混乱加速した
デノミの奇襲
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は昨年十一月に突如としてデノミネーション(通貨単位切り下げ)を断行した。期間はわずか一週間で十万ウォンを交換限度額としたこの非常措置は「奇襲」によって民衆のわずかばかりの財産を強奪することを目的とし、経済の活性化や改革とは無縁の体制延命策だった。これは経済破綻の現状に火に油を注ぐ混乱をもたらし抗議行動が発生したことを国際アムネスティが伝えている。
また北朝鮮当局が執拗に弾圧・規制してきた闇市場(市場経済の萌芽)は拡大のすう勢にあり、もはや体制自身がこの市場なしには存立しえない現実を北朝鮮当局が自覚しつつある。金正日独裁支配体制が衰滅の一途をたどる中できたる九月に四十四年ぶりに開催される党代表者会とは何を意味するのか?
5月に何が
あったのか
北朝鮮は例年通り四月に第十二期第二回最高人民会議を開催し、「もう一度軽工業と農業に拍車をかけて人民経済の技術革新、現代化を促そう」とする金英逸首相の報告を受けて今年の国家予算などが採択された。
ところがそのわずか2カ月後に同会議が再招集(6月7日)され、前記報告を行った金首相ら主要閣僚七人が突如として解任されて新首相には高齢(80歳)の崔永林が就くという変則的人事が行われた。併せて国防委員のメンバーでもある張成沢(チャンソンテク)が金正日国防委員長の提案で国防委員会副委員長に就任した。やり直しに等しい最高人民会議再招集と主要閣僚全員の解任という事態はこの四〜五月期に北朝鮮で注目すべき政治的出来事があったことをうかがわせる。
この時期の重要な政治的出来事に焦点を合わせるならそれは金正日の訪中と二日間の中朝首脳会談(5月3〜7日)以外にはありえない。北朝鮮が最高人民会議をやり直し、かつそれを対外的にも明らかにせざるを得ないほどの中朝間の政治的対立と葛藤の内実がどのようなものであったのかは今後の中朝関係の推移とともに明らかになるだろう。
9月党代表
者会について
朝鮮労働党政治局は六月二十三日に党最高指導機関を選出する党代表者会を九月上旬に招集することを決定した。「四十四年ぶりの党代表者会で後継準備か?」などとメディアでは取りざたされているが、もはやかつての権威も地に落ちた朝鮮労働党が何をいまさらである。
朝鮮労働党の大会は規約上は五年に一回の開催、本来の党代表者会はその間に開催されるもの。ところが党大会は三十年間も開催されず、党中央委員会総会も十七年間にわたって開催されていない。最後の第六回党大会(1980年)で選出された五人の政治局常務委員は金正日一人に、十九人の政治局委員は三人に、中央委員は百四十五人から六十六人に減少し補充があるわけでもない。
本来の意味での朝鮮労働党は消滅したに等しい。実態としての党代表者会は金正日王朝の「代替わりの儀式」に党の名を冠して権威づけようとする小細工以外の何物でもない。
金正日の病状と
「後継者」問題
二〇〇八年以降に金正日のいわゆる後継者についてのメディアの報道がかまびすしくなり、また北朝鮮当局も関連する情報を小出しにして西側メディアにリークし後継問題がスムーズに進行しているかのような雰囲気作りに腐心してきた。だが一連の経過からみると金正日の健康悪化に伴い、否応なしにこの問題に直面せざるを得なかったというのが実情であり、にわか仕立てのように後継者問題が浮上してきた。
だがこれに関する北朝鮮当局の公式のコメントは今日に至るまで全くないし選出がスムーズに進行している雰囲気があるわけでもない。九月の党代表者会で後継者のお披露目程度のことがあったとしても「党の指導力が著しく高まる」(労働新聞)どころか、王室育ちの唱える「強盛大国」「先軍政治」など北朝鮮の民衆にとっては二重三重の災厄である。
民衆の生活復興
支援のために
