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新潟でG8労相会合対抗アクション           かけはし2008.5.26号

人間を使い捨てにするな!

日本の労働政策を厳しく批判        寄稿:中山 均(緑・にいがた)

グローバル化と
労働の不安定化

 新潟で行われる労相サミットに向け、児童労働や女性の地位に関する企画、市民映画館における「労働」をキーワードにした映画の上映など、新潟でさまざまな取り組みがなされた。
 開催前日の五月十日には連合新潟地協のデモが行われ、四百人が集まった。この集会では、不安定雇用の当事者や女性労働者のユニオンなどの参加の他、連合の企画としてはおそらく初めて、部落解放同盟や民団などにも呼びかけられ、就職差別や在日外国人の雇用問題についての訴えがなされた。また、集会で発言した地域総合研究所の江口昌樹氏は、「ILOが労働分野で守るべき中核的基準としている8条約のうち、日本は『強制労働廃止』と『雇用・職業の差別待遇』に関する2条約を批准しておらず、日本は労働相会合の議長国を務めるような『先進国』といえるのか」と指摘した。
 十日午後には連合本部と連合新潟主催で弁護士の中野麻美氏や経済評論家の森永卓郎氏なども参加してシンポジウムが開催された。中野弁護士は、労働法制の歴史的な変遷を経て雇用関係が不安定化している背景を述べるとともに、自身が担当してきたさまざまな深刻なケースを報告し、「『労働は商品ではない』という言い方がよくされるが、生きていくために、ストックもきかず、いくらでも安く売らなければならず、今や労働は商品以下になっている」と指摘した。
 森永氏はマスコミでの出演を通して直接間接に知った「経済評論家」や「文化人」「経営者」、あるいは官僚たちの「厳しい労働条件で人がやめても、いくらでも取替えがきく」「より厳しい状況に置けば怠惰な若者も働くようになる」といった本音を紹介し、今の政治や経済を主導する者たちがいかに堕落し非人間的な者なのかを明らかにした。会場からは、病院で働く看護助手が正規雇用を求めようとしても、解雇されるのが不安でなかなか声を出せないといった報告がされた。
 また、集会では海外ゲストとして国際労働組合総連合(ITUC)のガイ・ライダー書記長なども参加、経済のグローバル化の中で世界中に広がる労働の不安定化の状況を報告するとともに、この集会の参加を通して、「先進国」とされる日本での深刻な状況への認識をあらたにしたと述べた。
 ITUCは国際自由労連をひとつの母体とする最大の国際労働組織であるが、参加者からの「憲法9条やイラク戦争についてどう考えているか」との質問に対し、「ITUCはいかなる紛争も武力で解決することに反対しているし、イラク戦争には開戦当初から反対している」と答え、「例えばパレスチナ紛争では、イスラエルとパレスチナ双方の労働組合の連携を組織したり、イラク戦争ではイラクの労働組合活動家とも連携して活動してきたが、彼らのうち何人かはテロにあって死亡してしまった。大変厳しい状況の中でも、現地の労働組合と連携して、言葉だけでなく具体的な活動を展開している」と力強く発言した。日本の連合の幹部で、このようにリアルに、力強く、労働と平和の問題をトータルに語れる人間はいるだろうかと感じるほどの、期待以上の発言だった。

