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                          かけはし2002.9.30号より

日本革命的共産主義者同盟(JRCL)第19回大会決議 -- 情勢と任務(3)

3 小泉政権の歴史的性格


(1)

 小泉純一郎政権は、森政権の末期症状に対するフラストレーションの代償としてかつてないほどの「国民的人気」を獲得した。マスコミは「旧来の自民党政治の破壊者」として彼を持ち上げ、TVのワイドショーは彼の一挙手一投足を追いかけ、政権支持率は一時90%というかつてないレベルにまで達した。
 小泉への支持の高まりは、十年を超える経済的危機とリストラ・失業、「右肩上がりの経済成長」神話の崩壊による社会不安の高まり、政官財ゆ着に基づく利権分配構造に依拠していた戦後自民党政治の機能不全と相次ぐ「新党」ブームの消滅などによる、人びとの現状に対するせっぱつまった危機感を裏返し的に表現したものであった。グローバル資本主義の利害は、さらなる「構造改革」と規制緩和の推進を促した。ブッシュ新政権の下でアメリカ帝国主義が主導する世界的・地域的な軍事安全保障体制への「責任分担」の履行を求める内外からの圧力もいっそう強まった。ソ連・東欧の「社会主義」崩壊と労働組合運動の抵抗力の喪失による新自由主義的グローパリゼーションへの対抗理念の不在が、そうした小泉のデマゴギッシュな「パフォーマンス政治」への期待を高める結果になった。
 小泉政権は、かつてない人気に支えられて、支配階級にとっての懸案を一気に解決しようとする攻撃を開始した。小泉の年来の持論である郵政3事業の民営化をアドバルーンにした「聖域なき構造改革」という徹底した民営化・規制緩和・リストラ路線の貫徹、「痛みに耐える」ことを国民に強制する公的福祉の解体と「自己責任」による「優勝劣敗」の競争原理、首相公選制を突破口とする憲法改悪の加速化と首相に権限を集中した強権主義的危機管理システムの構築、ブッシュ政権の国務副長官に就任したアーミテージを中心とする研究グループ(「国家戦略研究所」)の報告で強調された「集団的自衛権」発動の容認などがそれである。それは、新たな国家主義意識の発揚を不可避的に伴ったものであり、小泉は「新しい歴史教科書をつくる会」の反動的な歴史・公民教科書を容認し、靖国公式参拝を強行した。
 この上で小泉自民党は2001年6月の東京都議選と7月参院選に圧勝した。森政権時代の長野県知事選での田中康夫知事の当選や千葉県知事選での堂本暁子知事の当選に示された、市民の「無党派」民主主義的感覚は、小泉ブームの中で後景に退かざるをえなかった。

(2)

 「9・11」は、小泉内閣の軍事的対米支援の踏み込みと有事法制=「戦争ができる国家体制」への移行のテンポを早めることになった。周辺事態法によっても残されていた多くの制約を突破し、海外における自衛隊の集団的自衛権の行使を事実上可能にさせる方向への踏み出しである。
 昨年十一月に成立したテロ対策特措法は、「湾岸戦争では軍事支援できなかった」という支配階級のトラウマを克服するためにアーミテージが語ったとされる「ショー・ザ・フラッグ」という言葉を意識的に利用し、「我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与する」という口実で、地球上の全域におけるグローバル戦争への軍事的加担を正当化したのである。このテロ対策特措法は、公然たる憲法破壊の法律であることは、政府・与党も事実上認めている。そうした既成事実の上に、さらに昨年末での中国の「排他的経済水域」内での海上保安庁による「不審船」撃沈事件をも材料にしながら、今年四月には有事法制3法案が上程されるに至った。
 有事法制3法案は、「周辺事態法」や「テロ対策特措法」と連動させて自衛隊の参戦を発動し、それを契機にして「国民の自由と権利」を罰則を伴って制限し、戦時体制の構築と住民の戦争動員を強行しようとする本格的な戦争法案である。それは国際的な規模での国家・社会の軍事化を日本においても貫徹し、国家統治体制の本格的な強権化をうながす意図に貫かれていた。小泉政権は、高い支持率とアメリカの「対テロ戦争」を支持する国際的な流れに乗って、「備えあれば憂いなし」のキャッチフレーズで支配階級の「懸案」である有事体制形成への扉を大きく解き放ったのであった。

