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                            かけはし2007.3.5号

「米軍再編」特措法案を止めよう!

アメリカの戦争のためにカネを出すな
「交付金」で米軍基地を押しつけるな!

札束で頬を引っぱたく政策

 二月九日、安倍内閣は昨年五月一日の「米軍再編」最終報告(再編実施のための日米ロードマップ)に基づいて、「在日米軍再編促進特別措置法」を閣議決定した。同法案が、グローバルな日米軍事一体化(米軍の指揮下での「対テロ」戦争への自衛隊の動員)のために沖縄と「本土」を貫く米軍基地と自衛隊基地の再編を進めようとするものであることは、すでに本紙上でも再三にわたって指摘してきた。
 法案は大きく言って二つの部分に分けることが可能である。第一は、再編に伴って米軍基地建設・拡大、新たな部隊の移設、自衛隊基地の米軍による使用などの負担が増す各自治体に対して、「再編」受け入れに応じて「交付金」を与えるというものである。
 この再編交付金は、@政府案受け入れA環境影響評価の着手B施設着工C再編実施の四段階に分け、順次積み重ね的に交付されることになっている。さらに「負担の大きな市町村」に対しては、公共事業への国の補助率を引き上げる。公共事業への国負担の割合は沖縄県内で最大九五%とし、沖縄以外でも通常三三〜五〇%の公共事業の交付金、補助金の国負担を最大九〇%にまで引き上げる、とされている。
 つまり、米軍・自衛隊再編を受け入れ、さらに工事の進捗の度合いを見ながらカネを与えるというものだ。逆に基地再編を受け入れない自治体に対してはビタ一文も交付金を出さないし、公共事業負担金の引き上げもしないという、露骨な「カネで釣る」政策が恥ずかしげもなくうたわれているのだ。
 久間防衛相は「米軍再編で方針が変わった。負担を受け入れたら補助金を出すが、反対では出しにくい」と、新市庁舎建設の補助金継続を求めるために上京した井原・岩国市長に述べた。井原市長が、厚木基地の米空母艦載機の岩国移転に反対している以上、「補助金」は出さないというどう喝である。
 防衛省関係者は「政府に協力しなくてもカネが落ちる仕組みを変えたかった」と述べている。これは一九九六年のSACO合意に基づく普天間基地の「移転」に際して、沖縄県北部地域に多額の振興予算をつぎ込んだが、自治体の協力は得られなかった「苦い教訓」に基づいているといわれる(「朝日」2月10日)。
 再編交付金の交付対象市町村の指定権限は防衛相となった。関係閣僚会議で、公共事業補助率を引き上げる特例制度の対象地域を決定する「駐留軍等再編関連振興会議」の議長も防衛相となった。まさに「庁」から昇格した「政策官庁」としての防衛省のイニシアティブで、「交付金」が左右されることを意味している。
 これに対しては外務省が猛反発し、「必要に応じて外相と協議する」という文言を法案に入れるよう主張したが防衛省が押し切った。また「振興会議」の議長を首相として内閣府に設置するよう内閣府が主張したが、これも防衛省に設置することに落ち着いたと報じられている(「朝日」2月10日)。「米軍再編」に協力しない自治体には一銭も出さず、カネで締めつける政策が、防衛省主導でストレートに強行されようとしているのだ。

根拠のないグアム移転負担


 法案の第二の部分は、在沖縄米海兵隊のグアム移転に伴う建設費用の負担である。
 一〇二・七億ドルとされるグアム移転費用のうち、日本側負担は約六〇%の六〇・九億ドル(約七二〇〇億円)に上る。そのうち、司令部棟、兵舎などの建設費二八億ドルが「真水」と呼ばれる日本政府の直接の財政支出であり、家族住宅建設費などに要する費用二五・五億ドルと基地内インフラ(電力、上下水道等)に要する費用七・四億ドルは、国際協力銀行(旧海外経済協力基金と旧日本輸出入銀行が合併して発足した政府系金融機関)の出資・融資である。
 この「出資・融資」は、現地に設立された民間事業の共同事業体(SPE)に対して行われる。SPEが米軍人家族用住宅を建設し、その家賃収入でSPEが国際協力銀行に返済するという仕組みだという。しかし、返済期限は定められておらず、「不良債権」化する可能性も大きい。内部資料でも「収益性の低い、超長期間の事業となり出資金の配当もほとんど期待できない」(「朝日」2月10日)というしろものなのだ。「出資・融資」とは名ばかりで、文字通り「カネをドブに捨てる」ことと変わりはない。
 そもそも、在沖米海兵隊が米国の「準州」であるグアムに移転する費用に、なぜ日本政府の予算=日本の住民の税金が支出されなければならないのか。これは旧来の「思いやり予算」の枠組みすら超えた全く違法な支出である。
 その上に、グアム「移転」の予算=一〇二・七億ドルの積算根拠も不明である。まず、海兵隊のグアム移転コストは、純粋に米軍の基準をもとに算出された額であって、日本政府はまったく関与できていない。「朝日」2月10日の記事によれば、基地移設コスト係数は米国東海岸を1とすると、沖縄は1・43、グアムは2・64である。つまり米国内に比べてグアムへの移設には二・六四倍の費用がかかる。