会場に向けて
元気一杯デモ

 十日夜には市内の関係者の居酒屋で県内外から参加者が集まって交流会を開催。そして翌十一日午前はサミット会場の近くの公園で集会、そして厳戒態勢の中、会場近くまでデモ行進と街宣が行われた。
 新潟の郵政ユニオンや県職労の非常勤部会の女性たちも参加した他、G8サミットを問う連絡会のMLや掲示板などを通して、ATTACやフリーター全般労組などをはじめ、東京、富山、長野、愛知などからも参加者が駆けつけた。フリーター全般労組の青年は、ガソリンスタンドで労働条件の改善を求めて組合を作ったとたん解雇されたことを報告し、「世界をつくるのは一握りの金持ちじゃない。人間を使い捨てする社会を変えるため声を上げよう」と訴えた。
 参加者は「僕らはみんな生きている。派遣だって非正規だって生きている」と童謡の替え歌を歌いながら、「G8こそ世界の貧困と戦争の元凶」「人間を使い捨てにするな」と訴えてデモ行進した。途中、牛丼チェーン店やコーヒーショップの前で「すき家の労働者がんばれ」、「スターバックスは時給をあげろ」などとシュプレヒコール、アルバイトの若い店員たちが中から手を振ってくれた。
 この十一日の市民独自企画はほぼすべてのテレビ・新聞から取材を受け、好意的に報道された。立派な会場で開催されるサミットと、厳戒態勢のヘリコプターが空で舞う中、徒手空拳とも言える、フリーターや失業者を含む市民のデモ。まさに世界の歪んだ構造を象徴する風景だ。「違法派遣が社会問題になりながら、政府は日雇い派遣禁止すら打ち出せない。残業代の割り増し法案も国会でたなざらしが続く。きょうの閣僚級会合で、唯一の大臣参加国になった日本は、世界に向け何を訴えるのか。一言でいい。新潟で童謡を歌った彼らの胸に響くメッセージが聞きたい。」と新潟日報のコラムは書いた。
 協同型、政策提案型の取り組みだけでなく、小規模ながら切実な課題を抱えて集まった人々と市民による有志企画は、「歓迎一色」に染まりつつあった新潟の風景に、それとは異質な、明確な批判的・対抗的な意思と力を示すことができたと言える。そして全国から駆けつけてくれた人たちの力やその背景となったネットワークは、新潟の関係者を勇気づけ、連帯の重要性や今後の活動強化の必要性を確信することになったことを報告しておきたい。


自由と生存のメーデー2008
簡単に弾圧できないほど「プレ
カリアートは増殖/連結する」


インディーズ系
メーデーの拡大

 五月三日、「自由と生存のメーデー2008」が行われた。「プレカリアートは増殖/連結する」と銘打って行われた今年の行動には昨年以上に多くの参加者が集まり、そしてマスコミが殺到した。会場となった大久保地域センターの集会室には人があふれ、中に入れない人が多数出た。また、デモ出発まで、そしてデモが始まってからも人が増え続け、参加者はおよそ千人近くにはなったと思われる。
 午後四時から行われた「宣言集会」では様々な人が発言したが、東京だけでなく全国に独立系メーデー(「週刊金曜日」ではインディーズ系メーデーと紹介された)が広がっている現状を反映して、各地からの報告も行われた。
 四月二十七日に熊本で行われた、KY(くまもと よわいもの)メーデー実行委の仲間は警察もおらず、好き放題にやりました、と楽しそうに報告、四月二十九日に行われた札幌、自由と生存の連帯メーデーの仲間はフリーターだけではなく在日コリアンや、障害者などマイノリティーの共同行動として行われたことを報告した。
 京都からはユニオンぼちぼちの仲間が四月二十九日に行われた「恩恵としての祝日よりも、権利としての有給を!」の行動を報告、東京はフリーター全般労組の仲間が四人から始まった組合が百人を超えたことを報告し、「物取りだけではない運動をやっていきたい」と発言した。
 その他、障害者ー介助者反戦、憲法カフェ、9条改憲阻止の会、反天皇制運動連絡会、APFS、G8を問う連絡会ー反貧困・労働ワーキンググループ、女性ユニオン東京、氷河期世代ユニオン、立川自衛隊監視テント村の反戦ビラ弾圧の当該である大西さん、山谷労働者福祉会館活動委員会、ガソリンスタンドユニオンなど多彩な人々が発言した。
 ガソリンスタンドユニオンの翔さんは「組合を結成したらクビになった。その通知の紙にはアメリカのサブプライムローン問題の影響がどうのこうのとか書いてあったけど、なんでサブプライム問題でバイトが首になんなきゃいけないのかわかんない」「団交でバイトにも生きる権利があるって言ったら会社の偉いさんがフンって鼻で笑ったのが許せない」と熱く発言、大きな拍手を浴びた。
 また、9条改憲阻止の会で発言した塩見孝也氏が「非暴力」を訴えたのには野次が飛び、会場では失笑がもれた。

