| 井澤梨絵子さんが喜びの報告集会 かけはし2008.9.8号 |
大阪市教委の免職処分には
いかなる根拠もなかった! |
【大阪】新任免職裁判の控訴審判決が八月二十九日大阪高裁であった。二〇〇四年四月大阪市の小学校教員に採用され、条件付採用期間の切れる二〇〇五年三月末で免職となった井澤梨絵子さんの処分取り消し訴訟で大阪高裁は、原告の請求を棄却した二〇〇七年五月二十一日の大阪地裁判決を覆し、免職処分を取り消し井澤さんを採用するよう命じた。
そもそもの処分理由は、学校日誌の記載の誤り、学年会計で金銭出納帳をまとめて付けたこと、ある期間の週案の未提出(提出の準備はされていた)、直前の時間年休の申請、出勤簿の押印の遅れ、学級崩壊などを理由とした゜教員としての指導力不足」である。処分理由は事実無根や、事実ではあっても意図的に誇張されたもので、どれ一つをとってもほとんど理由にならないものばかりだ。事実を歪曲した校長の恣意的な報告書に基づき、一年間の条件付採用期間が切れる時点で大阪市教委が免職処分を行ったものである。
大阪教育合同
初の勝利判決
〇七年九月十一日大阪高裁で控訴審第一回口頭弁論が開かれてからほぼ一年、井澤さんと彼女が所属する大阪教育合同労組(以下、教育合同)はようやく勝利判決を勝ち取った。判決後、大阪弁護士会館大会議室を満席にして、華やいだ雰囲気の中で報告会が開かれた。記者会見を行っている原告やこの訴訟を担当してきた山下副委員長、担当弁護士を待ちながら、処分撤回闘争事務局の沢村事務局長の司会で、まず武井委員長があいさつをし、「完璧に近い勝利だ」と言いながら支援者にお礼を述べた。うれしさが満面にあふれていた。
教育合同は結成以来多くの裁判を提起し闘ってきたが、勝利判決を勝ち取ったのは初めてだった。全国からから駆けつけた九州から関東までの全国学校労働者組合連絡会に参加する十一組合の仲間の紹介、大阪全労協・大阪ユニオンネットワークの各組合からのあいさつが続き、やがて記者会見から帰ってきた井澤さんが鳴りやまぬ拍手に迎えられて席に着いた。
この判決を出した裁判長は、松下プラズマテレビの偽装請負の違法性を認定した裁判の裁判長であり、普通は行わない判決理由の説明を、傍聴席で時々起こる拍手をとがめることもなく、それが止むのを待って続けたという。裁判を担当した在間秀和弁護士が井澤さんの努力をたたえ、四十九ページにわたる判決の概略と記者会見のようすを報告した。
条件つき採用
ではなかった
第一のポイントは、一年間の条件付き採用期間について。井澤さんは六年前に大阪市職員に採用され、六カ月の条件付き採用期間をクリアーしている。したがって井澤さんの採用は条件付き採用ではなかったと原告が主張したのに対し、大阪市教委は、同じ大阪市ではあっても、市職員をいったん退職し教員に採用されたのだから、あらたに一年間の条件付き採用期間があると主張していた。ところが、この件を文科省に照会すると、井澤さんは条件付き採用には当たらない(新任研修の対象ではあるが)との回答で、原告側の主張が正しいことが判明した。高裁判決は原告の主張を支持したわけである。
これだけでも処分の前提を欠くのだから、一審判決を覆すには十分だが、判決は第二のポイント、教員の不適格性にまでつっこんで綿密に判断した。つまり、仮に条件付き採用であったとしても、教員として不適格であったとまでは言えないとした。第一のポイントだけなら教員不適格であるということがそのまま残るわけで、井澤さんとしては勝った気がしなかっただろう。
適正を欠いた
「事故報告書」
予想を超えた勝訴判決であった。記者会見の時のマスコミの関心は、「新任にどうして難しい五年生の学年を持たせたのか」、「正式採用の時より条件付き採用の方が適格性の基準が厳しい。新任ならもっとゆるやかにするのが常識的ではないのか」ということだった。在間弁護士は最後に、市教委が上告しないように要請し、井澤さんを教育現場に取り戻さなければならないと述べ報告を終えた。
