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                          かけはし2002.7.15号より

国際熱核融合実験炉六ケ所村誘致反対!

残されるのは核廃棄物の山だけだ


 七月七日、青森県六ケ所村の橋本寿村長が公共工事をめぐる収賄疑惑の渦中に自殺したことに伴う村長選の投票が行われ、即日開票の結果、核燃との「共存共栄」派の古川健治前村教育長が初当選した。古川前村教育長の得票は五千百十四票。古川候補は橋本村長の後継として核燃サイクル事業との「共存共栄」を大前提として立候補、これまで激しく争った与野党の村議二十二人中十九人の支持、村内の大半の建設業者の支持を受けた。また、核燃施設の立地開始時の村長・古川伊勢松の実弟でもある。
 告示直前に立候補を表明した反核燃候補の高田与三郎さんは、昨年十一月の村長選での得票七十七に約百票上乗せし、百七十票を獲得したが敗北した。
 「現実に施設がある以上、賛成、反対は不毛の論議」という中間的立場の村内泊地区出身で神奈川県で土木会社を経営する横浜市在住の大関正光候補は、古川陣営に対する批判票を集め千三百三十九票を獲得した。
 青森では来年一月に県議会議員選挙、続き一月末もしくは二月には県知事選挙、四月には六ケ所村議会議員選と選挙が続く。核燃サイクルをめぐっては、日常化した使用済み核燃料や低レベル核廃棄物の搬入が続く中、MOX燃料工場の建設や再処理工場のウラン試験を阻止する闘いに加え、国際熱核融合実験炉=ITER(以下、イーター)の建設問題が急浮上している。
 小泉首相が議長をつとめる総合科学技術会議は五月二十九日、日本、EU、カナダ、そしてロシアの四極が共同で計画するイーターの建設候補地を六ケ所村に絞り、六月四日にフランス・カダラッシュで開かれる第四回イーター計画公式政府間協議に提案することを了承、また政府は三十一日、閣議了解した。日本政府は公式政府間協議で、六ケ所村を建設候補地として正式に誘致に名乗りを上げた。同協議では、EUがスペインのバンデロス、フランスのカダラッシュを候補地として、またカナダは昨年六月にクラリントンを候補地として名乗りを上げている。
 国内では日本国内では、六ケ所村、茨城県那珂町、北海道苫小牧市の三地域が誘致合戦を繰り返してきた。文部科学省は昨年十月、イーターサイト適地調査専門家会合を開催、調査結果を取りまとめ、事実上、那珂町と六ケ所村の二地区に絞った。六ケ所村に絞られた総合科学技術会議直前まで政府内では、公式政府間協議には那珂町と六ケ所村の二地区併記で誘致に乗り出す準備が進められていた。
 毎日新聞は、会議直前、小泉首相は「官邸で尾身幸次・科学技術政策担当相、遠山敦子文部科学相、自民党の核融合エネルギー推進議員連盟会長の森喜朗前首相と会談し、国内の建設候補地を青森県六ケ所村に絞り込むことを決めた。原子力発電所の使用済み燃料再処理工場など、核燃料サイクル関連施設を多数抱える同県に配慮した結果とみられる」と、政治決着がはかられたことを報道している。建設費だけでも五千五百億円、青森県の試算によれば、経済波及効果は一兆二千億円以上と見積もられている。ちなみに鈴木宗男疑惑の国後島ディーゼル発電所の落札価格は二十億円足らずであった。
 誘致合戦に敗れた茨城県の橋本知事は、「議員連盟のどれだけが現地視察をしたのか」と政治決着に怒りをあらわにしたという。那珂町には、日本原子力研究所の熱核融合実験炉JT60があり、海外からも研究者が集まり、イーターの工学設計の多くを分担した。橋本知事は国際的知名度により、研究者は六ケ所村ではなく那珂町を選択するだろうと過信していた。