累計で二万人になろうとする韓国への脱北者はここ数年間の中朝当局の取り締まり強化によって減少しているものの最近では軍人の脱北者が増えているとされ、金正日体制延命の要である治安機関にも体制への幻滅と絶望感が広まりつつある。
経済領域では〇八年の金融危機の影響で北朝鮮の重要な輸出品目である鉱物資源価格の暴落による対中輸出の中断、南北関係悪化に伴う韓国からの観光収入の激減、韓国・李明博政権との南北首脳会談開催に伴う韓国からの巨額の食糧援助引き出しの失敗などで経済危機は一層深化しこれにデノミ失敗が重なって「餓死者が出ている」ことが当たり前のように語り伝えられている。
以前とは異なり、こうした情報は中朝国境地域での検証取材や北朝鮮内部からの民間ルートの情報発信によって信憑性、確実性を増している。であればこそ支援のためのルート確保も確実なものでなければならない。
朝鮮戦争の大敗によって廃墟と化し、そこからの必死の復興途上、今度は金正日政権によって民生再建を台無しにされてきた北朝鮮にとって必要なのは六カ国協議による核放棄と経済支援を天秤にかけたマラソン協議ではない。民生復興のための支援ネットワークと南北朝鮮の自由往来実現のための運動が今ほど切実に求められる時はない。これはもはや気の遠くなるような課題ではないし、またそうさせてはならない。(荒沢 峻)
呼びかけ
植民地主義と排外主義を許すな!
8・15反「靖国」行動に結集を
天皇制国家の侵略戦争責任を問い続けよう
突然の鳩山辞任と菅直人政権の誕生、そして参院選での敗北。つい先日まで永田町を揺るがした、米軍普天間基地の「移設問題」はもはや、終わったことであるかのように扱われている。
「日米合意」ノー、基地撤去という声は、歴史的に蓄積され続けてきた「本土」と沖縄の権力関係をはっきりと問うものである。琉球処分から沖縄戦後、そして戦後の分離と再統合の歴史。沖縄は日本による、そして戦後は、アメリカと日本による植民地支配のもとに置かれ続けている。
そして「韓国併合100年」の今年、朝鮮学校の高校無償化からの排除や、「草の根」からの排外主義の強まりに見られるように、植民地責任は忘却され続けるどころか、歴史を直視し、過去を克服していこうとする姿勢とは真逆な現実がこの社会を覆っている。私たちは、こうした植民地主義の現在における継続と、象徴天皇制というかたちで続く現在の天皇制とを合わせて問題化すべく、「天皇制国家と排外主義を許すな!」8・15行動に取り組む。
当日は、「戦没者」を尊い「犠牲者」として祭り上げ、顕彰していく天皇出席の儀式である「全国戦没者追悼式」と靖国神社に向けたデモを行ない、その後、社会思想史研究者の安川寿之輔さんをお招きして、福沢諭吉「脱亜論」とからめて、近代日本の侵略思想の形成について講演していただく集会を持つ予定だ。
天皇制国家による植民地支配責任・侵略戦争責任を問い続け、継続する植民地主義と排外主義を許さない、力強い行動を作っていきたい。当日の行動に是非参加を!
b日時:2010年8月15日(日)
bデモ:午後3時/西神田公園(地下鉄神保町駅、JR水道橋駅より5分)
b集会:文京区民センター2A(地下鉄春日駅)/午後5時45分開場
bお話:安川寿之輔さん(社会思想研究)「排外主義的天皇制ナショナリズムの歴史――福沢諭吉に限定して」
b8・15反「靖国」行動:連絡先 東京都千代田区三崎町3―1―18 市民のひろば気付 電話090―3438―0263
【呼びかけ団体】アジア連帯講座/国連・憲法問題研究会/立川自衛隊監視テント村/反天皇制運動連絡会/「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会/靖国解体企画/連帯社/労働運動活動者評議会
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