千人にまで広
がったデモ行進

 デモではDJの乗ったサウンドカーを先頭に音楽を流しながら練り歩く。二梃団に別れるが警察が不当に介入し、二つの隊列を無理矢理引き離なす。嫌がらせのための嫌がらせ、しかし、圧倒的な結集と注目の前に一昨年のような弾圧はすることが出来ない。
 麻生は生コンをうて! 奥田はライン労働をしろ! 御手洗はプリンタインクにフタをしろ! 
 税金は金持ちから取れ! 税金は企業からたんまり取れ! 経団連は恥を知れ! 
 非正規雇用にも社会保障をよこせ! 保険証よこせ! 医療費はただにしろ! くだらないモノ買わせるな! 
 空きビルをよこせ! 皇居に公共住宅をつくれ! 連帯保証人が必要とか言うな! 敷金礼金ただにしろ! 
 マック難民を追い出すな! 奨学金返せないので返さないぞ! 派遣会社はピンハネを止めろ! 人に点数つけんな! 人をあごで使うな! サブプライムのつけをバイトに回すな! 
 などなどユニークなスローガンを大きな声で叫ぶ。デモをする人々も沿道で見ている人たちもみんな楽しそうに笑っている。
 参加者は解散地の新宿・アルタ前まで元気にデモ行進を行った。   (板)




住基ネット廃止法案
の提出求め院内集会


 四月二十三日、「盗聴法廃止法案の提出を求める院内集会」(前号参照)に続いて、同じ参院議員会館で「住基ネット廃止法案の提出を求める院内集会」が開催された。主催は反住基ネット連絡会と盗聴法に反対する市民連絡会。
 最初に司会の吉村英二さんが、大阪の守口市、吹田市の住民が住基ネットからの住民票コードの削除を求めた訴訟の上告審で、違憲性を認めて両市に削除を求めた大阪高裁判決を破棄し、住民らの請求を却下したことを批判した。吉村さんは、今や常識ともなっている「自己情報コントロール権」を無視し、そうした権利があるのかないのかの判断を放棄した、と同判決の欠陥を指摘した。
 続いて独協大学法科大学院の宇崎さんが報告。宇崎さんは「個人が人格的自立を確立するためにはプライバシーの権利が不可欠であり、その重要な一部として自己情報を管理する権利があることは、ほとんどの裁判で認められている」と語った。
 しかし最高裁判決は、「住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない」とし、「住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じていることもできない」としている。
 そして同判決は「行政機関が住基ネットにより住民である被上告人らの本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法一三条により保障された上記の自由を侵害するものではないと解するのが相当である」と決めつけている。
 宇崎さんはこの判決文を批判して、個人情報の開示には最低限本人の同意が不可欠である、と語った。
 その後、反住基ネット連絡会の西邑さんが、「住基ネットは当初期待されたような『電子政府・電子自治体の基幹システム』に成長することはなく、今回の最高裁判決は、技術に対する制度的制約ゆえに、その可能性が閉ざされていることを宣告している」と語り、「住基ネット実証実験は終了すべきだ」と訴えた。
 さらに民主党参院議員の松野信夫さん、民主党衆院議員の河村たかしさん、前国立市長の上原公子さんが発言し、最後に「とめよう住基ネット!西東京市民の会」の樋口さんが「脱住基ネット訴訟」の一審敗訴を受けて、さる一月三十一日ら東京高裁に控訴したことを報告した。   (K)

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