐって、むしろ分裂的緊張だけが高まっている。新たな運動の展望は闘いを通じて、また政治的緊張を通じて提起されず、歪められた駆け引きとして表れている。
 一方、この10余年間の全労協や民主労総を通した労働組合運動の結果は、われわれにとって地域が持っている意味を再び三たび考えさせている。特に最近、争点となっている産別論議において、それはよく示されている。
 最近、民主労組運動が活力を失い、歪められた分派の構図に縛られている中で、現場―地域では非正規闘争を中心に地域ストを繰り広げつつ、連帯の流れを受け継いでいる。地域レベルで労働者・民衆が連綿として継承している闘いを全国的に拡大させぬく契機と視野とを持たせることは、われわれすべての課題だ。これを通じてわれわれは反新自由主義―反資本によって対決する全国的闘争とそれにふさわしい主体を形成しなければならない。
 そういった点で、この10年間の新自由主義の構造調整に抑圧されつつも闘ってきた労働者民衆にあっては、新自由主義の世界化のひとつの断面を政治的に体得できる契機として韓米FTA阻止闘争が持つ意味は極めて大きい。

新たな政治の展望のために


 7月の韓米FTA阻止闘争を通して、われわれは、それがいかにささやかであろうとも、新たな始まりを模索しなければならない。韓米FTA阻止闘争は資本と、総資本の代理人としてのノ・ムヒョン政権の性格をハッキリと刻印しなければならない闘いだ。また開城を媒介として階級的性格を明確にする韓米FTA阻止闘争は、この間の構造調整阻止闘争で疲れきっている労働者民衆に新たな抵抗の契機を提供している。
 全民衆的対策委が作られ、下からの闘いが始まっている。下からの隊伍を築き、これを政治的展望へと結びつけて7月闘争に乗り出さなければならない。最後に、平澤で住民を追い出そうとする10月、非正規職ロード・マップ法案阻止闘争が始まる10月、再び韓米FTA交渉が開かれる10月とそれに続く11月総力闘争に力を結集することによって、新たな労働者・民衆の政治的拠点を作り出していかなければならないだろう。
 これを通して反資本闘争を発展させつつ総資本に立ち向かう総労働の闘いによって全面化することが核心的課題とならなければならない。その契機として闘争の隊伍を構築し、実際の韓米FTAを阻止しぬき、その成果を組織する道に踏み出すこと、今はその始まりの時だ。(「労働者の力」第106号、06年7月7日付、イ・チョンフェ/会員)

(注) EFTAとは欧州自由貿易連合


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