「学級崩壊」には根深い複合的要因がある思うが、ベテラン教員すら「学級崩壊」の困難に直面する場合が少なくない。五・六年生の担任には新任教員をあてないよう配慮をしている学校がほとんどだが、井澤さんの小学校ではそうではなかった。教育という仕事は共同作業である。教育にはさまざまな面があって、誰かひとりの「有能」な教員だけでできるものではない。制度上、新任教員には一年間指導教官がつくことになってはいるが、人間を相手にする仕事であるだけに、新任教員は経験を重ねた職場の同僚たちに助けられながら経験を積んでいくことが不可欠である。そのような観点を欠いた当時の校長の責任はあらためて問われなければならない。
処分の根拠となった校長作成による事故報告書には、原告・家族のプライバシーについて差別的に記載した部分がある。大阪市公正職務審査会は、この報告書が主観的な評価や不要な記述など不適切な記載を含んでいるので早期に適正化するようにとの意見を表明した。処分の根拠となったものが不適切だったという審査会の判断も、裁判に大きな影響を与えたと思われる。教育合同はこの報告書の撤回を要求している。
市教委は上告
を断念しろ!
同じ指導力不足を理由に、井澤さんと同じ年の二月に京都市教委に解雇されたTさんも処分取り消し訴訟を起こしたが、今年2月京都地裁は処分取り消しの判決を下した。現在控訴審が闘われている。この度の大阪高裁判決は、この京都高裁での裁判に少なくない影響を与えるだろうし、また全国で同じような状況に置かれてひとり悩んでいる新任教員たちの大きな励ましになるに違いない。報告会の後、参加者は大阪市教委におもむき上告しない旨の要請を力強く行った。(T・T)
「日の丸・君が代」強制・処分に抗議
10・23通達撤回を求めて都教委包囲行動に決起
八月二十九日、都教委包囲・首都圏ネットは、都庁二庁舎前で「都教委の暴走をとめよう!『日の丸・君が代』強制・処分を許すな!10・23通達を撤回させるぞ!都教委包囲行動」を行い、二百二十人が参加した。
開催あいさつが都教委・包囲ネットの見城赳樹さんから行われ、「今日の情勢と闘いの意義」をテーマに報告。とりわけ、「日の丸・君が代」強制に反対する教職員の追放をねらった「分限事由に該当する可能性がある教職員に関する対応指針」通知(別掲参照)を厳しく糾弾した。
連帯アピールが築地市場移転反対を取り組む仲間、破防法・組対法に反対する共同行動から行われた。
「河原井さん根津さんらの君が代解雇をさせない会」の根津公子さんは、「都教委は、分限対応指針を通知した。これで来年の三月、私たちを『首』にしようとねらっています。ふざけている。職務命令がおかしいのに、こんどは分限だ、免職だ。ここまで正体を露骨に現してきた。半年間、この問題について徹底的に闘っていきたい。撤回しろという公開質問状を出します。『答えないのが回答』などという返答を許さず、都教委の不当な教育行政を粉砕していきましよう」と力強くアピールした。
さらに、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会から決意表明が行われた。最後に、「分限対応指針」に強く抗議し、その撤回を求める決議を参加者一同で採択した。
集会終了後、都庁第二庁舎の都教委・教育庁各セクションに向けて要請、抗議行動が取り組まれた。当局は、要請文、抗議文を受け取らず不誠実な対応を繰り返した。参加者は、粘り強く要請・申し入れを展開しぬいた。
