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自衛隊はインド洋・アラビア海から撤退を         かけはし2007.9.3号

テロ特措法の延長を許さない!

民衆の惨禍を拡大するアフガン軍事占領支配をただちにやめろ

多国籍軍の一翼を担う自衛隊

 九月に召集される秋の臨時国会の最大の焦点に浮上したのが、十一月一日で期限切れとなる「テロ特措法」の延長問題である。
 二〇〇一年の「9・11」にあたって「テロリストもテロリストをかくまう者も同罪」と決めつけ、「テロリストにつくのか、われわれにつくのか」との二者択一を全世界に迫ったブッシュ政権は、アフガニスタンのタリバン政権に対して「個別的自衛権の行使」として「報復」攻撃をしかけた(「不朽の自由」作戦)。今日のイラクに続く泥沼の「対テロ」戦争の始まりである。それは「自衛権」に関する国連憲章や国際法の規定を無視して発動されたものであった。
 当時の小泉政権は、ただちにブッシュの侵略戦争を支持し、アフガニスタンに展開する多国籍軍部隊を支援の補給・輸送などの軍事作戦を支援するために「テロ特措法」を同年十月末に成立させ、十一月以後、海上自衛隊はイージス艦をふくむ護衛艦、補給艦をインド洋・ペルシャ湾に派遣し、多国籍軍艦船と同艦船搭載ヘリコプターへの燃料補給活動などを開始した。また、航空自衛隊はアフガニスタンに展開する米軍兵士や軍需物資の国内米軍基地間輸送、さらに国内米軍基地からグアムの米軍基地にC130、C1機で輸送する支援任務についた。
 海自のインド洋、アラビア海における燃料補給活動は十一カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、ニュージーランド、フランス、イタリア、オランダ、スペイン、カナダ、ギリシア、パキスタン)に対して、本年七月末までに七百六十九回にわたって行われている。また空自による米軍輸送支援は、本年一月末までに三百四十五回にわたっている(2007年度版『防衛白書』、「朝日」8月23日夕刊)。
 「テロ特措法」にもとづく自衛隊による多国籍軍への燃料補給は、すべて税金を使って行われ、「インド洋上の無料ガソリンスタンド」と揶揄されているが、その額はすでに二百十九億円に上り、アフガン多国籍軍の侵略・占領、「武装勢力掃討」を名目にした数多くの住民虐殺においてまさに不可欠の役割を果たしているのである。この法律とそれにもとづく軍事支援作戦が憲法違反であることは言うまでもない。

復活するタリバンの影響力

 現在、アフガニスタンの情勢は、韓国のキリスト教団体のメンバーが二十三人がタリバンによって拉致され、人質となった事件に見られるように、南部地域を中心にして旧政権勢力タリバンの急速な勢力の復活が見られる。アフガニスタンとの国境に近いパキスタンの北西辺境州でも、タリバンと通じるイスラム原理主義勢力が州政権を掌握している。
 米占領軍によって擁立されたカルザイかいらい政権は多国籍軍の力を借りて首都カブール近辺にのみ支配を及ぼしているにすぎず、住民からの支持をますます失っている。現在、NATOを中心に結成されているアフガニスタンの「国際治安支援部隊」(ISAF)の活動が、「武装勢力掃討」の名の下に多くの住民の虐殺を引き起こしていることともあいまって、イラクと同様に外国軍占領の中止と撤退を求める声が民衆の間に高まっている。
 こうしたアフガニスタンの治安悪化と住民の苦難は、それ自体占領の直接的結果である。それは、アフガン派兵国家の間でも、世論の変化を急速に作りだしている。
 ISAF参加国の中で、アフガンの戦闘で人口比で最大の死者を出しているカナダ(八月三日現在で死者六十六人)では、アフガン派兵への国民の支持率は二〇〇六年三月の賛成55%・反対41%から、今年7月には反対59%・賛成36%となった。カナダの反戦平和連合の代表ジェームス・クラーク氏は「二十年にわたる米国のアフガン政策の失敗が現在の混乱の背景だ。外国軍が駐留することで現地でのタリバンへの支持が広がっており、駐留はアフガンの人々のためになっていない」と批判している(「毎日」8月6日)。
 イタリアでも、中道左派・プロディ政権のアフガニスタン派兵継続政策に対して反対の態度を明確にしたフランコ・トゥリグリアット上院議員らへの支持が広がっており、それは与党最左派・共産主義再建党(PRC)内の明確な分岐と批判的左翼協会(ASC)結成の基盤となっている。
 アフガニスタンから開始された先制攻撃戦略としての「テロリズムとの闘い」は、明らかに「テロリズムの脅威」を全世界に拡大した。パキスタン、インドネシアなどにおけるイスラム原理主義勢力による反動的テロリズムの蔓延は、ブッシュ政権が主導する「テロとの闘い」の完全な破綻を明らかにした。
 それはNGOなどによるアフガニスタンやイラクへの「復興支援」活動の危機をも作りだしている。韓国人拉致事件を契機に、カブールの日本大使館はNGOの日本人スタッフの国外への退去を要請した(「朝日」8月19日)。いま全世界で問われていることは、この「反テロ」グローバル戦争戦略を終わらせることによってこそ、「復興支援」活動などを通じた民衆にとっての「安全」が現実のものとなるということである。「対テロ戦争」戦略と「復興支援」は絶対に両立しえない。

