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愛媛県警・仙波敏郎巡査部長、高裁でも勝訴       かけはし2008.10.27号

暴露された警察の組織犯罪

裏金づくり・不正行為の徹底的究明を


裏金告発したら
報復的配置転換

 九月三十日、愛媛県警の仙波敏郎巡査部長は、県警裏金問題(捜査費不正支出)を告発したために報復的な配置転換を強要され精神的苦痛を受けたとして、県を相手にした国家賠償請求裁判で松山地裁勝訴(07年9月11日)に続いて高松高裁でも勝利判決をかちとった。
 愛媛県警の大塚泰博警務部長は、県議会の文教警察委員会(10月6日)で「上告は違憲や判例違反に限られ、事実関係は争えない。詳細に検討したが、適切な上告理由が見いだせなかった」と述べ、上告断念を明らかにした。つまり、県警当局が実質的に仙波さんの裏金告発に対する報復人事異動だったことを公然と認めざるをえなかったのである。
 警察庁中枢を司令部とする全国警察組織は、二〇〇三年の北海道警察の裏金問題発覚を契機に、全国の警察組織で裏金問題が連鎖的に発覚するという事態に直面し、関係警察幹部を切り捨てることによって必死に封殺してきた。〇四年に入ってからは、警察裏金問題が大きく連続的に報道され、国会でも野党が追及するという事態に入っているにもかかわらず関東、中部、九州の各管区警察局、全国三十八の都道府県警察など三百二十六の課や署において、文書管理規則が五年間の保存期間であるにもかかわらず、その期限前なのに捜査費証拠書類、カラ出張で裏金をつくる旅費請求書、旅行命令簿などの書類を廃棄する暴挙まで強行してきた。全国警察組織においてほぼ一斉に文書廃棄しているように警察庁の指導によって実行しているのは間違いない。しかし08・9・30高松高裁判決によって、あらためて警察庁・警察組織の裏金システムが温存・助長されていることを社会的にクローズアップすることになった。
 資本のグローバル化と新自由主義によって弱肉強食、金儲け優先主義がはびこり、その歪みと矛盾の深まりの結果として、内部告発によって企業、行政組織の「悪行」が暴露され、社会的に糾弾されるケースが広がっている。公益通報者保護法(06年施行)が大きなバネとなっていることは間違いない。法律は、通報者保護の強化と外部通報要件の限定などの課題があるが内部告発の促進にむけて定着させていかなければならない。
 警察組織においても例外ではない。憲法を否定し、人権侵害、犯罪隠蔽を繰り返す警察組織、とりわけ公安政治警察の解体は、裏金問題からのアプローチによっても追撃が可能であることを仙波さんの闘いは指し示している。仙波さんと弁護団は、全国で多発する警察犯罪を許さない市民オンブズマンネットワークと協力しながら運動を広げている。警察組織を厳しく監視し、不正を許さない取り組みと連帯していくために、その第一歩として仙波さんの闘いと警察の裏金問題に焦点を絞って提起する。
 なお、仙波さんの熾烈な闘いの経過は、「愛媛県警の裏金問題を告発した仙波さんを支える会」ホームページに詳細なドキュメント報告が掲載されている。
(http://ww7.enjoy.ne.jp/~j.depp.seven/)

愛媛県警の隠蔽
工作と嫌がらせ

 そもそも愛媛県警の裏金問題が発覚したのは仙波告発より先駆けて〇四年五月に大洲署元会計課長が全国に吹き荒れる警察組織の裏金作り犯罪への批判に直撃を受け、これまでの公金横領、私文書偽造の犯罪を繰り返し、隠蔽してきたことにいたたまれず「大洲署の捜査報償費(捜査協力者謝礼金)は架空だった」と暴露したのが始まりだった。県警当局は、即座に警察庁と協議し、承認をとりながら大洲署のOBも含めて関係者をかき集め、大洲署内の「一不祥事」として逃げ切ろうと工作に「成功」しかかっていた。
 仙波さんは、県警トップがくり広げる自己保身に貫かれた隠蔽工作を厳しく見ながら「これ以上、放置してしまったら腐敗・堕落しきった警察組織の再建はありえない」 と決断する。そして、大洲署元会計課長の勇気ある告発を孤立させてはならないという立場から実名・顔写真報道を前提とした裏金問題告発記者会見に踏み出していった。 大慌ての県警当局は、公安警察も動員して二十四時間の仙波監視態勢を配備し記者会見を事前察知し、なんとしてでも阻止しようと、仙波さんを「隔離」する。脅しとすかし、「おまえが会見したら県警は一年間は立ち上がれない」などと泣き落としの演技も含めて「説得」にかかった。しかし、仙波さんの意志は固く、県警の裏金システム解体にむけて決起したのである(05年1月20日)。