代表団は行動後、都庁二庁舎前の集会に合流。不当処分撤回を求める会、不採用者の会、予防訴訟の会、不当処分された教員などから次々と決意表明が続いた。また、八月二十九日、大阪高裁で新任教員の本採用を見送った大阪市の処分の取り消しを求めた裁判で一審の不当判決から逆転勝訴をかちとったことが報告された。都教委の「分限対応指針」を撤回させていくために大きなバネとなる判決だ。全国から駆けつけた仲間たちとともに行動の成果を確認し、あらためてスクラムを強化し、石原・都教委を全国的包囲で追い詰めていくことを誓いあった。 (Y)
「分限対応指針」を許すな
相次ぐ処分攻撃に広がる反撃
不起立闘争に都教委強硬路線
解雇はね返した
根津さんの闘い
東京都教育委員会は、政府のグローバル派兵大国づくりと連動して改悪教育基本法の具体化を押し進めている。すでに「日の丸・君が代」強制を職務命令で徹底させようとする10・23通達(〇三年)を出し、抗議の不起立闘争を行った教育労働者に対して延べ四百八人の処分を強行している。
しかし、都教委の暴走を許さない闘いは続いている。「君が代解雇」の危険性があった根津公子さんの闘いは、「根津さんを不当解雇するな!」の全国的な包囲によって都教委の解雇攻撃をはね返した。停職六月の処分を発令された河原井純子さんは、全国行脚の闘いを展開中だ。思想転向強要のための都教委による「服務事故再発防止研修」(七月二十二日)を強行したが、被処分者十四人は、断固として抗議の意志をたたきつけていった。そもそも被処分者十三人は、すでに不当処分に抗議して東京都人事委員会に不服審査請求を行い、係争中であるにもかかわらず、「服務事故」だとして転向強要といやがらせを行ってきたのである。「思想良心の自由」を否定し、違憲行為を繰り返す都教委を許してはならない。
都立高校長も
公開討論要求
都教委の暴挙に対して都立高校長の抗議も始まった!都立三鷹高校の土肥信雄校長は、〇七年十一月の校長会で都教委の「職員会議において職員の意向を確認する挙手・採決の禁止」通知(06・4)に対して「教員には何を言っても意見が反映されないのなら言っても意味がないという空気が広がり、自由な討論がなされず、学校の活性化にもつながっていません」と主張し撤回を求めて立ち上がった。そして、七月十日に「一、職員会議における挙手・採決の禁止の撤回等の教育問題について、是非とも私との公開討論を行っていただきたい。三、公開討論に応じていただけないのなら、公開討論を要求する記者会見を行う。四、それでも公開討論に応じていただけないなら、私の意見を一方的に表明する記者会見を行う」
の申し入れを行った。
土肥校長の当然の要求に対して都教委定例会議(八月二十八日)は、混乱と動揺に陥ってしまった。警察官僚出身の竹花豊は「現職の校長先生が言われていることは重く受け止め、無視するのではなく本人の意向を聞き返して対処すべきだ」「対立ではなく、常識ある大人としてきちんとお互いに認識し合うことが大事」などとどう喝だ。あげくのはてに土肥校長に「文書を出せ」、「守秘義務違反」などと処分をちらつかせながら圧殺しようとしている。都教委は、〇七年には通知が守れていないとして四校の校長に厳重注意を通告している。土肥校長に支援・連帯をしていこう。
靖国・天皇制
教育の正当化
文科省は、新学習指導要領で「君が代は歌えるよう指導する」と明記し、教育現場で愛国心教育を強化していく動きを推進している。天皇制と侵略戦争を賛美する日本会議の平沼赳夫議員が「一九四九年の学校が主催して靖国神社訪問禁止通達は失効している」という質問書を政府に出していたが、政府は答弁書で「既に失効している」と認めたうえで、「文部科学省としては、学校における授業の一環として、歴史や文化を学ぶことを目的として、児童生徒が神社、教会等の宗教的施設を訪問してもよいものと考えている。そのような趣旨で、例えば、御指摘の靖国神社等についても、同様の目的で訪問してよいものと考える。」とした。