 那珂町の候補予定地はJCOから一キロメートルほどであり、橋本はJCO事故被害者でもある予定地周辺住民に対して、説明責任を放棄してきた結果である。今年二月、原子力資料情報室と原水禁が地元住民と協力して行ったJCO事故総合総合評価会議の生活影響調査では、周辺住民の過半数がイーター誘致に反対であった。JCO事故以降、草の根で行われた地元住民によるイーター反対運動の政治的勝利とも言えよう。
 三候補地のなかで、いち早くイーター反対運動組織をまとめたのが北海道苫東地区の住民たちであった。イーターの危険性について、「ITERの苫東誘致に反対する会」のホームページから以下引用する。
 イーターでは、トリチウムという(一グラムが千人の致死量に当たる)毒性の強い放射性物質を使う。これが周辺に漏れ出すことは避けられず、多くの被害を引き起こす可能性が強い。
 トリチウムが漏れ出す施設である重水原子炉や核燃料再処理工場、核兵器工場などの周辺では、「無脳症等の神経系統異常出産が増加」「ダウン症候群が八〇%増加」「白血病が増加」などの報告がある。
 米国の「国家エネルギー戦略」の策定に当たって米国物理学会のプラズマ部会長として核融合についての意見を取りまとめた、長谷川晃大阪大教授は、「事故で三重水素(トリチウムのこと)が全量(約五百グラム)放出された場合にはチェルノブイリ原子炉事故クラスの影響も出る」と「朝日新聞」の「論壇」に書いている。ITERで最初に用意されるトリチウムの量は十キログラム。事故があった時の被害は想像を絶する。
 前述の長谷川教授は、続けて「無事に点火に成功し核反応が起こると強力な中性子が多量に発生し、連続運転を想定すると炉壁は一年前後でボロボロになる。この結果、四万トンに及ぶ構造物が放射化され『超粗大ゴミ』として残る。少なく見積もってもそのうち三千トンは極めて危険な放射性廃棄物となる。これはコンクリート詰めにし、地下二百メートルに千年間厳重な管理が必要だ。この廃棄物量は原発が三十年の寿命の間に放出する破棄物の総量をはるかに上回る」とも書いている。(「イーターNEWS創刊号」より)
 茨城県に対して劣勢とみられた青森県がアピールしたのは、「首都圏へのアクセスが良い那珂町に対して、六ケ所村は広大な敷地を提供できる」「運転に必要な高圧送電線の敷設費、研究者の家族住宅や教育施設建設などを県が負担する」そして「低レベル廃棄物を青森で引き受ける」などというものであった。
 青森県の試算では、研究主体となるイーター事業体へ無償提供する建設用地の確保に八十億円以上、炉の運転に必要な高圧送電線の敷設に百二十億から百五十億円、研究者の居住環境整備に百七十億円。しかし、前述のように、四万トンに及ぶ構造物が放射化され「超粗大ゴミ」として残る。いずれも、青森県が県民に説明せず、国に提案し、閣議了解に至った既成事実である。
 まだ、六ケ所村に建設が決まったわけではない。今後の公式政府間協議は、第五回目が九月末もしくは十月はじめ、最終協議が十二月に予定されている。おそらく、最終協議で六ケ所村、バンデロス、カダラッシュ、クラリントンの中から一つが決まるのだろう。われわれはもちろん、「六ケ所でなければ良い」という立場をとるものではない。まず、苫小牧と那珂町への誘致を阻んだ仲間たちとともに、六ケ所の立候補を取り下げさせるとともに、国際計画自体をただちに終了させようというものである。
 現在、青森県内の反核燃運動は、一〇・二六提出の「再処理止めよう!一〇〇万人署名」に全力をあげ取り組んでいる。署名提出以降の運動の組み立てやMOX工場建設問題、そして県知事選挙への体制など、地元の課題は尽きない。全国で取り組む「再処理止めよう!一〇〇万人署名」運動のなかでイーターをストップさせる声を高めていこうではないか。 (斉藤浩二)

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