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洞爺湖サミットが明らかにしたもの            かけはし2008.7.21号

貧困・格差に対する闘いの
国際的な展望を切り開こう

G8の分裂と混迷は深まる
抵抗運動のいっそうの連携へ


剥がされる「正統性の偽装」

 七月九日、G8サミット(主要国首脳会議)は、福田首相の「議長総括」をもって三日間の日程を終了した。地球温暖化への対策を最重点の課題とする「環境サミット」として打ち出された今回の北海道・洞爺湖サミットは、「アフリカ・開発」問題、深刻化する金融危機、食糧・原油価格の高騰などについても議題とすることになったが、七月八日に発表されたG8首脳宣言は、G8諸国が推進する新自由主義的グローバリゼーションがもたらした地球規模の危機に、彼らが対処すべきいかなる方策も持たず、むしろその危機をさらに深刻化するにすぎないことを改めて明らかにした。
 焦点の気候変動問題に関してG8首脳の合意文書は「二〇五〇年までに世界全体の温室効果ガス排出量の少なくとも五〇%の削減を達成するとの目標を、気候変動枠組み条約の全締約国と共有」し「条約下の交渉で共に検討し、採択することを求める」としている。しかしここには、何よりもCO2の排出と地球環境の破壊に最大の責任を有すべき帝国主義諸国の義務について言及されていない。「目標を共有」するというきわめて抽象的・一般的な言辞がなにごとをも意味しないことは、マスメディアでさえも指摘するところである。
 二〇二〇〜三〇年までの中期的目標についての数値的目標も触れられることはなかった。こうしたG8首脳の宣言に対して、九日に開かれたG5(中国、メキシコ、インド、南アフリカ、ブラジル、韓国)をふくむ主要排出国会議(MEM)の会議では、新興発展諸国の側からの帝国主義G8の責任回避に対する反発によって「二〇五〇年までに半減」という「目標」さえ明記することはできなかったのである。また原発増設問題について、「気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組む手段として、原子力計画に関心を示す国が増大」という表現で、それを促進する言及がなされたことについて、われわれは厳しく批判しなければならない。
 アフリカ・開発、食糧・原油価格の高騰、金融危機の深刻化などの諸問題については、IMF・世界銀行などの新自由主義的グローバル化を推進してきた国際機関による構造調整政策がもたらした「途上国」債務の重圧、民営化、農業破壊、そして超国籍金融資本による国境を超えた資金の流れ、投機がもたらしたものであり、新自由主義的なグローバル資本主義の枠組みの中で、その解決がもたらされるすべもないことは今や多くの人びとが自覚していることである。こうした問題への解決は、G8に対する徹底した批判を土台にしたグローバルな民衆運動によってこそ、提起されるのである。
 今日の世界的な景気後退・恐慌・インフレの危機に対して、もともとG8サミットになんの対応能力もないことについては、すでに多くの市場関係者が指摘していたことだった。G8は食糧・原油価格の高騰に「強い懸念」を示したが、それはまさに「危機感の共有」だけであって、「解決に向けた取り組み」という点では何もできないことを改めて確認するだけであった。
 G8北海道洞爺湖サミットは、どのようなパフォーマンスやメディア・キャンペーンによっても、「世界を動かす中枢」を自認する大国の支配者による非民主主義的な私的談合機関の「正統性の偽装」が、ますますその力を失っていることを露にさせたのである。
 朝日新聞は洞爺湖サミットの総括として「西側先進国の代表として生まれたサミットだが、『地球益』の調整者に脱皮する時期だ」と書いた(7月10日、竹内敬二・編集委員)。冗談にも程がある。誰がG8サミットにそんな委任状を与えることができるのか。

