| 住民の生命と安全を奪う「対テロ」戦争 かけはし2008.9.8号 |
不法なアフガン侵略戦争やめろ
自衛隊はインド洋から即時撤退を |
農業支援に献身
した伊藤さん
八月二十六日朝、アフガニスタン東部のジャララバード近郊で、NGOペシャワール会の現地職員として、四年半にあたり農業支援にたずさわってきた伊藤和也さん(31歳)が武装グループに拉致された。現地の農民たちによる懸命の追跡・捜索・救出活動にもかかわらず、きわめて悲しいことに伊藤さんの遺体が翌二十七日の午後、ダラエヌール渓谷で発見された。
戦火と干ばつによる貧困と飢餓状況の中で苦しむ農民の支援のために、寝食を忘れて活動してきた伊藤和也さんの死を私たちは深く悲しむとともに、彼を無残に虐殺した者への怒りを表明する。
伊藤さんの所属したペシャワール会は、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成され、一九八四年から現地活動を開始した。現在パキスタン北西辺境州とアフガニスタンに一つの病院と二つの診療所を運営し、二〇〇六年には年間八万七千人の患者診療を行っている。それに加えて二〇〇〇年夏からは、戦乱に次いで最悪の干ばつに見舞われたアフガニスタンの村々で、計千六百カ所以上の水源(井戸、カレーズ)確保作業を継続している。
「ペシャワール会」は二〇〇一年からのアフガニスタン空爆の中では、緊急食料援助を行った。この時に寄せられた「アフガンいのちの基金」をもとに医療事業、水源確保事業、農業計画からなる「緑の大地計画」をスタートさせ、二〇〇三年三月から灌漑用水路建設に着工した。二〇〇七年四月には第一期十三キロが完成し、現在第二期工事を進めている。この用水路によって六千ヘクタールの農地への灌漑が可能になった(以上の記述はペシャワール会のホームページに基づいている)。
戦争に反対した
ペシャワール会
ペシャワール会は、旧ソ連軍の侵入が引き起こした内戦や米国によるアフガン侵略のさなかにも現地に踏みとどまり、長期にわたってアフガニスタン民衆への医療支援、農業支援のために活動することで、現地の貧しい農民から大きな信頼を獲得してきた。ペシャワール会の創設者であり、現地代表をつとめる中村哲医師は、国際法にも国連憲章にも違反したブッシュのアフガニスタン侵略戦争と軍事占領を批判し、貧困と飢餓をなくすための支援と「反テロ」戦争が両立しないことを一貫して主張してきた。中村さんの批判は、日本政府の「対テロ」戦争支援とインド洋での洋上給油活動にも向けられた。
NGO活動の安全は、アフガニスタンを占領する侵略者の軍隊によってではなく、自分たちが共に生活し、活動している現地の住民によってこそ守られるという原則が、中村さんならびにペシャワール会の立場であり、ペシャワール会は現に国家の「援助資金」に頼ることなく、ISAF(国際治安支援部隊)とは一線を画すことによって支援活動を展開してきた。
二〇〇三年六月十五日の日付のある「ペシャワール会志望書」で伊藤さんは次のように書いている。「私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年でできることではありません。/子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になればと考えています」。
二〇〇三年末からアフガニスタンに入った伊藤さんは、この初心を貫きながら活動し、現地語も習得して、農民や子どもたちから親しまれていた。伊藤さんの活動は、まさにペシャワール会の理念を体現したものだった。
占領の破綻と
「治安の悪化」
しかしこの間、アフガニスタン全土において「治安が悪化」し、NGOの活動は困難を強制されてきた。今年八月になってからも国際NGO「国際救援委員会」(IRC)職員のカナダ人二人とトリニダード・トバゴ人一人をふくむ四人が中部ロガール州で殺害されている。それは米国・NATO軍を中心にした占領軍・ISAF部隊が「武装勢力掃討」を口実に多くの市民を無差別に殺害し続けていること、「復興支援」とは名ばかりの軍事作戦によって、失業・貧困がさらに悪化していることなどを背景に、住民の間に反占領・反外国軍の感情がさららに拡大していることに主要な原因がある。こうした情勢を背景に旧タリバン勢力などが急速に支持を拡大している。
