| 麻生内閣の「追加経済対策」批判 かけはし2008.11.10号 |
金融資本救済に税金投入するな
雇用・生活保障する支援拡大を |
新自由主義政策
の破綻を確認
野党からも、与党である公明党やさらに自民党の一部からも迫られる早期解散・総選挙の圧力をかわして、世界的な金融恐慌と経済不況への対策を口実に政権しがみつきに奔走している麻生首相は、十月三十日に緊急の「追加経済対策」を発表した。
「現在の経済状況の認識を申し上げる。金融災害とも言うべき米国発の暴風雨と理解している。百年に一度の危機だ」「証券化商品に代表される新しいビジネスモデルが拡大したが金融機関がリスクを適切に管理できず、金融が機能不全に陥った。世界的な金融システムの動揺が、株式や債券市場を経て世界と日本の実体経済に確実に影響を及ぼす」。
首相会見の冒頭で示されたこの認識は、政府と支配階級が「金融工学」なる投機を推進力にした「カジノ資本主義」の破綻に直面し、恐怖にさらされている現実を赤裸々に示すものだ。これはまさしく新自由主義的グローバル化を牽引してきたビジネスモデルの崩壊なのである。
だが麻生政権の「追加経済対策」は、金融崩壊と経済恐慌、労働者・市民の雇用と生活、民主主義と権利を破壊し、物価騰貴、貧困と格差の蔓延をもたらした新自由主義的グローバル化の枠組みを防衛し、資本の強搾取を建て直すための一時的弥縫策に過ぎない。与党の選挙対策のみを目当てとした「生活支援」というポーズにだまされてはならない。
貧困層の生活
支援とは無縁
「追加経済対策」で発表された中身は、八月末に福田前内閣が倒れる直前に発表した総合経済対策の事業規模十一・七兆円を二倍以上上回る二十七兆円、実質的な財政支出は五兆円に達する。「生活支援」の「目玉商品」として打ち出されたのは総額二兆円の「生活支給定額給付金(仮称)」で、今年度中に現金かクーポンで給付する方針だとされている。「一人当たり一万円。六十五歳以上と十五歳未満にはさらに一万二千円追加し、夫婦と十五歳未満の子ども二人の世帯で六万四千円」という計算だという。
さらに今年末に期限が切れる住宅ローン減税を延長し、税額控除可能額を過去最高水準まで引き上げ六百万円までとすることも打ち出された。「子育て・出産支援」として特別手当てを支給し、第二子以降の未就学児に三万六千円、妊婦検診の無料化もメニューに組み込まれた。
介護事業者に支払う報酬を先行見直しして来年度から三%引き上げ、「介護従事者の処遇改善と人材確保」をはかることも提起され、「雇用セーフティーネット強化対策」として「非正規労働者の雇用安定対策を強化」「中小企業の雇用維持支援対策を強化」などの言葉も並んでいる。
しかし、「介護事業者」への支払い報酬の引き上げは、そのまま低賃金の使い捨て・過重労働に苦しむ介護労働者の待遇改善につながるものではない。またここで語られる「雇用セーフティーネット強化対策」とは、「年長フリーター等(25歳〜39歳)の積極雇用の支援強化――事業者に対する特別奨励金の創設)」「非正規労働者就労支援センターの増設(3カ所から5カ所)」「ジョブ・カード制の拡充――訓練期間中の生活保障給付の返還免除対象者の拡大等、雇用型訓練に対する助成の拡充」「ジョブ・カフェの機能拡充等」といったものに過ぎず、いま求められている派遣法の抜本改正などとは程遠いものにすぎない。
大衆収奪で財
源をまかなう
「生活支援定額給付金」の他にも、地方対策として「高速道路料金は休日にどこまで行っても千円とする」ことなども含まれている。こうしたことは自民党が民主党を口をきわめて批判してきた選挙のための「バラまき」そのものである。もちろんこうした「バラまき」が、新自由主義的な「弱肉強食・自己責任」「福祉切り捨て」の論理を転換し、その反省に立って貧しい人びと、生活困窮者への福祉の充実として政策的に貫徹されるのであれば、結構なことてある。しかし、その方針は「景気対策」「財政再建」「構造改革による成長」という従来の枠組みを維持したものであり、「生活支援」のための財政負担は、三年後を想定して消費税を段階的に一〇%に引き上げるという、まさに大衆収奪によって賄おうというのだ。「バラまき」と言うならば、新自由主義的な「構造改革」路線こそ、大資本・金持ちのための「バラまき」であり、金融資本への公的資金投入も大がかりな「バラまき」である。