「自分の見た
真実を話す」

 記者会見の冒頭、仙波さんは「三十八年の間、警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験にもとづく真実を話します」と表明し、県警裏金システムの全貌を明らかにしていった。
 「一九七二年九月に三島署に巡査長に昇任して勤務してから、会計課長から年平均二回、毎回三人分の偽名の領収書をつくるよう指示された。『これは何ですか』と質問すると、課長は『組織のためだ』と答えた。しかし、裏金づくりに使われる領収書であることがわかったので、私文書偽造になるから書きませんと拒否した。 一九七三年から九五年にかけて勤務した七つの警察署すべてで領収書偽造を求められ、 いずれも拒否してきた」。
 「二十四歳で巡査部長に昇任したが、その後、筆記試験ではトップに近い成績を収めても三十二年間にわたって昇任する機会は与えられなかった」。
 つまり、偽領収書拒否に対する報復であったことを厳しく批判するとともに、「捜査員が協力者に謝礼を払ったことは聞いたことがない。カラ出張という方法で出張旅費の一部も裏金化され、幹部の飲食費にあてられていた」事実を具体的に明らかにした。そのうえで「偽造領収書の作成は警察官が昇任する際の『踏み絵』として半ば強制されており、これを書かない限り上級へは昇任できない仕組み」であることを強調した。
 県警当局は、仙波さんを叩きつぶすために一月二十七日、県警地域課鉄道警察隊から同課通信司令室企画主任への異動を発令する。仕事は、同課の仙波用机と椅子に座っ ているだけだった。また、同僚らの露骨な無視が始まった。
 このような報復人事異動と「いやがらせ」等に対して仙波さんは、怯むことなく「報復的な配置転換によって多大の精神的苦痛・身体的苦痛を受けた」として断固として松山地裁に国家賠償請求裁判を起こした(05年2月11日)。また、県人事委員会に処分の取り消しを求める不服申し立てを行った(2月23日)。
 仙波さんの闘いをはじめ社会的批判が強まるなか愛媛県は、二〇〇五年度当初予算案で県警の捜査報償費を大幅に減額し、〇四年度の予算額(県費分4491万円)の三分の一以下となる千三百七十二万円で計上しなければならなかった。ところが仙波国賠裁判において、県は「請求の却下を求める」などと主張し、私文書偽造と公金横領の犯罪を隠蔽し続け、居直りに満ちた書面を提出し、全面的に争う構えを崩すことはなかった。後の公判でも県警は、関係者二百四十七人から聞き取りしたなど称して、「証言のような偽造領収書の作成依頼やカラ出張の事実は確認されなかった」などとする調査結果報告書を提出するほどだ。第三者のチェックもなく、身内同士でウソ回答をでっち上げたにすぎない。

警察官僚機構
延命のあがき

 愛媛県警へのボディーブローは、これだけではなかった。なんと二〇〇六年四月に、愛媛県警の警部による作成資料データがパソコンからファイル交換ソフト「ウィニー」を通じてインターネット上に流出していることがメディアで報じられてしまった。データは、警部が二〇〇二年に作成し、捜査一課長に捜査情報の提供者に謝礼を支払ったという報告書だった。しかし日本共産党による調査によって、約二十件の報告書に出てくる名前の情報提供者には謝礼を払っていないことが明らかになっている。支払ったカネは、いったいどこに行ってしまったのか。偽報告書が明白であるにもかかわらず警察庁の繩田修刑事局長は、「流出した資料の確認にもつながる。お答えは差し控えたい」などと逃げに終始し、官僚的保身に満ちた無責任な答弁を繰り返した。
 このような愛媛県警の腐敗・堕落、責任のなすりあい、ドタバタ劇をくり広げる一方で仙波裁判闘争は果敢に闘いぬかれていた。〇七年九月十一日に松山地裁判決を迎えた。原告の主張をほぼ認め、県に対して慰謝料百万円を全額支払うよう命じた。判決は、警察裏金作りについて「内部告発の信ぴょう性、目的、 手段の相当性を総合的に考慮」して違法と認定するとともに、鉄道警察隊から通信司令室企画係への異動も、「新たな係の増設や配置人員は愛媛県警本部長の権限」と指摘し、「内部からの造反に対して、報復としておこなわれたことが推認される」と批判したのである。なお判決に先駆けて県人事委員会(06年6月6日)では、「配置取り消し」と裁決し、仙波さんは元の鉄道警察隊に復帰している。
  そして高松高裁の控訴審判決でも勝訴判決だった(08年9月30日)が、判決は、「配置換えの内容や経緯は上司による嫌がらせと推認される」と認定したものの、県警の記者会見妨害行動を「違法行為とは言えない」と認定したことや裏金システムと実行事実について判断を避けてしまった。高裁は、「県警崩壊」をぎりぎりのところで押しとどめる任務を「忠実」に貫徹したのである。だが全国警察組織の不正と犯罪を暴き出し、公安政治警察解体にむけて、仙波裁判勝利は重要な前進であることを確認したい。
 同時に見落としてはならないことは、警察庁中枢官僚が権益防衛のために社会的チェックの介入を排除しながら、全国警察組織機構の当該幹部らを切り捨てることによって延命していく手法が強化されてきたことだ。それは北海道警察の裏金問題の幕引きに先行的に現れていた。
 道警は、原田宏二さん(元道警釧路方面本部長)、斉藤邦雄さん(元弟子屈署次長)の告発、道警圧力に抗しながらも北海道新聞などによる批判キャンペーンによって、旭川中央署での裏金作りと実行を認めざるをえなかった(04年3月)。結局、国民の税金を裏金として流用してきた総額九億円を算出し、道と国に返還するなどと取り繕いつつ、約三千人を処分した。もちろんこれらのプロセスは、警察庁中枢の指導にもとづいて道警幹部が着手したのである。しかし警察庁本丸に裏金作り問題のメスが入っていない以上、実質的に裏金システムの土壌が温存・助長されてしまったのである。そういう意味で北海道警察幹部は、警察庁中枢の要求を「忠実」に担ったのであり、全国の警察組織にとっても、道警幹部を犠牲にして生き延びることにこぎつけることができたのであった。