私たちは今回の伊藤和也さん殺害の犯人が誰であれ、その犯罪行為を許すわけにはいかない。タリバン勢力が伊藤さんの殺害を認めたという報道もあるが、その真相は定かではない。
同時に私たちは、今回の悲劇、そしてアフガニスタン民衆全体が被っている悲劇の根本的な原因が、米ブッシュ政権が発動した「対テロ」戦争と長期の占領支配の不当・不法性にあることを改めて強調する。住民から大きな支持と信頼を得ていた伊藤さんらペシャワール会の活動にも危険が及んだということは、占領軍やカルザイ政権への反発ともあいまって、多くの民衆の間にすべての外国人への反感が高まっていることを示している。日本人がねらわれたことは、海上自衛隊のインド洋での多国籍軍に対する給油活動の継続とも関連している。
NGOの復興支援活動を困難にしているものこそ占領軍であり、「対テロ」戦争であることをペシャワール会は訴えてきた。そして今回まさにその通りの事件が起きたのである。
福田政府やメディアは伊藤和也さんの活動を高く評価し、彼を褒めたたえている。四年前、陸上自衛隊派兵直後のイラクで人質事件が起きた時のような「自己責任」論、「人質」となった人びとへの猛然たるバッシングは影を潜めている。そして福田内閣は伊藤さんに敬意を表してその遺志を継ぐというポーズを取りながら、アフガニスタン支援の「国際貢献」のために自衛隊の洋上給油活動継続を主張している。民主党の前原・前代表にいたっては「国益の観点からアフガニスタン支援はきわめて大事だ」と述べて、洋上給油のための新テロ特措法延長ではなく、「イラクに派兵している航空自衛隊をアフガンでの輸送活動に従事させるべき」と述べた。
政府・与党や民主党の中から、アフガニスタン本土への自衛隊派遣や、自衛隊と一体となった「日の丸NGO」への再編の声も強まることになるだろう。われわれはこうした動きに断固として反対する。今こそ問われるべきはアフガニスタンにおける「テロとの戦い」なるものの不正である。私たちはペシャワール会などの原則的な国際支援活動を困難にさせ、アフガニスタンの平和を妨害しているものこそ占領軍であり、彼らが遂行している「対テロ戦争」であると強調する。
武力で平和はつくれない。アフガニスタンの民衆に絶望的な苦痛を強制している戦争と占領をただちにやめ、すべての占領軍を撤退させることこそ、平和と復興支援のための前提条件である。WORLD PEACE NOWは、九月二十日(土)に、「PEACE DAY TOKYO 2008」を呼びかけている(芝公園4号地 正午・集会開始、午後3時半・パレード出発)。新テロ特措法延長阻止、イラクとインド洋からの自衛隊撤兵の運動と世論を盛り上げよう。アフガニスタンの平和と復興は、武力による「国際貢献」への根本的な批判を通じてのみ現実のものとなるのだ。 (8月31日、純)
速報
万策つきた福田の首相辞任
││ 自公政権打倒の大衆的追撃を
九月一日夜、福田首相は記者会見で首相辞任を発表した。予想外の突然の辞任発表は、昨年九月の安倍前首相の辞任を想い起こさせる。
衆参「ねじれ国会」で政策展開能力を失った脆弱な福田政権の崩壊は、自公政権の時代の終えんを象徴するものであり、それはまたグローバル資本主義の構造的危機に直撃された日本資本主義の新自由主義的展開の矛盾の深さを表現するものである。
福田政権の弱さは、決して参院の多数を野党・民主党が占めているというだけの理由によるのではない。それは小泉政権以来の新自由主義政策が若者、高齢者、女性たち、そして労働者、農漁民、零細商工業者らの蓄積された怒りを解き放ち公明党の離反、自民党内の遠心化をもたらしたためである。
次期政権を誰が担当することになろうと、この矛盾から逃れることはできない。おそらく早期の解散・総選挙は確実である。今こそ、臨時国会での洋上給油継続法案の成立を阻止すると共に、自公政権打倒に向けた社会的反撃に踏み出す時である!(9月2日、純)
(続報次号) |