「二兆円の給付金でも国内総生産(GDP)の押し上げ効果はわずか〇・二%ほどにとどまる見通し」(日経新聞、10月31日)とされる。また「試算では、五兆円の財政支出による押し上げ効果は計〇・五%程度。逆に国の借金が増えるという見方が市場に広がれば、長期金利が上がって景気を冷やし、GDPを一年間で〇・二%分押し下げる」(朝日新聞、10月31日)とも言われている。結局のところツケはすべて住民に対する増税として強制される。われわれは、「生活緊急支援」と銘打ちながら、こうした大衆収奪の大増税によって危機のりきりを図ろうとする攻撃にごまかされはしない。
国際的投機の
規制と課税を
「追加経済対策」の「最優先課題」とされているのは「金融資本市場の安定化」である。麻生首相は「サブプライム問題に端を発した金融危機では、証券化商品のあらゆる段階において不適切な行動が見られた。各国当局がそれぞれ監督する現在の仕組みは不十分であり、金融機関を監督・規制する国際協調体制の構築を十一月にワシントンで開かれる首脳会議で議論したい。格付け会社への規制、アジアなど地場の格付け会社育成の必要性を議論したい」と述べ、「証券化商品の透明性や信頼性の向上、流通再開に向けた取り組み」「株式譲渡・優遇税制の三年延長」などを「追加経済対策」に盛り込んだ。
しかし真に問われているのは、「貯蓄から投資」という形で、労働者・市民のささやかな資金を収奪し、投機のための「証券化商品」投機へと誘導してきた「カジノ資本主義」からの撤退なのである。
十月に行われたG7の会議では、金融機関への公的資金の投入を協調して遂行することが合意された。これは詐欺行為によって大儲けした金融資本の危機を救済するために労働者・市民の税金を投入する二重の犯罪行為である。G7でも合意された「証券化商品の透明性や信頼性の向上、流通再開に向けた取り組み」という方針は、再び労働者大衆からの収奪と投機によって金融カジノを復活させようという目論見をはっきりと示している。それは金融市場の「規制緩和」を再度レールに乗せなおすための戦略である。
必要なことは、金融投機の国際的規制と課税であり、「南」の諸国の不法な債務の帳消しであり、ラテンアメリカ諸国が開始した「南の銀行」に示される貧困と飢餓をなくすための国際的な支援と新しい公正で連帯的な金融システムへの挑戦である。金融資本を救済するための「公的資金」投入ではなく、失業者、住居を奪われた人びと、貧しい人びとの生活支援、医療・教育などを支える社会的支出である。
倒産・解雇と
対決する闘い
いま経済不況局面への本格的突入の中で、労働者への解雇、賃下げ、非正規社員の雇い止め、高校、大学の来年三月新卒者の就職難が相次いでいる。厚労省が十月三十一日に発表した有効求人倍率はすべての都道府県で前月より下がり、全国平均で〇・八四倍と二〇〇四年八月以来、四年一カ月ぶりの低水準になった。失業率も増加している。とりわけ派遣社員の「契約解除」の波が拡大している。
トヨタ自動車九州(福岡県)では六月と八月に、計八百人の派遣契約を解除した。日産自動車も栃木、九州工場で計一千人の契約を更新しない方針と報じられている。工作機械メーカー大手の森精機製作所では六百五十人の派遣社員を年度内に三百人減らす方針だ。
「賃金調整や雇用調整に踏み切った企業は全体の一五・二%に上り、このうち二三・四%が派遣社員など非正社員の再契約停止などを実施した。正社員を含む従業員の解雇に踏み切った企業も四・四%あった」「製造業派遣大手の日総工産では、十月の新規受注は約五百人、前年同期の八分の一に落ち込んだ。『一日ごとに受注が減る危機的な状況』(幹部)だという」(「朝日」11月1日)。
労働力全体の非正規・不安定化と低賃金・無権利化の攻撃の中で、再び派遣・パート労働者の雇い止め・解雇の嵐が吹き荒れている。経済危機・不況の影響を真先にこうむるのが、こうした非正規の労働者たちだ。こうした中で、突然の会社廃業・全員解雇の攻撃を受けた京品ホテルの労働者たちの闘いは、大きな社会的波及力を持って展開されている。
麻生内閣の「追加経済対策」は、決して苦境にあえぐ労働者の雇用と生活、権利を保障するものではない。緊急の「経済対策」は何よりも労働者の雇用と生活、権利を拡大するためにこそ実現されなければならない。消費税の大幅増税、金融資本の救済のための税金の投入、金持ち・企業減税に反対し、労働者・農漁民・零細企業の支援のためにこそ優先的に資金投入することが必要である。労働者・市民の抵抗と連帯を拡大し、麻生・自公政権打倒へ!
(平井純一)
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