(3)

 しかし、小泉政権の高い支持率は2002年になって急降下し、一転して小泉政権はダッチロール現象に突入することになった。小泉本人とならぶ内閣の二枚看板であった田中真紀子外相の解任、鈴木宗男問題などのスキャンダルの続発によって、少数派派閥出身の小泉首相のイニシアティブは大きく後退し、党内運営もままならぬ状況が深刻化していったのである。
 特殊法人の解体や郵政民営化などの「聖域なき構造改革」路線は、自民党内多数派を占める利権派「抵抗勢力」の圧力によって「骨抜き」を強制された。そして郵政・健保とならぶ重要法案だった有事法制3法案も、法案そのものをめぐる与党内の意見の相違と「不備」、さらには防衛庁の情報公開請求者リスト作成問題などによって、ついに通常国会での成立が不可能になってしまったのである。
 われわれは昨年7月参院選直後に、小泉内閣の展望について次のように予測した。
 「小泉人気が、これまでの3カ月のような形で持続することはありえない。とりわけ『構造改革』の痛みが、多くの労働者・市民に降りかかり、深刻な経済的危機のなかで遂行される『不良債券処理策』がデフレスパイラルを促進する時、ブームは着実に鎮静化していくに違いない。『小泉改革』が中央・地方の利権分配構造を少しでも脅かすものとなった時、政官財のゆ着構造にどっぷりとひたった橋本派をはじめとした自民党内勢力からの、『改革』への『総論再生・各論反対』的抵抗が拡大していくことも確実に予測されることである。/小泉・自民党の求心力は分解せざるをえないだろう。小泉がその言葉通りに既定の方針を貫徹しようとする限り、圧倒的人気に支えられた小泉『改革』路線に従ってきた自民党内諸派閥が、『面従腹背』の姿勢をなげうって抗争を再開することは避けられない。その展開次第では、小泉が『抵抗勢力』との闘いのカードを切って、早期の『解散・総選挙』のシナリオを採用する可能性も残されている」(「危機に直面する小泉の新自由主義『構造改革』と国家主義を突き崩す闘いを」、「かけはし」01年8月13日号)。
 この構造は、小泉首相本人の政治的イニシアティブのいっそうの低下を伴って現実のものとなった。アメリカ経済の「バブル崩壊不況」の第二段階が始まっており、それはアメリカ経済に支えられた世界資本主義経済を深刻な恐慌局面に追いやる可能性がある。とりわけ日本資本主義にとって、その影響は甚大である。その時、ポスト小泉をめぐる抗争がいっそう政治の表面に浮上することになるだろう。
 取り沙汰されている「石原新党」構想をふくめて、当面する政党再編がどのような形をとるのかについては具体的に予測しえない。
 しかし重要なことは小泉「構造改革」路線の頓挫は、決して小泉内閣が追求した路線の放棄を意味するものではないということである。グローバル資本主義に対応した新自由主義路線を徹底化させ、アメリカ帝国主義のアジア・太平洋軍事戦略に自らを組み込んで「集団的自衛権」を行使し、「戦争ができる国家体制」の確立と憲法改悪を実現しようとすることは支配階級にとって避けられない選択である。新たな政党再編の軸はそうした戦略的目標によって形成されるだろう。
 この中で、より強権的で排外主義的な勢力と、よりリベラルで「分権主義」的な、あるいは市場原理主義の「行き過ぎ」を規制しようとする勢力との分岐も作りだされるだろう。われわれに問われていることは、こうしたグローバル資本主義とアメリカによって主導されるグローバル軍事戦略の枠組みを前提とした分岐を超える戦略的方向性に挑戦しようとする運動と政治勢力を、現実の闘いの中で着実に作りだすための努力なのである。
(つづく)

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