10・24弾圧国賠
裁判の勝利へ

 こういった傾向を積極的に引き継いできた警察組織の一つが神奈川県警だった。すでに朝日新聞(04年4月29日)が「文書を廃棄したのは神奈川県警本部の刑事総務、薬物対策、装備、教養、試験課と、瀬谷、多摩、座間署、第一交通機動隊の九部署。港南署も〇〇年度に廃棄処分していた」とスクープしている。すでに警察庁がいやいやながら出した文書保存通達後(3月24日付)であるにもかかわらず廃棄処分していたのだ。県警幹部は、「間違って処分してしまった」などとみえみえのウソをついていたが、県警裏金作りを証明する重要証拠であったのだろう。
 県警の隠蔽体質は、何度となく社会的に批判されてきたにもかかわらず、いまだに反省してはいない。今年二月、横浜市の市民団体「警察見張り番」による捜査報償費の情報開示要求(横浜地裁提訴)を行ったが、県警が開示した書類は真っ黒塗りだったことに現れている。県警は、捜査に支障が出るからなどと警察庁の「対応マニュアル・説明書式」どおりに居直っているのだ。その姿勢は、全国的に警察の不正を許さない市民運動に対して真っ向から敵対する態度を強化していると言える。
 このような体質は、裏金問題の後始末に追われていたころ霊感詐欺商法「神世界」の重要幹部として関与し県警内までも勧誘活動を展開していた県警警備課長吉田澄雄警視の暗躍を放置していたことにもつながっている。この事件は、〇八年二月七日、吉田元警視を地方公務員法違反(営利企業への従事制限など)にあたる行為を繰り返したとして、懲戒免職処分。関係上司も処分した。県警の総瓦解阻止の一点で組織ぐるみの隠蔽工作をやり抜いた。
 きたる十月二十八日に06・10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判の結審を迎えるが、この弾圧も県警の腐敗・堕落した体質によって強行されたのである。
 (裁判報告は、アジア連帯講座ブログ「虹とモンスーン」10・24国賠裁判│反弾圧 
http://solidarity.blog.shinobi.jp/Category/12/」を読んでいただきたい)。
 あらためて確認するまでもないが、10・24弾圧が公安政治警察による自らの存在証明=組織延命、すなわち仕事作りのためにデッチ上げた弾圧だったということが明らかになっている。それはすなわち過日の日本共産党緒方氏宅盗聴犯罪をはじめ数々の犯罪の隠蔽を繰り返し、また警察組織の裏金作りシステム構築とその実行と合わせて、全く反省することもなく、その延長線上で10・24弾圧を強行したのである。
 愛媛県警、神奈川県警など警察組織の裏金犯罪、人権弾圧を糾弾し、徹底究明していかなければならない。警察庁中枢の裏金作り指導、逃げ切りを許すな。公安政治警察を解体していこう!10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判に勝利しよう!
(遠山裕樹)

b十月二十八日/第9回 10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国賠裁判│結審│/横浜地裁民事6部503号法廷(JR関内駅下車)/午前十時開廷


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