強化された「治安出動」態勢

 ますますその「正統性」を剥奪されつつあるG8サミットは、そうであるがゆえに「テロ」や「反グローバリゼーション」運動をターゲットにして、言論・集会の権利や人権を破壊する軍事的・警察的な監視社会化を突出させる場となっている。今回のG8洞爺湖サミットで最も「盛り上がって」いたのは警察だった、といえる。
 警察は、北海道に二万一千人、東京に同じく二万一千人、合計四万二千人を全国から動員し、G8サミットに対する抗議の声を封じ込めることに全力を集中した。監視カメラ、検問、「サミット地域警備協力会」による住民を動員した通報体制などが築かれると共に、微罪弾圧による活動家の逮捕なども続いた。北海道でのイベントや、漁民の出漁も延期させられたり「自粛」を強制された。
 さらに外国人に対しては、ビザ発給の遅延による入国妨害から各地入管での不当な長時間尋問や入国拒否が相次いだ。スーザン・ジョージやウォールデン・ベローといった著名な人びとも、長時間の入管での尋問やビザ発給にあたっての不当な審査によって入国を遅らされた。
 とりわけ韓国人への入国拒否が狙い撃ち的になされた。国際的な農民組織ビア・カンペシーナ(農民の道)に属する韓国の農民団体十九人、民主労総の活動家五人の合わせて二十四人が入国を許可されず強制送還された。そのうち民主労総の活動家一人が「公務執行妨害」をデッチ上げられ逮捕された。七月五日に札幌で行われた「ピースウォーク」では、サウンドデモに機動隊が襲いかかり、サウンドカーの運転手、DJ、さらにはロイター通信社の日本人カメラマン計四人が逮捕された。
 それだけではない。今回のG8サミットでは、自衛隊による事実上の「治安出動」態勢が発令されたのである。すなわち陸上自衛隊の防衛相直轄対テロ部隊である「中央即応集団」が投入された。中央即応集団所属第一ヘリコプター団の二十機が要人輸送などに動員され、また要人警護の部隊も編成された。陸自真駒内駐屯地の第十一旅団には防衛相から待機命令が出され、さらに「サリンなどの化学兵器テロに対応する」ためと称して東千歳駐屯地の化学防護隊も待機態勢を整えた。
 海上自衛隊では「サミット会場への空からのミサイル攻撃に備える」としてイージス艦が周辺海域に配備され、イージス艦が撃ち漏らした場合には、航空自衛隊八雲分屯基地の迎撃ミサイル(PAC2)による迎撃態勢も準備された。洞爺湖に近い内浦湾にはミサイル艇やヘリ搭載護衛艦も待機した。
 また空自の空中警戒管制機(AWACS)やE2C早期警戒機も動員され、二十四時間態勢で空中警戒を行い、空自の千歳・三沢基地で待機しているスクランブル機の機数や隊員数も増強された(産経新聞電子ニュース 6・29)。
 まさに今回のサミットを契機に「対テロ」実戦訓練としての出動態勢が敷かれたのである。G8サミットは、国際的な「対テロ」戦争・警察体制を築き上げる上で、重大な役割を果たしてきた。今回の洞爺湖サミット首脳宣言の中でも「テロ対策」を強調すると共に「国際組織犯罪とたたかうことを再確認し、幅広い脅威に対応するための取り組みを強化する」「G8としての平和構築の努力を強化し、二〇一〇年を目標に軍、警察、文民の三分野で、世界の平和構築能力を抜本的に強化する」ことがうたわれている。
 地球温暖化、貧困、食糧・石油価格高騰、金融危機といった問題への対応能力を失っているG8は、「対テロ」を口実にした軍事・警察機能のグローバルな連携という面において強められていることに、注意を払わなければならない。民主主義と人権を破壊し、社会の軍事化を進めるテコとしてのG8サミットの役割がますます顕著になっているのだ。


経験を生かし運動の定着化へ

 G8洞爺湖サミットに反対する闘いは、いまだ国際的にはきわめて立ち遅れてきた日本のオルター・グローバリゼーション運動(グローバル・ジャスティス運動)にとって、日本の具体的現実への取り組みを、新自由主義的グローバル化の焦点的課題と結びつけて多様に展開していくための、本格的な出発点であったと評価できるだろう。
 G8サミットに対抗する労働者・市民の運動は、「市民社会の声をG8に反映させる」ことを目標とした政策提言型の「G8サミットNGOフォーラム」の運動、G8そのものへの批判・抵抗の運動を「オルター・グローバリゼーション運動」の社会的・国際的連携としてめざすことに主眼を置いた「G8を問う連絡会」の運動、さらにはG8に対決する現地行動に重点を置いた運動の幅をもって、部分的には連携しながら、実際上はそれぞれ独自に準備されてきた。
 全体としてのG8サミットに対する運動の総括や、とりわけ首都圏を中心にしてG8を問う連絡会の運動の総括については別に行う予定であるが、各地でのG8各閣僚会議への対抗アクションを軸に、さまざまなテーマをつき合わせ、それぞれの課題と新自由主義的グローバル化との関連を意識化させていったことについては少なからざる成果があった、というべきである。
 三月の「G8を問う連絡会」の国際調整会議で、アジア諸国の社会運動とG8サミットに関わる問題意識を共有することができた。日本の運動とアジアの社会運動とのネットワークを形成していく課題についても、十分とは言えないまでも最低限の基礎を築くことができたのではないだろうか。
 世界社会フォーラム(WSF)などに参加し、そこでの討論にふれる中から、「オルター・グローバリゼーション運動」の論理を学び、紹介する段階から、今回のG8サミットへの取り組みを通じて、日本の労働運動、社会運動、市民運動の実践の中に、その息吹を定着させていくことが本格的に求められている。
 とりわけ新自由主義の否定的現実が多くの人びとに実感され、貧困と格差社会に対する抵抗の闘いが青年たちの自主的なユニオンとして端著的に広がりはじめている今日、こうした闘いの担い手たちが直接、G8洞爺湖サミットに反対する闘いに結集していることは、きわめて重要である。この新しい階級闘争・抵抗の始まりを、問題を国際的に共有しつつ新自由主義的グローバル化に対するオルタナティブへの挑戦として発展させていくことが問われている。
 「G8はいらない!」「G8サミットを終わらせよう」――七月四日から九日まで札幌で行われたG8を問う連絡会・「国際民衆連帯DAYS」の企画において主張されたこのアピールをさらに多くの人びとのものとしていこう。
  (7月13日 平井純一)


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