先制攻撃戦略の出撃拠点

 なぜグアム移設はそれほどコスト高なのか。グアムは太平洋の孤島なので「道路など施設建設のためのインフラが欠如している」「島外から労働力を調達することが必要不可欠」「建設資材などの輸送コストがかかる」「台風などの自然災害や毒蛇の存在で施設の管理コストが高い」などというのが、米国の主張だ。
 コスト高の責任を「毒蛇」にも負わせる米国の主張が、厳密な計算によるものでないことは明白だろう。日本政府はアメリカの「言い値」でカネを出し、それを法案に仕立て上げた。これで説明責任を果たしたと主張することは、まったく民衆を愚弄するものではないか。
 アメリカは今、グローバルな「対テロ」先制攻撃戦略の出撃拠点としてグアム島の陸海空軍と海兵隊を飛躍的に強化しようとしている。アメリカの海外基地再編は「蓮の葉」戦略(リリー・パッド・ストラテジー)の名で呼ばれている。つまり池に蓮の葉が浮かんでいるように、地球上のさまざまな場所に米軍基地が配置され、カエルが蓮の葉を跳びながら移動するように、それらの基地を跳躍台として世界中のどこにでも短期間に兵を送り、持続的な戦争を行える世界態勢の構築をめざすものである。グアムという「蓮の葉」はその主要作戦基地としての役割を与えられているのだ(梅林宏道氏の「アジア太平洋反基地東京会議での報告)。
 そして米海兵隊のグアム移転と、日本の財政支出でそれを賄おうとすることは、「米国の戦争」を「同盟国」に戦わせる「米軍再編」の本質の縮図ともいえる。「集団的自衛権」の発動に向けた旧来の政府見解の見直しも、憲法9条の改悪も、こうした米国の戦略的要請の帰結であることは言うまでもない。

チャモロ・ネーションの訴え


 これらの「米軍再編」に伴う財政負担のうち、〇七年度予算では在日米軍再編関連経費として、防衛費とは別枠扱いで七十二・四億円が計上されている。関係自治体への交付金の初年度分五十・五億円と、普天間飛行場の名護・辺野古「移設」関連の環境アセスメント調査費十億円、米海兵隊グアム移転のアセス調査費三億円、嘉手納飛行場以南の土地返還調査費一・九億円などである。
 沖縄の「基地負担の軽減」というまったくの虚偽の言い訳をも口にしながら進められるこうした予算措置をともなう「米軍再編促進特別措置法案」を多くの人びとに伝え、その成立を阻止するために闘おう。グアムの先住民族であるチャモロ人の人びとでつくる「チャモロ・ネーション」の人びとは「私たちは、沖縄から海兵隊が出ていくことの必要性を支持します。しかし一方で、グアムに基地を移転させる経費捻出のために、特に、日本の資源を使うことに反対する私たちの取り組みに皆さんの支援をお願いしたいのです」(06年11月「アジア太平洋反基地国際会議」での訴え)と呼びかけている。
 米軍再編関連予算支出への実態を明らかにさせ、それを批判する国会への働きかけと結び付けながら、米軍再編特措法案阻止の行動に取り組んでいこう。
(2月16日 平井純一)
 追記:毎日新聞2月20日付によれば、政府は五つの政府系金融機関を統合する「日本政策金融公庫」と、廃止される公営事業金融公庫の事業を継承する「地方公営企業等金融機構」を設立する二法案を週内にも国会に提出する。
 在沖米海兵隊の「グアム移転」にかかわって米軍家族用住宅建設費用の「投融資」を担当する国際協力銀行は、国際金融部門などが日本政策金融公庫に統合され、海外経済協力部門(円借款)は、国際協力機構(JICA)に統合されることになる。
 したがって「米軍再編特措法案」のグアム移転費用投融資はJICAの担当になる。
 これは「途上国」への開発援助を業務としてきたJICAならびにODAのあり方の根本的変更を含む重大なものだと言わなければならない。


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