米軍の侵略と「国連決議」

 七月参院選で、参院での与野党逆転を作りだし、参院の第一党となった民主党の小沢一郎代表は、テロ特措法の延長に反対する立場を繰り返し表明した。この民主党の態度は、米政権の危機意識を加速している。八月八日、シーファー駐日米大使は、民主党本部で小沢と五十分間にわたって会談したが、その席でも小沢は「米国を中心としたアフガンでの軍事作戦は、国連安保理決議によって権威づけられたものではない」と強調し、テロ特措法延長に反対する態度を崩さなかった。
 小沢の言うとおり、「9・11」の翌日、二〇〇一年九月十二日に国連安保理第4370会合で採択された安保理決議1368は、「9・11テロ」を「国際の安全と平和に対する脅威」と見なし、「すべての加盟国に対し、これらテロ攻撃の犯人、組織者および後援者を裁くため、緊急に協力することを求めるとともに、これら行為の犯人、組織者および後援者を援助したり、支援したり、かくまったりしている者はその責任を問われることを強調する」としているが、米国のアフガニスタン・タリバン政権に対する武力行使の発動を正当化したものではない。そして米国の戦争は、この安保理決議1368に依拠したものではなく、あくまで米国の「個別的自衛権」の名において発動されたのである。
 しかし、小泉内閣が成立させたテロ特措法は、その正式名称である「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」に示されるように、米国などのアフガン戦争が、あたかも国連決議によって承認された「国連憲章の目的達成のための」戦争であるかのようにいつわっている。同法の第一条は「この法律は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃が、国際連合安全保障理事会決議第千三百六十八号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められたことを踏まえ……」と述べているが、安保理決議1368による「国際の安全と平和に対する脅威」規定と、米国の武力行使は結びつくものではないのである。「踏まえ……」という表現は、あいまいなゴマカシの表現以外のなにものでもない。
 この小沢の明確な拒否の姿勢に対し、小池防衛相は訪米先の米国でゲーツ国防長官、チェイニー副大統領と会談し「今後も引き続きテロとの闘いで役割を果たしたい」と「テロ特措法」延長の決意を語った。シーファー駐日米大使は八月十三日の朝日新聞記者とのインタビューで小沢に反論し、「テロとの闘いは米国の戦争ではなく、国際社会全体が参加すべき戦争だ」「日本がテロとの戦いに参加しないという決断をすれば、それは国際社会全体に悪いメッセージを送ることになる」「日本は中東から九割の石油を輸入しており、安定した平和な中東は、日本にとって国益になる」との圧力をかける一方で「九月頃に、すべての国会議員を対象に、機密情報に関する説明会を持つ。米国は決断に必要なあらゆる情報を提供する用意がある」とのゆさぶりを策している。
 こうした中で、民主党の前原誠司・前代表らは「日米同盟の重要性」や「政権担当能力を示す」ためとして「テロ特措法」延長に理解を示しており、この問題は米政府、安倍政権、そして参院第一党としての民主党を巻き込んだ、今秋最重要の攻防戦になっていると言わなければならない。