つまり修学旅行や野外研修を通して靖国神社や護国神社に訪問して宮司やその関係者による天皇制や侵略戦争賛美教育を認めるということなのだ。露骨な愛国心教育の推進姿勢はこれだけではない。文科省官僚は、新学習指導要領の説明会で、わざわざこの政府答弁書を配布し、「『特別活動』だからいいんだ」と居直る立ち振る舞いをしているほどだ。
「分限対応指針」
の反動的本質
この動きと連動して都教委は、不起立闘争に地方公務員法32条(上司命令違反)、同33条(信用失墜・不名誉)を適用し、対決路線の継続をぶち上げてきた。根津さんの「君が代解雇を許さない!」という全国的な広がりと社会問題化に追い込まれてしまった危機感から都教委は、七月十五日、「分限事由に該当する可能性がある教職員に関する対応指針」(分限対応指針)を通知した。「日の丸・君が代」強制と新自由主義教育路線を継承した新教育長・大原正行の初仕事だ。
「分限対応指針」は、「公務能率の維持及びその適正な運営をより一層図る」という目的から校長による恣意的な「不適格」「指導力不足」「経営方針に反する」教職員だと認定することによって分限処分・解雇に追い込むことが可能なのである。
指針は「教職員が、勤務実績が不良の場合、又は職への適格性に疑念を抱かせる場合とは、次のような例を指す」と述べ、とりわけ不服従教員を排除するために適応可能な事例を次のように列挙している。
「(1)当該教職員の職級において、果たすべき職務を遂行できない。(2)割り当てられた特定の業務を行わず、その職責を遂行できない。……(5)上司等から研修受講命令を受けたにもかかわらず研修を受講しない、又は研修を受講したものの研修の成果が上がらない。……(7)法律、条例、規則及びその他の規程又は職務命令に違反する、職務命令を拒否する、独善的に業務を遂行するなどにより、公務の円滑な運営に支障を生じさせる。……(9)協調性に欠け、他の教職員と度々トラブルを起こし、他の教職員の業務遂行を妨害するなどにより、公務の円滑な運営に支障を生じさせる。……(19)教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、児童、生徒に対する学習指導を適切に行うことができない。(20)指導方法が不適切であるため、児童、生徒に対する学習指導を適切に行うことができない。(21)児童、生徒の心を理解する能力又は意欲に欠け、学級経営又は生活指導を適切に行うことができない」。
これだけの弾圧対象事例をあげているにもかかわらず、「これらの例によらないものであっても、客観的に勤務実績が不良であること、又は職への適格性に疑念を抱かせると認められる場合には、分限事由に該当する可能性がある」と明記し、だめ押し的にいつでも処分強行ができるのだと脅かし文言つきだ。
このように「分限対応指針」は、都教委が「職務の効率を阻害している」などと手前勝手に判断し、免職を強行することをねらう弾圧手段だ。校長の職務命令に従わず、「服務事故再発防止研修」を受けても「君が代」不起立を繰り返す教職員をターゲットに教育現場から追放していくためにでっち上げたのである。「分限対応指針」の超反動内容を暴露し、厳しく批判し撤回を実現していかなければならない。その意味でも八月二十九日、新任免職裁判の大阪高裁勝利判決は決定的な闘う武器となる。判決の意義を全国に伝えていこう。
「日の丸・君が代」強制反対のねばり強い闘いと反処分闘争、校長からも批判が噴き出す事態が発生してしまった都教委は、危機が深まっているがゆえに暴力的な「分限対応指針」を出さざるをえなかったのだ。根津さん、河原井さんをはじめ多くの闘う教育労働者を追放するための悪行を社会的に暴露し、孤立させ打ち倒していこう。都教委包囲行動をステップに、さらに都教委を追い込んでいこう。不当処分・解雇攻撃をはね返していこう。(遠山裕樹)
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