恒常的派兵と「集団的自衛権」

 十一月一日で期限切れとなる「テロ特措法」の延長を阻止し、自衛隊のインド洋からの撤退を実現することは、イラクからの自衛隊の撤退を勝ち取り、イラク特措法の廃止を実現するための突破口であるばかりでなく、米軍とグローバルなレベルで戦略的にも実戦上でも一体化した自衛隊の海外での参戦を阻み、日本の「戦争国家」化と憲法九条改悪を止める運動を前進させていく上で大きな意義を持っている。安倍政権が「死に体」となり、参議院での「与野党逆転」が現実のものとなったこの時期こそ、労働者・市民の運動にとって大きなチャンスである。
 防衛庁が「省」に昇格した今年、辺野古の米軍基地建設反対の住民運動に対する掃海母艦「ぶんご」の「治安出動」、情報保全隊の市民運動に対する情報収集・調査活動の暴露など、「戦争国家」化の加速化を象徴する重大な事態が相次いだ。それは米軍再編を通じた自衛隊の海外での作戦活動の「本務」化と一体の形で進行している。
 2007年版『防衛白書』は「より危機に強く、世界の平和に貢献できる組織に」を掲げて次のように述べている。
 「安全保障環境が変化している今日、もはや侵略の抑止を最重視した防衛力整備を行っていれば足りる時代ではない。……グローバル化の進展により国境が従来のような意味を持たなくなってきた今日、国民共有の財産としての防衛力を国際平和協力活動等のために一層活用して、世界の平和の確立に積極的に貢献していくことはわが国が果たすべき責務となっている」。
 これはまさしく、グローバル化の下で自衛隊は本格的な海外展開軍として機能すべしという宣言である。そのための最大の障がいが憲法九条であり、憲法九条の下で「集団的自衛権」の行使を禁じてきた従来の「政府統一見解」であった。その「制約」を突破するために登場したのが安倍政権だった。
 安倍政権は参院選挙で歴史的大敗を喫したものの、支配階級は再度体制を立て直し、改憲と「戦争国家」化への道を突き進まざるをえない。五月十八日に第一回会合が持たれた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(有識者懇)は、秋までに検討の結果を取りまとめ、集団的自衛権の行使を事実上「合憲化」する報告を首相に提出することになっている。すでに共同の任務に従事中の米国艦船が公海上で武力攻撃を受けた際の自衛隊による反撃、米国本土をねらったミサイルの自衛隊による撃墜について、それを正当化する意見で一致し、八月十日の懇談会でも「海外に派遣された自衛隊が、共に活動する外国軍が襲撃された際に援護する」という「駆けつけ警護」を容認するとの意見が大勢を占めた。
 この「有識者懇」の会合とまさに軌を一にする形で、今回の参院選で自民党から比例区で当選した元陸上自衛隊イラク先遣隊長の佐藤正久は、「サマワで共に活動していたオランダ軍が武力攻撃された場合、自衛隊もそこに駆けつけて意図的に巻き込まれる状況を作りだし、武力行使を行うことを考えていた。法律に反してもそうするつもりだった」という趣旨の発言をした。このようにして「既成事実」として「集団的自衛権」行使への制約=イラク特措法の枠組みを突破する企図が、現場サイドから公然と主張されたのである。
 こうした流れを食い止めるために全力を上げよう。WORLD PEACE NOW実行委員会は九月十一日(午後五時半・衆院議員面会所結集)に、テロ特措法延長に反対する行動を呼びかけている。また九月十五日には「Peace Day Tokyo 2007@東京タワー下」(芝公園4号地、午前11時〜午後5時、ピースパレード:午後3時)が呼びかけられている。
 テロ特措法延長を阻止するため、国会内外の声を集めよう! 
(平井純一)


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